4.そのころ地上では
今回はダンジョンの外のお話にあります
場面はダンジョンの外に移る。
アース達が戦いの傷を癒していた頃、地上は混乱の極みにあった。
特に聖王国、ハザン帝国、魔術都市エンデュミオンにおいてはそれが顕著であった。
魔王アジルの脅威に怯えた民衆は聖都や帝都に殺到し、自分達の保護を求める。
その勢いはもはや暴動と言っていいだろう。
国の貴族や騎士たちは彼らをなだめるのに右往左往する有様。
このまま手をこまねいていれば、いずれ国としての機能が成り立たなくなるだろう。それ程に事態は深刻化していた。
また、魔術都市エンデュミオンについては純粋に魔物による物理的被害が大きかった。
アジルが斥候として放った大量の魔物たち。
その攻撃を受けて、都市に甚大な被害が出たのだ。
都市の重役やギルド長はボルヘリック王国への救援を要請。
現在は何とか国の機能を維持している状態である。
だが、変わりゆく情勢の中、変わらぬ者もいる。
「うーん、混乱もここに極めりだねぇ」
ギルドでのんびりと食事をとりながら、外の景色を眺め彼はそう呟く。
冒険者としての最高峰Sランクを冠する英雄、龍殺しヴァレッド・ノアードだ。
地上がどれほど混乱していても、彼は余り関心がない。
「稼げる依頼も少なくなったし、どうしたもんかねぇ……」
むしろそんな事よりも、自分の日銭の方が大事なのである。
冒険者ギルドは国とは独立した組織ではあるものの、各国との繋がりは強い。
この混乱の影響は少なからず受けている。
依頼の数は目に見えて減っている。
魔王アジルの影響により、魔物が活性化し被害が増えているのは事実だが、冒険者も商売だ。金がもらえなければ、好き好んで命がけの討伐に赴く者は少ない。
なにより魔物の目撃情報が錯綜し、まともに機能していないこの状況では、ギルドは討伐依頼を出す事すら出来ないでいた。
ヴァレッド自身、自分が戦闘狂である事は自覚しているが、戦うためには準備が必要だし、準備をするためには金が必要だ。人間が経済的な動物である以上、これは避けられない問題だった。
「いや……ヴァレッドさんクラスになれば、お金なんて困らないでしょう?」
そう問うのはヴァレッドの向かいの席に座るボサボサした赤毛の女性ファーリーだ。
誰?という方のために一応説明しておくと、ヴァレッドの知り合いで存在感の薄い女性である。以上。
「んーまあ、蓄えはあるからねぇ」
実際ヴァレッドは金銭面では別に困ってなどいない。
ただ何となく呟いてみただけだ。
本当の関心は別の所にある。
「それにしても、ベルディー遅いねぇ」
「ああ、そう言えばそうですね。確か、ヴァレッドさん達の師匠のお見舞いに行ってるんでしたっけ?確か、リンウさん……ですよね?」
確かめる様にファーリーが訊ねると、ヴァレッドは頷く。
「そうそう。いきなり姿をくらませたかと思ったら、瀕死の状態で発見されるんだからねぇ。まったく困った師匠だよ」
ヴァレッドは腕を組み、当時の事を思い出す。
エルド鉱山に突如出現した超巨大な魔物。
そして、その後のフォード沙漠での魔物達の大決戦。
その戦いの規模は凄まじいの一言で、人々にこの世の終わりを連想させるには十分すぎる程だった。
(……でもホント、あの戦いは一体何だったんだろうねぇ……?)
彼がベルディーを追ってフォード沙漠にたどり着いた時には、既に戦いは終わった後だった。
しかも、彼女と再会した時には、何故か聖王国の“聖櫃の聖女”や“烈風”、“水姫”まで一緒だったのである。
一体どういう事かと問い詰めれば、適当に誤魔化される始末。
その後も、ベルディーを問い詰めたが、「すまないが、今は言えない」の一点張りだった。
(“今は”って言ってる辺り、その内話してくれるんだろうけど、それにしたって気になるよねぇ……)
あの戦い以降、ベルディーはどこか様子がおかしい。
左目を押さえながら、「くっ、静まれ……私の左目……」とか呟いたり、「止めろグングニル……こんなところで力を解放するんじゃないッ……!」とか言いながら、必死に槍を押さえてる事が多くなった。
……正直、見ていてちょっと切なくなる。
(昔はあんな子じゃなかった筈なんだけどねぇ……)
いや、誰にでも『そう言う時期』があるのは確かだが、いい歳した女性がああいうのを人目もはばからずにやるのは如何なものだろうか?
口に含んだ紅茶の味が何だか切なく感じられた。
(んで、そのすぐ後に師匠が見つかったんだよねぇ)
彼らの師匠―――銀鬼リンウ・ソウセイが発見されたのは、そのすぐ後の事である。
ベルディーと共に帝都のギルドへ戻った際、ファーブニルの表層でリンウが発見されたとの報告が入ったのだ。
しかも今にも死にそうな程のボロボロの姿でだ。
無論、ヴァレッド達は、何があったのかとリンウに問い詰める。
本人曰く、昔の因縁に決着を着けてきたとか言っていたが、詳しい事は教えてくれなかった。
現在は帝都の治療院に入院中である。
(あの師匠をあそこまで追い詰めるなんて……一体誰だろうねぇ?)
ヴァレッドから見ても、師匠であるリンウの強さは底がしれない。
加えて鬼族特有の固有術式もある。
おそらく一対一で戦えば、龍殺しを発動させたヴァレッドでも勝つ事は出来ないだろう。
(あの化け物師匠とまともに戦える相手なんて限られてる。せいぜい倭の国の“雷斬り”か……あの魔女の騎士ルギオスぐらいだろうねぇ)
一瞬忌々しそうに顔をゆがめ、ヴァレッドにある考えが浮かんだ。
(もしくは……魔王軍と一戦交えてきた、なんてことは流石に無いよねぇ。……いや、でも)
今でこそ皇帝に認められ、冒険者として名を馳せているが、リンウは魔族だ。
それも二百年以上生きている古参の魔族。
魔王軍とも何かしら繋がりがあったとしてもおかしくはないだろう。
それに師匠がファーブニルで発見された際、謎の六本腕の巨人を見たとの情報もある。
(大陸会議の時、リアスと敵対していたスケルトンの傍にも六本腕の巨人が居たねぇ……同族か?それともあの時の魔物?)
「―――さん。ヴァレッドさん!どうしたんですか、急に黙り込んで?」
不意に声をかけられて、ヴァレッドは我に返る。
見れば、ファーリーが心配そうな顔で自分を見ていた。
「あー、すまないねぇ。考え事に集中していてねぇ」
「そうですか。……すいません、邪魔しちゃって」
「いや、別に謝らなくてもいいよ。それより、これからどうしようかねぇ」
やや強引に話題を逸らす。
「とりあえず、ベルディーさんが戻って来てからでいいんじゃないですか?」
それもそうか、とヴァレッドは頷き、食事を再開する。
◇◆◇◆◇
それからほどなくして、ベルディーがやって来た。
「すまん。待たせたな二人とも」
「構いませんよ。丁度食事も終わったところです。ベルディーさんは何か?」
頼みますかと、ファーリーはメニュー表を差し出すが、ベルディーは手でそれを制する。
「いや、軽く済ませてきた」
「ベルディー、師匠の様子はどうだった?」
「だいぶ良くなっているようだ。まあ、完治まではまだ数週間はかかるみたいだ」
「……いっそ、そのままずっと寝てればいいのにねぇ(ぼそっ)」
「何か言ったか?」
「別に何も」
「そうか」
「それで、これからどうするんだい?依頼掲示板を見てきたけど、今は碌な依頼が無いみたいだねぇ。適当に魔物でも狩りに行くかい?」
「そうするか。どうにもここ最近、魔物がより活発になってきているからな」
フォード沙漠でのアース達の大決戦以降、地上の魔物の数は増える一方だ。
魔王軍が斥候で放った魔物達に加え、元々この大陸に住みついていた魔物達も活性化してきている。数も質も以前とは比べ物にならない。
人間達の被害は増える一方だ。
「えーっと、それじゃあお二人が討伐に言ってる間、私は買い出しをしておきますね」
そう言ってファーリーは席を立つ。
「あれ?一緒に行かないのかい?」
「馬鹿言わないで下さいよ。二人の戦いに私が付いて行けるわけないじゃないですか」
ファーリーは、今は半分足を洗っているが、Cランクの冒険者だ。
そんな彼女でも最高位Sランクである二人の冒険に付いて行ける訳がない。
ぶっちゃけ戦闘の余波だけで死ぬ。
帝都での戦いの時には、自分の身は自分で守るとベルディーに啖呵を切った彼女だが、それとこれと話が別だ。
「それに、ちょっと気になるところがあるので、そっちに行ってきます」
「気になるとこ?どこだい?」
興味本位でヴァレッドが訊ねる。
「占い師ですよ。今、帝都でちょっとした話題になってるんですよ。よく当たるって評判なんです」
「へぇ、占いねぇ……」
興味津々といったファーリーとは対照的に、ヴァレッドは途端に冷めた表情になった。
そもそもこの男、占いなんて心の底から信じていない。
未来は自分の力で切り開くもの。それを他人の甘言に委ねるなんでもってのほかという考えの持ち主だからだ。
「そうか、なら私も付いて行こう」
「「えっ?」」
意外な事に、ベルディーが賛成の意を示した。
ヴァレッドとファーリーも驚いた顔でベルディーを見る。
「意外だねぇ、君が占いに興味があるなんて」
「いや、別に興味などない」
は?とヴァレッドは首をひねる。
「え?じゃあ、なんでだい?」
「強いて言うなら……なんとなくだな。それに……」
「それに?」
「―――私の“左目”が疼くんだ。その占い師に会った方が良い、とな」
「あ、うん。そうかい……」
左目を押さえながらそう言うベルディーを見て、ヴァレッドは何とも言えない気持ちになった。
ファーリーもどこか切ない眼差しをベルディ―へ向ける。
「そう言えば、ファーリー。その占い師の名は何というのだ?」
「え?名前ですか?えーっと……」
んーと考え込み、やがてファーリーは口を開く。
「確か―――“トルパ”って名前だったと思います」
「そうか」
「それじゃあ、ここからは別行動だねぇ。それじゃあ、また夜に宿で」
「ああ」
こうしてヴァレッドは帝都郊外へ魔物狩りに、ベルディーとファーリーは占い師に会いに行くことになった。
そしてこの選択が、彼らの運命を大きく狂わせることになる。
◇◆◇◆◇
ヴァレッドと別れたベルディーとファーリーは帝都の大通りを歩いていた。
「えーっと、確かこの辺だった筈です」
「もしかして、アレか?」
ベルディーが大通りの一角を指差す。
そこには二十人以上の行列が出来ていた。
「あ、多分あれですね。うわー聞いてた通り、凄い人気ですね」
「それだけ民衆が“安心”を求めているという事だろうな……」
列に並びながら、ベルディーはどこかやるせない気分で大通りを見る。
活気にあふれていた以前とは違い、今の帝都にはどこか淀んだ空気が漂っている。
皆、不安で仕方ないのだろう。
(出来れば今すぐにでも、彼らの不安を解消してやりたいが―――)
あの戦いの後、ベルディーはオリオンから今回の戦いの経緯を全て聞いた。
魔王アジルとフォード沙漠に現れた化物は同一である事も。
魔王軍も隊長格を含め既に壊滅的な被害を受けている事も。
そしてそれを倒したのが、エルド荒野大規模討伐戦で戦った地龍と黒蟻の勢力である事も、色々と聞かされた。
仮にベルディーが今ここで、それを声高に叫べば、彼らの不安は解消されるだろう。
Sランク冒険者の発言とは、その程度には影響力があるのだ。
だがそれは出来ない。
ベルディーは、事実を知る代わりに、決して口外しない様にと堅く約束させられたのだ。
その理由も理解できている。
(私が街中で叫ぶのと、聖王国の聖女が公の場で情報を公開するのとでは、民に与える影響が違いすぎるからな)
魔物との戦いならまだしも、政治的な判断力、影響力はオリオンの方が遥かに上だろう。
民に伝える伝播速度もだ。自分が今ここで叫べば、その流れを狂わせてしまう恐れすらある。
おそらく時期を見て聖王国から発表がある筈だ。
気持ちは逸るが、自分はその時まで待てばいい。
(……と、もうすぐか)
気づけば、もうすぐ自分達の番になろうとしていた。
「はい、次の方、どうぞ」
ベルディーの番が来た。
(……随分、奇妙ななりをした占い師だな)
席に着くなり、ベルディーはトルパと言う名の占い師を観察する。
フードを目深に被り、ローブも全身を覆う厚手の物、男か女かも分からなかった。更にネックレスやアクセサリーも過剰に装備し、ローブの端には幾何学的な刺繍が施されている。
(グングニルはなぜ私をこの占い師に会わせようとしたのだ……?)
机の上には様々な絵柄のカードが並べられていた。
どうやらこれで占うらしい。机の脇には小さな箱が置いてあり、そこに料金を入れるようだ。
「大変お待たせしました。では、占ってもらいたい内容を―――おや?」
ベルディーが席に着くと、占い師が怪訝そうな声を上げる。
「なんだ?」
「あ、いえ……その、失礼ですが、貴女はもしや“穿界”様ではありませんか?」
「ああ、そうだ」
ベルディーやヴァレッドの名は帝国中に広まっている。
別にことさら隠すつもりもないので、彼女は頷いた。
「やはりそうでしたか。いやあ、お会い出来るとは光栄です」
「世辞はいい、さっさと占ってくれ」
「畏まりました。では、占う内容は?」
「そうだな……」
そこでベルディーはしまったと思う。
この占い師に会うこと自体が目的であって、占う内容を考えていなかった。
どうしたものかと悩んでいると、後ろからファーリーが助け舟を出してくれた。
「それじゃあ、ベルディーさんの運命の相手とかはどうですか?」
「そうだな。じゃあ、それで頼む」
「えっ」
「なんだ?」
「あ、いや、その半分冗談のつもりだったんで……あ、いや、今のは―――」
慌てるファーリーに対し、ベルディーは苦笑する。
「私だってこれでも女だ。運命の相手くらい気になるさ」
「えっ!?」
本気で驚くファーリーに対し、今度は若干心がささくれ立つ。
「ファーリー……お前私を今までどんな目で見てたんだ?」
すうっとグングニルに手を伸ばす。
「あートルパさん!早く、早く占いをお願いします!早く!」
「あ、はい。分かりましたえーっと、ではこの中からカードを三枚お選びください」
「……」
何か釈然としない気持ちを抱えながらも、ベルディーは差し出されたカードの束から、適当に三枚引き抜き、言われた順に並べる。
説明によると、それぞれのカードが『時期』、『場所』、『相手』を現しているらしい。
ベルディーの選んだカードは順に、「月」、「荒野」、そして「女王」が描かれたカードだった。
「ふぅむ……これは……」
占い師は少し考え込む仕草をする。
「どうした?」
「いえ、随分と珍しいパターンだったモノで」
「ほう……」
「直訳すれば、『近い将来、戦場で、貴女を討つ者』となるのですが……これは中々に解釈が難しい組み合わせですね……」
占い師は口元しか見えないが、随分と悩んでいるように見える。
だが、逆にベルディーはじっと選んだ三枚のカードを見つめていた。
(……月と荒野と女王、か。……私を討つ者だと?笑わせるな。“貴様”を討つのは私の方だ)
ふっとベルディーは笑い、席を立つ。
「おや、如何しました?まだ、結果が―――」
「いや、もう十分だ」
そう言って、ベルディーは備え付けられた箱に硬貨を入れた。
「……なるほど、既に“答え”をお持ちでしたか」
「ああ。アナタには悪いが、やはり私には占いは性に合わないみたいだ」
「構いませんよ。人の持つ道は人それぞれ。アナタの信じた道を往かれるのが正道でしょう」
「そうか。そう言って貰えると、助かる」
そう言ってベルディーとファーリーはその場を去る。
その後ろ姿を占い師はいつまでも見つめていた。
そして、二人が去った後、占い師は呟く。
「……流石、あの槍に選ばれただけのことはありますね」
にやりと笑い、カードを懐へと仕舞う。
「すいませんが、今日はもう店じまいです」
すると、次々に不満の声が上がる。
まだまだ客は列をなしていたが、占い師は強引に店を切り上げ、その場を後にした。
◇◆◇◆◇
占い師トルパは人通りが少ない裏通りへと入る。
そして周囲に人がいない事を確認すると、懐から一枚のカードを取り出し、それを耳にあてた。
『もしもし?』
『―――どうしました?』
『“穿界”と接触しましたので、報告をと思いまして』
『ほう、それはご苦労様です。それで、回収はしたのですか?』
『いいえ。やはり彼女は既に槍に主と認められているようです。あの状態では、回収するのは困難でしょう。それにこれから新たな主を見つけるのでは時間がかかりすぎます』
『そうですか。他の武器は?』
『彼女と同様です。“聖櫃”も“魔剣リディル”もそれぞれ当代の持ち主と認められているようですね。五百年前の勇者の仲間の様に』
『……神杖カドゥケウスは?』
『不明ですが、おそらく今はあの魔女の手にあるかと。ウロヌス様との騒動の際、我々が回収出来ていないのであれば、彼女の手に渡ったと考えるのが自然かと』
『となれば、主として認められるのは時間の問題ですか』
『はい。如何なさいますか―――“ギブル”様』
『勇者に与えた雷の力は、今は可愛いアースの手に渡っています。他の武器に関しても、出来ればあの子の元に集まる様にしてもらいたいのです』
『可能でしょう。“聖櫃”、“グングニル”の持ち主は、ご子息のダンジョン―――正確には、その眷属とも関わりが深い。うまく誘導すれば、儀式に間に合うでしょう。むしろ、問題は“席”の方では?』
『そちらは問題ありません。既に全ての席は埋まりましたからね』
『……?少なくとも、二、三、五はまだ空席だった筈では?』
『二に関しては、力は小さいですが素養のある者たちが居ます。アースが丁度いい子らを作っていましたからね。五に関しても、フラウカンの子孫がエルド荒野に住み着いていますし、三は―――クシャスラを使えば問題ないでしょう』
『……彼女を?もしや、初めからその為に、彼女をご子息のダンジョンに?』
『だとしたら?』
『……いえ、素晴らしい采配かと』
『なので貴方にも本格的に動いてもらいますよ?良いですね、トルパ?
いいえ―――現星脈眷属筆頭 『愚者』アルト・パルトよ』
『……仰せのままに、ギブル様』
◇◆◇◆◇
一方その頃、
「ぶ……ぶひぃぃ……ぶひぃぃ……うっぷ……」
「……ん、豚さん、大丈夫、ちょっと休憩する?」
「いや、まだ移動して十分も経ってませんよ?」
「姉御、すまねェ。旦那は、馬車(出荷)に弱いんだ……ッ!」
「誰が姉御ですか!?全く、貴族(豚)のくせに乗り物酔いとか、勘弁して下さいよ……」
「こ、こひゅー……馬車は……ぶ、ぶひっ普段は平気なのですが……ふーッふーッ……いかんせん、緊張して……おぇぇぇ」
「吐いた!?この豚……ッ!」
「……ん、ウナ姉、抑えて」
「あら、ドスさん?抑えるのはシュヴァイン卿の方では?」(豚の背中をさすりながら)
「オリオンも!天然なボケをしないで下さい!」
「仕方ねぇな……おい、旦那を横にしてやりな」
「へい」
「チビ、テメェは床を拭け」
「へい」
「デブ、回復魔法で旦那のケアを。あとは換気だ。」
「へい」
「うっぷ……すいませんねぇ、皆さん……」
様々な思いは交錯し、やがてひとつのダンジョンで交わろうとしていた。
豚はいつだって出荷される時が一番つらいんだ……
次回はアースさん側に戻ります




