表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

日常の攻防戦

高校生活が始まって一週間。私の日常は、かつてないほど「一点集中」していた。

視線の先はいつも、窓際の一番前。


「(……まだだ。まだ動かない……!)」


今は数学の授業中。先生の背中が黒板に向いた瞬間、私は自席の廊下最後尾から、獲物を狙う鷹のような目で安藤結さんを見つめる。

安藤さんの頭上のミニキャラは、本人と同じ角度でノートを取り、同じタイミングでシャープペンシルの芯を出している。その動きは、まるで鏡合わせのダンスだ。


「……ねえ、ルン。ちょっと行ってきて」


私が小声で指示を出すと、待ってましたとばかりにルンが飛び出した。

ルンの今回のミッションは『安藤さんの筆箱を、こっそりペンで突っつく』作戦。

ルンが安藤さんの机に降り立ち、彼女のペンケースをツンツンと叩く。普通なら「えっ?」と手元が狂ったり、視線が泳いだりするはず。


(……来るか!?)


だが、安藤さんは眉ひとつ動かさない。

それどころか、彼女のミニキャラは、ルンが目の前で変顔をしても、ペンケースを揺らしても、微動だにせず数式を書き写している。


「(……鉄壁すぎる。サイボーグなの!?)」


あまりの反応のなさに、ルンが「つまんない!」とばかりに私の元へ戻ってきて、私の消しゴムを八つ当たり気味に齧り始めた。


「……和田さん。そこ、答えなさい」


「ひゃいっ!?」


先生の鋭い声に、私は椅子から飛び上がった。

机の上では、ルンが「あちゃー」と頭を抱えてひっくり返る。クラス中に笑い声が広がり、真っ赤になって煙を吹いている。

恥ずかしさに震えながら、ふと窓際の前方を見た。

安藤さんは、騒ぎに背を向けたまま、静かに次の問題を解き始めている。

そのミニキャラも、他のクラスメイトが笑っている中で、一人だけ全く笑わず、完璧な無表情でペンを走らせていた。


「(……悔しい。一瞬でいいから、あの子の『本当の顔』が見たい……!)」


休み時間のチャイムが鳴る。

私はルンを頭に乗せ、次なる作戦を練るために屋上……ではなく、購買へと走り出した。

胃袋を刺激すれば、少しは本音が漏れるかもしれない。


「(待ってなさいよ、安藤さん。次は、購買の期間限定メロンパンで勝負よ!)」


私の「安藤結・観察日記」に、また一つ敗北の記録が刻まれたけれど、好奇心の炎は消えるどころか、ますます勢いを増していくのだった。

正直なレビューしていっていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ