亜空間ストック
ネコの姿になっても、私の魔法や術は、全て使えた。
全部無詠唱だしな……。
不老不死の術さえも……。
何より、私の前生は、エルフだったのだ……。
――エルフの種族特性――
エルフという生き物は、亜空間に、様々なものをストック出来る。
種族スキルとでも、言うべきものなのだろう。
息をするのと、同じように、使う事が出来た。
だから、もう完全に覚えている。
ネコの姿になった今でも……。
食べ過ぎた栄養を亜空間に逃がす。
どんなに暴飲暴食をしても、太る事はない。
溜まり過ぎた魔力は、常に亜空間にストックされる。
とても膨大な魔力が蓄積されてるので、魔力切れの心配もない。
排泄物さえもストック出来るので、トイレの心配すらない。
他には、暴発直前の爆弾とか、
失敗して威力がデカすぎた極大魔法とか、
間違って飲み込んだ猛毒とか、
手についてしまった致死性の細菌とか、
なんでもかんでも、ストック出来る。
知識や、記憶でさえも、ストックされている。
そういう能力を生まれながらに持っていた。
この空間は、ストックしたモノ毎に、
時間も、温度も、湿度も、自由自在に設定出来る。
時間を巻き戻す事さえ可能だ。
もちろん、ストック物は、それぞれ、
別々のエリアに蓄積されていくので、中で、影響し合う事もない。
――それが体に染みついているから……――
亜空間を自由に操る術を体得している私にとって、
ネコの体から、前世での魔法や術は、
ストックされている記憶を呼び出すだけで行使出来た。
――ネコの体で出来る事――
とはいえ、ネコの体で、人里で生活するのは、難しい。
亜空間に引きこもってもいいのだが、それでは、わざわざ転生した意味がない。
もちろん、姿を変える魔法も会得してるので、ヒト族に偽装する事は出来る。
けれど、せっかくだから、この体でしか出来ない事を、楽しみたかった。
無駄と思うかもしれない。私の「美学」みたいなものだ。
ネコの体は、寿命が短いと聞くが、
不老不死の術を会得してるので、寿命の心配はいらない。
私は、この体で出来る事を楽しみながらも、ヒトと係わる事を目指した。
亜空間には、私の使い魔たちもストックされている。
私は、その中から、一番ヒトに近い「カティア・ネメシス」を呼び出した。
ヒト族のいうところの「悪魔」という種族だ。
「悪魔」だが、見た目は、ヒトの姿をしている。
とても愛らしく、ほとんどのヒトが心を許す。
背が低くて、子供のように感じるせいだろうか。
目つきは、ちょいキツくて、目だけなら、クールな感じなのだが……。
能力値も高く、必要とあらば気配を消す事も出来た。
私は、カティアの連れているネコというテイで、冒険者として活動を始めた。
冒険者生活も、少し慣れてきた頃、航宙艦というモノがある事を知った。
今回の依頼は、それに乗って、別星系で行う仕事だ。
別星系に行く前に、今まで、世話になった人たちに、挨拶を交わした。
特に世話になっていた「コレット・ユグレシア」という20代後半の女性だけは、出産の為、実家のある他の星系に行っているとかで、挨拶出来なかった。
――初めての宇宙……――
航宙艦で宇宙に出た。
今まで、拠点にしてきた星が見える。
しかし、異変は、ここで起こった。
私が、これまでいた「星」が、
急に出現した航宙戦艦の砲撃を受け、星ごと破壊されてしまった。
せっかく築きあげてきた人脈が、すべて消し飛んだ。
その衝撃波は、この船も襲った。
そして、私が乗っていた船も消し飛んだ。




