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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第十章 魔王と三人の転生者

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20.VS魔王軍 その一

すいません。ちょっと後半部分の展開が気になり、一度削除して、もう一度投稿し直しております。

混乱させてしまい、大変申し訳ありません。

前半部分は同じですが、後半部分が修正されております



 第二エリア・フォード沙漠にて、第一部隊隊長スプンタは未だにダンジョンに足を踏み込めていなかった。


 それもその筈。

 彼の眼前に迫るのは、砂漠を埋め尽くさんばかりの無数の蟻。その数は、優に数万は下らないだろう。

 インペリアル・アントと呼ばれる上位種から生まれた彼らは、集団戦において、この上ない力を発揮する。しかも、最下級種のキラー・アントとは違い一体一体が中級並みの力を持った悪夢の軍隊だ。

 かつてインペリアル・アントの軍勢を参考にして新たな陣形が生み出されたと言われる逸話を持つ程、彼らの連携は凄まじい。完璧に統制された数の暴力ほど恐ろしいものはないのだ。

 だが、


「臆するな!!」


 対する魔王軍第一部隊も負けてはいない。

 スプンタの剣が、一体のキラー・アントを切り裂く。

 すると、途端に周囲の蟻達の動きが鈍った。

 蟻達を押しのけ、スプンタは前進する。


「見ろ!およそ十体に一体程の割合で、司令塔となる蟻が存在する。行動の違いを見極めろ!最優先で、そいつらを潰せ!そうすれば隊列は乱れる!数に惑わされるな!」


「「「オオオオオオオオオオオオ!!!」」」

 

 蟻達は無差別に魔王軍に襲い掛かっているのではない。かといって、全ての蟻が女王蟻の行動の元に動いている訳でもない。

 その攻撃には、統制された動きがあり、パターンがあり、それを伝達する司令塔が存在する。女王蟻を頂点としながら、間に司令塔を挟むことで彼らは完璧な集団行動を行っているのだ。


(この数だ……司令塔となる蟻を更に統率する蟻も存在するはず。その組織図を見極め、辿っていった先に勝機がある!)


 それを見つけ出し、潰す。

 そう思い、彼は戦場を駆ける。


 だが、彼の予想はあっさりと裏切られた。


『―――アナタが隊長格ですね?』


 頭に響く凛とした、それでいて澄んだ女性の声。


「―――っ!?」


 同時に、目の前に迫る大剣。


 キィィィン!と、甲高い音が響く。


 凄まじい衝撃に、彼は数歩後退する。


「ぬぅ……?」


 ビリビリと腕がしびれる。何という重く鋭い剣撃か。

 目の前を見れば、そこには明らかにほかのキラー・アントとは違う個体が居た。

 ―――女王種。それも、手に大剣を持ち、地龍の皮で出来たマントを羽織っている。

 報告に有った特徴と同じ。

 すなわち、この魔物が―――。


「なるほど……考える事は同じという訳か……」


 同じく群れを率いる者同士。

 その思考は似通って来る。

 頭を潰すのは戦術の基本だ。


「インペリアル・アント女王種アンとお見受けする。私は魔王軍第一部隊隊長“剣聖獣”スプンタ」

 

 故にスプンタは名乗りを上げる。

 後方に隠れず、臆することなく前線へ赴いた誇り高き敵手へのせめてもの礼儀だ。


「―――いざ、参る!!」


 次の瞬間、凄まじい砂塵が宙を舞った。



◇◆◇◆◇



 その頃、第四エリアにて―――


 侵入した魔王軍第三部隊は、着実に階下へと移動をしていた。

 第三部隊はサキュバスのハウロトを隊長とした、人型の魔族達で構成されている。武装し、角や尻尾を隠せば、彼らは殆ど人間の冒険者と見分けがつかない。諜報や謀略、暗殺を得意とする部隊だ。

 そんな彼らの顔には、緊張と困惑が走っていた。

 なぜか?


 何もなかったからだ。

 

 ゴーレムも、トラップも無い。分かれ道も無い、ひたすらに単調な一本道。

 余りにも順調すぎる道程。

 だがその順調さが、返って彼らの警戒心を募らせていた。

「大丈夫なのか?」、「なぜ誰もいない?」、「ゴーレムはどこに行ったのだ?」など、彼らは口々に不安を言う。顔にこそ出しはしないものの、それは隊長であるハウロトも同感だった。


(……一体どういう事かしら?もう、三階層まで降りたのに何も接触が無いなんて)


 嫌でも何らかの罠を疑ってしまう。

 何があろうとすぐ対処できるように、細心の注意を払いながら進めてはいるが、こうも何もないとは不気味にすぎる。

 やがて、視界が明るくなった。


「これは……森?」


 そこには森が広がっていた。

 見渡す限りの木々。生い茂る草花。小鳥のさえずり、川のせせらぎまで聞こえてくる。

 思わずここがダンジョンかと疑ってしまう程の見事な森が目の前に広がっていた。


(内部が特殊な環境になっているダンジョンもあるけど、ここまで精密なのは初めて見るわね……)


 その出来栄えに、ハウロトは思わず感嘆の息を漏らす。

 一体どれほどの手間と時間を費やしたのか?この完成度は防衛設備と言うよりも、もはや完全に趣味の領域ではないだろうか?

 きっと、製作者は余程の凝り性だったに違いない。

 細かなところまでも、その心意気がうかがえる。


「凄いわね……お姉さん、思わず感動しちゃった……」


 敵ながらあっぱれだ。

 ならば、やる事は一つだ。

 頷きながら、ハウロトは部下に指示を出す。


 ―――焼き払え、と。


 当然の判断だった。

 部下達も迷うことなくその指示に従う。

 そして、その攻撃が放たれんとした―――まさに、その時だった。


「燃やしちゃだめー!」

「ぷるー!」


 どこからか、そんな声が聞こえてきた。

 視線を向ければ、小学生くらいの女の子と小さなスライムが立っていた。


「ここは、ちゅらんや、ごんぞーたちとの遊び場なの!だから燃やしちゃ駄目ー!」

「ぷるーぷー!」


 ぷんすかと言う表現がぴったりだった。


「あら、随分可愛らしい子達が出てきたわね」


 その愛くるしい姿に、ハウロトも思わずほころんでしまう。


 だが、一瞬のうちに表情を消し、冷たい口調で部下に命じる。


「―――全員、見た目に惑わされるな。特にスライムの方は、アジル様から報告のあった確殺対象よ」


 その言葉に、魔族達の顔色が変わる。

 目の前の存在を子どもとスライムから、明確な“敵”へと変化させる。

 武器を構え、魔力を解放。

 じりじりと、二人に接近する。


「ふぇ?」

「ぷるー?」


 すっとハウロトが手を上げる。

 そして、一言。


「―――殺せ!!」


 直後、凄まじい爆音が森林エリアに響き渡った。

 木々がなぎ倒され、そこかしこにクレーターが出来上がる。

 だが―――。


「あら、良く避けたわね。いえ、流石……と言うべきかしら?」


 ぺろりと、ハウロトは妖艶に唇を舐める。

 彼らが攻撃した場所には、誰もいなかった。

 どうやら、逃げられたようだ。


「魔力感知は常に全開にしなさい。いつどこから奇襲を受けても良いようにね」


「「「はっ!!」」」


 部下たちが一斉に頷き、すぐさま周囲をくまなく探索する。

 無論、ハウロトとて全神経を集中し、二人の行方を追った。


(気配の隠し方が上手い……いや、ここは敵陣。当然と言えば当然ね……)


 今しがたの攻撃の際、あの一人と一匹―――特にあのスライムの方から感じた魔力。

 アレを感じて、油断など出来る筈もない。


「……グラトニー・ヘル・スライム個体名ぷるる、それとゴーレム・ホムンクルス個体名トレス。二人とも、ちゃーんと報告書に上がってるもの。見た目に騙されたりはしないわよ。全力で、始末させてもらうわよ」



 

 そして、少し離れた木の陰で、トレスとぷるるは汗をぬぐっていた。


「ふー、びっくりしたねー、ぷるるー」

「ぷるー……」


 結構危なかった。

 変態(オーテル)との日々の追いかけっこで鍛えた瞬発力のおかげで、なんとか避けることに成功した。


「みんな強そうだったけど、特にあのばいんばいんの人すっごい魔力だったねー」

「ぷるーぷーぷー」


 その体の一部を思い出し、トレスは戦慄する。あれは脅威的―――否、胸威的だった。

 一体、何食ったらあんなに育つんだ?自分は未だにブラも付けていないと言うのに。

 震えるトレスをぷるるは心配そうに見つめる。らぶりーだ。


「ぷるー……」

「え、大丈夫だって、心配しないでよぷるる。私だって、すぐにあれくらいばいんばいんになるんだから!」

「ぷ!?ぷる、ぷるー!」


 違う、そうじゃないと、ぷるるは体を震わせる。

 

「それに、あんな奴らより、ぷるるや私達の方が何倍も強いもん!みんなの準備も出来たみたいだしね」

「ぷる!」


 どうやら向こうは既にこっちが罠を仕掛けていた事にも気づかなかった様子だ。

 

「じゃ、はじめよっか、ぷるる。みなごろしだよー」

「ぷるー!」




◇◆◇◆◇



 一方、第五エリアにて―――。


 ロブン率いるファーブニルの眷属達は、魔王軍第四部隊と戦っていた。

 陣頭指揮を執るのはロブンだ。

 眷属達との見事なコンビネーションとダンジョントラップ、ゴーレム達との連携により、瞬く間に魔王軍を追いつめてゆく。


「見ていて下さい、エリベルさん。僕は、この勝利を貴方に捧げry―――」


 以上。

 特にこれと言った点も無いので、あとはロブンが勝手に頑張ってくれるだろう。

 ふぁいと。

 


◇◆◇◆◇



 第六エリアにて―――。


 エルジャは他の聖龍達と共に、ダンジョンの中間地点にて待機していた。


「中々来ませんわね……」


 地上部分に穴をあけられてから結構時間が経っていた。

 早ければもう第四層か、五層辺りに来てもおかしくない頃だ。

 現に第四、第五エリアでは既に眷属との交戦に入っていると聞く。


 だが、敵の気配は遥か上層。


 一層か、二層くらいの場所でずーっと止まっている。

 一体どうしたのだろうか?


「エルジャ、映像魔石で上層の様子を見てみるかい?」


「そうですわね。あと、馴れ馴れしく呼ばないでくださらない?」


「あ、うん、ごめんね……」


 しょぼんと肩を落としながら、ポロロは映像魔石を操作する。

 映し出された映像には、第一層をウロウロする魔族達の姿が映し出されていた。

 その中で、眼鏡をかけた神経質そうな鬼族の男が指示を飛ばしている。


『い、いいですか、皆さん!どこにどんな罠があるか分かりません!慎重に、そう!慎重に進むのですよ!』

『了解です!隊長!』


 彼らは第一層を徹底的に調べ上げるつもりらしい。

 どうやら、この部隊、かなり慎重派のようだ。それはダンジョンの攻略としては正しい姿なのだろうが、それにしても転がってる小石の数まで数えて意味があるのだろうか?

 しかも、


『モルダ隊長!こっちに宝箱があります!どうしますか?開けていいですか?』

『駄目です!罠かもしれません!放っておくのです!』

『隊長、こっちには階下に繋がる階段が!降りますか?』

『駄目です!罠かもしれません!まずはこのフロアのマッピングを全て済ませてからです!』

『隊長、こっちの壁には“絶対押すな”と描かれた謎のスイッチが!』

『絶対に罠です!どう見ても罠です!いいですか!絶対に押しちゃだめですよ!』

『分かりまし――あっ、手が滑って』(カチッ)

 ガコン。

『わー落とし穴だあああああああ!!』

『だから言ったじゃないですかー!!』

『ぎゃあああああああ―――』

『――――』

『――』



 なんだこれ?

 映像を見ていた全員が、そう思った。


「………まだ、しばらくかかりそうですわね……」


 出来の悪いコントを見せられながら、エルジャ達はそのまま待機を続けた。



◇◆◇◆◇



 そして監視室にて―――。


 どこのエリアも、魔王軍相手に奮闘してくれている様だ。

 それぞれのエリアの様子を眺めながら、俺も準備を進める。


「第八エリアの方も今のところは問題なさそうね。みんな頑張ってくれてるみたい」


 そっちの方を見てみると、スケルトン軍団が獅子奮迅の活躍をしていた。

 敵は魔王軍第七部隊。あのアルマティの部隊か……。手強いな。

 だがスケルトン達は、今までの経験が生きているのか、ゴーレム達との連携し、更にトラップもうまく併用することで、魔王軍の精鋭相手にも一歩も引かない激戦を繰り広げている。

 特に、前線の五体のスケルトンの動きがいい。

 盾役の大柄なスケルトンに、敵をかく乱するレンジャー風のスケルトン、それに戦士型の二体に、後方支援のスケルトン・メイジ。

 唯一スケルトン・メイジとの連携だけがちょっとぎこちないが、それも許容範囲だろう。

 まるで生前からパーティーを組んでいたかのような連携っぷりだ。

 

「あれ、結構古参のスケルトンなのよ。素材も良いし、経験値もあるから他のスケルトンよりも強いわよ」


 俺の視線に気付いたのか、エリベルが補足してくれた。成程な。それに第八エリアは奥にラセツやリザード型も控えてるし、問題はないだろう。


 さて、と。それじゃあちょっと行ってくるか。

 ここはエリベルに任せ、俺は転移門をくぐり別の場所へ移動した。



◇◆◇◆◇



 ダンジョン深層にあるとある部屋。

 そこへ移動すると、待機していた二人は俺に気付いたのか顔を上げて、こっちを見る。


「あ、お父さん。待ってたよ!」


 そう言って、ぴょんっと俺の背中に飛び乗ったのはツムギだ。

 『道外し』から『夢霧』へと進化した影響か、彼女の容姿は少し変わっていた。

 以前は真っ白だった髪の色が、白と黒の混ざり合ったような髪になっている。


『ツムギ、具合はどうだ?どこか違和感はあるか?』


「んーんー大丈夫だよ。前からこんな感じだったって思えるくらいに自然」


 そうか、ならよかった。

 今回使用した『進化の魔石』はエリベルが改良した新型だからな。

 肉体への負荷も軽減され、死亡率も大幅に下がっている。なにより、一度『進化の魔石』を使用した個体以外なら、誰でも使用できるようになったのが大きい。

 まあ、その分、魔力の消費量が半端なく増えたけど。

 なにせ今回の二人の進化で、溜めこんでいた魔石の殆どを使っちまった。

 

『ゴンゾーの方はどうだ?』


「ブフォォォ!!!」


 元気よく吠えるゴンゾー。

 こちらも問題ない様だ。

 ゴンゾーはツムギ以上に容姿が大きく変化していた。

 肉体は大型トラック並みに巨大化し、角もヘラクレスカブトムシのような形に変化している。サイと言うよりもはや恐竜だな。でも無事に進化してよかった。


『二人とも大丈夫そうだな。早速で悪いんだけど、ダンジョンの防衛に加わって貰っていいか?』


「勿論だよ。私だって、みんなの役に立ちたいよ。ファルも守らないといけないし!」

「ブフォッ!」


 二人ともやる気満々の様だ。

 良かった。ツムギは神災級、ゴンゾーも厄災級まで進化した。この二人が加われば、ダンジョンの防衛は、更に盤石なものになるだろう。

 

 唯一の気がかりは、アジル自身がまだ何の動きも見せてい無いところか……。


 最悪の予想が当たらなければいいけど。

 ともかく、今は侵攻してきた魔王軍を何とかしないとな。

 

 ツムギ達が移動をしたのを見届けてから、俺も監視室へと戻った。



◇◆◇◆◇



 そして―――


「さて、それじゃあそろそろ行こうか、ヤムゥ」


「一応確認しておくが、ダンジョンへはまだ向かわんのだろう?」


「うん、その前に準備がいるしね」


「それじゃあ、まずはあそこか」


「ああ。先ずはエルド荒野の隣に広がる山脈―――エルド鉱山へ向かおう」






作者が忘れないための現在の戦況


第二エリア アン、女王種、子蟻VS第一部隊スプンタ(老剣士)

第四エリア トレス、ぷるる、森の四長VS第三部隊ハウロト(ばいんばいん)

第五エリア ロブン、ファーブニル勢VS第四部隊アシャ

第六エリア エルジャ、聖龍、輝龍VS第八部隊モルダ(鬼メガネ)

第八エリア ラセツ、スケルトン軍団VS第七部隊アルマティ



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