↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/34

第1幕 その1

 朝起きて通知のチェックを兼ねTikTokを流し見していたらメメ子が「厳」マークを顔にペタンコしてメジコンを持ちながら島田珠代の「おばちゃんダンス」の替え歌をご機嫌な調子で歌い踊っていた。


『ワイちゃん〜♪ ワイちゃん〜♪ ワイちゃんダンスぅー』


 何で珠代姐さんなんだよ。いや好きだけども。


『メジコン大好きぃ〜♪ ワイちゃんダンス〜♪』


 しかも2時間前の投稿で結構いいねが付いていた。俺のネタ動画とは雲泥の差である。


 というか、最近浮上も連絡もないなと思っていたが鬱モードは終わったのか。この歌声だと躁モードなんだろうな。


 そんなこんなでいいねを付けて朝のルーチン完了。次はどうしたもんかとエントロピー低めの部屋を眺めて考えていたら、スマホが鳴った。メメ子か。いいね付いたの見てんな。 


『やっほー! うらぁーー』


 テンション高くちいかわのうさぎのモノマネをするメメ子の声が寝起きの火照った耳をつんざいた。


 寒いのにやっぱり躁モードや……。


「……おはよ」


『ちゅっ♡ ODして〜ごめんっ♪』


 今度は『ちゅ♡可愛くてごめん』のリズム。メメ子、それは俺のTikTokでのネタやないか。


「朝からパキッとんな」


『パキパキ! HAHAHAHAHA』


 彼女お決まりのジョーカー笑いだ。


『ちゅ〜たん話そ』


「ちゅ〜たん言うな」


『えー青ちゅ〜さんだから、ちゅ〜たんだよー』


「ボンちゅ〜さんもやないか」


『あ、ホントだーあとで掛けよーっと』


 そう言ってにひひーっと笑う。


『作業所、9時10分に家出るでしょー。で今日は風呂キャンの日でしょー1時間話そー』


 出会って1年半程だが既に俺のスケジュールをほぼ把握されているのだった。朝起きる大体の時間、ご飯を食べてから通知チェックをしてること、風呂は朝はいるが一日おきなこと、まあ他にもいろいろ知っているんだろう。友達と言える。20以上離れててこうやって仲良くしてくれるのはありがたいことですよ、俺。


『灰色の脳細胞がーメジコン色に染まるーうらぁー』


 そのポアロも俺のネタや、メメ子。


 さていつも通りメジコンをオーバードーズしてるのね。


「えーなー」


『HAHAHAHAHA』


 この2月の朝の寒さでそのテンション。完全に躁状態にメジコンがブーストをかけているな。反動が怖いが今は忘れさせておこう。躁鬱は一生付き合うものだから大変である。うつ病年金2級の俺も人のことは言えないが。


『あーたのしー青ちゅ〜さんも何か元気そうー』


 昨年末まで精神科に入院していたからまだ心配してくれてるんだよな。


「何とか作業所はいけてる」


『ヨシ!』


「ヨシ!」


 そんな感じでお互い現場猫のマネをし合う。メメ子はメメ子で俺が入院している間に新しい彼氏が出来て別れたらしいが、引きずってる素振りはない。


「今日バイトは? 行けるん?」


『午後からだからヨシ!』


 午後からならメジコンも抜けてるだろう。追い焚きするなよ……。


『あっそだーまた漫センセーの貸してー』


「ええで」


 何故漫☆画太郎を苗字で呼ぶのか。


『漫センセーのブスの瞳に恋してるおもろー3周目してるー』


「名作やろ?」


『いつもうんちしながら読んでるよー』


「コーラックODしてもろても?」


『出ないんだよー。あっ待ってー』


 ガサゴソドタドタと音がして扉が閉まる音がスマホ越しに聞こえた。


 おい、これ――気付くなよ、俺……。


『うんちブリブリざえもん』


 スピーカーからの汚い音に臭いまで混じるようだ。ミュートしろ。ミュートを。


 寒いんだかよく分からなくなってきた2月上旬、俺は女子高の男性教諭の憂鬱が少し分かった気がした――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。