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ハツカノデイズ  作者: ほしの
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七章「新婚旅行(仮)」5

「あー、熱かったー。でも気持ちいい―」


 一番の感想がこれである。


 源泉かけ流しの湯舟は想像以上に熱く三分もしないうちにシャワーへと駆け込んでしまった。

 最後にもう一度入ったが十数える前にギブアップした。


 温泉が良いと思える感受性はまだ得られていないみたいだ。おっさん達がこぞって群がるサウナなんてもってのほかだ。歳を取ればわかるものなのかな。


「汗が止まらない。髪乾かしたはずなのに襟足が濡れてる」


 部屋に備え付けのドライヤーがあったはず。部屋の鍵は僕が持っている。芽衣からのチェインは無いしまだ入浴中なんだろう。……想像しちゃうな。でへへ。


「その前に何か飲み物を買おう……ふむ」


 スポーツ飲料水が頭に浮かんだが、温泉地の自販機にならではのラインナップに思わずそちらのボタンに指先が走る。


「……わくわく。うきうき」


 思わず擬音を口ずさむ。


 蓋を開けて腰に手を当てる。


「っぷはっ、う、うめぇ! なんだこれ! うめぇ!」


 語彙力がなくてあれだけどうめぇのだ。普段の七倍くらい美味しい。


 温泉上がりのコーヒー牛乳がこれほどとは。あっという間に飲み干してしまう。牛乳瓶は専用のケースに片付けるのも乙なものですな。


「これだけでも温泉に入った価値あるよな。フルーツ牛乳も飲んでみるか……ちょっと待てよ」


 瓶を片手に百円玉をもう一枚取り出す。投入口に百円を入れてマッサージ機に腰を下ろす。


「あああああ~うううううめめめめめえええ~~!!」


 なんだこの幸せな時間は。マッサージを受けながら飲む牛乳はこの世の奇跡である。



 

「おいしー! 何これおいしー!」


 部屋に戻ってきた芽衣にさっそくフルーツ牛乳を進める。


 風呂上がりの芽衣。まだ湿り気のある髪は艶やかさを醸し出している。浴衣姿もグッとくる。


「温泉熱かったから生き返るねー」


「やっぱり熱かったよね」


「うん、私もよく銭湯に行くから多少は慣れてるけどここのは特に熱いよ」


 ぱたぱたと手で仰ぐ。シャンプーと色香が混じった匂いに気持ちが高鳴る。


「その熱さに耐えた分美味しいく感じるのかもな。マッサージも最高だったよ」


「あ、いいなぁ」


「芽衣も受けてくれば?」


「私、マッサージとか駄目なんだよね。くすぐったがりだから」


「もったいないぁ。あれも至福の時間なのに……えい!」


 悪戯心から芽衣の脇腹をつんと突く。


「にゃー! や、やめてよ。零児君」


 おいおい、聞いたかよ。猫芽衣ちゃんが出たぜ。可愛い持って帰りたい。


 わしゃわしゃと指先を動かして見せると己の身を抱いてガードのポーズをする芽衣。

 おかげでおっぱいが盛り上がって、しかも浴衣がはだけてるぅー!


「こちょこちょこちょ」


「きゃはは、や、やだ、やめてよ零児君、はは、ふふふ」


 芽衣の全身を撫で回すとけらけらとその場に倒れる芽衣。そしてはだけていく浴衣。


「あ」


 僕の視線に気づいた芽衣はさっと胸元と足元を隠す。上下ピンクだった。風呂上りでも下着はつけるんだな。


「……」


 なんだこれまた顔が熱っ。飲み物でも飲んで冷ますか。


「あ、それ私飲んでるの。か、間接キス」


 手に伸ばしたのは芽衣の飲みかけのフルーツ牛乳。


「ぐっ、ぷは。今更どうってことないだろう」


 芽衣の一言に吹き出しそうになったのをなんとか堪える。もうベロチューまでしな仲だぞ。

 でもなんだかんだで動揺している僕がいる。


「返してよう。それは私のだから」


 芽衣は僕の手からフルーツ牛乳を取り返し、にやつきながら口元へ運ぶ。


「マッサージが苦手なら別の温泉に来たと言えばってことやらないか?」


 僕の発言に小首を傾げて瓶を口元へ運ぶ芽衣。


「部屋に帰る途中に見つけたんだよね。卓球台」


 僕が右手でラケットを振る素振りをすると芽衣は微笑み頷く。




 おっぱいが揺れるのを見たくて彼女を卓球に誘った。欲望のままに。下心を込めて。


「芽衣は卓球やったことある?」


 フロントからボールとラケットをレンタルして卓球場へ歩く最中に質問をする。


「逆に聞くけど私が相手がいないと出来ない様なスポーツやったことがあると思う?」


 満面の笑みが怖い……。


「僕も中学の時に体育の授業でちょっとやったくらいだし。試合というよりラリーを続けることを楽しむとするか」


 空いている卓球台の前で軽く芽衣に卓球のルールとラケットの使い方を説明する。


「そうそう。鉛筆を持つみたいに握ればいいから」


 初心者ということでペンホルダーのラケットを渡した。


「いくよ。ほい」


 僕のサーブで対角線上にいる芽衣に軽く打ち込む。


「えい」


 ラケットに当てることは出来たが卓球台を飛び越してしまう。


「おっ、惜しい。もうちょっと力抜いてもいいかも。それ」


「こうかな? えい」


 一々打つときにえいっていうの可愛いな。おい。


「お、ワンバンして届いたね。ほいっ」


「えいっ、やった! また入った」


 僕が打ち返した玉を芽衣はスムーズに打ち返す。手先が器用な分こういうのは得意なのかもしれないな。


「じゃあ十ラリー目標にやってみよう。いくよー」


「えい。いーち」


「にー」


「さーん、あーん、悔しい。ネットに引っかかったぁ」


 悔しがってぴょんぴょんするのたまらんな。可愛い。


 そして彼女がラケットを振る度に揺れるおっぱいを堪能している僕だった。


 一時間ほど卓球を楽しんだ後に芽衣は汗を洗い流したいともう一度温泉へ入りに行った。


 僕もせっかく温泉へ来たのだから入ることにした。二度目になるとこの熱さにもなれて多少は長く湯船につかることが出来た。


「何度飲んでもうめぇ」


 結局これが目当てな所もあるんだが。温泉上がりの牛乳最強説を提唱する。


 浴衣姿の僕をたくさん撮影して満足気な芽衣。風景より僕メインに撮っている気がするが。


「もーあんまり飲みすぎると夕ご飯食べられなくなっちゃうよ」


 なぜか芽衣が持ってきていたトランプでババ抜きの最中である。旅行の必須アイテムだと思っていたらしい。修学旅行とかでも持ってきてる人いたよなぁ。


「そういや、そろそろ夕ご飯に時間だったね。確か別室に用意されてる時間になったら食べに来てって受付で言われてたね」


 どうやらここの旅館は部屋にご飯を持ってきてくれるタイプではないらしい。指定された時間に他の階の大広間に行かなければならない」


「零児君が良ければ私もう行きたいな。運動して温泉入ったらお腹すいちゃった」


「賛成。僕もお腹すいてきたし、何が出るか楽しみだね」


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