表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

第十二節.反撃の狼煙 後編

「これが、事の顛末です。あとは、私が術式を使って赤城先輩と御門さんの場所を見つけました。東雲くんは今、私たちのカグヤを探してもらっています。」


 さっきまであったことを赤城先輩と御門さんに話し終える。御門さんと赤城さんは、どちらも驚いたように目を見開き口を開けていた。

 それもそうだろう。実験は成功してしまい、しかも実験体は東雲くんの友人だったのだから。それに加え、『連続少年少女失踪事件』の犯人も久遠織であり、失敗作は他の霊獣と同じように街に放っていた。それらは、霊獣として私たちが殺していたかもしれないのだから。


「三輪、お前そこまでできたのか?」


「はい?なんですか急に。」


「なんでもない。忘れてくれ。」


「いやぁ、三輪ちゃんもそうだけど楓も無事でよかった。」


 ほっと、息をつく御門さん。それに釣られて、私たちも一つの山場を越えたという意識が生まれた。

 遠くから、走ってくる音が聞こえてくる。


「三輪さん!全員分の、カグヤありました!」


 カグヤを抱え走ってきた東雲くん。どこか引き攣ったように笑顔を作っているのがわかる。気を失って物理的に頭を冷やせたのか、さっきよりも落ちつている。しかし、友人が目の前で実験体の初の成功例として見せられたこと、自分が何もできなかったこと。後悔や焦りが、彼の一挙手一投足から読み取ることができる。


「あ、御門さんと赤城さん。大丈夫ですか?」


 そして、東雲くんの声は前よりも低く、そして震えていた。


「大丈夫なわけがないだろう。三輪、早く開けてくれ。カグヤがあればいけるだろう。」


「はい!」


 頷き、自分のカグヤから使い慣れた細剣を引き抜く。引き込まれるような群青色の刀身に、鮮やかに宝石で装飾された鍔。私の自慢の魔導具だ。

 魔力をこめ、渾身の一突きで破壊する。金属音がなり、壊れた鍵は鈍い音を立てながら地面へと落下する。


「よし、取れた!」


「ありがとう、三輪。」


「ありがとっ。三輪ちゃん。」


 赤城先輩と御門さんが、牢屋から出てくる。赤城先輩は、東雲くんから自身のカグヤを受け取り腰に装着する。私は細剣をカグヤへ格納した。


「そしたら、お前ら怪我は大丈夫だな。東雲は、あまり無理するなよ。極力俺たちがなんとかするからすぐに頼ってくれていい。」


「は、ありがとうございます。」


 丁寧に頭を下げる東雲くんと腕を組み話を続ける赤城さん。その様子は、まるで私を見ているような不思議な感覚だった。


「三輪も、よくやってくれた。ここからは、俺と御門をメインに戦っていく。お前も、無理せず俺と御門を頼ってくれ。」


「は、はい。ありがとうございます。」


 いきなり褒められ、思わず目を逸らしてしまう。赤城先輩が、素直に認めてくれることはあまりないからこそ他の人に褒められるよりも嬉しく感じた。


「その、久遠織って人はどこにいるの?」


 御門さんが質問を投げかける。一応、術式である程度の場所はわかっていた。この部屋から真っ直ぐ廊下を進んだ先にある部屋。あそこからは、並々ならぬ異質な雰囲気と異常なまでの濃密な魔力を感じている。それだけじゃなく、数は把握できないが霊獣の気配も感じ取った。

 その旨を、全員に共有する。


「目的を、整理するぞ。我々がこれからするのは、魔術犯罪者、久遠織の身柄を確保。そして、霊骸と呼称されたものの解明。そして、小泉颯の無力化でいいな。小泉は、俺がやる。俺以外は他の3人に任せて良いな。」


 簡潔でわかりやすい、赤城先輩の的確な指示。


「待ってください、赤城さん。」


 口を開いたのは、東雲くんだった。



 気づけば、言葉が勝手に口から出ていた。


「東雲、なんだ。」


「小泉は、俺にやらせてください。」


「ダメだ、お前は一度あいつに負けているのだろう。今は、戦力が足りないんだ。お前一人でも欠けたら、すべ盾が崩壊するんだ。」


 目は、真っ直ぐに冷たく俺を見据えている。


「あの時は、激昂していて周りが見えていませんでした。無理な時は、勝てそうにない時はすぐに言うので、どうかやらせてください。」


 地に膝をつき、頭を下げる。堪えていた後悔が溢れ出す。


「もう、逃げたくないんです。もう一度、ちゃんと向かい合って顔を見て話したいんです。これ以上後悔はしたくないから。全てが終わった後、過去を振り返らずにちゃんと前を見て未来を生きていきたいから。どうか、お願いします。」


 何より、もう一度小泉と向き合いたかった。今まで、勝手に突き放し避け続けていたのに今更向き合おうだなんて自分勝手なのは理解している。それに、本当は久遠織だって許せない。

 ()()()()、無理だとわかっていても願ってしまうんだ。


 小泉と、友達として一緒に過ごしたいと。


 嗚咽混じりの言葉を黙って聞き続ける赤城さん。

 沈黙を破ったのは、御門さんだった。


「別にいいんじゃないかな。私も、それに三輪ちゃんだっているし。いざとなったら助けられるよ。私が責任持って、絶対に死なせないから大丈夫。」


 「わかった。その代わり、絶対に死ぬな。いざとなったら俺と御門、そして三輪を頼れ。」


「っ、ありがとうございます!」


 赤城さんの手を借り、足にもう一度決意を乗せて立ち上がる。終わらせるんだ、取り戻すのは無理だとしても、もう後悔をしないように。小泉のように未来を見続けられるように、と。

 膝についた埃を払い、涙を拭う。


「お前ら、悪いが休んでいる暇は無い。このまま、久遠織の元へと向かう。目的はさっき話した通りだ。」


 扉は開き、久遠織へと至るまでの回廊が広がる。


 反撃の狼煙は上がった。

こちらの作品は、現在公開されている

『【通常版】アカシックテイル〜正義と魔術が交錯する現代魔導戦記〜』のエピソードを分割して公開している作品です。


【通常版】も一緒に、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ