2部 スペルブースト 編 3章 スカウト 2話
部屋に戻って事情聴取の時にシルビアから言われた事が気になった。
「貴方の頭の中について何だけど」
「何、ですか?」
「貴方、脳髄膜コンピュータが移植されているわよね」
「え!何?なんでその事を知っているのですか」
「貴方の経歴を調べさせて貰ったわ、10年前にイギリスで事故に遭ったそうね」
「はい」
「その時、唯一助かる方法が脳髄膜コンピュータの移植して一命と取り留めた」
「はい、そうです」
「所で、岡本さんの学校の成績だけど、とても優秀で今年の入学式で新入生主席を務めたそうね」
「それは、そうですけど・・・どういう事ですか?」
「その好成績には脳髄膜コンピュータが働いているからよ」
「え!?それって私、テストでカンニングしているって事ですか?」
私は驚いて声が裏返った。少し脈が速い。
「無意識下で行っている事だし、貴方と貴方の脳髄膜コンピュータの相性が良かった事も有るからカンニングと言えばそうだけどそうでも無いと言えるわね」
「それはつまり・・・?」
「現在、移植に使われている脳髄膜コンピュータは『量産型』で、何らかの事情で脳に障害がある機能を補う為の機能しか持っていないって事なの。つまり、脳卒中で右半身不随になった場合、脳髄膜コンピュータを移植して動かなくなった右半身の機能を回復させるっと言った具合よ」
「つまり、私の頭に移植された物とは違うって事ですか」
「そう、貴方の頭に移植されたのは『試作型』、私の『汎用型』より前に移植された脳髄膜コンピュータよ、その特徴は、思考する事に寄って回路が自動形成される事なの」
「言っている意味がよく分かりません」
私にはいつも通りに生活しているだけで特別、頭に移植された脳髄膜コンピュータの性能がどうとか考えた事も無い。シルビアは取調室の席を立ち私の後ろに回って窓の方を見ながら言った。
「そうね、貴方に移植された脳髄膜コンピュータは岡本浩子の成長と共により高度な計算が出来る様、コンピュータ自身も性能が上がる。成長するのよ」
「コンピュータが成長する?のですか?それで、カンニングとどう言う関係が・・あっ」
「気付いた様ね、そう、貴方の脳髄膜コンピュータは既に岡本浩子、その物になったって事よ。つまり貴方が考えたり、感じた事や記憶までもが脳髄膜コンピュータが貴方の脳その物になっているの」
「それってコンピュータと私の脳が1つになったって事ですか?じゃあ、もし脳髄膜コンピュータが使えなくなったら私はどうなるのですか」
背筋が凍り付いた様に身が震え。身体が鉛になった様に重たく感じた。
「大丈夫よ、貴方のカルテを見させて貰ったわ。それに担当医から話しは聞いたわ。貴方の脳の機能は完全に回復しているそうよ、成長期だった事も影響している様ね」
「そうですか・・・良かった。もしかしてジャーメイン先生からですか?」
私は胸をなで下ろした。
「ええ、貴方の主治医だそうね?私も同じだわ」
「え?シルビアさんも脳髄膜コンピュータを移植されているのですか?」
「ええ、私も8年前に事故で脳にダメージを受けて移植手術を受けたわ」
以外だ、脳髄膜コンピュータの移植手術を受けた者がこんな目の前に居るなんて。シルビアは再び椅子に座り話し始める。
「所で、姉さん・・・ジュリアンから預かった貴方の治癒魔法のプログラムは自分で作ったと言ったそうね」
「はい、分からない所は自分で調べながらですが」
シルビアは又暫く考え込み、一度、部屋を出た。
「あの?」
「まあ、少し待ってなさい」
部屋に残って居た小河が言った。2~3分してシルビアが小河に声を掛け私に1人になった。
扉の向こうで小河が慌てた様に大きな声を出し、シルビアがそれを制止している様子が覗えた。
すると2人は部屋に戻って来た。
「岡本浩子さん」
「は、はい」
シルビアは急にかしこまった表情で私の前の椅子に座って向かい合った。
「貴方が作った『ナイチンゲール』と言ったわね?その魔法のプログラムには、不正アクセスで入手したプログラムが使用されている事が分かったの」
「ええっ」
驚きでまた声が裏返った。
「それはどういう事ですか?不正アクセスって私何時そんな事をしたのですか?そもそも不正アクセスってハッキング?の事?そうなるとどうなるの?」
「落ち着いて聞いて、これから説明するわ」
シルビアは落ち着いた様子でゆっくりと話し始めた。
「まず『ナイチンゲール』と言う魔法は何時作ったの?」
「小学6年の秋頃だったと思います。その頃にはほぼ今プログラムに近い形でした」
「プログラムの開発期間は?」
「ん~1ヶ月位だったと思います。一番難しかったプログラムが入手出来たので後は私のイメージした計算式を打ち込んで作りました」
「その入手したプログラムは何処で入手したの?」
・・・そうか、私、今、尋問されているんだ。
「あの、これって私・・・」
シルビアは背もたれにもたれ一息を付く。
「そうよ、その入手したプログラムこそがハッキングされたプログラムよ。でも当時貴方は未成年で12歳だから、刑事責任に問われないわ、ただ少年院送致の可能性も有るのだけどそれも証拠不十分で問えないでしょうね」
「でも、今私が喋ったら・・・」
「自白・・・した事になる?」
私は黙って頷いた。すると、シルビアの顔に笑みが浮かんだ。
「?」
「大丈夫よ、私はただ事実を知りたいだけ、自白供述を撮るつもりは無いわ」
「でも」
シルビアは机に乗りだし私に顔を近づけた。何だかとても良い臭いがするが香水のにおいでは無い。
「貴方からのここまでの話しで分かった事はね、何処からデジタル魔法の起動式のプログラム。所謂基幹プログラムを入手してあの治癒魔法を完成させたって事だけだわ、その基幹プログラムを入手先が、キングローズ本社、つまりイギリスからじゃ無かったかなと思って」
「思い出しました。そうです。何故かパスワードを要求されて、なんか怪しいと思いましたけど対して難しく無かったです」
それを聞いたシルビアが大笑い始めた。
「あの・・・シルビアさん?」
「いやーごめんなさいね」
まだ肩が震えている。そんなに面白い事を言ったつもりは無いのだけど。
「そこが、デジタル魔法を開発した会社よ、当時からハックやクラック攻撃に晒されていたのだけど、貴方が最初で最後のハッキング成功者よ」
「え!?私?」
シルビアはまだ笑っている。それを必死に堪えている。
「今ね、そのキングローズ社だけど、ドンドン巧妙化していくクラック攻撃に晒され続け、最近ではデジタル魔法ウイルスが出回り始めているみたいなの。そこで貴方のそのハッキング能力を使ってワクチンプログラムを開発して貰いたいの。もちろん報酬ははずむわ」
「買収・・・ですか」
するとシルビアはさらに大笑いする。
「そ・・・そうね、でも少し意味合いが違うわ」
「と・・・言いますと?」
「貴方が作ったあの魔法の基幹プログラムのバージョンは4.0100、今は5.11001、つまり1世代ほど昔になるのだけど、公開されたバージョンとは別の方法でプログラムの脆弱性の対処がしてあったの。まだ全ての解析が済んでいるわけでは無いから別の問題が有るか分からないが、その技術力が欲しいの」
「でも私なんかが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ、学校にはアルバイトって言えばいいわよ、貴方の学校ではアルバイトの許可が下りるかしら?」
「多分、大丈夫だったと思います」
「なら、決まりね。協力をお願いするわ」
「はい、お役に立てるか分かりませんが頑張ります」
私は不安半分、興味半分な気持ちを抱きながらシルビアに返事した。
「あ、そうそう、貴方のコンピュータ技術は既に能力と言っていいレベルよ」
「え、何がです?」
唐突に話始めるシルビアにピンと来ていない私は首をかしげた。
「何を言っているか分かっていないようね」
シルビアはため息を付き「あのね・・・」と切り出した。
「あのね岡本浩子さん、無暗にインターネットで不用意にハッキングしているとコンピュータウイルスに感染するわよ」
「コンピューターウイルス?何ですか?話は聞くのですけどウイルス感染した事が無いのですけど?それとハッキングって何ですか?」
「ハッキング?そうね、会社や企業の機密情報を見たり改竄する事ね」
「機密情報って・・・あっさっき言ってたデジタル魔法の」
「そう、基幹プログラムは最重要機密の情報よ」
「でも防壁なんて有りませんでしたよ」
「え?そんな訳は無いわ、私が作ったのよ」
シルビアは戸惑う
「リルビア、落ち着きなさい」
聴取を取っていた小河がシルビアに向かい声を掛けるとシルビアは我に返った。そして頭を右手で抱え呆れた。
「貴方、確か7歳で脳髄膜コンピュータを移植したのよね?」
「そうなりますね」
私はシルビアの言葉にそう返事をした。
「これだけの技術が有りながら、自覚が無いのは無理ないか・・・」
シルビアはうろうろ歩きながら独り言を言っている。すると振り返り私の目の前に立った。
「分かったわ、貴方のプログラミング技術を見ながらだけど、ハッキングに付いても今度レクチャーして上げるわ、それとコンピューターウイルスに対する防衛も追々教えて上げる」
「あ、はい、お願いします」
どういう事を言っているのか私にはよく分からないが何故か私にとって有益な事だと言う事は分かった。
この物語は3人の主人公がそれぞれの目線から複数の事件を解決して行きます。
そのため、物語への貢献度の差によって事件を解決しないままリタイアして居る主人公などが出てきます。
そうなると他の主人公がその事件を解決させて行くという展開になります。
3人分読まないと事件の全貌が見えてこないのです。
そういう風に物語を作っていますのでよろしくお願いします。




