1部 12芒星魔方陣 編 5章 魔法の片鱗 2話
そんな西エリアでビルとビルの間に挟まれた日当たりの悪そうな場所にそのお店があった。
「オズ・ローズ?」
「そ、ここよ」
私の質問に織田さんが答えた。店の入り口はツタで覆われた洋館で周りの近代的な建物の中で明かに違和感の有り、いかにも『魔法アイテムを扱ってますよ』と云わんばかりの店構えだった。
店内には銀で細工された髪飾りやピアス、リングなどが沢山陳列してあった。
「織田さん、これは?」
私はみんなが見ている反対側の壁に立て掛けてある物を指した。
「これ?なにかな」
「それは『スタッフ』よ」
店の奥から女性の声がした方を見ると赤い髪の綺麗な女性が現れた。私は思わず見とれてしまった。スラッとした体型に腰までの赤い髪に透き通るような青い目、体型が分かる細身の白いワンピースを着ている、まるでドレスみたいな、でも決して派手でなく落ち着いたデザインの服だった。
「スタッフ?どうして使うのです?」
銀で飾り付けされたそのアイテムは1.2mから1.5m位は有り、先端に羽根の形の有る物や鳥の頭を模った物とかが10本有った。他に50cm位の同じく銀の装飾がされたアイテムがあった。
「これ、良いかもー」
多香子がそれに気付いてどれが良いか品定めを始めた。
「これって、多香子が使っていた『杖』っていうやつ?」
「うん、正確には『ワンド』っていうの魔法の集中力を上げてくれるアイテムなの」
「貴方、何処の学校?」
「常徳です」
「デジタル魔法ね、タイプと属性は?」
「炎属性です」
「そう、それならこれはどうかしら」
赤い髪の女性は並んでいる一つのワンドを手にとって多香子に渡した。ワンドの先が複数に枝分かれしてオリンピックで見るような聖火の様な形をしている。
「これは何でこんな形なんですか?」
多香子は赤い髪の女性に聞いた。
「この聖火になっている所に炎を蓄える様になっているの炎属性をより強化出来るわ」
「もうちょっと携帯しやすい物って有りますか?」
「もっと小さい物が良いですか?じゃあ、これなんかどう?」
赤い髪の女性はワンドの横に陳列されている20cm位の小さいワンドを手にとって見せた。
「これなら小さいから携帯には良いわよ、但し強度がだいぶ落ちるわよ」
私もそのワンドを取ってみる。表面は銀で出来ているが中は木材が使われていて、先端部分は空洞になっている。
「これは小さくて良さそうね」
「これは通常のワンドと比べて魔力出力が1割程落ちるけど小ささでは性能が良いわね」
「すみません、これは何ですか?」
私はいま多香子が見ているワンドのさらに横に並んでいた小さなステッキに目が行った。
「これは、分割式のワンドです」
「これ、良いんじゃ無い?」
多香子は私の居る方へ来てワンドを手に取った。
「これは試作品ですね、まだ十分な魔力出力の検証が出来ていないのですが、通常ワンドのおよそ半分程度と見ているわ」
「じゃあこれにするわ」
多香子の言葉に私は聞いた
「良いの?」
「うん、とにかく携帯出来る物が欲しかったの」
「じゃあ、それは貴方に差し上げるわ」
「お金は?」
「要らないわ、ただし条件が一つ」
「条件?」
「一月後にまたこの店に来ること、それが条件」
赤い髪の女性は多香子を指さしながら言った。
「分かった、来月またここに来れば良いのね」
「私の名前はジュリアン、ジュリアンのアイテムと言えば分かるわ」
「ジュリアンさんですね、私は浦多香子と言います」
「浦多香子さんね、分かったわ」
多香子はジュリアンさんから貰った新しいワンドを見て組み立てたり、分割したりしていた。
「良い物が見つかって良かったね」
「うん」
多香子は嬉しそうにしていた。私は織田さんと芦田さんはアクセサリーを見ていた。二人は魔法アイテムとはとても見えない普通のアクセサリーに見える。
その中からハートの形をしたネックレスに目を遣った。
「貴方も魔具をお探し?」
ジュリアンさんが私に聞いた。
「ええ」
「貴方のタイプは何?」
「私は・・・その・・・」
「どうしたの?」
「マジシャンってタイプなんです」
「マジシャンなの、それなら」
ジュリアンさんは店の奥に消えると直ぐに小走りで戻ってきた。
「それならこれは如何かしら?」
そう言いながら木箱の蓋を開けて見せた。中には6芒星の小さなネックレスが入っていた。
「これですか?凄く綺麗」
「そう、このネックレスは貴方にぴったりね」
「ぴったり?」
「そう、通常、魔具の要らないマジシャンタイプでは能力を増幅する物は少ないけど身につける魔具は非常に理にかなっているの」
「そうなんですか、じゃあこれにします」
「はい、ありがとう」
「でも高いんじゃ無いの?」
多香子が木箱を見て少し心配そうに訊いた。
「店頭に並んでいるのと同じでいいわよ」
「本当ですか、有り難うございます」
ジュリアンさんはネックレスの入った木箱を持ったまま奥のレジに向かった。レジも木材で出来たビンテージ品に見える。ジュリアンさんは精算後、ネックレスを首に掛けてくれた。
「何にしたの?」
レジで精算をしている私に芦田さんがブレスレットを持って後ろに続いた。手渡しされた紙袋を開けて芦田さんに見せた。
「わあ、これ可愛い、こんなの有ったの」
「うん、芦田さんは何を買うの?」
「このブレスレット、綺麗だったから」
芦田さんは私にブレスレットを見せてくれた。二つのリングを大きめの編み目で繋いでありリング自体にも何かの神話を摸したような絵が描かれている。
「変わった模様ね、何を表しているの?」
「さあ」
芦田さんは笑いながら言った。
「これは、古代ギリシャで行われていた葡萄の収穫を表したものよ」
「そういう意味があるんですね」
芦田さんはジュリアンさんの説明を受けながらレジで精算を済ませた。織田さんは多香子と一緒にアクセサリーを見て、多香子を一緒にレジに向かった。
多香子はさっきのワンドとベルトを、織田さんは三重のチェーンのネックレスと先端に円形に羽根の付いたワンドを購入した。
魔法アイテムを売っているお店を後にしてジョイタウンに向かった。そこにあるカフェでランチを食べファッションブースを見て回った。ジョイタウンは私達がよく行くプラザタウンと比べて紳士服や婦人服、子供服を扱うお店が多いのが分かる。学研都市南西部は学生達が住んでいるエリアと違ってベッドタウンに成っているから販売する商品もそれに合った物になるのだろう。
芦田さんはそこで意外な物を見付けたとばかりにハーフパンツを一枚買った。
「良い物買ったね」
織田さんが芦田さんにそんな事言っていた。




