1部 12芒星魔方陣 編 13章 また別の包囲結界 2話
その女性はまるでギリシャ神話のアテナみたいな綺麗な女性が立っていた。
白いドレスワンピースに銀でできた胸当てと手甲、ハイヒールのブーツを履いていて、こういう姿に似合う杖の換わりに銀で装飾された日本刀を腰のベルトからつり下げている。
「だから、『待ちなさい』と言ったでしょ」
風になびく赤く長い髪をなびかせ女性は私に忠告した。
「すみません」
涙でぼやけた目を拭って再び見上げた女性はジュリアン・・・。確かオズ・ローズの店員だった筈。
「この結界魔法陣は生き物と同じよ、意志を持っているわ、うかつに手を出すとさっきのようになるわよ」
「ジュリアンさん、どうしてここへ」
「12芒星魔法陣に欠陥が有るから次の可能性を調べていてこの術式を見付けたのよ」
「でも、これって学研都市の周囲を囲っているのでしょ?何故、私の居るここだと?」
ジュリアンは笑って見せて。
「魔法の痕跡を追いかけたの、貴方だと分かったのはここに来てからだけどね」
「魔法の痕跡?」
「今、この街で何が起こっているか分かっているわね」
「ええ、12芒星魔法陣とあちこちでテロが起こっているのと、この結界」
「12芒星魔法陣の設置計画は今も継続されているわ、異形魔法陣として進んでいるわ」
「貴方、一体、何を」
私はジュリアンに向かい合いしゃがみ込んだまま右手を刀の柄を握った。
「大丈夫よ、異形魔法陣に付いては既に術者の排除に妹が向かったわ、それよりも相手は2重、3重の手を講じている。よほど学研都市が邪魔な様ね」
「それで、この結界を壊しに来たのですね」
「そうね」
すると、ジュリアンは白い鞘から刀を抜き、地面に有る光の帯に突き刺した。
光の帯はもがく様に暴れている。ジュリアンは何かごもごもと言った後、突き刺した刀に両手をかざした。
すると、刀を刺した所に緑色の魔法陣が現れ回転しながら蛇のように動く白い帯に触手を伸ばし食っている。
「術式の逆算に成功。古代インドの宇宙観より想像された蛇。無から創世されまた無に帰るヴェーダから引用した術式・・・」
ジュリアンはそのまま意識を集中させ詠唱を始めた。
すると、地面に刺した刀を中心に今度は違う魔法陣が現れそこから黒く透き通った物体が沸き上がるように現れた。
胴体は黒く赤に輝く斑点とギロリと見開く青い一つ目、臭いも無いのに悪臭を放っていると錯覚させる程気持ち悪く恐ろしく不気味な物体が現れ大きな口を開き、光の帯を食べ始めた。光の帯はどこから分からないが「ぐおー」とうめき声を上げながら激しく暴れると、帯は怪物に巻き付き締め付けようとするが、怪物は何事も無かった様に細い触手で掴みまた食べ始めた。
私は余りの気持ち悪さに卒倒しそうになる所をジュリアンが私の肩を持って支えた。
「大丈夫よ、私達に危害は加えないから」
5分程、怪物はその場から動かずに光の帯を食べきるとそのままジュリアンの側に近づいた。
ジュリアンは地面に刺してあった刀を抜いた後、一歩前にでて両手を合わすと、その怪物を一気に飲み込んだ。そして、何事も無かった様にジュリアンは刀を鞘に収めた。
「終わったの?」
私は四つん這いの姿勢のままジュリアンを見上げながら聞いた。
「まだ、終わってないわ」
「でも、これで結界の脅威は去った訳でしょ?」
「術者が残っている。その人達を排除しないとまた繰り返されるわ。それに12芒星魔法陣もまだ生きているわ」
「じゃあ、どうするの?」
「術式を逆算すると分かるのだけど、この術式は何処かに発生源の術式が有るわ、そこを破壊しないとまた再生しちゃう」
「こんな事を繰り返しても無意味と言う事ですか?」
「そういう事になるわ」
ジュリアンは左目にレンズの付いたインカムを耳に掛けると会話を始めた。
「恵、そっちの方はどうなっている?」
『―今、オートマトン5体の攻撃を受けて動かないよ―』
「分かったわ、直ぐに救援に向かうから位置情報を貰えるかしら?」
『―分かった。直ぐに送るね―』
それからジュリアンはスマホを確認している。それから電話を掛ける。
「リチャード。座標を送るわ、場所を教えて」
『かしこまりました。ジュリアン様』
電話を切るとすぐにメールを送っている。そして1分も経たないうちにジュリアンの携帯電話が鳴った。
「何処?」
おそらくさっき電話を掛けたリチャードと呼ばれる人だろう。
「ええ、分かったわ。直ぐに飛ぶわ」
携帯電話をしまうと突然ジュリアンの周りにブラックホールの様に黒い球体ができた。私は思わずジュリアンに飛びついた。
「ちょっと」
ブラックホールはそのまま私とジュリアン飲み込んで消えていった。
ついに、第1主人公、シルビアの姉「ジュリアン・R・ボールドマン」登場です。




