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金属スライム狩り

 数分後、俺たちは新たな金属スライムを発見した。すぐに動いたのはハルカさんだ。彼女が弓を構え、素早く矢を放つ! おぉ! 速い!


「速射!」


 ハルカさんは先ほどのレベルアップで手に入れた新スキルを早速試している。基本は慎重だが、積極的になるべきところでは積極的に動く。彼女たちはその辺の判断に優れている――だが。


「ああ!? 矢は当たったのに!」


 ハルカさんが悔しそうに叫んだ。金属スライムに当たった矢は深くは刺さらずに、その軟体からペッと吐き出される。金属スライムの防御力は相当なものだ。しかも並のスキルの効果は、弾くほどの耐性を持っている。そして素早い。サナたちの修行の相手としてはこれほど、うってつけの相手は他に居ないだろう。


 ハルカさんの攻撃に反応して、金属スライムは逃げ始める。そこへサナとウイカゼさんが追撃する。サナが走り出して、ウイカゼさんが杖を高く掲げている。悪くない動きだ。

 

「灯火!」

「影踏み!」


 ウイカゼさんが杖から光球を飛ばした。辺りの明るさが増して、光に照らされた、金属スライムの影が伸びる。そこへサナが影踏みを仕掛けるというわけだな。なるほど、考えている。彼女たちの連携技を、凄く褒めたい! でも、それでは金属スライムを捕まえることは、できないんだよな。


「あ、あれー!? 影を踏んでるのに!?」

「スライムが逃げていきますわ!?」


 金属スライムは影踏みの束縛を振りきって、凄まじい速度で逃げていく。影踏み程度ではあの魔物を完全に拘束することは不可能。金属スライムは全ての魔物の中でもトップクラスのスキル耐性を持っているからなあ。Cクラスになったばかりの冒険者には厄介だよ。なんて考えていると――1本の矢がオーラをまといながら飛んでいく!


「魔力の矢!」


 ハルカさんが放った高威力の矢! 魔力の矢は、魔物に当たり、その体をわずかに削った。けれど、金属スライムを倒すには、その一撃では足りない! いや、逃走中の金属スライムに一撃浴びせるって、この子、とんでもないことやってるな。彼女の将来を考えると、否が応でもワクワクさせられる!


「……チッ。逃したか。だけど、確認はしたぜ」


 ハルカさんは呟き、数秒、考えるように視線を動かす。そして、俺を見た。なんだろうか? と俺が考えていると、彼女は手でTの時を作った。


「ハルカちゃんターイム!」


 お、おう……ハルカちゃんタイム……?


※は、ハルカちゃん?

※ハルカちゃんタイム……?

※何か考えがあるんだな?

※我々はハルカちゃんを信じましょう

※作戦タイムです?


「どうしたのハルカちゃん?」

「何か良い考えでも、浮かびまして?」

「うむ。良い考えっていうか、ちょっと、おじおじを借りても良いかい? 二人で作戦を詰めたいんだ」


 俺と二人で? なぜ……? と疑問が頭に浮かんでいるうちにサナは親指をグッと上げた。ちょ!? サナ!?


「なんだか、よく分からないけど、ハルカちゃんに考えがあるなら、信じるよ! そんなわけで、良いですよね! おじさん!」


 うわあ。サナからの信頼が眩しいくらいに伝わってくるぅ!? サナは可愛くて良い子に育ったなあ。叔父さん嬉しいよ。そんな姪っ子の期待に応えないわけにはいかない!


「分かりました。では少しの間、配信と、周囲への警戒の方をお願いします」

「了解! 任せといてください!」


 嬉しそうに胸を叩くサナの後ろで、ウイカゼさんが「お任せくださいな!」と言う。彼女らも気構えはしっかりとしてきた。頼もしいことだ。


 そんなわけで撮影機から離れ、ハルカさんと二人で作戦タイムだ。彼女なりの考え、があるようだが、何を言おうとしているのだろうか? 興味を惹かれる。ハルカさんは、俺へ小声で話し始める。


「おじおじさ。今回の課題。おじおじが話してない意図があるだろ?」

「意図、と言いますと?」

「おじおじ、ならともかく。私や二人のスキルじゃ金属スライムには効果が薄い。となると、私たちの立ち回りと技量だけで、なんとかするしかない」

「……そうなりますね」

「一日で技量を高めるのは難しい。と思うが、おじおじは私たちに一日で金属スライム狩りをやってもらいたいみたいだ。と、なれば私たちに今日、求められてるのは立ち回りを学ぶことなんじゃないか?」

「……ほほう。鋭い指摘ですね。ええ、その通りですよ」

「やっぱりな。そうだと思ったぜ」


 正直、驚いた。こんなにも早く、俺の課題の意図に気付いてもらえるとは思っていなかったからだ。


「……いや、正直さ。金属スライムを倒すだけなら、簡単な方法はあるんだよな」

「聞かせてもらっても?」

「……あんたも想定してるだろうけど、私の矢に今日おじおじが持ってきた秘密兵器を引っ付ければ、後は、その矢を回収しながら金属スライムを射てば良い。それだけで、レベルは上がる」

「ええ、そのやり方は想定はしていましたよ。ドクバリを矢に付ければ、ハルカさんになら、なんとか、できるでしょうね」


 まあ、その倒し方は想定していたけど……想定外のこともあった。いくらハルカさんでも金属スライムが相手だと、そう簡単には矢を当てられないだろうと思っていた。のだが、彼女はさっきの二射を両方とも金属スライムに当てている。ハルカさんは俺の想像をも越えていくな。ちょっと恐ろしさすら感じてきたぞ。


「……でも、たぶん。そういう簡単なやり方は、おじおじの望むところじゃないんだろ? あんたは、私たちに立ち回りを学ぶことを求めているわけだからな」

「それと、素早い魔物の相手をすることに、慣れてもらいたいんです。素早い動きの相手に慣れていれば、とっさの事態にも反応できますからね」

「なるほど。そういう意図もあったんだな。そっちは私、気付かなかった」

「そうでしたか」


 ハルカさんも、なんでも分かっているわけでは、ないんだなあ。なんて思っていると。彼女が「でもよ」と本気で分からない、みたいな顔で「金属スライムってそんなに素早いか?」なんてことを言ってくる。いやほんと、末恐ろしい子だよ。


「……と、とにかく、やり方自体は皆さんに任せます。ただ、この課題で、立ち回りの大切さを学んでもらえたら嬉しいですね」

「分かった。ハルカちゃんは、サナサナとウイウイのサポートに回るぜー。でもいざとなれば私が直接、金属スライムを倒す。ここまで来て、手ぶらで帰るのは嫌だからな。んじゃ、行ってくるぜー」

「頑張ってください」


 ハルカさんはサナたちの元へ合流し、数分の話し合いの後、金属スライム狩りを再開。さて、今度は上手くいくかな? こうやって彼女たちの成長を見守るのは、楽しいものだ。


「……んじゃ、そういうわけで、次からは連携を重視していくぜー」

「うん、私もそれが良いと思う」

「分かりましたわ。三人の連携で金属スライムを追い詰めましょう」


※がんばれー

※なんとかなれー

※応援

※さあ、作戦は上手くいくか

※サナちゃんたちなら、きっと大丈夫!


 さらに数分後、広い通路に、金属スライムを発見。サナたちは同時に動き出す。お、彼女たちはそう動くんだな! 皆、頑張れ!


 サナが正面からの最短距離で金属スライムへ走る! 金属スライムが逃げようとするが、そこへとハルカさんの矢が迫る! 放たれた矢はスライムに直撃はせず、通路の床に突き刺さった。あれはわざとやったのだ。進行方向を塞ぐことで、スライムは、逃げる方向を変えようとする。が、そこにはウイカゼさんが回り込んでいる! ウイカゼさんがスライムの逃走を妨害する。


「やああぁぁ!」


 攻撃するのはサナ。彼女は、金属スライムの動きをよく見ているみたいだ。素早い攻撃が逃げ場を失ったスライムに迫る。スライムの体にドクバリが突き刺さった!


※おお!

※やった!

※やったか!?

※やったか!

※やったか禁止


「やった! やりました!」


 大丈夫、やってるよ。金属スライムは黒い塵を吹きながら消えていく。サナたちの、一仕事やりとげたような表情を見ると俺も嬉しい気持ちになる。サナたちは、金属スライムを倒したのだ。皆、良い動きだったぞ!


 さあ、この調子でやっていこう!

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