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杉並ダンジョンの金属スライム

 杉並ダンジョンにそびえる塔まで到着した。このダンジョンはここからが本番だ。塔の中は暗いので、ここは文明の利器を頼るとしよう。こいつは始めて使うから、若干不安ではある。なんとかなってほしいぞ。


「……そういうわけで、ここからは発光ドローンを使おうと思います」

「了解です。おじさん」


 俺が腰のベルトから外したのは、小型の発光するドローン。【HOTARU】とかいう商品名だ。こいつは、冒険者のダンジョン探索を補助するガジェット。確かこれも魔導ドローン、というものに分類されるらしい。開発したのは、日本の大手企業【老神重工】だったかな。このガジェットに俺はまだ慣れていないが、役に立つなら使わせてもらうぞ。


 発光ドローンを起動すると宙に浮いて、俺たちを追尾し始める。明るさもちょうど良いな。皆の戦闘に支障の無い形で、ダンジョンを進むことができる。昔は懐中電灯を使っていたのを思い出すぞ。頭に着けるタイプの懐中電灯とか人気だった。懐かしいなあ。


「塔の内部は外より暗く、死角に魔物が潜んでいることもあります。くれぐれも、気をつけて」

「「「はい!」」」


※いよいよ塔の内部の探索だな

※サナちゃん頑張れ! 皆もファイト!

※俺たちは応援してるよー

※気をつけてね

※ドキドキ


 リスナーの皆も応援してくれてる。俺がしっかりパーティの皆を守らないと! 落ち着いていけば、きっと大丈夫! 大丈夫だ。


「それでは皆さん、行きましょう!」

「「「おー!」」」


 俺たちは発光ドローンの灯りを頼りに、暗い塔を上へと進んでいく。道中、ゴブリンやホブゴブリンが出現するが俺たちの敵ではない。次々に現れる魔物を倒していきながら、順調なペースで塔の中層まで到達した。今のところ探索は良い感じ。だけど、今日の本番はここからだぞ。今のサナたちならこの先の本番も、なんとかなると信じてる。


「皆さん、ここからが本番です」

「金属スライムを倒すんですよね。おじさん」

「はい。そのために、まずは金属スライムを探しますよ。皆さん」

「はい、頑張りましょう! ハルカちゃん! ウイカゼちゃん!」


 サナの言葉に二人も頷く。皆、緊張しているな。だが、ガチガチになっているわけじゃない。それは程よい緊張のように見えた。


 さて、金属スライムは何処に居るかな? 俺は、探索系のスキルは持っていない。だけど、冒険者としての勘と、わずかな気配をたどる注意力は持っている。お……見つけたぞ……! 暗がりに隠れているつもりだろうが、俺からは逃れられない。


 発光ドローンが金属スライムを照らす。その一瞬前に俺は動き出していた。気配を殺し、瞬時に金属スライムへ近寄る。逃げようとする金属の魔物に、俺は用意していた秘密兵器、刺突剣ドクバリを突き刺す! ドクバリで刺された金属スライムは一瞬の硬直の後、塵を吹きながら形を崩していく。


※はっや!?

※金属スライムが逃げる前に一撃だと!?

※黒おじぱねえ

※かっこいい!

※やっぱこのおじさん規格外すぎるよな


 俺が金属スライムを倒したことに対して、多くの反応がコメントとなって流れていく。まあ、うん。俺もいい加減分かってきた。昔の感覚、でやってることが今の人たちには信じられないことのように見えているのだ。そんな彼らに称賛されるのは、なんだか誇らしく思えると同時に、妙な感じもある。昔は、これくらいのことで、ここまで褒められることはあっただろうか?


 さて、サナたちが大人しいな……と思っていたが、ほほぉ……サナたちの体がほのかに光っている。俺が金属スライムを倒したことで彼女たちに大量の経験値が入り、レベルアップしたようだ。こいつは良いね。


「お、おじさん! レベルアップしました!」

「ハルカちゃんも力が湧いてくるのを感じるぜー」

「金属スライム! 凄い経験値なのですね!?」


※一体倒しただけでレベルアップ!?

※経験値うめえ

※え、金属スライムってこんなに経験値旨いの!?

※こんなん狩るしかねえ!

※うおおおおお!


 サナたちも、今ので金属スライムを倒す旨味を肌で感じただろう。一体目は俺のサービス。こっから先は君たち三人の力で、たくさんレベルアップしていってほしい。


「……というわけで。この後は皆さんに金属スライムを倒していってもらいます。目標は、もうニ段階のレベルアップです」

「な、なるほど! おじさん! 私、頑張りますよ!」


 サナは、凄く張り切ってるな。ハルカさんとウイカゼさんも、やる気を見せている。皆がやる気だと俺も応援しなくちゃって気持ちが強くなる。


「そこで、これから頑張る皆さんに秘密兵器を渡しておきます」

「「「おー!」」」

「残念ながら、人数分は無いのですが、とても強力ですよ」

「「「おおー!」」」


※秘密兵器!

※お!

※なんか、凄そう

※おじさんの秘密兵器か

※金属スライムだって、やってやる!


 皆期待してるな。まあ、さっきの金属スライムを狩った時にちょい見せしたんだけど、それでは紹介しよう! 驚くがいい!


「その秘密兵器とはこれ! 刺突剣ドクバリです」

「「「お、おおー?」」」


※綺麗

※綺麗な武器だけど

※これ本当に強いの?

※銀色の針に金色の魔石がついてるのか?

※小さいけどゴージャスな見た目だね


「おじ様のそれ、刺突剣というよりは短剣、あるいは大きめの針という印象を受けますわね」

「でも綺麗だぜー」

「これを私たちに?」


 お、およ? 思った反応とはちょっと違った……かな? 綺麗と言ってもらえたのは嬉しいが、こいつはちゃんと強い武器だということも、知ってもらいたい!


「この刺突剣には金属スライム特攻の効果がついています。一撃入れれば高確率で金属スライムを倒せる強力な武器です」


 十六年前は一本、およそ一千万円で取引されてた代物だ。それを当時の俺たちのパーティで、どうにか二本手に入れたのだ。かなり貴重な代物というわけ。でも、その情報は伝えるとサナたちのプレッシャーになりそうだし、伏せておこう。


「二本あるので、皆さんに預けます。誰が持つかは相談して決めてください」

「そういうことなら、ハルカちゃんはこのまま弓にしとくぜ。その針はサナサナとウイウイで使ってくれよ」

「そういうことでしたら、私とサナさんで使わせていただきますわ」

「うん、大切に使うね!」


 そんな話をしていたら、魔物の登場だ。ホブゴブリンか。もはや、サナたちの敵ではないが、それでも気を付けなければならない。どんな強者でも慢心が過ぎれば、足元をすくわれるものだ。俺も、常にダンジョンは危険だという意識を忘れずにいたい。


「当たり前といえば、当たり前なのですが、小鬼や鬼などの魔物はこの階層にも出現します。金属スライムばかりに気を取られて、不意打ちをくらうなどということは無いように注意してください」

「「「了解!」」」


 現れたホブゴブリンは瞬殺した。サナたちと一緒に金属スライムを探す。ほどなくして、少し離れた位置に目的のスライムを発見。サナが針を手に持ち、ゆっくりと獲物へ近づく……のだが、金属スライムは近づいてくるものに気付くと、凄まじい速さで逃げ出した。こいつら、めちゃくちゃ速いんだよね。そんな魔物を相手にサナたちはどう動くかな?


「改めて...…今回、俺から皆さんへの課題は、金属スライムの討伐です。俺は最低限しか手を貸しません。皆さんが、あの魔物を相手にどこまでやれるか見せてもらいますよ!」


 ちょっと意地悪をしている気もするが、これも強くなるためには必要なことだ。冒険者は単にレベルが高ければ良いってもんでもない。それを、彼女たちは理解して動けるかな?

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