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1部 12芒星魔方陣 編  14章 ジュリアンの魔法 1話

 ジュリアンは戸惑った表情で訴えた。私はジュリアンを見上げた。

「ごめんなさい。私も連れて行って欲しかったの」

「何言ってるの!ここは危険よ直ぐに・・・」

 声を張り上げるジュリアンは「はぁ」と深いため息をついた。

「ここは何処ですか?」

「ここは相生港のコンテナ埠頭よ」

 相生港は学研都市が出来た今でも旧地名を採用している。昔はただの小さな漁港だったが、学研都市の建設を機に海底を掘削するなど大規模な造成が行われ今の港になった。

 規模は旧横浜港、神戸港に次ぐ3番目の規模になっている。

「こうなったら、貴方にも手伝って貰います」

 そう言った途端にジュリアンは私をコンテナの影へ突き飛ばし、そこまで私の居た場所に幾つもの銃弾が着弾した。

 私は体を起こしジュリアンの居た方を見る。

 ジュリアンも反対側のコンテナの影に身を伏せていた。

「本当にもう・・・やってくれるわね」

 ジュリアンは膝を落とし右腕をだらんと垂らしそこから血がしたたり落ちていた。

「ジュリアンさん」

 私は慌てて声を出す。私のせいだ。

「動かないで、狙い撃ちされるわ」

「でも、それじゃあ・・・」

 コンテナから身を乗り出すと目の前を銃弾がかすめた。これだとジュリアンに応急治療すらできない。

 ジュリアンはベルトに掛かっていた刀を外すと股に刀の鞘をはさみ左腕で刀を抜き刀を振り抜いた。

「ジュリアンさん、回復魔法は使わないのですか?」

「ヒーリングは隙が大きいからここでは使えないわ、それに私は得意じゃ無いから魔力を余分に消耗してしまうわ」

「でも、それだと・・・」

「こんな事は百も承知よ!」

 左腕で刀を地面に刺す動作をすると、ジュリアンを中心に白い魔法陣が現れそこから光りが立ち上った。

「This call undine!!(出よ ウンディーネ)」

 刃先が地面に触れた途端にジュリアンの前に魔法陣が現れ白い羽衣を着た美しい女性が現れ、頭上にどこからともなく水が集まりの無数の槍が出来ると冷気を漂わせながら氷り着いた。そして氷りの槍が飛び出したと思った途端に槍の先に白い魔法陣が現れ消えていった。

 すると「ずーん」とも「ドーン」とも聞き取れる鈍い音と男の悲鳴が聞こえた。それを聞いたジュリアンはさらに次の詠唱を始めた。

「This call sprite!!(出よ スプライト)」

 次にハンドボール位の大きさの光の玉が全部で15個現れ周囲へ飛んでいった。

「とりあえず、危機は脱したわね」

 コンテナを背に座り込んだジュリアンの所へ私は駆けつけ怪我をしている右腕を診た。

「出血が酷い、このままだと」

 私は直ぐに端末を取りだして“ナイチンゲールA”と“ナイチンゲールB”を同時発動させた。Aは怪我の治療とBの内部組織の修復をプログラムしてある。

 光の包帯が怪我をしている患部を覆うと傷口が痕も残らず消えていきそれと同時に傷口に光りの帯が入り込んでいった。

「この魔法は一体」

 消えていく傷口を見ながらジュリアンが私に聞いた。

「私が作ったんです。『ナイチンゲール』と呼んでます」

「どうやってこんなプログラムを作ったの」

「作ったのって全部私1人でパソコンを使って・・・。でも分からない所はインターネットで調べました」

 ジュリアンは少し考えてから私に何かを言おうとしていると。突然、私達の後ろでコンテナが吹き飛んだ。

 高さ3段に積み上げてある40フィート海上コンテナの上2段が2列同時に崩れ落ちそこから大型のパワードスーツが尻餅を付くように倒れる姿に私達は声も何も出なかった。

「パンツァースーツだって?戦争する気?」

 ジュリアンは戸惑い気味の声を上げた。

「これは?」

「恵、大丈夫かしら」

 私は状況を把握できていない。そして、ジュリアンは私の声は聞こえていない様だった。

 ジュリアンは立ち上がると倒れたパンツァースーツと呼んでいたパワードスーツの所へ向かい。振り返り2・3歩踏み込み刀を抜くとそこから衝撃波が現れる。その風圧が周囲を巻き込みジュリアンの後ろに居た私の所まで突風が襲った。

 衝撃波は私達に気が付いて振り向いたパンツァースーツの右腕を切り落とすと、吹き飛ばされた方向から無数の火の玉がパンツァースーツを襲った。

「恵、やるじゃない」

 ジュリアンは薄ら笑いを浮かべ刀を振り上げた。

 刃先に小さな氷りの塊が出来ると直ぐに焼け付いたパンツァースーツに投げつける。

「ウンディーネ!」

 ジュリアンは声を張り上げた。再びジュリアンの前にウンディーネが現れ氷の塊を作りながらパンツァースーツへソニックブームを放ちながら飛んでいった。

 氷りの塊はどんどん大きくなりパンツァースーツに当たる頃には鋭い槍の形になっていった。

 熱で脆くなったパンツァースーツはアイススピアで粉々に砕けて散らばると小さな爆発が幾つも起き残骸だけが残った。

「恵、そこに居る?」

 ジュリアンは吹き飛ばした先に居るであろうその人を恵と呼ぶと崩れたコンテナの影から1人の女性が出てきた。

「御門芽さん?」

「まだ3体残っているわ」

「だったら早くここから移動するわよ」

 ジュリアンは刀を鞘に収めると右手に御門芽さんを左手に私の右手を持ち走り出した。

「うおぉぉぉーーー」

 ものすごい早さで走るジュリアンにまるで漫画みたいに私と御門芽さんの脚が浮き引っ張られている。そのスピードに私は思わず悲鳴を上げた。

 パンツァースーツを破壊した現場から200m程離れたガントリークレーンの前に着いた。

「ここで迎撃する訳ね」

「そう、恵、トラップを」

「オーケー」

 御門芽は式神を投げ放つとそのまま飛んでいった。


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