第五節.術式 後編
「赤城くん、大変だ。霊獣に一般人がやられてしまった。」
「えっと、誰ですか。知り合い?」
「前話した、公安ってところに所属している魔術師だよ。」
「御門、横のヤツは何だ。」
俺の方を静かに、そして何かを探るかのように睨みつける。
「最近、この街に来た魔術師だ。訳あって、協力してもらってる。」
青年は、そうかと頷き屋根から俺の横へと飛び降りた。
「はじめまして、俺は赤城晃一。公安所属の特等執行官だ。」
「執行官……?って、なんですか御門さん。」
「お前、執行官を知らないのか……」
「赤城、こいつ随分前まで山奥で暮らしてたんだ。俗世を嫌う家系だったらしくて、まだこの世界に疎いんだよ。」
「今はそんなことはいい。被害者は、一人だけか。」
「そうだよ、ごめん。私たちがもっと早く駆けつけられたら、こんな事にはならなかった。」
「いや、もしもの事を話しても意味が無い。この後、時間あるか調査の話がしたいが時間あるか。そこのガキ、お前も聞け。今は圧倒的に戦力が足りない。」
「は、はい赤城さん……」
赤城さんは、少々苛ついた様な口調で吐き捨てた後死体の回収へと移った。俺と御門さんは、黙々と作業をする赤城さんを背に廃ビルへと続く長い道を進んだ。
◇
ついに、二人目だ。一般人に被害が出てしまったのは。幸い近くに御門達が居たからこれ以上の被害は出なかったのは良かった。しかし、依然として事態は深刻だ。
辺り一帯を浄化し、血に霊獣が引き寄せられないよう処理する。その後、遺体を格納魔導具に収め最後に現場を確認する。
いくらやっても、慣れない作業だ。執行官として公安に所属してから数々の遺体と向き合った。それでもこの行き場の無い怒りと無力感は拭えない。
御門と共に居たあの少年。どこかで、見覚えがあるような気がした。
浄化、遺体の回収を済ませ現場を後にする。廃ビルへの道のりは長い。
◇
赤城さんが廃ビルへと到着したのは俺と御門さんが廃ビルに到着してから約一時間後の出来事だった。御門さんに手を引かれ、廃ビルの二階。鍵がかかった部屋へと通される。
俺と御門さん、大きな机を挟んで反対側に赤城さんが座る。廃ビルなのに、何故か天井に吊るされたライトは光っていた。
「さて、まず何から話そうか。」
「ごめんなさい、まず執行官について知りたいです。俺、まだこの世界に疎くて……」
「わかった、まずそこから説明する。時間はまあまああるからな。」
少し、面倒くさそうに赤城さんは話し始めた。
「公安は、言ってしまえば魔術を秘匿する国家機関だ。日本に本部を置き、アメリカ、中国、オーストラリア、フランスの四カ国に支部が設置されている。
そして、この公安に所属している魔術師は執行官として国内外の魔術犯罪、そして今回のような霊獣の後始末にあたる。」
ここまでは、御門さんの説明である程度知っていた。
「そして、執行官にはそれぞれ階級が存在する。下から、初等、中等、高等、上等、特等、准特務、特務と計七つの階級だ。俺は上から三番目の階級で、特等だ。説明することは、これで十分か……?」
「……はい、ありがとうございます。」
階級が多すぎる。覚えられる気がしないが、漠然と赤城さんは高い階級にいることはわかった。
「それで、赤城くん。調査の結果って言ってたけど何か分かったの。」
「結論から言う。この件は……」
――人為的に発生させられている。
こちらの作品は、現在公開されている
『【通常版】アカシックテイル〜正義と魔術が交錯する現代魔導戦記〜』のエピソードを分割して公開している作品です。
【通常版】も一緒に、よろしくお願いします!




