完璧な彼女の、小さなしっぽ
「逆・鉄壁ガード作戦」を開始してから三日目。
私の暴走は止まらない。安藤さんが教科書を出そうとすれば私が先回りし、彼女がペンを落とせばルンが音速で拾いに行く。
「……和田さん。もう、本当にいいから」
安藤さんの声に、かつてないほどの困惑が混じる。
その時、数学の抜き打ち小テストが配られた。教室に緊張が走る。
「(……ここだ。安藤さんが集中しなきゃいけない時こそ、私が周りの雑音をシャットアウトしなきゃ!)」
私は自分のテストもそこそこに、安藤さんの背中を見守った。
ペンを走らせる彼女の頭上、ミニキャラもまた、完璧なフォームで数式を解いている。
その時だった。
窓の外から、野球部の特大ホームランの快音と、部員たちの雄叫びが響き渡った。
「うおぉぉぉ!」という地鳴りのような声に、クラスの何人かがビクッと肩を揺らす。
安藤さんは……動かない。
鉄壁だ。微塵も揺るがない。
――はずだった。
ガシャン! と、安藤さんの机の上で、立ててあった筆箱が倒れた。
あまりの音に、安藤さんは一瞬だけ、本当に一瞬だけ、目を見開いた。
「(……あ)」
私は見た。
安藤さん本人は、すぐに冷静さを取り戻し、無表情で筆箱を立て直した。
けれど、その頭上のミニキャラが。
本人と完全に「ズレて」、両手で自分の耳をぎゅっと塞ぎ、涙目で「びっくりしたぁ……っ!」と叫ぶような顔をして、ジタバタと足をバタつかせたのだ。
「(……動いた……っ!!)」
それは、完璧な彫刻に命が宿ったような、鮮烈な一瞬だった。
本人がどれだけ「完璧」を演じようとしても、あまりの衝撃に、隠しきれなかった本音が『しっぽ』を出したみたいに。
安藤さんのミニキャラは、数秒後にはまた本人と同じ無表情に戻り、必死に数式を解き始めた。
でも、その小さな背中は、今まで見たことがないくらい小刻みに震えているように見えた。
私は、自分の胸がバクバクと鳴るのを感じていた。
「…見つけた。」
完璧な鉄壁の奥に隠された、驚いたり、怖がったりする、当たり前の「女の子」の姿を。
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