27.VS死龍 頂上決戦
前回のあとがきに対して、皆さんの温かいコメントで泣いた(´;ω;`)
この場を借りてお礼申し上げます
頑張った
メキメキと、死龍の肉塊が姿を変えてゆく。
不気味な音を立てて、やがてその肉塊は龍の姿へと。
「ぉお………おぉぉおおおオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
やがて変化は終わる。
そこに現れたのは、一匹の黒龍。
大きさ的には、今の俺と同程度か。
だが、それは龍と呼ぶには余りに歪な姿をしていた。
プテラノドンのような細く長い顔、四対の赤黒い瞳。
膜状の翼である皮翼には薄く奇妙な紋様が走り、肉体は俺と同じような四足歩行型だが、その腕だけが異様に長い。更にその腕の所々には黒い杭の様なものが打たれ、指からは更に長く黒い爪が伸びている。
背中にはステゴサウルスの様な骨質の板が無数に生え、それが尻尾の先まで連なっており、尻尾からは、蜈蚣のような無機質な足が無数に生えている。
これが―――死龍ウロヌスの覚醒体……っ。
禍々しさをこれでもかと言う程に詰め込んだ醜悪な姿だ。
「『あ【ぁ、千年「ぶり」だね、この姿も……】』」
一体どういう発声器官をしているのか、ウロヌスの声がいくつにもダブって聞こえる。
「『ああ、≪聞き取りづら』いか』い?この体「は」久々、だからねぇ」」。まあ、《この姿に「なったんだ。苦し」》】んで死ね「ると思うなよ。―――最高にむごたらしく殺してやる】』」
すぅっと息を吸い―――
『【《オォォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!》』】》
ウロヌスは吠えた。
ただ、それだけの筈だ。
なのに恐るべき現象が起こった。
一言で言い表すなら―――空間が揺れた。
空気が揺れたんじゃない、文字通り空間が揺れた、
ぐにゃりと景色が歪み、激しい眩暈でも起こったかのような錯覚が起きる。
それに合わせて、俺の身体もゆらゆらと曲り、歪んで―――。
「―――ス!……アース!しっかりしなさい!」
その声に、俺はハッとなる。
なんだ……?今、俺は何を……?
「今のは、ただの“咆哮”よ。ただ、気色の悪い魔力を乗せてるせいで、幻覚作用を及ぼすみたいだけどね」
幻覚?
今のは幻覚だったのか?
憑代のこの体にすら作用する程の……?
おいおい、どんな精度だよ。
「常に魔力の流れを気にしなさい。じゃないと、さっきみたいにあっという間に幻覚に掛かってお陀仏よ」
そう言いつつも、エリベルは杖を振り、魔力を発動。
千群氷柱。
億を超える、氷の礫がウロヌスへ向けて殺到する。
だが、
《【『ふんッ』』》
ウロヌスはそれを一瞥しただけ。
それだけで、全ての氷は粉々に砕け散った。
「ふぅん……これが、死龍の固有術式“滅尽”ね。こっちの魔力は、相手の範囲に入った途端に、消滅しちゃうって訳か……。見たことない現象、どういう魔術理論なのかしらね?構築式は?発現方法は?消費魔力は?使っているのは負の魔素かしら?ふふふ……ヤバいわね、ちょっと愉しくなってきたわ」
冷静に、今の現象を観察するエリベル。
それでいて表情は笑ってる。
未知への好奇心。根っからの探求者。
ホント、コイツどんな精神力してるんだよ……。
『お前、この状況でも笑えんのな……』
『当たり前でしょ。未知への探求、思考の連鎖、それは私達にとって最も幸福な事でしょう?』
当然の事の様に、エリベルは言う。
『ま、存在自体が怠惰なアンタからしたら、理解できないかもしれないけどね』
あ、それは同意。働きたくないし。
頑張るのだって、痛いのだって嫌だ。
俺とは対極だね。
あれ?そのわりには、こいつと結構話し合うよな?
なんでだろう?
まあ、今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
『んで、エリベル。ようやっとウロヌス本人との対決だけど、戦略は?』
『とりあえず、思いついたのを片っ端から試すわ。……アンタの体を犠牲にして』
『おい』
『ていうのは冗談よ。それよりも、同じ場所に留まるのは危険よ、動いて』
バサリと翼をはためかせ、高速移動。
『アース、確認するけど、天龍の結晶はもう砕けたのよね?』
『ああ、今の翼も、やられればそれで終わりだ。もう、飛べねーぞ』
天龍の結晶は砕けたが、発動後の維持に必要なのは俺の魔力だ。
俺の意志で解除するか、相手にやられない限りは、この翼は維持できる。
『了解。んじゃ、とりあえず、ブレス』
『あいよ』
エリベルの合図と共に、俺はウロヌスへ向けてブレスを発射。
極大の魔力の塊が、ウロヌスへ放たれる。
さて、どうする?
躱すか、それとも防御術式を展開するか?
だが、ウロヌスがとった選択肢はどちらでもなかった。
否、正確には―――“何もしなかった”。
俺のブレスはウロヌスへ接近した瞬間、霧のように霧散してしまったからだ。
「《『『無駄』だよ』》」
ゆっくりと、ウロヌスは翼を揺らす。
すると、皮翼に浮かびあがった紋様が、怪しく光り輝いた。
何かが、来る!
―――ヤバいッ!!!
『―――っ!アース、回避!』
エリベルの指示よりも早く、俺は本能で動いていた。
次の瞬間、俺達の居た場所へ黒い光線が放たれる。
ゴシュワッ!!と奇妙な音がした。
見てみると―――空間が削り取られていた。
そうとしか表現しようがなかった。
奇妙な断面図が、空中を走っている。
何だアレ?どういう理屈になってんの?
空間には奇妙な亀裂が走り、景色の向こう側が見えない。
『空間の消失ね。成程、“滅尽”による消滅対象は物質だけじゃないって事ね』
なんてことの無い様に、エリベルは言うけど、それってとんでもない事なんじゃないの?
これには流石のエリベルも、
『でも射程は思ったより短いわね……ギブルと姉弟だっていうし、死龍本体は近接型なのかしら……それとも―――……』
はい、通常運転。
非常に冷静で、頼りがいがありますね、はい。
「「良く躱【したね。鬱陶しいハエ共が」」
先ほどよりも、ウロヌスの声がクリアに聞こえる。
耳が慣れてきたんだろうか。
『エリベル、どうすんだ?』
『そうね……アース、悪いんだけど、あいつに特攻しかけてくんない?』
おい!アレを見た後で、それをやれと!?
『良いじゃないの、どうせ憑代だし。それに―――“アレ”、試してみて』
そう言われて、ピクリと反応する。
アレか……。
やってみる価値はあるか……。
翼をはためかせて、ホバリング。
意識を集中させ、もう一つの切り札を発動させる。
『ウオオオオオオオ……』
全身に魔力をみなぎらせる。
メキメキと、音を立てて、全身の鎧が変化してゆく。
イメージするのは戦闘機。
より飛行に特化したイメージ。
『―――“武装・特化形態”』
武装化制御下におけるもう一つの切り札。
それが、特攻形態。
武装化の能力を任意で、攻撃、防御、速力のいずれかに割り振ることが出来る。
今回は速力特化。
戦闘機の様なフォルムと化した俺は、音速を超えてウロヌスへ突撃する。
《『【へえ、速いね』』》
そう言いつつも、しっかり視線は俺を捉えて離さない。
このスピードでも、対応できるのかよ。
ならこれでどうだ!魔力を込め、更に速力を上げる。
ブオンッ!
音速を遥かに超えた影響で、ソニックブームが巻き起こる。
しかし、これだけ武装化を上げても、肉体的な負荷は殆どない。
この体は憑代だけど、イメージは成体の地龍だ。
どんだけスペック高いんだよ、成体の地龍。
「ん……ど「こ」に……?」」』》
更に速さを増し、ウロヌスもついに捉えきれなくなってきた。
そのまま、ウロヌスの背後を獲る!
スピードが増した状態で、そのまま武装化した角へ魔力を集中。
メキメキと音を立て、俺は一本の槍と化す。
『いっけええええええええええええ!!』
そのままウロヌスへ突貫する。
―――いけるか?
だが、ウロヌスへ接近したところで、体に異変が起こる。
表面が、消滅し始めたのだ。ボロボロと錆びて崩れる様に、武装化が解けてゆく。
消滅の有効範囲に入ったのか!
『―――っ“防御特化”!』
既に、スピードは乗ってる状態だ。
今更速力を上げたところで意味はない。
ここから、更に装甲を分厚くし、防御形態へとシフト。
だが、ウロヌスの消失スピードが予想よりも速い。
装甲を重ねた先から消滅していく。
間に合え!
ギリギリ、俺の武装化の方が、消滅に勝った。
勢いのまま、俺はウロヌスへ体当たりをかます。
「《「ゴアッ…」…ハッ………!?」》」】
ウロヌスが苦痛に喘ぐ。
その声には、若干の驚きが含まれている様な気がした。
まさか消滅前提で特攻を仕掛けて来るなんて思わなかったんだろう。
いける。このまま、黒い祭壇に叩きつけて――――――。
―――――――――ザワッ
『~~~~~~~~~ッッッ!!!』
俺の全身が警鐘を鳴らした。
それに従い、俺はすぐに身をひるがえし、ウロヌスから距離を取る。
『ハァ……ハァ……ッ』
《『なんだ「「、意外といい勘をしてるんだね』」
ゆっくりと、ウロヌスがこちらを向く。
その顔は、笑っていた。
危なかった。
あとほんの一瞬、離れるのが遅れてたら、確実に消滅してた。
「……どうやら、消滅の速度は、纏う魔力の量によって変わってくるようね」
「「「そういう事」」」
俺が体当たりをした瞬間、反射的に魔力を増幅させたのか。
おかげで、鎧がボロボロだ。
「「「次は、こっち」《の番だ」」
そう言って、ウロヌスは手に刺さっていた杭を一本引き抜く。
「「―――“黒滅ノ杭”」」
ウロヌスの手から放たれた杭は、巨大化し、さらに何百本、いや何千本にも分裂し、俺達に襲い掛かる。
ちょ、待て!あれ全部に“消滅の力”が込められてるとしたら―――。
『アースッ!全力で避けなさい!!』
細かい指定もクソもない叫びにも似たエリベルの指示。
それだけ、アレがヤバいもんだって感じているんだろう。
『うお―――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
回避、回避、回避!
今の状態じゃ、一発でもアレを喰らったら終わりだ!
ちょっと昔に流行った弾幕ゲーム並みに無茶苦茶な軌道を描きながら、俺は必死に羽ばたく。
「“大氷連壁”!」
すかさずエリベルも、氷による結界を発動。
おそらくは、法王級の氷の防壁。
だが、それすらウロヌスの黒い杭は簡単に食い破る。
そして、結界を貫通した杭の一本が、俺の翼をかすめた。
『―――あ』
思わず間抜けな声が出た。
杭がかすった部分から浸食が始まり、一気に翼が消失していく。
マズい、翼を失ったら当然、重力に従い、真っ逆さまだ。
「「「―――死ね」」」
バランスを崩したところに、更にウロヌスの追い討ち。
翼から例のビームが発射される。
エリベルも魔術を展開しようとしてるが―――間に合わない。
あ、これちょっとマズイかも……。
『―――者ども!!』
横合いからの叫び声。
それはヘレブの声だった。
その声に応じる様に、アクレト・クロウの炎、そして白飛龍のブレスがビームと杭に向かって放たれた。
ズドォォォォオオオオオオンッッ!!
王級の弾幕を喰らったビームと杭は、その威力を大幅に減少させる。
そのおかげで、何とか回避することが出来た。
『悪い助か―――』
『礼など後にしろ!来るぞ!』
ハッとなって上を見上げれば、ウロヌスがこちらへ突っ込んでくるのが見えた。
おいおいおい!その巨体で、そのスピードは反則だろう!?
寸でのところで躱すが、消滅の効果範囲に入っていたのか、ヘレブの羽が数枚消失していた。
だが、
『“黒鳥炎”!』
そんな傷など些細な事とばかりに、ヘレブは口から炎を吐く。
「《『『小賢しいハエ共「がああああああ』』》」】」
炎によって、邪魔をされたウロヌスが吠える。
更に腕から杭を引き抜き、これを発射。
『火具羅』を纏った数匹のアクレト・クロウがこれに対応するが、近づいた瞬間にその身を消失させてしまう。
「―――っ!“聖域踏破”……っ。げほっ、げほっ!」
だがエリベルがこれを阻止。
更に、消滅しかけたアクレト・クロウたちも、さらに俺の翼やヘレブまで完治させる。
ホントに反則的な性能だな。
「ハァッ……ハァッ……そう簡単に……やられは……しないわよっ」
だが、エリベルの顔色は悪い。
いくら俺の魔力を代用していると言っても、限界があるのだろう。
「「《あーもう!あーも「う!鬱陶しい!鬱」》陶しい!雑魚共があああああああああ!!」」』
苛立ちを隠さぬウロヌはガリガリガリと自分の体を掻きむしる。
血が、滴り落ちる。
新たな異形が、生まれ出た。
飛行型なのだろう。
生まれた異形どもは全て翼が生えている。
「「「「「ギッシャアアアアアア!」」」」」
異形どもは、俺とエリベルには目もくれず、アクレト・クロウ、白飛龍の群れに襲い掛かった。
『そいつらを殺「「せ」」異形共!!」』
『―――ちぃ!者ども!』
『『『はっ!』』』
ヘレブの指示の元、アクレト・クロウと白飛龍が応戦する。
再び、ウロヌスとのにらみ合い。
『大丈夫か、エリベル?』
相当無理をしているのか、胸を押さえ苦しそうにしている。
もしかして、例の“聖域踏破”のリスクか?
『げほっ……大丈夫よ、アース。……でも、おかげで……ハァッ……だいぶ見えてきたわ』
『見えてきたって……何がだ?』
『そりゃあ、当然―――』
にやりと、汗でびっしょりの顔でエリベルは笑う。
『ウロヌスに勝つ方法よ』
『―――っ!なにか、思いついたのか!?』
『ええ、作戦を伝えるわ、アース。それと、これは“眷属全員”に伝えて頂戴……』
言わるままに、俺は眷属への回線を繋げる。
そして、俺の思念通話を通じて、眷属全員にエリベルの作戦が伝えられた。
その指示とは―――。
◇◆◇◆◇
ファーブニル天蓋跡地にて―――。
日傘を差した一人の少女が舞う。
さながら舞踏会のダンスの様に。
聖龍エルジャ・ルード。
人の姿を取っているが、これでもれっきとした龍王種の一体だ。
そして、彼女が舞うたびに、彼女の体からは美しい翡翠色の焔が放たれる。
『浄化の炎』。
本来は傷を癒し、体力を回復するための特殊な炎なのだが、今のそれは全てを焦がすための攻撃用の焔。
火にあぶられ、異形ども悲鳴を上げる。
そして、動きの鈍ったところに、アンの大剣が、ベルディーの槍がたたき込まれる。
「うふふ、やはり私の“炎”ならば、異形どもの耐性もある程度は緩和することが出来るようですわね」
異形どもの焼かれる様を見て、満足そうにエルジャはほほ笑む。
「癒しの炎……どうやら異形どもは“回復”に関しては、耐性の獲得が著しくないようですわね。それどころか、それまで獲得した“耐性”に関しても、ある程度鈍らせることが出来る………どうやら、私の能力は異形との相性抜群みたいですわ♪」
『確かに、素晴らしい能力です。……でも油断は禁物ですよ、エルジャ』
「アン様~、お褒め頂光栄ですわ~」
アンに褒められ上機嫌のエルジャ。
後半の注意喚起をしっかり聞き流してる辺り、スイーツ聖龍の名は伊達じゃない。
「でも、何れは異形どもの方が、強くなります……それでも闘い続けろとは、エリベル様も中々大変な指示を出しますわね。どういう事なんでしょうか?」
『分かりません……アース様の回線を通じて、伝えてきたのは、“一回でも多く異形どもを殺し続けろ”―――それだけですからね』
既にアンやベルディーの身体もエルジャの“浄化”によって、ある程度回復はしている。
だからこそ、ある程度エリベルの指示通りに動けている訳だが、それでも多少なりともその指示には疑問があった。
『でも……彼女が、意味の無い指示を出す筈がありません』
「そですわね」
疑問はある。でも、それ以上に二人はエリベルを信頼している。
なにより、彼女がハッキリと“頼む”と自分達に伝えてきたのだ。
ならば、それに答えるのが仲間というモノだろう。
「おい、さっきから何を言ってるんだ!私にも説明しろ!」
にやりと微笑みあう二人に対し、ただ一人蚊帳の外に置かれているベルディーが叫ぶ。
「え~っと、槍のヒト!説明してる暇はありませんわ!ともかく、一体でも多く異形を倒して下さいな!じゃないと、どのみち死んでしまいますわよ」
「―――っ!ああ、分かった!やってやるよ!」
三人は異形どもへ斬りかかる。
一体でも多く切り倒すために。
エリベルの信頼に、答える為に。
◇◆◇◆◇
帝城中庭にて―――。
そして、ココにもその信頼にこたえようとするものが一人。
『うおおおおおお!“ムスペルヘイム”!』
ロブン魔術によって作られた岩と炎の巨人、法王級魔術“ムスペルヘイム”が異形どもをまとめて薙ぎ払う。
巨人の肩にはドスやウナ達も乗っている。
地上に居るよりも、ここに居た方がはるかに安全だ。
『異形どもを倒し続けろ……か。相変わらず無茶を言いますね、エリベルさん。でも、それが死龍攻略の鍵になるって事なんですね』
独り言のように呟くが、当然返信は無い。
でも、
『なら、僕は頑張ります!ええ、何十体でもこの化け物どもを葬ってやりますとも!貴女の期待に応える為に!初めて貴女が、はっきりと“この僕”を頼ってくれたんです!貴方の想いに、“愛”に応えて見せましょう!』
俄然ヤル気に燃えるロブンを、だがドスが冷ややかに見つめる。
一応言っておくと、先ほどの指示はロブン一人ではなく、眷属全員に行き渡っている。
断じて、彼一人に対して行われたモノじゃない。
「……ん、空回り」
おそらくは報われない思い。それでも、頑張り続ける一人の男に、ドスは称賛を送る。
報われない思いとは裏腹に、ロブンは誰よりも多くの異形たちを葬り去ってゆく。
◇◆◇◆◇
帝都上空にて―――。
『異形どもを倒し続ける……それがウロヌス攻略の鍵なのか?』
『ええ、そうよ』
異形どもを倒し続け、耐性を獲得させ続ける事。
それがエリベルの出した結論だった。
『そもそもおかしかったのよ。いくら私やアンタが、パワーアップしたとしても、相手は覚醒した龍王種、それもあのギブルと同格とされる死龍。そいつを相手にここまで戦い続けていられることが』
では、その理由は何か?
エリベルは続ける。
『確かに、このままウロヌスが異形どもを生み続け、闘い続ければ、向こうは際限なしに進化し強くなるでしょうね。けどね、“耐性獲得”とて、相応の対価が無ければ行えない筈なのよ』
対価―――すなわち、魔力。
そう言われて、俺はハッとなった。
そうだ。
敵の能力の脅威にばかり気を取られていたが、そもそも“耐性獲得”―――言い換えれば“進化”―――には莫大なエネルギーが必要なのだ。
かつて、アンやエリベルが『進化の魔石』を使い、進化した時の様に。
あの時も、大量の魔石を摂取し、さらに俺からバイパスを通じて魔力を補給して貰わなければ、進化は成功しなかった。
ならば―――。
ならば―――。
ならば―――。
こいつらの“耐性獲得”にも、相応の魔力が消費されているはず。
では、それはどこから賄われている?
決まっている。
彼らの大本―――“死龍ウロヌス”からだ。
『でも、だとしたら、なぜウロヌスはまだ異形を生み出し続けているんだ?』
莫大な魔力。
それをウロヌスが代替しているなら、これ以上生み出すリスクは少ない筈だ。
『多分、気付いていないのよ……言ってたでしょう、まだこの能力を使って一時間も経ってないって。それにギブルも、ヤムゥも、アンタもそうだったけど、龍王種って奴は、総じて自身の魔力量に疎いわ。そもそも、魔力切れなんて起こす種族じゃないでしょうからね』
そうだ、そう言っていた。
まだたった一回しか使っていない能力。
だからこそ、死龍自身がまだそのリスクに気付いていないとしたら?
実は相当の魔力を消費しているのに、それに気付かない程に、向こうが動揺しているのだとすれば?
『―――うざったい、うざったい、うざったいぃぃぃいいいいいい!』
『―――僕と姉さんの逢瀬の邪魔をしたんだ。なるべく苦しんで苦しんで、絶望の中で死ねよ』
『―――お前と言う存在は、地龍を、姉さんを侮辱している!殺す!ぜったいに殺してやる!』
これまでのアイツの言動……。
考えてみれば、最初からウロヌスは感情の波が激しかった。
その激情が、自身の置かれている状況を気付かせていないのだとすれば―――。
余りに間抜けな話だが、あり得るかもしれない。
相手の精神が、見た目以上に“幼かった”のならば。
『アイツがそれに気づかず、異形どもが進化を続ければ、その分本体である死龍の魔力が減り続け弱体化する……』
『その通り。ウロヌスの異形は決して無敵に軍勢なんかじゃない……。むしろその逆。生み出せば生み出す程、本体の力を弱体化させる諸刃の剣よ』
恐るべきは、賢者の頭脳、そして観察眼。
彼女の頭脳は、異形の特性、弱点、そしてウロヌスとの関係性、その全てを余すことなく見破っていたのだ。
人類の最高峰の頭脳。
その牙は、覚醒した龍王種にも届きうる存在だったのだ。
すいません、まとめきれんでした。
次回で本当に決着つけます。
次回も、賢者さんが大活躍です。
アースさんは……うん、頑張ります。




