捨てた船を敵が拾ってくれた
「大変です! 随伴艦が盗まれました!」
「何です。騒々しい」
「ドッグから跡形もなく、消えているんです」
「捨てたんですよ」
「え?」
「今まで、粗大ごみの日が来るまで、先送りにしてたんです。丁度ゴミ回収業者の方が引き取りに来てくれたので……」
カティアはシレっと、いい加減なことを言う。
まるでお茶の間の会話のようだ。
「家庭ゴミじゃないんですよ。軍艦を捨てたら軍事機密に……」
「大丈夫ですよ。元々は鹵獲した不審船ですから」
「え? あれ、不審船だったんですか?」
「不格好だったでしょう?」
フェリオ少尉は戸惑っていた。
元々捨てる船を随伴艦として使ってきたこと。
それを、回収業者が来たからって、捨てちゃったこと。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ゴイツ帝星国 宇宙統一教団教会 工作員
本国の判断は、発信機が生きていても構わないので、えい航して持ち帰ることだった。
自分たちの船にワイヤーをかけ、2隻の元随伴艦をえい航した。
「突然爆発したりしないでしょうね?」
工作員のひとりが不吉なことを言う。
「これ、勝手に動く幽霊船なんだろ?
本当にそうなりそうで怖いじゃないか」
「艦内の電源は入ってないし大丈夫だろ」
「発信機と連動してるかもしれないじゃないか」
「……」
工作員たちは、それ以降、黙ってしまった。
これ以上、変なことを言っていたら、本当になりそうだ。
工作員たちは、ゴイツ帝星国の月基地に到着した。
えい航で大気圏に入るのは危険すぎるからだ。
現場には、ゴイツ国教会の大主教が待っていた。
発信機が爆発物と連動している危険もあるからと、
まずは早速、発信機の除去を開始した。
溶接された区画にあるようだ。
もしかすると爆発物が仕掛けられているかもしれない。
バーナーを使い、慎重に作業していく。
溶接された区画を開けると、
救命カプセルが出て来た。
どうやら、発信機の正体は、これだったようだ。
カプセルを開ける。
首都星破壊に利用された闇バイトの学生たちが閉じ込められていた。
とてもパニックに陥っている。
学生たちは、通常空間に戻ると、そのうれしさのあまり、SNSに自分たちの無事を投稿した。写真付きで……。
ここは、軍事機密で囲まれたフロアなのだが……。
学生の家族たちは、無事をよろこんで投稿をリツイートしまくった。軍事機密や、そこに現れていたゴイツ国教会の大主教などが、瞬時に拡散した。
だが、そんなことなど知る由もなく、
安全を確認した大主教は、
アナログメーターのついた検知器を手に、
問題の艦艇に近づいていった。
艦艇に近づくと、針がギュンと振り切れる。
「やはり、魔法が使われていたか」
「魔法? おとぎ話でしょう」
工作員たちは、そう言うが大主教は答えない。
「え?、本当に?」
大主教は、大神官を通じて、何か作戦を伝えていた。
今回は、工作員とは違う手段を使うようだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
第8艦隊 旗艦 アブローラ
カティアは、例の船がゴイツ帝星国の月基地に運ばれたことを掴んでいた。すっかり、勝った気分だ。したり顔だ。
第8艦隊創設時に、古い艦艇でいいと言ったら、元帥が用意したのは、古すぎて人が乗れない船ばかりだった。
少し修理すれば、乗れそうだったアブローラ以外は使い物にならなかった。
機会があれば、処分したいと思っていた。
とりわけ随伴艦に使ってきたのは、うちの軍の船ですらなく、いつ捨てても良いと言われてきた。それが処分できて、少しスッキリしていた。
今まで、魔法で動かして、使っているフリをしつつ、万が一の時に、デコイのような使い方をするつもりだった。
複製が得意な使い魔のヘンリーが、亜空間内に呼び出されているので、もうデコイには困らない。
ただ、随伴艦を操っていたのが、魔法だとバレているとは知る由もなかった。
一方、予定通り、軍事機密や、大主教の顔もハッキリわかるSNS投稿がガンガン流れて来た。
「これが大主教ですか……」
着ている服装から見ても間違いないようだ。
「少尉。我々は数日、少し野暮用で艦を降ります。
その間、留守番お願いしますよ」
「え? 私、ひとりで?」
次はこちらから会いに行く。
あの大主教に……。
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




