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底辺から始める、《与える》だけの無双伝 ~えぇ、与えていただけですよ?でも実は……知らないうちに守られていました!!♪!!?~  作者: わっぱるぅ
第一章

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⭐️ 第九十三話⭐️ 縁の軍勢❗️

一 開戦

 皇帝が、手を、振り下ろした。

 帝国の全軍が、動いた。


 無数の兵。嵌合兵。澱みから湧き出る、操られた魔物。地平を埋め尽くす、黒い波が、アルクたちへ向かって、押し寄せてきた。

「来るぞ!」アルクは、叫んだ。「全員——配置についてくれ!」

「ああ!」


 だが——その時。


 アルクたちの、背後からも、地響きが、聞こえた。

 振り返ると——ヴォルタの方角から、土煙を上げて、駆けてくる、無数の影。

 ゴウダが、先頭に、立っていた。各地のギルドの、冒険者たち。北の港町のバーグ。東の山岳地帯のセナ。そして、その後ろには——王都クロシアの騎士団。ルーエの兵士たち。小国連合の、軍勢。


「アルク!!」ゴウダが、叫んだ。「言っただろう! お前たちだけには、戦わせない!」

「ゴウダさん——みんな……!」アルクは、息を呑んだ。


「賦活師殿!!」王都の騎士団長が、叫んだ。「イリア殿下より、全軍出撃の命を受けました!!」


「ルーエも、来たぞ!!」セラン王の兵が、叫んだ。


 帝国の大軍に対して。


 アルクが結んだ、世界中の、縁の軍勢が——応えていた。


 皇帝が、その光景を、見て——わずかに、目を、細めた。


「……これが、お前の言う、縁か」皇帝は言った。「面白い。だが——数では、まだ、我が軍が、上だ。それに——四将がいる。お前の、縁とやらが、四将と、私に、通用するか。見せてみろ」


二 ガドルとバルガ、城を成す

 戦端が、開かれた。

 嵌合兵と、魔物の大軍が、アルクたちに、殺到した。


「バルガ!」アルクが、叫んだ。


「任せろ!」バルガが、ヴェルガルムを、地に、突き立てた。「《万象牽引》——!!」

 強烈な引きつけの波動が、放たれた。嵌合兵の群れが、魔物が、バルガ一人に、殺到する。冒険者たちへ向かう敵意さえ、バルガが、一身に、引き受けた。


「うおおおおっ!!」バルガが、咆えた。全身に、敵の攻撃を、浴びながら。だが、白銀の盾は——砕けない。「俺は、城だ!! 誰も、ここから、先には、通さん!!」


「バルガ一人に、敵が、集まってる……!」冒険者の一人が、息を呑んだ。


「今だ、ガドル!」アルクが、叫んだ。


「おうっ!!」ガドルが、ヴェルグリンドを、振り上げた。バルガが引きつけた、密集した敵の只中へ、躍り込む。「《豪嵐連斬・守護》——!!」

 黄金と深緑の斧が、嵐となって、薙ぎ払った。一振りごとに、嵌合兵の魔物部分だけが、砕け、人が、解放されていく。守るべき者には、傷一つ、つけずに。


「すげえ……!」冒険者たちが、沸いた。「あの二人——一人で、軍勢を、相手にしてるぞ!」


「俺たちも、続け!!」ゴウダが、叫んだ。「賦活師の、仲間に、続けえ!!」

 冒険者たちが、騎士が、兵が、奮い立った。バルガの引きつけと、ガドルの薙ぎ払いを、軸にして、縁の軍勢が、帝国軍を、押し返していく。


三 リィナの空、ネッサの守り

 空からは、操られた飛行魔物の群れが、降りてきた。味方の頭上を、覆い尽くす。


「上は、私が、預かります」リィナが、トニトルスを、掲げた。「全員、頭を、下げて!」


 リィナの杖に、雷が、収束する。仲間との縁の糸が、共鳴し、力が、増幅されていく。


「《嵐の瞬獄雷・極》——!!」


 極大の雷が、空を、覆った。飛行魔物の群れが、一掃される。だが——リィナの雷は、地上の味方には、一切、落ちなかった。精密に、敵だけを、撃ち抜いて。

「……制御が、完璧だ」リィナは、自分で、呟いた。「みんなとの縁が、私の雷を、導いてくれる」

 一方、地上では——倒れた味方や、傷ついた冒険者たちに、敵が、迫っていた。


「させません!」ネッサが、コレンと共に、駆けた。「コレン——みんなを、守って!」

 白銀のコレンが、咆えた。縁の糸と、共鳴し、炎が、黄金に、輝く。


「《絆炎・黄金奏》——!!」


 黄金の炎が、傷ついた味方を、包んだ。だが、その炎は、味方を、焼かなかった。むしろ——温かく、守るように、包み込み、迫る敵だけを、退けた。


「ネッサちゃんの炎、あったかい……!」助けられた冒険者が、言った。


「まだまだ、いきます!」ネッサが、笑った。涙を、こらえて。「みんな、一人も、死なせない!」

 かつて、ヴォルタのギルドで、帳簿をつけていた少女が——今、戦場の真ん中で、誰かの命を、守っていた。


四 四将、動く

 縁の軍勢の奮戦に、帝国軍が、押され始めた。


 それを見て——四将が、動いた。


「……雑兵では、止められぬか」セラフが、眼鏡を、押し上げた。「ならば、私が、出よう。私の、最高傑作で」


 セラフの背後の、嵌合兵たちが——融合を、始めた。複数の嵌合兵が、絡み合い、巨大な、一体の、化け物に、変わっていく。

「《合成獣・キマイラ》」セラフが、恍惚と、言った。「複数の人と魔物を、束ねた、究極の兵だ。

——さあ、賦活師。これも、救えるかな?」

 巨大なキマイラが、咆哮した。一歩、踏み出すだけで、地が、揺れる。

「……人が、何人も、融合させられてる」リィナが、青ざめた。「あれを、解放するには——一体ずつ、魔核を、無効化しないと。でも、あの数を、同時に——」


「キラ!」アルクが、叫んだ。

 アルクの肩から、キラが、ふわりと、飛び立った。


 キラが、リィナの《解魂の雷》を、見つめた。そして——その雷を、複製し始めた。一本が、二本に。二本が、四本に。無数の、細い雷の枝に、分かれていく。


「キラが——リィナの雷を、複製して、増やしてる!」ネッサが、言った。


「《解魂の雷・乱舞(かいこんのいかずち・らんぶ)》!」リィナが、キラと、力を合わせて、叫んだ。


 無数に分かれた雷が、キマイラの、全ての魔核を——同時に、正確に、撃ち抜いた。ルミの回復の光が、同時に、融合させられた人々を、包む。

 キマイラが、崩れ落ちた。後に残ったのは——意識を失った、数人の、人間。全員、息が、あった。


「……馬鹿な」セラフが、目を、見開いた。「私の、最高傑作を——一人も、殺さずに、解いただと……!?」


「お前の作るものは」アルクは言った。「いつだって、誰かの、悲しみの上に、ある。——でも、俺たちは、その悲しみごと、救う。それが、答えだ」

「……っ」セラフが、後退した。初めて、その狂気の顔に、恐怖が、滲んだ。


五 ドルガの、問い

 ——それを見て、ドルガが前に出た。

 大鉄槌《滅鉄槌》を、担いで。


「賦活師」ドルガは言った。「お前と、戦う前に、一つ、聞きたい」


「なんだ」アルクは言った。

「お前は——なぜ、そこまで、戦える」ドルガは言った。「守り手の力を、奪われても。圧倒的な、敵を前にしても。——なぜ、折れない」


「一人じゃ、ないからだ」アルクは言った。「みんなが、いる。世界中の、縁が、ある。——俺が折れそうなとき、誰かが、支えてくれる。だから、折れない」


 ドルガが、しばらく、黙った。


「……俺には、それが、ない」ドルガは言った。「俺は、力で、のし上がってきた。誰も、信じず。誰にも、頼らず。——強さだけが、俺の、全てだった」


「ドルガ」アルクは言った。


「だが——お前を見ていると」ドルガは言った。「俺の、強さが——ひどく、孤独なものに、思えてくる」

 ドルガが、滅鉄槌を、構えた。

「だから——確かめさせろ」ドルガは言った。「お前の、その『縁』の強さが、本物か。俺の、孤独な力と、どちらが、上か——!!」

 ドルガが、滅鉄槌を、振り下ろした。澱みを吸って、増幅された、一撃。地が、割れ、衝撃が、アルクへ迫る。


「ヴィナ!」アルクが、叫んだ。


「ああ!」ヴィナが、隣に、駆けた。


「《還元・刃》!」アルクが、リフレインで、ドルガの一撃を、受け止め——その力を、吸収する。


「《双花繚乱》!」ヴィナが、その隙に、ドルガの懐へ、踏み込んだ。


 アルクとヴィナの、息の合った連携。ドルガの巨体が、初めて、よろめいた。

「……二人で、一つの、剣のようだ」ドルガが、呻いた。「これが——縁の、力か」


六 拮抗

 戦場は、拮抗していた。

 縁の軍勢と、帝国の大軍。アルクたちと、四将。


 どちらも、譲らない。


 だが——皇帝だけは、動かなかった。


 戦場の中央で、ただ、静かに、アルクを、見ていた。まるで——見極めるように。


「……皇帝は、まだ、動かないのか」ヴィナが、息を切らしながら、言った。

「俺たちを、見ている」アルクは言った。「縁の力が、本物か。——見極めている」


「気味が、悪いな」ヴィナは言った。


「ああ」アルクは言った。「でも——見せつけてやる。縁が、何を、できるか」


 その時。


 戦場の、喧騒の中で。


 ヴァルゴが、静かに、アルクへ向かって、歩いてきた。白髪を、なびかせて。穏やかで、冷たい目で。


「賦活師」ヴァルゴは言った。「お前の、縁の力は——確かに、見事だ。だが」


 ヴァルゴが、剣を、抜いた。

「——私は、お前を、消す」ヴァルゴは言った。「それが、私の、二百年だ。縁だろうと、何だろうと

——私の前では、無力だと、証明する」


 ヴァルゴの、白髪が、逆立った。その全身から、二百年分の、力が、溢れ出した。


「ヴァルゴ……!」アルクは、リフレインを、構えた。


「来い、賦活師」ヴァルゴは言った。「私の、全てを——お前に、ぶつける」

第九十四話予告

四将の誰よりも速く、二百年磨いた剣でアルクを圧倒するヴァルゴ。「来るな、ヴィナ! これは俺の戦いだ!」――縁の力を借り、ロスの想いを継ぐ者として、アルクは一人で向き合う。

剣を交えながら、アルクはヴァルゴの目の奥に深い悲しみを見る。友ロスを自らの手で消し、その罪を「正しかった」と証明するためだけに二百年を生きてきた男。だが消される瞬間、ロスが遺した言葉は――

そこへ、冷たい声が割って入る。

――ついに皇帝が、自ら動く。

世界中の澱みを一身に集め、底なしの力でアルクを呑み込んでいく皇帝。縁の光が、少しずつ押されていく。絶体絶命――その時、アルクの後ろで、ヴィナがそっと…………

その目は、もう、決まっていた。


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