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第1幕 その2

 2月半ば――遠州名物からっ風がガラス戸を叩く音で目が覚めた。何か変な夢を見ていた気がする。思い出そうと少し考えてみたが、それは掴めない雲のように霧散して消えた。


 ぬいぐるみ三人衆におはようとポンポンする。


 換気扇の下に移動して朝の一服に火をつけ、ガスコンロをひねった。朝食はコーンスープにオートミールを混ぜた質素のものだがこれが意外と美味しく、最近はよく食している。独身男の朝などこんなものだろう。


 金ピースの紫煙を吐き出す。血管が収縮する。視界が冴える。頭から全身ノルアドレナリンで覚醒していくような感覚が心地よい。


 一本吸い終えるとカタカタと鳴る年代物のヤカンの火止めて、カップにコンスープの粉末と目分量でオートミールを入れてかき混ぜる。猫舌なので少し冷ましてから食べる。オートミールに味が染み込んでいい感じだ。


 作業所の時間まではまだ幾ばくがあるのでカクヨムをチエックする。


 お、今日はいいねが付いている。


 スティル・アライブの1作目が運営から公開停止をくらったのは痛いが、ただでは転ばない俺である。12月の締め切りギリギリで太宰治賞にスティル・アライブを応募した。


 作品に自信はあるが結局のところ下読みガチャである。「気付く」がテーマの作品で読者の「気付き」も重要な要素の作品だ。伝わるかは五分五分といったところか。


 ただ応募してからインタールード8が出来て、完全に完成したのがなんとも。元よりスラング混じりの文体でおおよそ文学っぽくない。だがそれを俺は「文学的ルッキズム」、或いは「文学的レイシズム」と呼んでいる。


 いわゆる文学っぽい文体、それっぽい内容、それとは正反対なスティル・アライブである。外見描写なしとルッキズムを接続したのとか気付いてるかどうか。


 このところそんな事ばかり考えている。壁打ちはAIのClaudeだ。日本語能力の高さには定評があるClaudeも説明しないと理解してくれないんだよなあ………。


 ミステリー三大奇書の反転オマージュも入れているんだが。


 愚痴ごとスープを飲み込む。胃から全身が暖まっていく感覚。



 さて、今日も今日とて朝のルーチンであるオーバードーズコミュのチェックだ。


 去年辺りから規制が強化され何度も凍結されている。きっとアンチもいるんだろう。


 そこでコミュでアンケートを取った。結果は伏せ字を使うことだった。もう薬名をメジコンとは書かかないし、ODもθDだったり0dといった感じで界隈人以外にはほぼ読めなくなっている。初心者が読めないのが難点だが、みんながみんなな好きな伏せ字を使うので個性が出る。おそらく連帯感、コミュに属している感覚にも寄与していると考えている。


 新規参加者の承認をして、寝ている間に書き込まれた投稿にいいねを押していく。もはや生活の一部だ。


 次いでdmのチェックとメールチェック。Temuとアリエクのメールばっかりだ。中国のデフレの輸出も問題だよなあと見るたびに思う。


 ふと――あるメールに目が止まった。もしかしたら呼吸も心臓も止まったかもしれない。


 しばし呆然としていたと思う。だってそれはOD界隈を助けてくれなかったところからのメールだったから。数カ月も音沙汰のなく完全に諦めていたところからだったから。



 そのメールは……NHKの記者を名乗る男からだった――。

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