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大賢者と16人の落ちこぼれ弟子  作者: 伝説の男前
第二部 育成編

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36/38

第36話 「一日目」

夜明け前。


村の、北。


シルフィが、目を、覚ました。


いや。


眠っていなかった。


一晩中、耳を、澄ませていたのだ。


「……来ました」


彼女は、言った。


その声は、静かだった。


しかし、村中に、伝わった。


「……距離は」


バルドが、聞いた。


「……三キロです」


シルフィは、答えた。


「……到着は」


彼は、聞いた。


彼女は、答えた。


「……一時間後」


### 二


「……避難、開始します」


バルドは、言った。


村の、南側。


そこに、地下避難所が、完成していた。


五百人分。


「……老人と、子供」


バルドは、続けた。


「……そして、病人」


彼は、言った。


「……全員、地下へ」


村人たちが、動き始めた。


しかし。


一人の老婆が、動かなかった。


「……ばあちゃん」


ココが、言った。


「……行かないよ」


彼女は、答えた。


### 三


「……危ないよ」


ココは、言った。


「……知ってるさ」


老婆は、答えた。


「……じゃあ」


「……でもね」


彼女は、続けた。


「……あたしが、地下にいたら」


老婆は、言った。


「……誰が、飯を、作るんだい」


ココは、その言葉に、驚いた。


「……あたしが」


彼女は、言った。


「……一人でかい?」


老婆は、聞いた。


「……八百人分を?」


「……あ」


ココは、言葉に、詰まった。


### 四


「……そういうことさ」


老婆は、笑った。


「……あたしは、台所にいる」


彼女は、続けた。


「……そこが、あたしの、持ち場だ」


「……でも」


ココは、言った。


「……ココ」


老婆は、言った。


「……はい」


「……あんた、忘れてるよ」


彼女は、続けた。


「……何を」


ココは、聞いた。


老婆は、答えた。


「……戦うのは、剣だけじゃ、ない」


### 五


そして、他の老人たちも、動かなかった。


「……わしも、残る」


「……あたしも」


「……水を、運ぶ役が、要るだろ」


「……包帯を、巻くのも」


三十人ほどの、老人が、残った。


バルドは、その様子を、見ていた。


そして、言った。


「……わかりました」


彼は、続けた。


「……でも」


バルドは、言った。


「……危なくなったら」


彼は、続けた。


「……逃げてください」


「……わかってるよ」


老婆は、答えた。


### 六


一時間後。


夜が、明けた。


そして。


村の北に。


千の、軍勢が、現れた。


整然と。


音も、なく。


そして、その前に。


一人の男が、立っていた。


ダグラス・ヴァイン。


第一師団長。


「……あれが」


レオンが、呟いた。


「……はい」


ノアが、答えた。


### 七


ダグラスは、村を、見た。


そして、その防備を、確認した。


三メートルの、柵。


蔓。


そして、魔法陣。


「……報告通りだな」


彼は、言った。


「……はい」


副官が、答えた。


「……では」


ダグラスは、続けた。


「……勧告する」


彼は、前に、出た。


そして、村に向かって、叫んだ。


「……フェアウッド村の、住民に、告ぐ!」


### 八


村の、柵の上。


バルドが、立っていた。


その隣に、トムが、いた。


そして、その後ろに、八百四十五人。


「……私は」


ダグラスは、続けた。


「……王国軍、第一師団長」


彼は、言った。


「……ダグラス・ヴァインである」


「……」


「……王命により」


ダグラスは、続けた。


「……この村を、制圧する」


### 九


「……ただし」


彼は、続けた。


「……無用な、犠牲は、望まない」


ダグラスは、言った。


「……よって、勧告する」


彼は、続けた。


「……住民は、村を、出よ」


「……」


「……武器を、捨て」


ダグラスは、言った。


「……南へ、去れ」


「……」


「……そうすれば」


彼は、続けた。


「……命は、取らない」


### 十


「……ただし」


ダグラスは、続けた。


「……大賢者と、その弟子、十六名」


彼は、言った。


「……そして、白翼傭兵団」


ダグラスは、続けた。


「……これらは」


彼は、言った。


「……引き渡せ」


村が、ざわめいた。


「……そんな」


「……ふざけるな」


「……冗談じゃねえ」


しかし。


バルドは、静かに、聞いていた。


### 十一


「……回答は」


ダグラスは、聞いた。


「……一時間、待つ」


彼は、続けた。


そして、下がろうとした。


しかし。


「……回答します」


バルドの声が、響いた。


ダグラスが、振り返った。


「……もう、か」


彼は、言った。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……よかろう」


ダグラスは、頷いた。


「……言え」


### 十二


バルドは、深く、息を、吸った。


そして、言った。


「……断ります」


千人が、その言葉を、聞いた。


「……理由は」


ダグラスは、聞いた。


バルドは、答えた。


「……三つ、あります」


彼は、続けた。


「……一つ目」


バルドは、言った。


「……ここは、私たちの、家です」


### 十三


「……二つ目」


彼は、続けた。


「……八百七十五人のうち」


バルドは、言った。


「……五百人が、避難民です」


「……」


「……北から、逃げてきた人たちです」


彼は、続けた。


「……その人たちに」


バルドは、言った。


「……また、逃げろとは」


彼は、続けた。


「……言えません」


### 十四


「……三つ目」


バルドは、言った。


「……一番、大事な理由です」


彼は、続けた。


「……言え」


ダグラスは、言った。


バルドは、答えた。


「……仲間を、売りません」


「……」


「……大賢者も」


彼は、続けた。


「……傭兵団も」


バルドは、言った。


「……僕たちの、仲間です」


彼は、続けた。


「……だから」


バルドは、言った。


「……渡しません」


### 十五


ダグラスは、その回答を、聞いた。


そして、しばらく、黙っていた。


そして、言った。


「……理解した」


彼は、続けた。


「……では」


ダグラスは、言った。


「……制圧する」


そして、彼は、後ろを、向いた。


しかし。


「……一つ、質問が、あります」


バルドの声が、した。


ダグラスは、止まった。


### 十六


「……なんだ」


彼は、聞いた。


バルドは、答えた。


「……あなたは」


彼は、続けた。


「……これを、正しいと、思いますか」


千人が、その問いを、聞いた。


ダグラスは、しばらく、黙っていた。


そして、答えた。


「……思わん」


村が、ざわめいた。


そして、バルドが、聞いた。


「……では、なぜ」


ダグラスは、答えた。


「……命令だからだ」


### 十七


「……それは」


バルドは、言った。


「……理由に、なりません」


「……なる」


ダグラスは、答えた。


「……なぜですか」


彼は、聞いた。


ダグラスは、答えた。


「……軍とは、そういうものだ」


彼は、続けた。


「……一人一人が、判断すれば」


ダグラスは、言った。


「……軍は、成り立たん」


「……」


「……そして」


彼は、続けた。


「……軍が、なければ」


ダグラスは、言った。


「……国は、滅ぶ」


### 十八


バルドは、その論理を、聞いた。


そして、答えた。


「……わかりました」


彼は、続けた。


「……では」


バルドは、言った。


「……僕からも、一つ」


「……なんだ」


ダグラスは、聞いた。


バルドは、答えた。


「……僕たちは」


彼は、続けた。


「……誰も、殺しません」


千人が、その言葉に、ざわめいた。


### 十九


「……何?」


ダグラスは、聞いた。


「……誰も、殺しません」


バルドは、繰り返した。


「……戦わないのか」


彼は、聞いた。


「……戦います」


バルドは、答えた。


「……しかし」


彼は、続けた。


「……殺しません」


「……なぜだ」


ダグラスは、聞いた。


バルドは、答えた。


「……あなた方は」


彼は、続けた。


「……敵では、ないからです」


### 二十


「……我々は」


ダグラスは、言った。


「……お前たちを、攻める」


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……それでも、敵では、ないと」


彼は、聞いた。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……あなた方は」


彼は、続けた。


「……命令で、動いています」


「……ああ」


「……そして」


バルドは、言った。


「……その命令を、出したのは」


彼は、続けた。


「……あなた方では、ありません」


### 二十一


ダグラスは、その言葉を、聞いた。


そして、しばらく、黙っていた。


そして、言った。


「……甘いな」


「……はい」


バルドは、答えた。


「……甘いです」


彼は、続けた。


「……でも」


バルドは、言った。


「……僕たちは」


彼は、続けた。


「……それで、ここまで、来ました」


ダグラスは、その答えを、聞いた。


そして、背を、向けた。


「……開始する」


彼は、言った。


### 二十二


攻撃が、始まった。


まず、弓兵。


三百人。


そして、矢が、放たれた。


三百本。


村に、向かって。


「……来ます!」


シルフィが、叫んだ。


「……盾!」


バルドが、叫んだ。


そして。


柵の内側に、盾が、並んだ。


ドグが、作ったものだ。


八百枚。


そして、矢が、そこに、刺さった。


### 二十三


「……被害は」


バルドが、聞いた。


エマが、答えた。


「……軽傷、三名」


彼女は、続けた。


「……重傷、ゼロ」


「……よかった」


バルドは、頷いた。


そして、ドグを、見た。


「……ドグさん」


「……おう」


「……盾、ありがとうございます」


彼は、言った。


「……当たり前だ」


ドグは、答えた。


そして、笑った。


「……俺、頑丈なもん作るの」


彼は、続けた。


「……得意なんだよ」


### 二十四


第二波。


歩兵が、前進した。


二百人。


そして、蔓に、突入した。


「……!」


足が、絡んだ。


「……切れ!」


指揮官が、叫んだ。


兵士たちが、剣で、蔓を、切った。


しかし。


切った端から。


蔓は、伸びた。


「……なんだ、これは!」


「……切れません!」


混乱が、広がった。


### 二十五


「……モモさん」


バルドが、言った。


「……はい」


「……効いています」


彼は、続けた。


「……はい」


モモは、頷いた。


そして、その光景を、見ていた。


「……あの」


彼女は、言った。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……あの人たち」


モモは、続けた。


「……怪我、しませんか」


バルドは、その問いに、答えた。


「……しません」


彼は、続けた。


「……転ぶだけです」


### 二十六


「……よかった」


モモは、言った。


そして、少し、笑った。


「……あたし」


彼女は、続けた。


「……人を、傷つける植物は」


モモは、言った。


「……作れません」


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……だから」


彼は、続けた。


「……お願いしました」


バルドは、言った。


「……止めるだけの、植物を」


### 二十七


二百人の、歩兵は。


蔓の中で、一時間、動けなかった。


そして。


撤退した。


「……第二波、撤退」


トムが、報告した。


「……損害は」


バルドが、聞いた。


「……向こうは、ゼロ」


彼は、答えた。


「……こっちも、ゼロ」


「……いいですね」


バルドは、頷いた。


そして、太陽を、見た。


「……まだ、朝です」


彼は、言った。


### 二十八


正午。


第三波。


今度は、工兵だった。


百人。


そして、彼らは、蔓を、焼き始めた。


火を、使って。


「……まずい」


モモが、言った。


「……焼かれると」


彼女は、続けた。


「……伸びません」


「……どのくらい、持ちますか」


バルドが、聞いた。


モモは、答えた。


「……二時間です」


### 二十九


「……二時間」


バルドは、頷いた。


そして、考えた。


「……リナさん」


彼は、言った。


「……はい!」


「……煙を」


バルドは、続けた。


「……たくさん」


「……了解!」


リナは、答えた。


そして、ミアと、動いた。


数分後。


村の、北側が。


煙に、包まれた。


### 三十


「……何も、見えん!」


工兵が、叫んだ。


「……火が、見えない!」


「……作業、続行!」


指揮官が、命じた。


しかし。


煙の中で。


彼らは、方向を、失った。


そして。


自分たちが、焼いた場所が。


どこか、わからなくなった。


「……どこまで、焼いた!」


「……わかりません!」


### 三十一


二時間後。


煙が、晴れた。


そして、工兵たちは。


自分たちの、成果を、見た。


蔓は。


半分ほど、焼けていた。


しかし。


「……伸びてる」


一人が、呟いた。


焼けた場所の、隣から。


新しい蔓が、伸びていた。


「……くそ!」


「……また、最初からか!」


### 三十二


「……モモさん」


バルドが、言った。


「……すごいです」


「……いえ」


モモは、首を振った。


「……あたしは」


彼女は、続けた。


「……何も、していません」


「……え?」


「……植物が」


モモは、言った。


「……勝手に、伸びています」


彼女は、続けた。


「……あたしは」


モモは、言った。


「……場所を、選んだだけです」


### 三十三


夕方。


第四波。


騎兵、五十。


彼らは、蔓を、避けて。


村の、東側から、回り込もうとした。


「……ニナさん」


バルドが、言った。


「……はい」


「……東は」


彼は、聞いた。


ニナは、答えた。


「……沼です」


「……沼?」


「……うん」


彼女は、頷いた。


「……見た目は、草原」


ニナは、続けた。


「……でも、下は、沼」


### 三十四


五十騎が、東から、突入した。


そして。


「……!」


馬が、沈んだ。


膝まで。


そして、動けなくなった。


「……なんだ、これは!」


「……沼だ!」


「……下がれ!」


騎兵たちは、慌てて、後退した。


そして、五十騎のうち。


十騎が、馬を、失った。


ただし。


騎手は、無事だった。


### 三十五


「……ニナさん」


バルドは、言った。


「……なんで、沼だと、わかったんですか」


ニナは、答えた。


「……草の、色」


「……色?」


「……うん」


彼女は、頷いた。


「……水が、多いと」


ニナは、続けた。


「……草が、濃くなる」


「……」


「……あそこだけ」


彼女は、言った。


「……色が、違った」


### 三十六


日没。


一日目が、終わった。


第一師団は、後退した。


そして、野営に、入った。


村では。


八百七十五人が、生きていた。


死者、ゼロ。


重傷者、ゼロ。


軽傷者、十二名。


「……信じられない」


ジャンが、呟いた。


「……一日、耐えたぞ」


「……はい」


バルドは、頷いた。


しかし。


その顔は、暗かった。


### 三十七


「……どうした」


ジャンが、聞いた。


バルドは、答えた。


「……向こうも」


彼は、続けた。


「……死者、ゼロです」


「……それが、まずいのか」


ジャンは、聞いた。


「……いえ」


バルドは、首を振った。


「……よかったです」


彼は、続けた。


「……でも」


バルドは、言った。


「……今日は」


彼は、続けた。


「……様子見でした」


### 三十八


「……明日から」


バルドは、続けた。


「……本気で、来ます」


「……どうなる」


ジャンは、聞いた。


彼は、答えた。


「……わかりません」


「……」


「……でも」


バルドは、続けた。


「……今日の、手は」


彼は、言った。


「……全部、使いました」


「……全部?」


ジャンは、聞いた。


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……蔓も、煙も、沼も」


### 三十九


「……明日は」


彼は、続けた。


「……同じ手は、通じません」


バルドは、言った。


「……じゃあ」


ジャンは、聞いた。


「……どうする」


バルドは、答えた。


「……考えます」


彼は、続けた。


「……今夜」


バルドは、言った。


「……八百七十五人で」


### 四十


同じ頃。


南へ、向かう街道。


大賢者は、歩いていた。


一日で、四十キロ。


普通の人間なら、不可能な距離だ。


しかし。


彼の、呼吸は、乱れていなかった。


そして。


日没。


彼は、街道の、脇で、休んだ。


そのとき。


馬の、音が、聞こえた。


### 四十一


一騎。


そして、それは、大賢者の前で、止まった。


騎手が、降りた。


甲冑。


そして、見覚えのある、顔。


「……久しぶりだな」


その男は、言った。


「……ロラン卿」


大賢者は、答えた。


ロラン・デュヴァル。


王国軍、第二師団長。


「……なぜ、ここに」


大賢者は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……待っていました」


### 四十二


「……待っていた?」


大賢者は、聞いた。


「……はい」


ロランは、頷いた。


「……三日前から」


彼は、続けた。


「……なぜだ」


大賢者は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……あなたが、来ると、思ったからです」


「……根拠は」


彼は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……フェアウッド村の、危機です」


彼は、続けた。


「……そして」


ロランは、言った。


「……あなたなら、王に、会いに行く」


### 四十三


大賢者は、その推理に、頷いた。


「……鋭いな」


彼は、言った。


「……いえ」


ロランは、首を振った。


「……当然の、推理です」


彼は、続けた。


「……あなたには」


ロランは、言った。


「……それしか、手が、ありません」


「……そうだな」


大賢者は、頷いた。


そして、聞いた。


「……で」


彼は、続けた。


「……何の用だ」


### 四十四


ロランは、答えた。


「……二つです」


彼は、続けた。


「……一つ目」


ロランは、言った。


「……情報です」


「……なんだ」


大賢者は、聞いた。


彼は、答えた。


「……王都に」


ロランは、続けた。


「……入れません」


「……なぜだ」


大賢者は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……全門に」


彼は、続けた。


「……あなたの、人相書きが、貼られています」


### 四十五


「……なるほど」


大賢者は、頷いた。


「……そして」


ロランは、続けた。


「……門の警備が」


彼は、言った。


「……通常の、三倍です」


「……ふむ」


「……つまり」


ロランは、続けた。


「……王は」


彼は、言った。


「……あなたが、来ることを」


ロランは、続けた。


「……予想しています」


### 四十六


「……そうか」


大賢者は、言った。


そして、聞いた。


「……二つ目は」


ロランは、答えた。


「……提案です」


「……なんだ」


彼は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……私が」


彼は、続けた。


「……連れて行きます」


「……連れて行く?」


大賢者は、聞いた。


「……はい」


ロランは、頷いた。


「……どうやって」


彼は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……捕虜として」


### 四十七


大賢者は、その提案に、眉を、上げた。


「……捕虜」


彼は、言った。


「……はい」


ロランは、頷いた。


「……私が、あなたを、捕らえた」


彼は、続けた。


「……そう、報告します」


「……」


「……そして」


ロランは、言った。


「……王の前に、連れて行きます」


大賢者は、その計画を、考えた。


そして、聞いた。


「……君は、どうなる」


### 四十八


「……私ですか」


ロランは、聞いた。


「……ああ」


大賢者は、頷いた。


「……嘘が、ばれれば」


彼は、続けた。


「……君は、処刑される」


「……はい」


ロランは、答えた。


「……知っています」


「……では、なぜ」


大賢者は、聞いた。


ロランは、しばらく、黙っていた。


そして、答えた。


「……三年前です」


### 四十九


「……三年前」


大賢者は、繰り返した。


「……はい」


ロランは、頷いた。


「……私は」


彼は、続けた。


「……命令違反を、しました」


「……ああ」


「……そして、二百人を、救いました」


ロランは、言った。


「……しかし」


彼は、続けた。


「……三日、遅れました」


「……」


「……その三日で」


ロランは、言った。


「……四百人が、死にました」


### 五十


「……あれから」


彼は、続けた。


「……三年」


ロランは、言った。


「……私は、考えていました」


「……何を」


大賢者は、聞いた。


彼は、答えた。


「……『なぜ、もっと早く、破らなかったのか』と」


「……」


「……答えは」


ロランは、続けた。


「……怖かったからです」


彼は、言った。


「……処刑が」


### 五十一


「……そして」


ロランは、続けた。


「……今」


彼は、言った。


「……また、同じ状況です」


「……」


「……フェアウッド村に」


ロランは、続けた。


「……八百人が、います」


「……ああ」


「……そして」


彼は、言った。


「……私は、また」


ロランは、続けた。


「……迷っています」


### 五十二


「……しかし」


彼は、続けた。


「……今度は」


ロランは、言った。


「……三日、待ちません」


彼は、続けた。


「……だから」


ロランは、言った。


「……ここに、来ました」


大賢者は、その言葉を、聞いた。


そして、聞いた。


「……ロラン卿」


「……はい」


「……君の、第二師団は」


大賢者は、聞いた。


「……どこにいる」


### 五十三


ロランは、答えた。


「……ここから、西に」


彼は、続けた。


「……十キロの、地点です」


「……人数は」


大賢者は、聞いた。


「……八百です」


ロランは、答えた。


「……命令は」


彼は、聞いた。


ロランは、答えた。


「……『北へ、進軍せよ』です」


「……そうか」


大賢者は、頷いた。


そして、聞いた。


「……その道は」


彼は、続けた。


「……フェアウッド村を、通るか」


### 五十四


ロランは、その問いに、答えた。


「……通りません」


「……そうか」


大賢者は、言った。


「……しかし」


ロランは、続けた。


「……寄り道は、できます」


大賢者は、その言葉に、目を、細めた。


「……ロラン卿」


彼は、言った。


「……はい」


「……それは」


大賢者は、続けた。


「……反逆だぞ」


「……はい」


ロランは、答えた。


### 五十五


「……八百人が」


大賢者は、続けた。


「……君に、従うか」


ロランは、しばらく、考えた。


そして、答えた。


「……わかりません」


彼は、続けた。


「……しかし」


ロランは、言った。


「……三年前」


彼は、続けた。


「……私が、撤退を、命じたとき」


ロランは、言った。


「……誰も、逆らいませんでした」


### 五十六


大賢者は、その言葉を、聞いた。


そして、しばらく、黙っていた。


そして、言った。


「……ロラン卿」


「……はい」


「……一つ、頼みがある」


彼は、続けた。


「……なんですか」


ロランは、聞いた。


大賢者は、答えた。


「……村には、行くな」


ロランは、驚いた。


「……なぜ、ですか」


彼は、聞いた。


### 五十七


大賢者は、答えた。


「……あの子たちが」


彼は、続けた。


「……自分で、やると、言った」


「……しかし」


ロランは、言った。


「……千人ですよ」


「……ああ」


大賢者は、頷いた。


「……勝てません」


彼は、続けた。


「……勝たなくていい」


大賢者は、言った。


「……三日、耐えればいい」


### 五十八


「……無理です」


ロランは、言った。


「……そうかもしれん」


大賢者は、答えた。


「……では」


「……しかし」


彼は、続けた。


「……私が、助けに行けば」


大賢者は、言った。


「……あの子たちは」


彼は、続けた。


「……『自分たちでは、できなかった』と、思う」


「……」


「……それは」


大賢者は、言った。


「……勝利より、悪い」


### 五十九


ロランは、その言葉を、聞いた。


そして、しばらく、黙っていた。


そして、言った。


「……厳しいですね」


「……ああ」


大賢者は、頷いた。


「……私は」


彼は、続けた。


「……厳しい師匠だ」


そして、彼は、少し、笑った。


「……ただし」


大賢者は、言った。


「……一つだけ」


彼は、続けた。


「……頼みたいことが、ある」


### 六十


「……なんですか」


ロランは、聞いた。


大賢者は、答えた。


「……四日目だ」


「……四日目?」


「……ああ」


彼は、頷いた。


「……四日目に」


大賢者は、続けた。


「……村へ、行ってくれ」


「……」


「……それまでは」


彼は、言った。


「……待て」


ロランは、その指示を、聞いた。


そして、聞いた。


「……もし」


彼は、続けた。


「……三日目に、村が、落ちたら」


大賢者は、答えなかった。


そして、しばらくして、言った。


「……そのときは」


彼は、続けた。


「……私の、負けだ」


第36話終了。


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## 次話予告


第37話「二日目」


一日目。


死者、ゼロ。


しかし、手は、すべて、使った。


二日目。


ダグラス・ヴァインは、戦法を、変える。


蔓を、避け。


沼を、避け。


そして。


「……西から、行く」


村の、西側。


そこには、何も、ない。


柵も。


蔓も。


そして。


そこを、守るのは。


十六人のうち、たった、二人だった。


「……行けますか」


「……はい」


ノア・ベルと、シオン・ダンマリ。


武器を、持たない、二人。

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