14.その人のイメージも本人のいないところで決まってる
前回の『黒ハイエナの牙』の反響がすごかった……
やはり、世紀末ひゃっはーの力は偉大だなと改めて思いました
一眠りした後、俺はウナ達が仕入れた情報をまとめていた。
『成るほど、冒険者たちはギルドを通じて魔物の情報を仕入れ、それを狩ることを生業としている訳か』
『はい、お父様。また冒険者にも格というものが存在し、強さや功績に応じ、上から順にS、A、B、C、D、Eというランクになっています』
ふむふむ。
冒険者。
彼らは冒険者ギルドという組合から依頼を受け、獲物を狩ることで収入を得ている者たちだ。
一口に依頼と言っても、それは市民からの雑用から、荷馬車の護衛まで様々だ。ただ、やはり一番多いのは、魔物の討伐らしい。
例えば下級の魔物、ゴブリンやコボルト、オークなどは繁殖力が高く常時討伐依頼が出されているらしい。
それを倒せば、倒した種類や数に応じて報酬が支払われる。
それ以外に強力な魔物、例えばドラゴンや巨人など、上級以上の魔物は個別に討伐依頼が発注されるらしい。
特に市街地周辺に上級以上の魔物が発見された場合、即座に討伐命令が出されるんだそうだ。
ちなみにこの辺りでは、炭鉱の方には、やはりというか、アクレト・クロウの討伐や炭鉱で働く人達の護衛もあった。
ランクはA。
依頼主は国で、常時発注しているらしい。
まあ、分からんでもない。あのカラス化け物だしな。
次に、一番気になっていた冒険者の強さ。
冒険者はEが新人でそこからランクが上がっていく。
一般的には、C~Bランクの冒険者が集団、つまりパーティーを組んで初めて中級から上級の魔物一体仕留めることが出来るらしい。
つまり、ウナ達は単独で中級の土蟲を仕留められることから、少なくともCランククラスの実力は持っているという事だ。
そして、最も強いSランクの冒険者。
彼らは単独で王級を仕留めることが出来る、らしい。
災害級はそんなSランクが徒党を組むことでようやく倒すことが出来るかどうかというレベル。
何人かは例外がいるらしいが。
………すげぇな。
人間つよ。
うーむ、話を聞くかぎりじゃ、冒険者の強さや魔物の強さはエリベルの時代からそう変わってなさそうだな。
つまり、エリベルの知識は現代でも十分通用するということだ。
それが分かっただけでもかなりの収穫だ。
また、エリベルの時代からどれだけ時間が経っているかもわかった。
今はエリベルの遺跡から、約二百年ほどが経過していた。
暦は今も神聖歴が使われているみたいだ。
ちなみに今は、神聖歴512年。
逆に言えば二百年たっても、通用するほどにエリベルの知識、研究成果はすさまじいということだ。
……マジでなんなんだ、この女?
ウナ達にはまだしばらく、この町にいてもらう予定だ。
ついでに、エリベルに関する情報も、集めてもらうとしよう。
研究成果はあっても、エリベル自身に関する記録は、ほとんどなかったしな。
まあ、一部の記憶は、極彩色の球体を通じて知ってるけど。
いずれは“本人”から聞くつもりだが、調べておいて損は無いだろう。
次に一般的な常識。
まずは通貨だ。
この国の通貨の単位はリェン。
やはりというか、国ごとに通貨の単位は異なるようだ。
俺のいた世界と同じで、通貨価値はある程度バランスを取るように各国で調節しているそうだ。
ちなみに、ウナ達に持たせた魔石は、二個で二百万リェンになった。
この国の基準では、約六万リェンあれば一家族四人が一か月過ごせるらしい。
一人当たり一万五千リェン。
………それを考えるとすさまじい額になったな。
そりゃ、職員にいろいろ聞かれるわ。
ドスがウナを抑えるのが大変そうだった。
トレスは勝手にギルド内をプラプラ歩いてるし。
自由すぎるだろこいつら……。
本当に、大丈夫かな?
しかし、思った以上にこの世界の生活水準は低そうだな。
例えば冒険者の場合。
最低ランクEのゴブリン討伐は一体に付き百リェン、オークなら二百リェンだ。
更に魔物の所持品や、魔石などは別途買取が行われる。
運が良ければゴブリン一匹で約三百リェンくらいにはなるそうだ。
つまり仮に最低ランクEの冒険者が、ゴブリンだけで一か月生活するには、通常ならゴブリンを百五十匹、運が良くても五十匹近くゴブリンを狩らばければいけないという事だ。
この世界の一年は三百六十日だ。んで、三十日の十二か月になっている。
つまり一日五匹、ゴブリンを狩らなければいけない。
いや、装備品やパーティーを組んだ場合を考えるともっと必要だろう。
数倍は必要なんじゃないかな。
思った以上に冒険者という職業は厳しいのかもしれない。
あくまで、ゴブリン計算ではあるけど。
成るほどね。ウナ達に声をかけた、えっと、なんだっけ?
ファー……なんだったけ、まぁいいや、赤毛の冒険者が驚くわけだ。
それでも、冒険者になりたい者は後を絶たないらしい。
出自を問わないから、どんな人間でもなることが出来るし、一攫千金という言葉があるように、討伐の危険率が跳ね上がれば、報酬もどんと跳ね上がるからだ。
ちなみに、キラーアントは十体で百リェン、スライムも十体で百リェンだ。安っ!
アクレト・クロウは一体で五百万リェンだった。凄っ!高っ!
次に言語。
この世界の公用語はファウード語といい、これはエリベルの石版に書かれていたものと同じ言語だ。大陸の名前がそのまあ使われてるな。
他にも獣人が使う言語や魔人族が使う言語などいろいろあるが、これはまあ、今はまだいいだろう。
次に俺たちのいる場所の国。
俺達のいる場所、つまりエルド荒野はボルヘリック王国という国の領地になっているようだ。
地図にあった国の名前と同じだな。
ウナ達が発見した町は王国の南に位置する鉱山町でアグールという町だそうだ。
人口はおよそ一万人程度。
それでも、この世界ではけっこうな規模の町なんだと。
どうも、エルド鉱山からとれる魔石で栄えた炭鉱町なんだそうだ。
この大陸には他にも大小様々な国があるが、ボルヘリック王国はその中でも五本の指に入る大国みたいだな。
そして、俺にとって最も忌むべき情報も手に入れた。
この国にはSランクの冒険者がいるそうだ。
それも三人。
そして、その中のうち一人は何とかつて“龍”を狩ったことがあるそうだ。
ふざけんなよ全く!
なんでよりにもよってそんなやつがこの国にいるんだよ!
ウナ達にはその冒険者のことも調べるように指示を出した。
とまあ、だいたいこんなもんか。
かなり掻い摘んだが、この世界の常識はだいたいわかった。
やはり外に出るのは良いな。
今まで知らなかったこと、気になっていたことが随分知ることが出来た。
この調子で調べて貰えば、知識のズレも完全に修正できるだろう。
やはり、外に出て正解だったな。
あ、俺は出てないか。
でも、ほらウナ達は俺の作ったゴーレムなわけで、それはつまり間接的には、俺が外に出たって事になるわけじゃんか。
え、ならない?
いいじゃん。
結果おーらい。
よし、それじゃあ次だな。
『ウナ、お前達はこれからもアグールの町で情報を集めろ。それと、冒険者として活動し、ランクを上げるんだ。AやBクラスになれば手に入る情報も桁違いになってくるだろうしな。ただ、不自然に思われないスピードでランクを上げていけ。外の基準でいけばお前たちは少なくとも、中級の魔物を単独で狩れる程度の実力を持っているってことなんだからな』
『畏まりました』
ウナ、ドスは頭を下げる。
ただ一人、トレスは違った。
『お父さん、トレス飽きたー』
『貴女、また……ッ!』
怒鳴ろうとするウナをなんとか制する。
飽きたときたか。全くこの子は……可愛いなぁ。
そんなくりくりした目で、お父さんを見つめるんじゃないよ、全く。
きちんと叱らなければいけないな。
まあ、そのうちな。そのうち。
『それじゃあ、トレスは戻ってこい。ウナ、ドスは一緒に外の情報収集を続けてくれ』
『………畏まりました』
『トレス、他の人間達に見つからないように、細心の注意を払って帰ってくるんだぞ?』
『はぁーい』
さてと、それじゃあ俺は俺で、やることがあるしな。
『それじゃあウナ達は行動を再開してくれ。俺もこれから出る』
『え、お父様も出るのですか?』
ウナが驚いたような顔になる。
見れば他の奴らも皆多かれ少なかれ、俺の発言に驚いているようだ。
隣でアンやぷるるすらも驚いた様子で体を揺らしている。
何だよ、人を引き籠りみたいに!
いや、間違ってないけどさ!
『いや、出るといっても外じゃない。別の場所だ』
『別の場所、とは?』
『ああ、それはな――――』
そこで俺はいったん言葉を区切る。
『ダンジョンだよ』
エリベルの残したダンジョン。
俺はそこに用があった。
俺のダンジョンの、最後のピースを埋めるために。
だから、エリベル。
もう一回、謝っとくわ。
ごめんなさい。
第二章『外界との接触』編 了
次回 閑章『アンのダンジョン防衛記!その2』
と言う訳で、これにて第二章終了になります。
え?ここで切るの?と思われるかもしれませんが、一番切りがいいのがここだったので、一旦ここで終了になります。
閑章、次章については活動報告に載せておきます。




