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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第十章 魔王と三人の転生者

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19.総力戦、開始



 ラセツがダンジョンへと帰還した。

 どうやら無事に敵を始末出来たようである。


「簡単でした……あ、ござる」


 が、ラセツ的には歯ごたえが無さすぎて退屈だったらしい。

 一応、相手は災害級の強さだった筈なんだけどなぁ……。

 魔王軍第二部隊隊長“死霊獣”ウォフ。

 種族はエルダー・リッチ。ロブンのデス・ロードと双璧を成すアンデッドの頂点だ。

 それが弱い筈なんてない。

 単純にラセツが強すぎただけなのだ。

 身内びいきとか、そう言うのを抜きにしても、ラセツは強い、それも異常な程に。

 伸び代の底が見えない。あと、その語尾、未だに慣れないのか。すまん、ラセツ。普段の俺が適当なこと言ったばかりに……。


「お疲れ様、ラセツ君。それじゃあ、元のエリアに戻って頂戴」


 こくりと頷いて、ラセツは中層エリアへ戻って行った。


「さてと、それじゃあ、これの解析をしましょうかね」


 そう言ってエリベルが取り出したのは、ラセツが持ち帰った戦利品。

 ウォフが身に着けていた転移の指輪だ。あと死体。

 転移先がどこに指定されてるか知らないが、何らかの情報を得られれば御の字だ。


 こっちからも攻勢に出ないとこの戦いは終わらない。

 守ってばかりじゃ、意味がないからな。

 それに、もう少しで、ツムギとゴンゾーの準備も整う。

 そうなればこっちの番だ。



◇◆◇◆◇



 一方その頃。

 魔王軍第一部隊隊長スプンタは、ウォフの帰りを待っていた。


「遅い……遅すぎる。定刻の時間はとっくに過ぎているというのに……」

 

 一体どうしたというのか?

 何か予想外の事態でも発生したのか?

 そんな彼の不安を的中させるかのように、右手の指輪が砕けた。

 

「これは……まさか、ウォフが敗れたというのか……!?」


 砕けた指輪は、ウォフが身に着けていた転移の指輪の転移先だ。

 そして、ウォフ自身の身に何かあれば、もう片方の指輪が砕ける様に設定されていたのだ。

 これが砕けたという事は、ウォフが敗れた事に他ならない。

 信じられぬと、スプンタは独りごちる。

 ウォフは、スプンタやザハークに次ぐ古参の魔族だ。その実力は疑いようのない。

 それが、まさかこんなところで敗れるだなんて……。


「一応、想定はしていたとはいえ……アジル様に何と報告すれば良いモノか……」


 僅かに目を伏せ、彼はウォフの死を悼んだ。

 そしてすぐさま気持ちを切り替える。

 作戦は継続中なのだ。

 通信魔石を使い、各隊長格へ連絡を入れる。


「―――全員、配置についたか?」


 直ぐに返信が来た。


『第三部隊、配置についたわ』

『第四部隊配置完了だ』

『―――第七部隊、準備完了』

『えっと、お、同じく第八部隊配置完了しました。はい』


 現在侵攻に参加している隊長格は、スプンタも含め全部で六人。

 いや、ウォフが死んだ今、残りは五人か。

 第一部隊隊長スプンタ。

 第三部隊隊長ハウロト。

 第四部隊隊長アシャ。

 第七部隊隊長アルマティ。

 第八部隊隊長モルダ。

 現在前線に出ているのは、以上の五名。

 あとの二人の隊長格は、彼らのダンジョンで待機している。

 つまり現状、これが彼らの最高戦力と言う事だ。


「よし、全員準備は良いな。ではこれより作戦を開始する」


 『『『『―――了解』』』』


 彼らは誰ひとり、ウォフについて問い詰めることはしなかった。

 何故なら、スプンタは先ほど“全員”と言ったからだ。

 それはつまり、言外にウォフがやられたと、彼らは理解したのだ。


「では、始めよう……」


 目の前に広がる砂塵を見ながら彼は呟く。

 今、スプンタがいるのは、ハザン帝国の南に広がるフォード沙漠だ。


 そして彼の横には、小学生くらいの白い髪の少女が居る。

 その手には、こぶし大の魔石が握られていた。


「報告によればこの辺りだった筈だ。どうだ?」


 スプンタは少女に訊ねる。

 少女は砂に手を当て、その感覚を確かめる。


「間違いありません。……が、予想以上の規模と魔力濃度です。恐らく、我々でも発動は一回が限界かと」


 一回だけか……。

 今後の事を考えれば、温存すべきか?

 いや、それでは勝てない。


「……構わん。―――やれ」


「……畏まりました」


 僅かに目を伏せ、白い髪の少女は手に持った魔石を喰らう。

 ガリガリと咀嚼し、飲み込んだ瞬間、彼女の魔力が爆発的に膨れ上がった。

 あまりの力の奔流に、胸を押さえ、苦しそうに呻く。


「うぐっ……い、一時的な、能力の上昇を……確認しました。……往けます」


 少女は両手を砂に埋め、自らの能力を解放する。

 そう、ダンジョンにとっての天敵ともいえる“あの能力”を。


「―――“ダンジョン改変”発動!」


 次の瞬間、轟音と共に、砂漠に大穴があいた。



◇◆◇◆◇



 時を同じくして、他の中層エリアがある地域でも、同様の現象が起こった。


 地上よりダンジョンへ続く大穴が開き、上空に転移門の魔術陣が浮かび上がる。

 予め仕込んでおいた、一方通行の転移門だ。

 そこから現れるのは無数の魔物の軍勢。

 先程の斥候部隊とは違い、その全てが上級以上で構成された魔王軍の本隊だ。


 そう、彼らは始めから馬鹿正直にダンジョンを攻めるつもりなどなかったのだ。

 馬鹿正直に入口から攻めたのは、敵の注意を逸らす為。あわよくば、敵の戦力の分析と、消耗させる為。結果的にはほぼ不発に終わったが、それももう過ぎた事だ。


 本当の作戦は、道外しによる中層ダンジョンへの強制介入。

 ダンジョン深層への問答無用のショートカットを彼らは実行したのだ。


「卑怯とは思うなよ」


 眼下に広がる大穴を眺めながらスプンタは言う。

 その横には力尽き、倒れた道外しの少女が居た。その瞳に光は無く、限界以上に能力を行使した為、その命は既に失われていた。

 すまない、と。スプンタは少女の亡骸に手を添える。

 この様な少女たちを犠牲にせねばならぬとは、我ながら何と卑劣な手段だろうか。

 だが、こうでもしなければ、この長大なダンジョンを攻略する事など不可能だった。

 ましてや、ギブルの復活までと言う最悪のタイムリミット付きだ。

 短期決戦を挑むしかない状態で、手段を選んでなどいられない。


「……我らはどうあっても、負けられんのだ」


 武器を掲げ、スプンタは号令を発す。


「進め!これより本格的な侵攻を開始する」


 魔王軍によるダンジョンの蹂躙が始まろうとしていた―――。



◇◆◇◆◇















「――――まあ、当然、そう来る事は、予想済みよ」



◇◆◇◆◇



 ―――かに思えた。


 次の瞬間、中層第二エリアに空いた大穴から、何かが噴き出した。

 

 黒い噴水だ。

 何事かと思って、見ればそれは水ではなかった。


 ―――黒蟻だ。


 何千、何万と言うキラー・アントが、今しがた彼らが開けた大穴から噴き出してきたのだ。


「な、何だこれはっ……!?」


 あっという間に広がる、見渡す限りの、蟻、蟻、蟻。

 開かれた大穴を塞ぎ込むかのように、大量の蟻が沸き出て来るではないか。

 キラー・アント。それも、全てが中級以上の力を持った上位種。

 その光景にスプンタは目を見開く。


「まさか……」


 そして蟻共は、近くに居た魔物達に襲い掛かる。

 突然キラー・アントの大軍に怯む魔物達。

 だが、その動揺は一瞬だけだった。

 すぐさま、蟻共を駆逐しようと、彼らは反撃に移る。


 だが、その数が尋常ではない。


 陣形を組もうとするが、その前に多方面から蟻共が群がってくる。

 大穴だけではない。そこかしこの砂場からも、蟻共は沸き出てくるのだ。

 既にその数は、フォード砂漠の全てを埋め尽くすのではないかと思える程だ。


 そして、その動きは実に統率されていた。

 まるで“最初から”このような状況に対して、訓練を重ねていたかのように。


 嫌な予感が、スプンタの脳裏をよぎる。

 

「まさか……まさか読んでいたというのか、この展開を!?……我々がダンジョンを破壊すると……!?そんな馬鹿な!?」


 だが、際限なく湧き出る蟻の大軍は、彼の言葉が正解であることを告げていた。



◇◆◇◆◇



 やっぱり、こう来たか。

 映像越しに繰り広げられる光景を眺めながら、俺はそう思った。


『直通されたエリアは?』


「全部で五か所ね。第二、第四、第五、第六、第八エリアに介入されたみたい」


 全部で五か所か……。

 中層エリアは全部で九エリア。

 その内の過半数に介入されたことになる。


 ……思ったよりも少ない。

 それ以上戦力を割けなかったのか、それともこっちの中層エリアを全部把握し切れてなかったのか。


 どちらにしても、想定の範囲内だ。


 その手の戦術はもう何度も経験済みなんだよ。

 ダンジョン破壊に、ダンジョン改変、水攻めだったり、もうホント嫌がらせとしか思えないような修羅場をいくつも潜り抜けてきたんだ。この程度、想定しないでどうするよ。


 しかし、複数の道外しによるダンジョン改変による中層へのショートカットか……。

 そっちで来たか。

 最悪の予想が当たらなくてよかった。

 

『エリベル、各エリアの配置は?』


 こういう事態に備えて、眷属の皆を中層エリアに配置済みだ。


「こんな感じね」


 そう言って、エリベルは端末を操作し、映像に移す。


 第二エリア。

 アン、女王種四匹、子蟻達。

 

 第四エリア。

 トレス、ぷるる、森の四長。


 第五エリア。

 ロブン、オーテル、リュングのファーブニル勢。


 第六エリア。

 エルジャ、聖龍、輝龍。


 第八エリア。

 ラセツ、リザード型、スケルトン及び死霊軍団。


 成程ね。

 これに加えて、各エリアのゴーレム達も戦力に加わる。

 今回は隊長格の姿も見受けられるってことは、向こうにとってもこの作戦が本命なのだろう。

 総力戦だ。

 全力でぶつかってくる。

 敵勢力でも最も警戒すべきは隊長格だが、眷属達に渡した武装、それにダンジョンのトラップや結界を併用すれば十分に防衛は可能だろう。

 

 だが、それだけで終わるつもりはない。

 ギジーのアナウンスが鳴り響いた。

 ―――来たか。


「アース、どうやら準備が出来た様よ」


 にやりと、エリベルが笑う。


『ああ』


 待ちに待った報せだ。



『―――ツムギ及ビ、ゴンゾーノ『進化』ガ完了シマシタ』



 そう。今回の防衛に当たって俺はエリベルにあるものを頼んでいた。

 ―――それは、『進化の魔石』。

 その効果は文字通り、魔物を強制的に上位種族へと進化させるという破格の性能。

 戦力の底上げにはこれ以上ない程のアイテムだ。

 エリベルもそれは気にしていたらしく、以前から再開発の準備を進めていたらしい。

 そして出来上がった『進化の魔石』は二つ。

 それをツムギとゴンゾーに食べて貰った。

 なぜこの二人なのか?

 それはギジーのアナウンスが教えてくれる。



『報告シマス。サイ型ゴーレム・ホムンクルス個体名『ゴンゾー』。

 厄災級個体“カラミティ・ベヒモス”ヘノ進化ガ完了シマシタ』



『同ジク、道外シ個体名『ツムギ』。進化先ノ種族名ガ不明ノ為、同種ノ個体ガ持ツ通リ名ヲ採用。神災級個体“夢霧”ヘノ進化ガ完了シマシタ』


 

 さあ、これで戦力は整った。


 今度はこっちが攻める番だ。

 




どうでもいい補足。

ちなみに、ジョーカーがピエロの格好をしてたのは

道化→道化け→道外し から来てたりします。(安直

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