第8艦隊の正体
銀河連邦には「不死のムノ・ウナ」と呼ばれる男がいる。
第2艦隊司令、ムノ・ウナ中将のことだ。
しかし、戦争に関しては完全に無能だった。
加えて、どんな窮地に陥っても、全ての部下を犠牲にして、絶対に自分だけは助かるという「迷惑な強運」の持ち主だ。
艦隊を全滅させて、自分ひとりだけ戻ることも珍しくない。
だが、彼は政府や防衛産業との癒着によって、軍内部では異常なほどの影響力を持っていた。
だから、どんなに失敗しても更迭されないし、毎回最新鋭の艦艇が配備される。
そのため、新兵からの人気は高い。
最新鋭艦に乗れるからだ。
競争率が高く、兵員補充には困らない。
どれだけ兵を失っても、すぐに穴が埋まる。
今回、第2艦隊は艦隊の半数以上を失ったが、その失態を問われることもなく、すぐに最新鋭艦と人員が補充された。
本来、上機嫌であるべきところだが、不満を漏らしていた。
ゴイツ帝星国の艦隊と戦っていたのは自分たちなのに、その功績で第8艦隊が受勲を受けることになったからだ。
ヤツらは、ゴイツの新兵器を鹵獲したらしい。
宇宙統一教団教会からも、今回の件で、怪しいヤツを炙りだせと言われていた。
よくわからんが、第8艦隊が怪しいと返信しておいた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
第8艦隊 旗艦 アブローラ
『受勲めんどうだな』
思わず愚痴がこぼれる。
『マスターは、前世の擬態があるから問題ないのでは?』
そう相手をしてくるのは、この前呼び出したヘンリー。
今、ゴイツの新兵器を複製してくれている。
『ネコ生活が長すぎて、つい4本足で歩きたくなるんだ』
『あはは……。いや、それより、カティアは、どうするです?』
『行くといって聞かないんだ』
『どう見ても父兄同伴って感じになりやすぜ』
『まぁ、元帥がそれでもいいって言ってるしな……』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ゴイツ帝星国 宇宙統一教団教会
「第8艦隊?」
大司教も噂では聞いたことがあった。
「神出鬼没」で有名な艦隊だ。
誰も、その姿を見たことがないという。
旗艦アブローラだけは有名だ。
普通なら退役確実の旧式の巡洋艦で、
亜空間航行すらできない艦だという。
それ以外の艦艇は、何一つわからない。
確かに、そういうヤツらが邪魔してるのなら、
ありえない話ではない。
「第8艦隊も受勲のために首都星に集まるそうです」
「よし、その艦隊の船を1隻でもいい、鹵獲しろ」
「承知しました」
こうして、教会の工作員が動き出した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
銀河連邦 首都星 連邦軍艦艇係留ドッグ
アブローラは任務中ということで、ドッグには現れなかった。
代わりに、その随伴艦だけが係留されていた。
工作員は、早速行動を開始した。
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銀河連邦 首都星 受勲式会場
第8艦隊の艦長は、人の姿でやってきた。
隣にお子さんを連れている。
フェリオ少尉はキョトンとしている。
「親子連れなんですね?」
「そう見えるかい?」
よく見るとお子さんには「大佐」の階級章がついていた。
「えっ?」
140cmにも満たない、その子の顔を見て驚いた。
「か、カティア・ネメシス大佐!?」
「かわいいだろう?」
「あ、そ、そうですね」
まさか、こんなに背が低い人だったなんて……。
受勲自体は堅苦しいものだった。
ここでは省略する。
受勲を終えると、3人は専用の控室に入った。
『潜るぞ』
『はい』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
第8艦隊 旗艦 アブローラ
「え?、あれ?、えぇ?」
「まぁ、こういうことも増えるが、少しづつ慣れていってくれ」
そう言うと私は、ネコの姿に戻った。
あぁ、落ち着く……。
『囮は配送されたようだな』
『はい、予定通りに……』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
第8艦隊 随伴艦とされていた艦艇
工作員は、エンジンをかけずに、
音も出さず、静かに人力でえい航し、港を脱出していた。
工作員は、艦艇に乗り込んだのだが……。
エンジンがかからない。
セキュリティが効いているからではない。
純粋に壊れているのだ。
燃料メータの表示は満タンになっているが、
燃料はほんの少ししか入っていない。
メータも壊れているようだ。
武装にも、弾薬は入っていない。
どうやら、偽物を掴まされたらしい。
それどころか、気密性にも問題があり、空気が漏れている。
艦内の水は、腐っていた。
危なすぎて乗れたものではない。
ただ、発信機のようなものだけが、元気に機能していた。
けれど、その位置が特定できなかった。
彼らは、やむなく本国に確認を求めた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ゴイツ帝星国 宇宙統一教団教会
「……偽物、だと?」
「はい。しかし問題はそこではありません」
「何だ?」
「我々が調べた艦は……動かすことができない船でした」
「ん?」
「あの艦には、30年以上乗艦した者がおりませんでした」
「……」
「なのに大気圏を突入し、ドッグ入りしていたのです」
「……まるで、艦そのものに意思があるようではないか」
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