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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第九章 死龍~千年の祈り~

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200/288

26.VS死龍 百鬼夜行

 書籍版第一巻、絶賛発売中です。

 発売中なのです。大事な事なので二回ry(´・ω・`)

 帝都上空にて―――


『オラァッ!』


 俺は、空中を高速移動しながら、天龍の爪で次々に異形どもを切り裂いてゆく。

 ただの肉塊になった異形は重力に従い堕ちてゆく。


 うわぁ、堕ちながらも再生してるよ……。

 映像の逆再生みたいで、すっげー不気味な光景だ……。

 それを見たウロヌスが叫ぶ。


「くそ!くそ!くそ!なんだよ!なんで、地龍のお前が、天龍の力を使えるんだよ!おかしいだろ!反則だ!反則!」


 ……お前がそれ言う?

 異形の“耐性獲得”だって十分反則的な性能だろうに。


「ギッギッギィィイイイイイイ!」

『―――おっと、“斬天”!』


 急接近してきたトンボ型の異形に対し、天龍の力を発動。

 突如周囲に発生した鎌鼬によって、蝶型の異形はバラバラに引き裂かれた。


 にしても、流石の性能だな。

 これが、天龍の固有術式『万天』か。

 地龍の『暴食』、聖龍の『浄火』と同じように、天龍が有する固有術式。

 

 以前、ヤムゥやギブルが、俺のダンジョンでハッスルした際に、ギブルに天龍の固有術式について教えて貰ったことがある。


 天龍の『万天』。

 その効果は『あらゆる自然現象に自分の魔力を注いで、魔術を作り上げる』というモノらしい。


 一見すると、通常の魔術と変わらないように思えるが、その応用性は通常の魔術の比ではない。


 それは例えば、風に魔力を混ぜて、鎌鼬の様に振る舞う“天爪”。

 それは例えば、水蒸気に魔力を混ぜて、翼を作り上げる“天翼”。

 それは例えば、洪水や雨に魔力を混ぜて、同化する“水化”。

 他にも、他にも、他にも―――。

 

 この世界に、自然現象は無数に存在する。

 それら全てを利用して術式を組み上げることが出来るのならば、それはまさしく“万能”と呼ぶにふさわしい術式だろう。

 あの時、ギブルが言っていた“手札が尽きない”とはこういう意味だったのだ。


 まあ、その手札全ても、ギブルの力押しで破られてしまったけど。


 けど能力として見るならば、おそらく『暴食』に勝るとも劣らない性能と言える。

 そして、天龍の“万天”は、今この状況下においては、抜群の性能を発揮する。


 なにせ、その魔力の“質”は、術式ごとに異なるのだ。


 エリベルの考察では、異形たちは対象の“魔力”に対して、耐性を獲得しているらしい。

 ならば、『万天』程、相性のいい能力もないだろう。

 攻撃に対し、耐性を付けたとしても、すぐさま魔力を変化させ、別の攻撃手段を用いればいいだけなのだから。

 異形共が羽を羽ばたかせて襲ってくる。


『ふぅー……』


 ―――集中。

 イメージするのは、洪水。

 以前天龍のクソ野郎が俺のダンジョンを水浸しにしたような全てを飲み込む濁流。


 それに俺のブレスを乗せるイメージ―――。


『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 俺はブレスを発射する。

 それは、成功した。

 俺のブレスは、直線状に放射されるのではなく、扇状に全てを飲み込む津波の様に発射された。

 異形どもは魔力の波に吞み込まれ堕ちてゆく。

 

 ―――ピキッ……。


『―――っ』


 鈍い音が、胸から聞こえた。

 ヤムゥの力の結晶にひびが入った音だ。

 

 回数制限つきだって、ヤムゥは言ってたもんな。

 ……正直、あと何回使えるか分からない。

 でも、手は緩めない。

 出し惜しみはしない。


 だって、これ以外、俺には、異形どもに対する有効打がないのだから。


 もし仮に、結晶が完全に砕けてしまったら、もうお手上げだ。

 俺は異形どもによって、弄り殺されるだろう。


 だから、早くしてくれよ、エリベル。

 俺に跨り、意識を集中させる賢者の眼は未だに閉じたままだ。

 もう一つの切り札の為に、エリベルはずっと集中している。

 かれこれ、もう数分は経つだろう。


『―――“天爪”!“天斬”!“天魔水月”!』


 百を超える異形の大軍勢。

 天龍の力は、その軍勢を圧倒し、猛威を振るう。


 ―――ビキッ!ビキッ!

 

 数は、減らない。

 だが、対照的に結晶には、天龍の力を行使する度に、ひびが入ってゆく。


「オオォォオオオオオオ!!」「シャーッ!」

『がはっ!』


 羽の生えたヘビ型に足をからめ捕られ、骨型の異形の攻撃が脇腹に当たる。

 くそっ!

 攻撃そのものが通じる様になっても、相手の力そのものが落ちた訳じゃない。

 天龍の力そのものに耐性は作れなくとも、それを行使しているのは俺だ。

 こいつら、俺の攻撃パターンを読んでやがる!

 

「ウッホオオオオオオ!」「ジャッジャッジャッジャッジャ!」「シューシューシュー!!」「ぉぉぉぉおおおおおおおおお!」「ギッガアアアアアアアアア!!」


 異形どもは躊躇する事無く、猛攻を仕掛けて来る。

 やりずらい事この上ないな!


『ぐっ……ガアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 それでも、闘う。

 まだだ。

 まだ――……。


 ――――――。


 ――――。


 ―――。



 それからさらに数分が経過した。


『ハァッ……ハァッ……』


 まだか……、まだなのか、エリベル―――。

 異形の数は減らない。

 いや、それどころかさらに増え続けている。


「ははは!もう、騎龍の方はボロボロだな!異形共!そのまま一気に攻め立てろ!天龍の力とて、無限じゃない筈だ!」


 ボコボコボコ!っとウロヌスの体が膨れ上がり、新たな異形が形成される。

 何体生み出せるんだよ、ウロヌスのヤツ……。

 一体どういう原理で、こいつらを生み出してるんだか。


「シャアアアアアア!!」


 ―――ちっ!

 体も、結晶も、もうボロボロだ。

 でも、動かなきゃやられる。

 

『オラァァァアアアア!!』

 

 天龍の術式を乗せた、全方位型の攻撃、“天斬”を発動。

 その瞬間、


 ―――バキンッッ!!


『―――っ!限界かっ!』


 天龍の力の結晶が砕けた。

 そして、


「―――待たせたわね、アース……」


 エリベルが、ゆっくりと、眼を開いた。


「準備が、出来たわ」

『……おせーよ』


 でも―――間に合った。


 反撃の準備が、整った。



 ◇◆◇◆◇



 エリベルが杖を構える。

 俺達の雰囲気が変わったのか、異形どもは警戒し距離を取った。


「準備が出来た……だって?なに?一体何をしようとしてるわけ?」


 唯一空気を読まずに、ウロヌスが怪訝そうな声を上げる。


「何を、ですって?そんなの決まってるじゃないの」

「………は?」


 エリベルの周囲に、複雑な紋様の魔術陣が展開する。


「―――アンタとこいつらを倒すための準備よ」


「~~~~~~~っ!異形共!!」


 ウロヌスが叫び、俺達へ殺到する。

 だが、


「……もう、遅いわ!既にこいつらを倒すための術式は整った。―――“聖域踏破”発動!」


 次の瞬間、エリベルの禁術が発動する。

 エリベルの周囲に魔術陣、それが一気に広がるり、周囲に居た異形どもをも巻き込んでゆく。


「……ギィ?」「オオオオオ?」「ギョア……?」


 何も起きない事に、異形共が怪訝そうな声を上げる。

 だが、周囲に居た奴らをくまなく包囲した瞬間、異形どもに異変が起きた。


「ギ……ギィィイイイイイイイイッッ!!」「ォォォオオオオォォォォ……」「ガッ……ガァァ……」


 頭を抱えもだえ苦しむ者。

 全身を掻きむしる様に身震いする者。


 反応は様々だが、その全てが苦痛に喘ぐような姿だ。


 そして―――更に異形どもは変化する。


「ガッ……ガァ……」


 耐性を獲得し、進化したはずの肉体が、“それ以前の肉体”へと変化する。

 それはさながら、ビデオの逆再生の様に。

 

 「なっ……なんだ、これは!?」


 驚愕の声を上げるウロヌス。

 だが、変化は止まらない。


 進化前に戻った異形たちは、更にその姿を戻してゆく。

 

 生まれる前の姿。

 ただのウロヌスの肉片へと戻ってゆく。


「ふぅー……いっちょ上がり」

 

 そして、十秒が経過する事には、周囲には異形どもは一匹も残っておらず、ただ血と肉片が宙に浮かぶのみとなった。


 これこそが、エリベルの禁術“聖域踏破”。


 同一線上にあるならば、自由にその肉体を変化させることが出来るという恐るべき効果を発揮する禁術。

 そう、エリベルは、自分の肉体を全盛期に戻したのと同じ様に、異形どもが生み出される前の状態に戻したのだ。

 ブドウを加工して作ったワインを、もう一度ブドウに戻す様に。

 それがどれ程、常識を逸脱した行為であるか。

 それを彼女は平然とやってのける。


「念には念を―――“千群氷柱”」


 億を超える氷柱の雨が、周囲へ放たれる。

 地や肉片を凍らせ、パキンと音を立てて、それらはきれいに砕け散った。


「な、なんだ……?お前、今、何をした?」


 今目の前で起こったことが信じられない。

 ウロヌスの声は震えていた。


「何って、見たまんまよ。“巻き戻し”たのよ。アンタの肉片だった頃までね。進化し続ける生物なら、その前まで戻してやればいい。そうすれば流石に、復活は出来無い様ね」


「ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!時間を、巻き戻すだと!?そ、そんな禁忌が、そう簡単に出来てたまるか!」


「まあね、相応の“リスク”はちゃんと負ってるし。それに対象をきちんと解析しなきゃ出来ない術式だからね。苦労したわよ、こいつらの解析は、多分今までで、一番苦労したわね」


 あっけらかんと、エリベルは言う。


「な、なんだと……ふざけるのも大概にしろよ、人間!僕がこの異形どもを生み出してから、まだ一時間も経ってないんだぞ!こんな短時間の内に、僕の千年の力の結晶が、姉さんすら攻略できなかった異形共が、そう簡単に破られてたまるモノか!」


 叫び、憤慨するウロヌス。

 だが、エリベルは毅然とした態度で言い放つ。


「何言ってんのよ?」


 その顔に不敵な笑みを浮かべて、


「それが出来るから―――私は“賢者”って呼ばれてんのよ」


「~~~~~~~~っ!!ふざけるなあああああああああ!」


 血肉が拭きだし、新たな異形共が生み出される。

 そいつらは一斉に俺達に襲い掛かってきた。


『芸がないわね……。アース、魔力貰うわよ。異形たちの構成パターンはもうわかった。今度はすぐに術式を展開できる』


『おう、了解。にしても、解析ずいぶん時間かかったじゃねぇか。正直、かなりギリギリだったんだけど?』


 軽く死にかけたぞ。

 まあ、憑代だけどさ。


「あー、悪いわね。解析と同時進行で、“もう一つ”の策も進めてたんだけど、これが予想以上に時間かかっちゃったのよね」


『え?』


 もう一つの策?なんだそれ?聞いてないんだけど?

 俺の疑問を感じ取ったのか、エリベルはにやりと、笑みを深める。


「“霧”は晴れたのよ?だったら、“あの子”たちが大人しくしている理由はないでしょう?」


 その言葉に俺はハッとなって魔力感知を発動させる。


 ―――感じる。


 これは、この魔力は――――。



◇◆◇◆◇



 ファーブニル天蓋跡地にて―――。


 アンとベルディーは背中合わせに、異形どもと対峙していた。


『ハァ…ハァ…もう限界ですか……?』

「……ぐっ、馬鹿を言え……この程度の傷、何でもない……っ」


 強がってはいるものの、その体は既に満身創痍と言っていい。

吐く息は荒く、全身傷だらけの酷い有り様となっていた。


「ギガアアアアアアアア!!」


 クマ型の異形がアンに迫る。

 アンは剣を構え、これを迎撃しようとするが―――。


『あっ……』


 カクンとその膝が折れる。


「黒蟻っ!」


 ベルディーが叫ぶ。

 だが、アンは動かない。いや、動けないのだ。

 意志の問題ではなく、体そのものが限界を迎えているのだ。


『くっ……』


 死を、覚悟した。

 次の瞬間だった。

 青白い光が、足元を照らす。

 そして―――ゴウッ!と突如現れた炎が、異形どもを包み込んだのだ。


「―――大丈夫ですか、アン様」


 声が、した。

 そこに居たのは、白いドレスに身を包み、日傘を差した美しい少女だった。


『まさか……エルジャですか……?』


 なぜ、彼女がここに?

 疑問よりも先に、エルジャは動く。


「遅くなりましたわ、アン様。ですが、後は私にお任せください」


 優雅に、そして流麗に、少女は魔力を開放する。


「聖龍が長ハルシャ・ルードの娘エルジャ・ルード。参ります」



 ◇◆◇◆◇


 帝城廊下にて―――


 芋虫型が豚(シュヴァイン卿)を捕食しようとした、正にその瞬間だった。


 ぐちゃりと、鈍い音が、響き、渡った。


 ―――芋虫型の異形から。


「……え?」


 不意に、シュヴァイン卿は、間抜けな声を上げてしまう。

 見れば、自分を喰らう筈の異形は、その口を大きく貫かれていた。

 更にその口元には焦げ跡がある。

 ジュゥゥゥという、焼け焦げた匂い。

 これは……一体?


「やー!」


 緊張感の無い掛け声と共に、いくつもの熱線が芋虫型を貫いた。


「ギッギィィイイイイイイ!!」


 芋虫型が苦悶にあえぐ。

 その隙に、シュヴァイン卿は芋虫型と距離を取った。


「ぬ……ぬひっ!?」


 一体誰が?

 先程の魔術が放たれた先を見る。

 そこには仮面をつけた一人の少女がいた。

 更に、隣には、一体のスライムが寄り添うように佇んでいる。


「あ……貴女はいったい……?」


 少女はシュヴァイン卿と黒ハイエナの方を見る。


「あ、前に雪山で会った豚さんと、いつかの冒険者さん達かーまた会ったねー」


 のんびりと、その場に似つかわしくない明るい声。

 

「その仮面……。ア、アンタまさか、あの時、俺達の前に現れた……」


 モヒカンは覚えている。

 以前、彼らがギルドからの依頼でダンジョンの調査をした帰り道。

 自分達の前に現れ、自分達を殺そうとした謎の少女。

 彼らの警戒心を感じ取ったのか、トレスは肩をすくめる。


「……大丈夫だよ、今回は殺さないから。……邪魔しなければねー」


 無邪気な声でそう言って、トレスは剣を構える。


「そんじゃあ、やろっか、ぷるるー」

「ぷるー!」


 そう言って、一人と一匹は芋虫型の異形へと向かっていった。



 ◇◆◇◆◇



 同じく帝城にて―――。


 疲労困憊のカグリアスとリンウの前に、一人の騎士が現れた。

 いや、騎士と言うには、いささか特殊な出で立ちをしていた。

 全身を覆うその鎧は、帝国の甲冑よりも、倭の国の鎧を思わせる。

 手に持つは地龍の鱗より造られた大太刀。


「おいおい……」

 

 その姿に、カグリアスは覚えがあった。

 忘れるわけもない。

 つい先日、ダンジョンへ潜った際、階層主の部屋に居たあまりにも強すぎた特殊な個体。

 ソイツと再び剣を交え、闘う事を夢見ていたのだから。


「なんでお前さんがここに居るんだ……?」

「……」


 彼の者は答えない。

 ただ、その大刀を振り抜き、目の前に居る異形どもへと向ける。


「……父上の命令、遂行するです……あ、ござる」


 大太刀を構え、ラセツは一気に異形へと攻め込んだ。



 ◇◆◇◆◇



 そして、帝城中庭にて―――。


 オリオンを抱えるドスに、異形たちが襲い掛かる。

 

「……ん、オリオン、踏ん張って!」


 足に魔力を集中し、ドスは必死にこれを回避しする。

 だが、それも直ぐに対応されてしまう。


「ぐっ……」

「ハァ…ハァ…ここまで、ですか?」


 それはドスだけでない。

 ウナも、ベルクも、追い詰められ、いつの間にか一か所に集められ、囲まれてしまった。

 異形共の嘲笑が聞こえる。


「―――っ」


 ここまでか。

 三人は死を覚悟した。


 だが、終わりは訪れない。

 

 理由は単純。

 突如、足元を青白い光が照らし、そこから現れた炎の巨人によって、異形どもが一気に焼き尽くされたからだ。


「……ん」


 ドスは現れた炎の巨人を見上げる。

 そこに居たのは、悠然とローブをたなびかせる一体のアンデッド。

 大鎌を携え、ローブを纏う姿はさながら西洋の死神の様だ。

 

「……どうやら、間に合ったようだね」


 三人を見ながら、ファーブニル眷属筆頭ロブンはそう呟いた。


「あぁ……」


 薄れゆく意識の中で、オリオンはその声を聴いた。

 以前、この帝都を訪れる前に、グリフォンに襲われた際に助けてくれた人物と同じ声。

 暖かな、人ならざるものとは思えぬほどの優しい魔力。


「―――また、お会いすることが出来ましたね、優しい死皇さん……」


 その声の先へゆっくりと手を伸ばそうとし、オリオンは気を失った。



 ◇◆◇◆◇



 更に、気配が増える。


 青白い光が、転移門の輝きが、帝都全域を包み込む。


 そこから、次々に魔物が現れた。


 影を操る老紳士が、狼の長が、巨大なクモが、無数の蟻が、ゴーレムが。


 そこかしこから次々に現れる。


 ―――百鬼夜行モンスターズ・パレード


 ダンジョンで息をひそめていた強者たちが、一斉に地上へと溢れ出したのだ。


 自らの主を守る為に。


 敵を殲滅するために。


 それはうねりとなって、異形どもに襲い掛かった。



 ◇◆◇◆◇


 帝都上空にて―――。


「何だこれは!?魔物の気配がどんどん増えていくだと……?」


「苦労したわよ。“聖域踏破”と同時進行で、“転移門”を地上に設置するのは。……まあ、門に関しては、ツムギんが手伝ってくれたのが大きいし、消費した魔力は全部アンタが賄ってくれたけど……ホント、アンタの魔力量って化物よね」


 胸を張りながら、エリベルは自身の成果を語る。

 成程な、地上に眷属達を呼び出すために、時間が掛かってたって訳か。


『でも、大丈夫なのか?たとえ、援軍を送ったところで、こいつら相手じゃ―――』


『時間稼ぎにしかならないって事?』


 俺の言いたいことを見越してか、エリベルが先んじて言う。


『いいのよ、時間稼ぎで。こいつらはウロヌスから生み出された。そして、こういう手合いは、生み出した張本人を倒せば消滅するって、相場は決まってるわ』


 確信をもって、エリベルは言う。

 異形どもを解析したからこそ分かるのだろう。


『つまり……俺達次第ってことね』

『そういう事』


 俺達がウロヌスを倒すのが先か、それとも耐性をつけられて皆が破れるのが先か。


 つまり―――ここが天王山。


 俺達の戦いの結果が、そのまま戦局に反映されるって事だ。

 だったら、負けるわけにはいかないな。


 “聖域踏破”を展開しつつ、高速飛翔する俺達。

 生まれたての異形たちでは対応出来ず、簡単にあしらうことが出来る。


「ぐぬぬぬぬぬっ!あーもう!うざったい!うざったい!異形共!そいつは後回しだ!まずは、グウィブを殺せー!」


 一向に俺達が落ちない事に業を煮やしたのか、ウロヌスが叫び、異形共に指示を出す。

 おいおい、そう来るかよ……こいつホントすげぇな、いろんな意味で。


 でも、効果的な指示だ。

 今、グウィブを攻撃されたら守らざるを得なくなる。


「心配ないわよ」

『え?』

「―――ここにもちゃんと、“援軍”が来てるわ」


 疑問の声を浮かべる俺の耳に、“ソイツ”の言葉が響いた。





『―――――“火具羅”』


 



 轟ッッ!!

 突如巻き起こった紅蓮の炎が異形たちを焼き払った。

 これは……この炎は……っ!


「ったく、遅かったじゃないの―――ヘレブ」


 転移門を潜って現れたのは、悠然と羽ばたく一羽の黒鳥。

 エルド荒野二大王級魔物の頂点にして、尊大なる族長。

 アクレト・クロウの長ヘレブだった。


「エルジャちゃんから知らせを聞いた時は驚いたわよ。アンタが転移門を使わせてほしいって、ダンジョンに頼み込みに来てただなんて」


『ふんっ……』


 つまらなさそうに、俺達を一瞥し、ヘレブはグウィブの元へと向かう。


『……ぐっ……ヘ、ヘレブ……か?』

『他の誰に見えるというのだ?』

『なぜ……ここに?―――ぐっ!』


 疑問を浮かべるグウィブの生首を、ヘレブは足の爪で器用に蹴る。

 地味に痛そう。


『……言ったはずだ、グウィブよ。貴様の死ぬべき場所はここではない。戻るべき場所がちゃんとあるとな。貴様は我との約定を違えようとした。その愚行、断じて見過ごす事など出来ぬ』


 そして、更に魔力の、魂の気配が増える。

 青白く光り輝く転移門の中から現れたのは、何十羽ものアクレト・クロウ。

 そして、白飛龍の群れだった。

 駆けつけたのだ。

 白飛龍たちは自分達の族長を、そしてアクレト・クロウは自分達のライバルを、見捨てることが出来なかったのだ。

 

「ピンチの時に、全員集合。―――どう?こんな展開の方が、燃えるでしょ?」


 にしし、と悪戯が成功した少女のような笑みを浮かべる。


 ああ、全く人が悪いよ、エリベル。


 こんなサプライズかましてくれるなんてよ。

 

 でも、―――最高だ!


 全然、負ける気がしねぇなっ!


「あーもう!あーもう!なんなんだよ!お前ら!いい加減にしろよ!いい加減に、とっとと死ねよ、もおおおおおおお!」


 ヒステリックに叫ぶウロヌスに対し、エリベルは指をくいっと動かしながら、挑発する。


「さあ、そんなところで高みの見物なんてしてないで、さっさと降りてきなさい、このシスコン龍。“私とアース”が、アンタを姉離れさせてやるわ」


 ビキリとウロヌスの血管が切れる音が聞こえた気がした。

 それに呼応するように、空に浮かぶ肉塊が大きく脈動する。


「いいだろう!殺すッッ!!殺してやるよ!」


「やってみなさいよ、シスコン龍!」


 ウロヌスの肉体が変化する。

 ボコボコボコボコと、その姿は少しずつ龍の姿へと変わってゆく。


『ふぅー……』


 さてと、踏ん張りどころだな。


 いっちょ頑張るとしますか。




 戦隊モノで、怪人側が徒党を組むとバッシング喰らうけど、ヒーローがやる分にはオッケー的なアレです(´・ω・`)

 次回で決着かな。

 なるべく早めに投稿します。


 あと地龍もついに二百話です。


 やったね!


 誰も言ってくれないだろうから、自分で言ってみた。


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