スティル・アライブ2 プロローグ
スティル・アライブ2
<プロローグ>
頭ン中ブロンブロンだったのはさっきまでの話で体温と紫煙をかっ攫う寒風に思わず俺はベランダの戸を開けた。
ムワッとした空気が纏わりつきメガネが曇った。元旦、静岡県浜松市の朝はかなり寒いが静かだ。
俺はブロンをキメて深夜徘徊するのが好きだ。とはいえ人影のない冬の朝の地方都市は圧倒的に冷徹で。部屋からの窓越しに遠くで無機質に点滅する信号機と暖房の効いた部屋の温度差が世界に独りぼっちな感覚をより増してくれる。遠州名物からっ風がガラス戸をカタカタと叩いた。
とりあえず金ピースを消すことにする。オレンジ色が潰れて灰皿に消えた。
ふぅーと長く嘆息する。何とはなしに正月は苦手だ。つければお笑いでもやっているんだろうテレビは、ゴジラ-1.0を金ローで観て以来稼働していない。ついつい大麻リキッドへ無意識に手が伸びていた。が、口にしたヴェポライザーから出てきたのは空焚きの薄く焦げた半透明な味の空気だった。やれやれ……村上春樹かよと脳内でツッコみながら再び息を吐く。
時刻は午前5時過ぎ。カーテンを開ける。窓からの朝焼けにサイレース色のプロジェクターライトが混じって殆ど何もない部屋を照らしている。
うーんと伸びをする。ポキポキボキボキ関節がなった。
確認してみると他のリキッドも1ミリあるかってレベルの残り具合で寂しい懐事情そのままだ。
「しばらくお別れだな」
独りごちてドラストのビニール袋にリキッドを入れていく。厳重にぐるぐる巻きにしてポイッとゴミ袋へさよーなら。
「暇だねー」
ベッド脇でタオルを布団にして寝るぬいぐるみたちに言う。ちびくまちゃん、レオンくん、現場猫くんの3人(3人だ!)は仲良くスヤァしている。それをポンポンと優しく叩いてプロジェクターのケーブルを引っこ抜くと大の字に寝転がった。
「ふあああ」
何もない平和な正月休み。作業所は5日からだからまだ随分と時間がある。ゲームでもするかねぇ。
思い立ったが吉日とばかりにまた体を起こすとテーブルに置いたAYANEO3を引き寄せた。
ウィーーンという起動音。
明滅する画面。
UMPCというやつだ。携帯ゲーム機型のパソコンみたいなやつで最新のモデルである。
ちょっと重い。でも握ると軽いんだよな。人間工学すっごい。
「今日は何するー? レオンくん?」
『そうだね、お兄ちゃん! 僕無双アビス!』
「ほいよー」
胴長クマさんライオンのレオンくんを懐で抱き枕のようにしてゲーム画面に集中。
『頑張れーお兄ちゃん!』
推しキャラの呂玲綺がゾンビみたいな敵兵を無慈悲に草刈りしていく。ザッザッザッ。爽快、気持ちええんじゃあ。
これが最新の俺。すっかり綺麗になった元汚部屋とぬいぐるみとゲームと残り少ないリキッドと。入院帰り。退屈オーバードープ。極東最前線。クソゲー日本。空白の国へようこそ!
プロローグ――何もない2026年1月




