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海に戻った小竜の話

 港に行くと、今日は随分と船が沖に出ていることに気付いた。多いと言っても限度がある。主に漁船が埋め尽くしている。

 なにか旬の幸があるのだろうかと近くにいた漁師に聞いたのだが、想定外の回答が返ってきた。


 四人の漁師が船で漁に出ていた。

 仕掛けた網を回収するために沖に出ていたところ、晴れていたのだが、突然の大きな横波に船が傾き、一人が海に投げ出されてしまった。

 助けようと一人が慌てて海に飛び込んだ。だが波が落ち着くと、落ちたはずの仲間が肌色の島に乗っかっていることに気付いた。

 助けに入った仲間もその島に近付き触れると、それはザラりとした手触りで、弾力があった。

 するとその島はゆっくりと船に向かって動き始めた。

 海に落ちた二人が船に戻ると、その島にみえたものは緩やかに動き海中に消えていった。

 その様を見ていた漁師たちは、クジラよりも遥かに巨大なサイズに驚きながら、船の片方が破損した船にしがみ付くようにしながら、港に戻ってきた。


 その話が港町に知れ渡ると他の者たちも一目見ようと海に出ていったため、船が沖を埋め尽くす事態になったらしい。実際に件の船が接岸していたので見に行くと、確かに船の片方が大きく破損している。波ではこうはならないだろう。近くでは子供達が集まっており、面倒を見ている老人たちもいた。老人たちも初めての事態に驚いていたものの、ある一人が肌色のザラりとした手触り、という言葉にある昔話をしていた。

 それは昔、島に居た王様の仲間の小竜があまりに大きくなったことで王様の傍にいられなくなり海に戻ったという話だった。私は小太りという特徴は聞いていたが、その話の中では小竜は肌色のサメ肌と表現されていた。海に出てからも島をずっと守っており、海の守り神として伝えられていることは知っていた。ここで話されているのは、いつもは海の底に居るのだが、久々に海から出てみたら誤って船を壊してしまい、落ちた人を背に載せて助けたのではないかというのだ。

 港は大きなカルデラになっており、海水が流れ込んで今の形になったと言われている。その外は急速に深く、海溝があった。昔の人はそんなこと知るはずもないと思うのだが、その深海に小竜が住んでいると伝えられている。竜など何かの比喩であろうと思っているのだが、何かが潜んでいることは間違いない。この世にはまだ見ぬ不思議はある。未確認の巨大なクジラか、それこそサメなのではと思ってしまう。深海に居れば色も白かったりするのかもしれない。

 だが、さほどイベントが多い訳ではない島の生活では、しばらくその話でもちきりになるのだった。

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