13.それは昔からあるテンプレという名の風習
ウナ視点です。次回は主人公の視点に戻ります。
ああ、こういうテンプレは書いてて楽しい
ようやく町に入ることが出来ました。
改めて人間の多さに驚かされますね。
「あ、お姉ーちゃん!見て見て!あれ!いい匂い!いい匂いのするモノがある!」
トレスは私の裾を引っ張り、ある方向を指さします。
その先にあったのは、屋台………というものでしょうか?
確か勇者の記録に似たような建物があった筈です。
確かに鼻腔をくすぐるいい香りがします。
何かの肉を串に刺して焼いているようですね。
ああ、そうですね。人間は生ではなく火を通して肉を食べるのでした。
アンさんや兵隊アリたちは、土蟲も生で食べてましたし、忘れていました。
しかし、不思議な感覚です。
あの匂いを嗅ぐと同時に起こる、この空腹感はなんなのでしょうか?
見たところ魔力も感じられないのに、濃厚な香りと肉汁が滴るアレを焼く音、それを体内に含みたいと思うこの感覚。
今まで感じたことのないものですね。
「ふむ、アレはどうやったら手に入るんでしょうか?」
確か記録では勇者は、食べ物をもらいその対価にお金を渡していたはず。
また、お金ですか。
殺せば楽に手に入れられるというのに、人間社会というのは窮屈ですね。
早くギルドとやらに行って、魔石を換金しなければなりませんね。
「………さて、それではギルドへ向かいますか」
「えー!食べたいー食べたいーたーべーたーい!」
駄々をこねるトレスを説得するのが大変でした。
最終的にはドスが当て身でトレスを気絶させて事なきを得ましたが。
ごめんなさいね、トレス。
きゅうとなったトレスをドスが脇に抱え、私たちは再び冒険者ギルドと言う建物を目指しました。
それから、真っ直ぐ町の中を歩くこと数分。
ようやく門兵が言ってたギルドという場所に着きました。
入口には龍と二本の剣を交差した模様の看板。
ひげの言っていた模様と一緒です。
ここで間違いないようですね。
扉を開き、中に入ります。
何やら視線をあちこちから感じますね。
それに下卑た笑い声。
正直不快です。ドスも同じでしょう。
周囲を見渡して気づきました。
ああ、なるほど。ここは吹き抜けの広間のようになっているのですか。
冒険者たちの集会所の役割を果たしている訳ですね。
トレスを気絶させたのは正解でしたね。このような不快な視線、トレスに当てられると思うと、それだけでここにいる全員殺してしまいそうですから。
見ると向こう側に身なりの整った女性たちが並んで座ってます。
多分彼女たちがこのギルドの職員なのでしょうね。
そちらへ向かおうとした瞬間、数人の男たちが私たちの前に立ちはだかりました。
何のつもりでしょうか?
「よぉ、お嬢さんたち。ギルドには依頼に来たのかい?だったら是非俺らを指名してくんねーかな?これでもCランクなんだぜ俺ら。へへへ」
リーダー格らしきモヒカンの男が話しかけてきました。
これは、売り込み、というやつでしょうか?
しかし何て汚らわしい男達なのでしょうか。
服は汚れ、装備品は所々泥やホコリでボロボロです。
正直視界に入れたくもない。
――――殺してしまいましょうか?
「げひひぃ、というかそこのお嬢ちゃんは大丈夫かぁ?なーんか、眠ってるみてーだけどよぉ……。怪我してんなら、あっちに治療施設があるから使うといいぜぇ……俺らの名前を出せば、割引してくれる筈だからよぉ……きひひひ……」
ものすごく不快な口調ですが、どうやらトレスを心配してくれているようですね。
気絶させたドスは、少しばつの悪そうな表情をしていますが。
「俺らはよぉ“黒ハイエナの牙”っていう冒険者パーティーさぁ。まあ、何か用なら気がるに声をかけてくれやぁ。安くしとくぜぇ……」
「へへっ、そうだぜー。俺たちはなぁ、老人の荷物持ちからゴミ拾い、薬草採集に害獣や魔物の討伐まで手広くやってんだぁー。てめぇらが誠意を見せんなら、お安くしとくぜぇ、ひゃはははは!」
「………誠意とは、例えばどの様な事でしょうか?」
その瞬間、男たちの顔が厭らしく歪む。
なんて下卑た笑みでしょうか。
「へへぇ、そうだなぁ。例えば、この間の婆なんかよぉ、依頼が終わった後、俺らのところに来て、魚を渡したりしてたな。ありゃぁ、美味かったぜぇ、ぜひゃはは!」
「他にも町や外で会ったら、ちゃぁーんと挨拶するとか、ギルドで会った時にはひと声掛けるとか、そんな感じだな、へへへっ」
成るほど、意味は分かりませんが、なんとなくバカにされているのでしょう。
――――仕方ない、殺しますか。
私が剣に手をかけようとし、
「あんたら、その人たち困ってるでしょうが!?止めなさいよ!」
後ろから何やら女性の叫び声が聞こえました。
振り向くとそこには汚らしい人間の小娘がいました。
髪が赤いですね。ぼさぼさです。
汚らしい。
あ、見た目が汚らしいので、きっとこれも冒険者なのでしょう。
すでに私やアンさんの中では冒険者=汚いもの、で定着してますし。
「アンタ達ねぇ!いい加減学習しなさいよ!アンタ等の見た目じゃ、どう見ても絡んでるチンピラにしか見えないのよ!」
見た目も何も、完全にチンピラじゃないですか。
男たちは舌打ちをしながら去っていきました。
「ちっ、後で覚えてやがれよっ」
「ひひっ、今度晩飯おごってやるぜ…ひひひ」
「困ってたらいつでも声をかけなぁ、力になってやるぜ、ヒハァッッ!」
何やら捨て台詞のようなものを吐いています。
ああ、汚らわしい。
結果的には、剣を抜かなくてよかったです。
あのような汚物でお父様から頂いた剣を汚すなど、あってはなりませんから。
まあ、剣を抜かずとも殺す方法はありますし。
ま、気にしないでおきましょう。
「あんたたち大丈夫かい?御免な、アイツ等も悪気があるわけじゃないんだよ。心配症なだけなんだけど、ちょっと見た目がアレだからさ。」
「あなた、だれー?」
私に変わってトレスが質問します。
ていうか、あなたいつの間に目を覚ましたんですか!?
いつの間にやら気絶から目を覚ましたトレスが私の隣に立っていました。
「あー、ゴメンゴメン。自己紹介がまだだったね。私はファーリー。Cランクの冒険者さ。」
えーっと、確か相手が名を名乗ったら、名乗り返すのでしたね。
お父様から教わりました。
「ウナと言います」
「私、トレス!」
「…………ドス」
「うん、よろしく!それでさ、あんたたちはここに何しに来たわけ?さっきの奴らじゃないけど、依頼?」
「いいえ、私たちはここに冒険者登録をしてもらおうと思ってきたのです」
「え!アンタ等冒険者になりたいの!?」
ファー……、なんでしたっけ?あ、フーリーでしたっけ?
フーリーはひどく驚いた表情を浮かべました。
しかし、この人声がデカいですね。正直五月蠅いです。
殺しますか。
剣に手をかけようとしたら、ドスが止めました。
ちっ。
「ええ、そうですが。なにか?」
「あ、いや。ただ、そんなに綺麗なのに、冒険者になろうなんて珍しいなぁって思っただけ」
そんなのあなたには関係ないでしょう。
はぁ、いい加減面倒になってきましたね。
さっさと登録を終わらせてしまいましょう。
あ、ついでです。このぼさぼさ赤毛にやり方を聞きますか。
「ええ。それでフー……リーさん…でしたよね?冒険者に登録するには如何すればいいのでしょうか?」
「ああ、そんなことかい。それならそこのカウンターで、必要事項を書けばいい。字が書けないんなら、職員が代筆してくれる。あとは登録料を払って終わりさ。あと、私の名前はファーリーだよ」
「成るほど、有難う御座います、フリーさん」
私は頭を下げます。
人から何かを教えて貰ったら、きちんとお礼を言う。
アンさんに教えてもらいました。
「………………い、いや、いいって。何かわからないことがあったら私に聞きな。分かる範囲で教えてやるよ。
私も最初の頃は、そんな感じでおどおどしてさ、ある人に教わったのさ。
その時の事を思い出しちゃって、それでつい声を掛けちゃってさ。
ごめんな、お節介だったかい?」
「いえ、別に構いません。ある人とは?」
「私に冒険者のイロハをたたき込んでくれた師匠みたいな人よ。パルディー・レイブンさんって言ってさ、アンタみたいに緑の葉っぱの刺繍が入った黒いマントを羽織ってさ。それで、似てるなーって思って、ついね」
「………へぇ、そうなのですか。その人は今どちらに?」
「今は出世して王都にいるんだよ。なんでも偉い人の付き人になったみたいでさ。あー、私もいつか、そうなりたいもんだね。それじゃあね。なんか困ったことが有ったら、いつでも私のところにきなよ」
そういってファー……ふー……何でしたっけ?
ぼさぼさ赤毛は去っていきました。
ふむ、いい駒を手に入れましたね。
今後の情報源として活用できそうです。
その後私たちは、カウンターで冒険者登録を無事にすませることが出来ました。
その際に、冒険者としての常識や知識、通貨価値や文化などある程度の情報も仕入れることが出来ました。
お金も手に入れることが出来ました。
ただ、その時に換金してもらった魔石については随分驚かれましたね。
それほど珍しい魔石だったのでしょうか?
お父様がいつも食べてる、おやつだと思いましたが。
あ、私もたまに一緒に食べます。美味しいです。
私としては、お父様の匂いの付いた魔石を手放したくはなかったのですが、お父様の命令では仕方ありません。
職員が魔石の出所についてしつこく聞いてきたのが少し鬱陶しかったですね。
お父様の指示で適当に誤魔化しておきましたが。
ああ、殺せないというのは不便ですね。
あ、門兵さんにお金を支払いに行かなくてはいけませんね。
その後、門兵さんにお金を支払ったところで、お父様から通信がありました。
『ウナ、冒険者の登録は終わったな?それじゃあ、手に入れた情報を教えてくれないか?』
「わかりました、お父様」
お父様からの命令です。
私たちはすぐさま串焼きを買って、近くの宿屋へと向かいました。
………美味しいですね、これ。
はふっ。
その頃ダンジョン
主人公「あれ、美味そーだな……ふぁぁ、ねむ」
アン「成るほど、肉を焼く………ダンジョンに利用できそうですね」
ぷるる「ぷーぷーぷー」
どうでもいい補足
冒険者パーティー『黒ハイエナの牙』
Cランク。ヒャッハ―な人たち。仕事のえり好みも少なく、その後のアフターケアも高いため、男性や老人から高い信頼を得ているが、その反面若い女性たちから依頼は圧倒的に少ない。
ちなみにリーダーのモヒカンは妻子持ちで、来月二人目が生まれる予定である。




