2部 スペルブースト 編 1章 私の魔法 2話
多香子が目を丸くしている。救急箱の置いて有った棚の付近で何が起きたのか分からない様な表情の竹田先生ははっと我に返り救急箱を持ったまま私の所迄走ってきた。
「本当に何ともないの?」
竹田先生は千恵美に救急箱を押しつけ私の左手を掴むと裏返したり顔を近づけたりして傷口を調べている。
「凄い、本当に傷が消えてる。痕も残らずに」
その様子をのぞき込むようにして見ている千恵美と直魅も驚いている。
他の生徒達も竹田先生の悲鳴や多香子達の驚いた様子に皆気が付きざわつき始めている。そんな時、竹田先生は冷静さを取り戻して私に質問をした。
「こんな魔法、どうやって作ったの?」
「どうやってって・・・小6の時にデジタル魔法に興味を持ってプログラムを組んだだけです」
「小6でここまでの魔法を?」
「はい、分からない所はインターネットで調べなら作りました。今でも少しずつ修正を加えていますが」
「基本的なプログラムは殆ど変更が無いって事ね?」
「そうです」
にわかには信じられないと言う表情をしているが、竹田先生は質問を続けた。
「そう言えば、あの魔法陣って」
「ナイチンゲールの事ですか?」
「魔法陣の模様その物を肖像画や画像にする事なんて聞いた事が無いけど」
「え、そう何ですか。普通に作りましたけど」
「それに第1魔法陣が現れなかった様だけど」
「あの螺旋魔法陣の事ですか?」
「そう、通常は必ず第1魔法陣が表示された後でさっきの様な模様が出るのだけど・・・ちょっとそのプログラム見せて貰える?」
「いいですが、見られるのですか?」
「どういう事?」
「あのパソコンの中に私が組んだ時に使ったアプリが入って居なかったのですが」
「岡本さん、一体何で魔法を作ったのですか?」
「C++です」
「ええ!?デルタでもデジタルマジシャンでも無くC++で?どうやって?」
「それはさっきも言いましたがインターネットで調べながら・・・・」
何だか話しがかみ合わない気がする。私のやり方は何かおかしいのだろうか?
「とりあえず、今の魔法のプログラムファイルを見せて貰える?」
「ええ、良いですけど」
私達は再び研修室に戻り端末に入れてあるプログラム『ナイチンゲールA』をグループのノートパソコンにコピーした。
「これがさっきの魔法のデータ?」
多香子がファイルのアイコンをのぞき込んでいる。
「ナイチンゲールA?それよりも何このデータ量、5Tbもあるよ」
「その内3Tbは共通のプログラムだけどね、それより、アプリで私のファイルを読み込めるの?」
私はパソコンのデジタル魔法作成アプリの『デルタ』を起動させた。アプリ左上の『ファイル』アイコンから『開く』を選択するが私の作ったファイルは表示されない。そこで全てのファイルを選択しファイルを表示させ読み込ませてみた。
するとファイルの解凍が始まり3分程するとファイルが表示された。
「開いた!」
さすがに5Tbも有るデータがスクロールされるだけでさらに3分掛かった。
「凄い量ね」
「そりゃ5Tbも有るからね」
千恵美の呟きに私は何となしに返答した。
「これがさっきの魔法のプログラムなの?」
「はい、これは私の作ったプログラムの1つです」
「これの他にまだプログラムが有るの?」
「はい、この魔法はAからE迄5つプログラムがあります」
「さっきの他にまだ4つもプログラムが有るの?」
竹田先生は驚いている。
「ねえ、他の魔法もこれくらいのデータ量が有るの?バグは大丈夫なの?」
「うん、バグ取りは十分に出来ている筈よ、実用までに3年掛かっているんだし」
「だから、端末にファイアボールしか入れられなかったのね」
「うん、それでこれからファイルの圧縮をしていこうと考えてるところなの」
「それも全部治癒魔法?」
「そうだね、今のは怪我でも身体の表面だけを治癒する魔法、骨が折れたときは又違う魔法を使うし、体力の回復のみの魔法も有るし病気の治療する為の魔法も有るよ」
「それもこんなに重いんだね」
多香子は難しそうな、ちょっと苦笑いを浮かべていた。
「でも本当に凄いね、デルタを使わずC言語で魔法作っちゃうなんて」
直魅はスクロールされる画面を見て唖然としていた。
「そこなのよ、デジタル魔法作成アプリでもより高度な魔法が作れる分、難しいって敬遠されるデルタを使わずC言語でこんな凄いデータ量でここまでの魔法を作れるなんて考えられないわ」
「これでも随分圧縮したのですけど、ここからなかなか容量が減らなくて」
竹田先生は今まで見てきた常識と違う私が作ったプログラムを眺めて訊いた質問に対して答えになっていないと思いつつ言葉を返した。
「何?何?何が有ったの」
竹田先生を含め私達5人が集まってずっとなにやら話しをしている様子を野間君と井伊君の2人が探りを入れてきた。気が付いたら研修室が随分騒がしくなっていた。
「はーい、みんな静かにー」
竹田先生は教卓の前まで駆け寄り手を叩いて私語をしている生徒達を制した。




