1部 12芒星魔方陣 編 5章 魔法の片鱗 3話
ジョイタウンを出てライトライナーの駅に向かう途中で織田さんが言った。
「あれ、なに?」
「え、どこ?」
ビルの一階の改装中の店舗から小さな煙が上がっていた。
「何かしら」
「火事?」
芦田さんと多香子が煙の出る方へ近づいていく、私も二人の後に付いていった。織田さんは後ろで様子を見ている。
「ねえ、警察か消防に通報した方がいいんやないの?」
私は前を歩く二人に言った。
「何言うてんの、こんな面白そうなこと無いやん」
芦田さんの方言で私も方言に成っている事に気付く、が今はそんな事どうでもいい。
店の中はテーブルや椅子が壊れ散乱している。
「何、ここ?」
見せの奥には何か壊れた円筒形の冷蔵庫みたいな物が横たわっている。
「これって確か、機械人形?」
織田さんが不安そうに身を縮める。
「何でこんな所にオートマトンが居るの?」
「そんなの知らないわよ」
私の疑問より多香子の好奇心の方が強いらしい。
「こっちよ」
多香子は店内に在ったドアを開け中に入ろうとしている。
「ねえ、止めようよ」
扉の奥へ入ろうとする多香子と芦田さんを見て慌てて織田さんが私の後ろに走り寄って二人を制止しようとした。
「大丈夫よ」
多香子は言うことを聞かない、そうしているうちにみんなドアの奥に入ってしまった。
「何、これ」
薄暗い部屋床一面に何か模様が描かれている。多香子と私は床の模様に近づいた。芦田さんと織田さんは部屋の周りを確認している。
「何だか嫌な予感がする」
模様の中心に「ⅱ」と描かれ周りに方向と位置を表しているように描かれている。
多香子がその模様の中心に立ったとき地面 の模様が赤く光りはじめる
「危ない!」
私は声を張り上げた。その赤く光り始めた模様を中心にして周囲が爆発し始めた。私は多香子の方へ飛びつき模様の外へ押し出した。
魔法陣から炎が噴き出し私達は吹き飛ばされる。体を起こしたとき周囲に瓦礫が散らばっていた。
「浩子、大丈夫?」
「ええ、私は大丈夫、多香子は?」
「私も大丈夫、千恵美と直魅は?」
私は体の上に降り積もった埃を払いながら二人が居た所を見回した。二人とも倒れているが、織田さんの方はすぐに体を起こしていた。
「織田さん、大丈夫?」
「ええ」
「私も大丈夫よ」
芦田さんも伏せたままの状態で答えた。
「みんな真っ黒ね」
私は煤で真っ黒になったみんなを見て言った。しかし何か違和感を覚える。爆発で床に書いた模様は何も傷も汚れどころか模様の上には何も落ちていない
「誰!」
多香子は店の何も無い店舗に向かって言った。
「誰か居るの?」
私は多香子に聞いた。織田さんと芦田さんも二人の話を聞いて警戒している。
「みんな、戦闘の準備して」
多香子は私達に言った。そして多香子はスマホを取りだして画面を操作し始めた。二人もデジタル魔法の端末やスマホを取りだして画面を操作している。
「え?魔法使うの?」
「この状況は何かが有るの確実でしょ?」
多香子は完全に臨戦態勢に入っている。私はデジタル魔法の端末を鞄から取り出した。多分、攻撃魔法が良いのだろうと思ったが『FIREBALL DRAGON』を選択した。
「岡本さんはこの前使った以外に魔法を使ったことは有るの?」
織田さんはワンドを持って壁際に潜みながら私に質問に私は首を横に振るった。
端末をポケットに入れて織田さんの後ろに並んだ。
「・・・魔法陣が見つかったみたいだな」
男の声に四人は息を呑んだ。見つかるのは時間の問題だったからだ。多香子はドアの後ろに立ちステッキを構えて待機し織田さんと芦田さんがドアの両側から距離を取った。ジリジリを足音が近づいてくる。引き金の引く音が聞こえた。それを聞いて多香子は魔法を発動させた。しかし。
鳴り響く銃声と共にドアに幾つもの穴が空く。
多香子は後ろに仰け反るようになった。私は思わず多香子の前に飛び出した。
そんな中、私の頭の中は瞬時にプログラムがフラッシュの様に湧いた。
――ENTER――
私はいつの間にか穴の空いていくドアと多香子の間の配置になる。銃撃が止んだ。
「岡本さん!」
「浩子!」
多香子が私の名前を叫んだ。私は多香子の方へ向かって倒れ込んだ。多香子はステッキを構えた。ステッキの前で大きな青い魔法陣が現れた。「THIS CALL FIRE BALL!! ((DG3Q/E25R*UN108+(27√y+386(389)*√U2:25VE-38)=CE99XJE ENTER」と前に見た螺旋状の魔法陣が現れてから消え、二つ目の魔法陣から放電機が現れ火の玉を撃ちだした。
ドアを瞬時に粉砕して火の玉は飛んで行き店舗の中で爆発した。
「浩子!」
「岡本さん」
織田さんが私の体を抱き起こした。
「ええ、大丈夫」
私は体を起こし自分の体を見回した。銃で撃たれた筈なのに何処にも怪我どころか服に破れも穴も空いていなかった。
「どういう事?」
「何かしたの」
多香子と織田さんが聞いた。
「分かんない、無我夢中だったから、でも何か魔法を使ったと思う」
「それよりもここに居ると危ない」
織田さんが訴える。魔法陣と言っていた模様は未だにずっと青い光を発し続けいる。
「この模様、何か嫌な感じがする。破壊出来ない?」
「どうやったらこれ、壊せるのかしら」
織田さんは何となく魔法陣に触れると、突然その場で止まった。
「織田さん?」
私はそのままふらふらと歩く織田さんの肩を持った。
「え、あれ、私?」
「織田さん、どうしたの?」
「どうして、私ここに居るの?」
「千恵美、しっかりして」
芦田さんも心配そうに声を掛けた。何だか分からないけどとても混乱している。あの魔法陣?
私も恐る恐る魔法陣に手を触れた。
――LOADING――
突然、頭が割れそうな頭痛と共にまたプログラムがフラッシュの様に沸き上がった。
――ENTER――
と、同時に魔法陣はガラスが割れるように飛び散り破壊された。
「え?何?」
そうしているうちに店舗の方で何か足音がする。
「まだ居る」
芦田さんが吹き飛んだ扉から店舗を見て怯えた様に言う。店舗の入り口付近にロボットの様な人影が有った。
「何なの、あれは?」
「そんな、私の魔法よ」
「そんな事より、早く!」
芦田さんが相当怯えている。多香子はまたステッキを構えてファイアボールを発動させた。
ドーンと響く炎の玉が直撃し再び立っているロボットを襲った。ロボットの左肩部分が溶けて左腕が落ち全身にスパークと煙が上がってその場に倒れた。
「さあ、早く!」
私達は店舗の裏口からビルを出た。外に出るとサイレンが鳴っている。そのまま300m程走った。
階段を登り高速道路の高架下の公園まで来た四人は息を切らしながら膝に手を付いた。
「みんなドロドロの汗だくね」
織田さんが息を切らしながら笑った。
「ほんまねー」
多香子も同じように笑った。そうしたら芦田さんが突然、大笑いして両手を地面に付けた。




