1部 12芒星魔方陣 編 15章 相生港の攻防 1話
いよいよクライマックスです。
女の持っていた板は“八卦鏡”風水で方角を知る為に使われ、魔除けなどの意味がある装飾品だった筈がそれを武器にしている。
一方、ジュリアンと女は鍔迫り合いの最中に何か話しているようだった。
「お前が、私の術を壊した張本人ね」
女はそう言うと八卦鏡が光った。ジュリアンはバックステップであっと言う間に10m程距離を取った。
八卦鏡の中央に有る鏡から光りの刃が飛び出しジュリアンを襲う。その刃の殆どを交わし残りは刀で弾くと刀身から炎が現れそのまま炎の玉を4発撃った。
女はそれを避けて立ち上がった。
ジュリアンも刀を振り下ろして立ち止まった。
「噂には聞いていたけど、まさかこれほどとはね、ジュリアン・R・ボールドマンってお前の事だろ?」
女は言った。
「あら、貴方の国にまで私の噂が届いているなんて光栄だわ、だけど、私は貴方の事を何も知らなくてね、名前くらい教えて貰えるかしら?」
「紅妲己、これから死ぬお前に教えても意味は無いけどね」
「随分と高貴な名前ねー、でも私もこれから死ぬ貴方の名前を知った所で意味は無いわね」
つまり紅妲己と言う女はジュリアンに対し『殺す』と宣言したのだが、ジュリアンも『死ぬのはお前だ』言い返したのだ。
ジュリアンは刀を持ったまま何かを唱えている。
紅妲己も同じように何か唱えている。
先に均衡を破ったのはジュリアンだった。
刀の前に魔法陣が現れ黒い煙を吐くジュリアンと同じ背丈のある猫が現れた。よく見ると尻尾が2本生えている。
そして猫は紅妲己に飛びかかった。紅妲己は八卦鏡を地面に置くと中央の鏡から触手が伸び猫に巻き付き動きを封じてしまった。猫はもがき口から炎を吐き出し触手を振り解こうとしているが一層強く巻き付き絡み付いてくる。
一方、紅妲己は腕に仕込んであったナイフを取り出すとジュリアンに向けて振り回すと、刃先から透明な筋が見えジュリアン諸共後ろのコンテナの壁を切り裂いた。
ジュリアンは走って距離を取っていたがすぐにその場でバナナの皮を踏んだような格好で仰向けに仰け反り倒れ、そのままグルグルと回りながらその後も繰り返されるナイフの太刀筋を避け続ける。
「今のは何が有ったの?」
私はこの状況で何も出来ずに居た。
「あの女のナイフから鎌鼬が出ている。避けないと真っ二つよ」
御門芽は襲いかかるキョンシーに斬りつけながら応えた。
紅妲己の攻撃の止んだ一瞬の間に跳ね上がる様に起き上がり刀身をくるりと返った。
「ハイル!」
持っていたナイフに何かが刺さりその衝撃で紅妲己はナイフを落とし、地面に落ちるまでに刃が粉々に砕け散らばった。
一方の御門芽は目の前で回転する式神から緑、赤、黒、黄、青の光を放っている。
「はあ!」
御門芽が薙刀を振ると赤い式神が強く光り炎が噴き出すと薙刀に纏い付き炎の刃となってキョンシーを斬りつけた。
「シャ・ノワール!!」
ジュリアンはいつの間にか触手に掴まっているクロネコの側に来ると、既にトラ位の大きさからさらに大きな姿に成り、黒猫の全身から炎があふれ出るように吹き出し出て触手を焼き払い、また触手を伸ばそうとしている八卦鏡は電光石火の勢いで近づいたジュリアンが刀を突き壊した。
「ふん!」
紅妲己はポケットから何か小さな玉を取り出し口に入れ飲み込んだ。すると紅妲己の周囲の瓦礫が漂うように浮かび上がり、無数の瓦礫が槍の形に変形し紅妲己の周囲に集まり始めた。
それを見たジュリアンは顔色を曇らせた。そして周囲を囲むように無数の槍がジュリアンを襲った。
ジュリアンの居た場所は1m程の瓦礫で出来た槍の密林となっている。
「ジュッ・・・」
私は思わず声を出した。が、すぐに止めた。紅妲己に私はまだ補足されていない為でもある。
ジュリアンはシャ・ノワールが盾になっていたため無事だった。
「お前、強いわね」
ジュリアンはこの状況で余裕を見せる。しかし、私にはジュリアンが随分と汗をかいて粗く呼吸をしている事から相当消耗しているとはっきりと分かる。
「これで生きてるなんて、ボールドマン家の血統に恵まれただけの人間じゃ無い事は認めてあげるわ」
紅妲己は2m近く有る槍を掴むと信じられない程の力で投げつけた。ジュリアンは反射的に槍を避けるが私の目の前を銃弾の様な速度でかすめ後ろでキョンシーと戦っていた御門芽の左肩に命中した。
「ぎゃん!」
御門芽は槍の勢いで前のめりに倒れ悲鳴を上げた。
「御・・・」
私は言葉を失った。御門芽の左肩から腕が落ち転がっている。
「御門芽さん」
「この程度・・・平気よ・・・」
「愛!」
ジュリアンは振り返ろうとする。
「ジュリ姉はそいつを倒してください。ここは私が食い止めますから」
「でも」
「いいから、早く!」
「御門芽さん、直ぐに治療します」
私は落ちた左腕を拾うと御門芽の側に寄り添い“ナイチンゲールB”を実行する。
私の足元に魔法陣が描かれそこから包帯が伸び落ちた腕と御門芽の肩に包帯が縫合する糸になって繋がり御門芽の腕に縫い合わされた。
「今は繋ぎ目に痕が残りますが骨や血管、神経は繋がりました。元通りに動く筈です」
「貴方、一体何者?」
「ただの学生です」
「分かった。今はそういう事にしておきましょ」
御門芽は最後の一言に力を込めると人の形をした式神を取り出した。
「恩!」
式神はただ黒く目も口も無い弁慶の様な人になると体中から刀を取り出しキョンシーを滅多斬りにした。そうすると、御門芽の目の前で回っていた。赤い式神と緑の式神の光が強くなると火と風が巻き起こり斬りつけたキョンシーに当たると火炎放射器の様に炎に包まれ全身を焼き尽くすと燃えながら動きが止まり炎が消えるとその場に倒れた。
「しゃぁぁ!後3匹!」
御門芽は吠え残りのキョンシーに薙刀を向け、残ったその内の1体に斬りかかった。
ジュリアンは紅妲己と戦いながら足元を気にしている様だった。そこへ御門芽が相手をしていた1体のキョンシーがジュリアンを襲ってくる。
しかしそれを上手く交わしながら紅妲己へ攻撃を繰り返していた。
2017,6,22, 御門芽愛を恵と書いている部分が見つかり修正しました。




