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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第六章 道外しの少女とファーブニルの迷宮

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7.戦いの狼煙

 前回の話の感想を見て、やっぱりアンさんは凄いと思った(小並感)


 ファーブニル八十層『青騎士の間』にて―――


 俺は目の前の光景が信じられなかった。

 ボロボロの体。アホみたいに強い敵。

 そんな絶体絶命のピンチの中、まるでテレビや漫画のヒーローの様に現れたそいつに俺は話しかける。


 『………アン、なのか?』


 くるりと、いつもと変わらない顔でアンはこちらを見る。

 表情は無い。でも、


 『はい、貴方の眷属アンですよ』


 弾むような口調で、アンは答える。

 どうやら、幻覚ではないらしい。

 でも、そうなると疑問が湧いて出る。


 『げほっ……どうやって、此処へ?まさか、一人で?』


 どうやってここに来たのか、そしてもし来たのであれば一人という事は考えずらい。

 エリベルやぷるる、他の眷属達も来ていてもおかしくないが、見た感じアンは一人だ。


 『エリベルさんが魔道具を使ってアース様の場所を探し当てました。そして、転移門を開き、此処へやってきたのです』


 成程。

 流石エリベル、無駄に能力が高い。


 『ですが―――ファーブニルの迷宮に入った瞬間、ばらけてしまったようです。私は運のよく、この近くに出ましたが、他の皆は……分かりません。おそらく。ダンジョン内に居るとは思いますが……。』


 『何だって……?』


 転移門を潜った瞬間、予定していた場所と違うところに出ただと?


 『私は、転移門を潜った瞬間、この近くにある大きなフロアに出ました。そこから、アース様の魔力がすぐ近くに感じられ、此処まで急いで駆け付けたのです。まあ、途中で何とも形容しがたい大きな魔物に襲われたため、少々来るのが遅れてしまいましたが』


 アンはここまで来た経緯を掻い摘んで説明した。


 『ですが、エリベル、トレス、ぷるる……皆の魔力は感じられます。アース様、失礼ですが、ここは、ファーブニルのどこなのでしょうか?私たちは当初、エリベルさんがマーキングを施した第五十二層の一角に転移する予定だったのですが……』


 その言葉に俺は驚いた。


 『ここは、第八十層の階層主のフロアだぞ……?』


 『八十層……!?そんな深層に……っ!?』


 どうやら、アンもここがそんな深い場所だとは予想外だったらしい。

 ふと、俺は、入口に居る少女に目を向ける。


 もしかしたら、と思ったのだ。

 案の定、少女は頷いた。


 「うん、私だよ」


 あっさり、肯定した。


 「その蟻さんはここに、他の人達はそれぞれ第六十層、七十層、九十層の階層主のフロアに居る筈だよ」


 なんてことの無い様に、白い少女は語る。

 その淡々とした物言いに、俺は初めてこの少女に警戒心を抱いた。

 いや、警戒心ではない。

 どちらかと言えば、疑問からくる正体不明の怖気と言った方が正しいのかもしれない。


 だって、この瞬間でさえ、俺はこの少女の事を“敵”だと、思えていないのだから。

 

 でも、だとすれば、この少女は何が目的なんだ?


 俺をこのダンジョンに連れてきて、階層主と戦わせて、アン達の救援を邪魔して、アンだけをここに寄越して、まるでチグハグなその行動が俺には理解できなかった。


 「あとでおしえるよ」


 『今教えてくれよ……一体何なんだよお前は……?』

 

 訳が分からない。

 本当に何なんだよこの子は……?


 『アース様、“独り言”もいいですが、ともかく今は―――』


 そう言ってアンは、前を見る。

 アイツを、此処の階層主、レイギンを。


 「話は済んだのか?」


 腕を組み、こちらを静観していたレイギンは口を開いた。

 どうやら、仕掛けることも無く、待っていたらしい。


 『わざわざ、待っていたのですか?』


 「うむ。見たところ、お主はそこの地龍の仲間なのだろう?ピンチに仲間が駆けつけたのならば、静観するのが様式美と言うものだ。フハハハハ!我は寛容だからな!多少の会話位いくらでも待っているぞ!」


 なにやら、良く分からない自論を主張するレイギン。


 『そうですか、ではお待たせしました』


 そう言って、アンは剣を構える。

 

 「もういいのか?我は、まだ待てるぞ?」


 『構いません。それに……』


 「それに?」


 『話ならば、貴方を排除した後で、ゆっくりと行えばいいだけの事です』


 「ほう……」


 その挑発的なもの言いに、レイギンは腕を解き、地面に刺していた剣を手に取った。


 『一つだけ、確認したいことがあります』


 「何だ?」


 『………アース様を、傷つけたのは貴方ですか?』


 「侵入者を排除しようとするのは、階層主として当然だろう?」


 『そうですか、分かりました。少なくとも、貴方を殺す理由は出来たようです』


 言葉と同時に、アンから大量の魔力が放出される。


 「ほう……素晴らしい、魔力だ。そこの龍とは大違いだな。見た目とは裏腹に、とんだ腑抜けだったぞ?」


 ぶちり、と何かが切れる音がした

 それと同時に、アンから大量の殺気が溢れだす。

 こ、怖い。怖いですよ、アンさん。

 思わず、さん付してしまう程に、今のアンは怖い。

 びりびりと、魔力を無効化するはずの破魔石で出来た壁が震えている。


 『アース様を傷つけ、あまつさえ侮辱した罪!贖って貰います!』


 「フハハハハ、良い殺気!実によい!さあ、やってみるがよい!!我は逃げも隠れもせん!正々堂々貴様を打ち破って見せよう!」


 ぎちり、と互いの持つ剣に力が籠められる。

 瞬間。

 二人は激突した。




 アンが颯爽とアースの前に姿を現していた、同時刻。


 ファーブニル第九十層『死皇の間』にて―――


 「うーん……してやられたわね……」


 ぼりぼりと頭を掻きながらエリベルは独り言を呟く。

 いやはやと言った体で、辺りを見渡すが、微妙に薄暗くて良く分からない。

 

 「“転移門そのもの”に介入されたか……。こっちの戦力を分断する腹かしらね?全く、どんだけ異常個体なのよ、この道外しは。私たちの戦力分散が狙いなら、まんまとのせられたわね。少数精鋭で人数を絞ったのが仇になったか……」


 ファーブニルへの突入はアン、エリベル、トレス、ぷるるの四人一組だ。

 大多数での突入は、返ってファーブニルの警戒を促しかねない。

 ならば、少数にしてこちらの最高戦力を持って臨もうというのが、エリベルとアンの考えた作戦だったのだが、それが早くも頓挫してしまった。


 ふふふ、エリベルは笑う。


 こんな異常事態でも、彼女は楽しんでいた。

 いや、異常事態だからこそ、彼女の心は躍っていた。

 どうやら、此処に居るのは自分一人の様だ。

 魔力感知を発動させるが、感じられる気配、魔力はごくわずか。

 同じく突入した、アン、ぷるる、トレスの三人もダンジョン内に居るのは間違いないだろうが、探すのは骨が折れそうだ。


 「まあ、アンちゃん達なら、心配ないでしょうね。装備や“保険”もばっちりしといたし。たとえ一人でも、階層主クラスでもなんとかなるでしょうし、それよりも問題は―――」

 

 そう言って頭に思い浮かべるのは、あのバカこと、恥龍こと、地龍のアースだ。

 魔力感知を発動させる。

薄らとだが、アースの気配も感じる。

 どうやらこのダンジョンのどこかにはいるようだ。

 

 「さてと……、どうしたもんか。そもそも、此処はどこなのかしらね?」


 「よく、来たな侵入者よ……」


 深い、地の底から響くような声。

 その声と同時に、薄暗かったフロアに明かりが満ちる。

 お約束の様な演出にエリベルは感心する。

 彼女はこう言った様式美が、嫌いではない。

 というか、先ほどの魔力感知でこのフロアに自分以外の誰かが居る事は分かっていた。

 分かっていた上で、あえてスルーしていた。


 「あら、敵さんのお出ましかしら?」

 

 わざとらしく、声を上げる。

 照らされる広間、その最奥―――そこには無駄に豪華な椅子に腰かける黒いローブを被った何かが居た。

 ローブの下に見える顔は、骸骨だ。

 背中には大きな鎌を背負い、外見的に表現するならば、死神と言う表現が一番しっくりくる。

 それを、エリベルはしげしげと見る。


 「へぇ、デス・ロードかしら?見た感じだと、五十層の階層主よりかは強そうね」


 エリベルがかつて挑戦した際、五十層の階層主はメタル・リザードと呼ばれる魔物だった。

 その名の通り、全身が金属で出来ている巨大なトカゲだ。

 そこそこ強かった記憶はある。

 まあ、片手間でボコボコにして、皮を剥いで素材にして、腹を撫でてやった記憶があるが、目の前に居る死神は、あれよりかは強力そうだ。


 「ほう……あ奴を知っておるか……。成程、“あの少女”は随分と良い者達を選んでくれたようだな……」


 「………あの少女?」


 ぴくりとエリベルは反応する。

 じゅるりと舌なめずりの様な音が聞こえたから、単に少女と言う単語に反応しただけなのかもしれない。

 こんな状況でも、エリベルはエリベルだった。

 世が世なら、即座に事案が発生するエリベルだ。

 だが、そんな変態チックなエリベルの反応は気にせず、死神は椅子から立ち上がる。


 「だが、期待と同時に失望も大きい。まさか、死を司る余に対する相手が、格下のアーク・スケルトンとは……もう少しまともな采配が出来なかったのか……」


 やれやれといった風に、死神は白い頭を振るう。

 カチンときた。

 血管は無いけど、青筋が浮かび上がる。


 「へぇ……どういう事かしら?教えてもらえると嬉しいんだけど?」


 「………知りたいのならば、余に力を示すがいい。まあ、同じアンデッドとして、格の違いを思い知ることになろうがな」


 「…………」


 その上から目線の物言いに、更にカチンとくる。

 エリベルに煽り耐性は無い。

 いつでも喧嘩上等、言い値で買いつけるヤクザそのものだ。

 そしてもれなく相手はボコボコになる。例外は無い。

 ぶちぶちぶちと何かが切れる。


 「相手が誰だか分かっていない様ね、このクソ骸骨は。よりにもよって、このかつて賢者と呼ばれた、スペシャルでグレートな天才であるこの私を捕まえて格下?はっ、たかだか、デス・ロードごときが偉そうに!格の違いってやつを教えてやるわよ!」


 まるっきり三下の様な口上を述べてエリベルは杖を構える。

 対して、死神は平静を保ちながら、ゆっくりと大鎌を構える。

 

 「余はロブン。誇り高き、ファーブニルの第九十層階層主である」


 「私はエリベル。絶世の美骸骨よ!」


 美骸骨と言うが、見た目だけなら、二人はまるっきり被ってる。

 ゲームの色違い位に見た目は一緒だ。違いは服装位だろう。

 というか、美骸骨とはなんだろうか?


 迫りくる死神を見据えながら、エリベルは考える。


 ―――この感じだと、他の皆も階層主の所に送り込まれてそうね……。

 でも、単に私たちを殲滅したいなら、個別撃破なんて面倒くさい手段を取るよりも、もっと効率のいい方法も有る筈……。

 いえ、そもそも転移門へ介入できるのなら、わざわざこちらの戦力をばらすよりも、ファーブニルそのものへ侵入させない事だって出来た筈……。


 一体、道外しは、何が目的なのかしらね?


 私たちのダンジョンへの介入?

 それともファーブニルと潰し合い?

 ダンジョン同士の抗争の誘発?


 いいえ、どれもしっくりこないわね……。

 それとも――――。

 

 「―――どこを見ている?」

 

 あら、階層主の骸骨がこっちに向かって来るわね。

 逸ってんじゃないわよ、考え事位ゆっくりさせてもらえないかしらね。これだから、早漏は……。

 まあ、良いわ。

 ともかく今は、この戦いに集中しましょうか。

 アース、悪いけどちょっと待っててもらうわよ。

 大丈夫、速効で片付けてそっちに向かうわ。

 それにアースには悪いけど、ちょっとばっかしワクワクしてるのよね。

 

 かつて攻略を途中でやめた(正確には飽きた)ファーブニルのダンジョン、その深層の階層主。

 見たことも無いようなダンジョン改変能力を持つ道外し。

 

 ――――こんな極上の異常事態、楽しまない方が損でしょう?


 凹凸の無い骨だけの胸を躍らせながら、私は杖を構えた。

 さてと、とりあえず、コイツをボコボコにしましょうか。


 

 

 ファーブニル第七十層『鋼液の間』にて―――


 エリベルが死皇ロブンと対峙していた時、こちらでも睨み合う者達が居た。

 ぷるるである。

 ぷるるも他のものと同じように、第七十階層の階層主と対峙していた。


 その見た目は――――自分とそっくりだった。

 つまり、スライム。

 その名はリュング。

 種族名は、ヒュージ・メタルスライム。

 グラトニー・ヘル・スライムの自分とは別種のスライム種の上位存在。

 そのつぶらな瞳には確かな敵意が宿っている。

 自分と違う初めて目にするスライムに、ぷるるは警戒心をむき出しにする。

 

 バチバチとにらみ合う両者。


 まあ、はたから見れば、二体のスライムが、互いにプルプル震えているだけである。


 「ぷるー!ぷるぷるー!」←リュング


 「ぷぅー!ぷうぷう!」←ぷるる


 「ぷぷぷー!ぷるー!」←リュング


 「ぷっ!?……ぷ、ぷぅー!」←ぷるる


 「ぷーぷぷぷっ!ぷーぷる!ぷるぷ~?」←リュング


 「ぷっ……!?ぷぅぅううううう!」←ぷるる

 

 叫びながらぷるるはリュングに突撃を開始する。

 激闘が始まった。


 せめて訳せよ、という突っ込みを入れる者は誰もいない。

 ここには彼女ら以外に誰も居ないのだから。


 まあ、はたから見てれば、二体のスライムがぷるぷる体を揺らして、お互いを突っつきあってるだけである。


 ともかく激闘が始まった。






 トレスは次回に回します。

 幼女枠を道外しにかすめ取られそうな今日この頃……

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