表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺から始める、《与える》だけの無双伝 ~えぇ、与えていただけですよ?でも実は……知らないうちに守られていました!!♪!!?~  作者: わっぱるぅ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/143

第八十話 王都の会談、嵌合兵の襲撃

一 王都クロシア、再び

 三日かけて、王都クロシアに着いた。

 久しぶりの王都は、相変わらず、壮麗だった。だが——以前より、警備が、厳重だった。帝国の脅威に、備えているのだ。


 王宮で、イリアが、出迎えた。


「お久しぶりです、アルクさん」イリアは言った。少し、大人びた顔になっていた。「——皆さんも。よく来てくれました」

「殿下、お久しぶりです!」ネッサが、元気よく言った。

「ネッサさん」イリアは、微笑んだ。「相変わらず、元気そうで、安心しました。——その髪飾り、似合っていますね」

「ありがとうございます! アルクさんの、不思議な力で出てきたんです!」

「賦活師の力は、本当に、不思議ですね」イリアは言った。それから、表情を引き締めた。「——会談の前に、父に、会ってもらえますか。父が、ずっと、あなたを待っていました」


二 セレナ王の言葉

 セレナ王は、以前会ったときより、ずっと、顔色が良かった。

 病床ではなく、椅子に座って、アルクを迎えた。

「賦活師よ」セレナ王は言った。「よく来てくれた。——お前の回復のおかげで、私は、こうして起き上がれるようになった。礼を言う」

「お元気そうで、何よりです」アルクは言った。

「お前に、伝えたいことが、ずっとあった」セレナ王は言った。「賦活師の、完成の真実について」


 全員が、息を呑んだ。


「賦活師の完成形——それは、『与えた全てが、返ってくる力』だ」セレナ王は言った。「お前が、世界に与えた浄化。仲間に与えた付与。敵に与えた慈悲。——その全てが、いつか、お前自身に、返ってくる」


「《還元》……」アルクは言った。


「そうだ」セレナ王は言った。「そして——完成した賦活師は、自分を、全力で守り、回復し、強化できる。完全には、死なない体に、近づく。——だから、帝国は、お前が完成する前に、消そうとしている。完成すれば、消せなくなるから」


「ヴァルゴも、同じことを言っていました」アルクは言った。「賦活師が完成すれば、消せなくなる、と」


「ヴァルゴは——」セレナ王の顔が、曇った。「賦活師の完成を、恐れている。だが、それは——ただの権力欲では、ない」

「と言うと?」


「ヴァルゴは、二百年前、ロスと、親しかったのだ」セレナ王は言った。


 全員が、驚いた。

「ヴァルゴが、ロスと?」アルクは言った。

「これは、王家の、ごく一部だけが知る話だ」セレナ王は言った。「二百年前、ヴァルゴは、ロスの、友だった。だが——ロスの力が、完成に近づいたとき、ヴァルゴは、恐れた。『一人の人間が、世界を変える力を持つこと』を。だから——自らの手で、ロスを、消した。友を、自分の手で」


「友を、自分の手で……」アルクは、言葉を失った。


「ヴァルゴは、それ以来、二百年、生き続けている」セレナ王は言った。「友を消した罪を、『世界のためだった』と、信じ込むために。——次の賦活師を消すことだけを、生きる理由にして」


 アルクは、ヴァルゴの、冷たい顔を、思い出した。


 あの男も——苦しんでいるのかもしれない。

「セレナ王」アルクは言った。「俺は——ヴァルゴを、倒したくない。できることなら——わかり合いたい」

 セレナ王が、アルクを、じっと見た。

「……お前は、ロスに、似ている」セレナ王は言った。「ロスも、そういう男だったそうだ。誰とも、争いたくない、と。——だからこそ、ヴァルゴは、お前を、恐れる。お前が完成すれば、ヴァルゴの二百年が、全て、間違いだったと、証明されてしまうから」


三 会談、そして異変

 翌日、会談が開かれた。

 王都クロシアのセレナ王。ルーエのセラン王。そして、近隣の小国の代表たち。

「帝国は、大国だ」セレナ王は言った。「一国では、対抗できない。だが——我ら小国が、手を結べば。賦活師という、希望と共に」

「ルーエは、賛同する」セラン王が言った。温厚な顔で。「賦活師には、我が国も、救われた。——共に、戦おう」

 縁が、繋がっていく。

 アルクの肩で、ルミが、囁いた。

「アルク——五番目の子が、また、反応してる」ルミは言った。「縁が、繋がるたびに、目覚めに近づいてる」


 その時。


 王宮の外で、轟音がした。


 悲鳴が、上がった。

「何事だ!」セレナ王が、立ち上がった。

 衛兵が、駆け込んできた。「て、敵襲です!! 王都の城門が——破られました!!」

「帝国か!?」ヴィナが、カトレアを抜いた。

「いえ……!」衛兵は、青ざめていた。「帝国の兵かわかりません……! あれは——人なのか、魔物なのか、わからない、化け物です……!!」


四 嵌合兵

 全員が、王宮の外へ出た。

 そこにいたものを見て、誰もが、息を呑んだ。

 人間の、上半身。だが、下半身は——魔物だった。獣の脚、爬虫類の尾。人と魔物が、無理やり、融合させられている。目は、虚ろで、苦痛に歪んでいた。

 そんな化け物が、十体以上、城門から、雪崩れ込んできていた。

「……なんだ、あれは」ガドルが、呻いた。


嵌合兵かんごうへい)」声が、響いた。


 城門の上に、人影が立っていた。

 白衣の男。眼鏡。狂気じみた目。——セラフだ。四将の二番、魔核師の長。


「セラフ……!」リィナが、睨んだ。


「私の、新しい傑作だ」セラフは、恍惚とした顔で言った。「魔核制御術の、次の段階。魔物を操るだけでは、飽き足らなくなってね。——人間と魔物を、融合させた。人の知性と、魔物の力を、併せ持つ、究極の兵だ」

「人を——魔物と、融合させた!?」アルクは、怒りに震えた。「そんなことを——!」

「彼らは、志願兵だよ」セラフは言った。「帝国のために、命を捧げると、誓った者たちだ。——まあ、誓わされた、と言うべきかもしれないが」


「外道が……!!」バルガが、大盾を構えた。


「さあ、賦活師」セラフは言った。「お前の、お得意の『救い』を、見せてくれ。——この嵌合兵を、お前は、救えるかな? 倒せば、人が死ぬ。倒さなければ、お前たちが死ぬ。——さあ、どうする?」

 嵌合兵たちが、虚ろな目で、襲いかかってきた。


五 救うための戦い

「倒すだけじゃ、だめだ」アルクは言った。「あの中には、人がいる。——救う方法を、探す」

「でも、どうやって!?」ネッサが言った。

「リィナ!」アルクは言った。「あの嵌合兵にも、魔核があるはずだ。魔核を、無効化できれば——魔物の部分の制御が、切れる。人の意識が、戻るかもしれない」

「魔核解放を、応用するんですね!」リィナは、トニトルスを構えた。「でも、人と融合してる。普通の魔核解放より、繊細な制御が必要です」


「俺が、付与で、精度を上げる」アルクは言った。

「ルミ、回復の光で、人の部分を、守ってくれ」


「わかった!」ルミが、翼を広げた。

「全員、嵌合兵を、傷つけずに、足止めしてくれ!」アルクは言った。「ヴィナ、ガドル、バルガ——攻撃じゃない、抑え込みだ!」

「難しい注文だ!」ガドルが言った。だが、笑っていた。「だが——できないとは、言わせない!」


 バルガが、大盾で、嵌合兵の突進を受け止めた。傷つけずに、ただ、押し返す。

「《流転の盾》——!」

 ガドルが、斧の腹で、嵌合兵を、横に弾いた。刃ではなく、平らな面で。


 ヴィナが、カトレアで、嵌合兵の動きを、的確に逸らした。状態異常を退ける加護のおかげで、嵌合兵の毒の尾も、効かない。


「今だ、リィナ!」アルクが叫んだ。

 アルクが、リィナに、精密な付与をかけた。リィナの魔力が、繊細に、整えられる。


「《解魂のかいこんのいかずち)》——!」リィナが、新しい技を放った。魔核解放を、トニトルスで、極限まで精密化した、細い雷。

 雷が、嵌合兵の魔核——魔物部分の核に、正確に、突き刺さった。

 ルミの回復の光が、同時に、人の部分を包んだ。

 嵌合兵の、魔物部分が——崩れ落ちた。

 後に残ったのは——

 一人の人間だった。意識を失っているが、息が、ある。

「……救えた」ネッサが、息を呑んだ。

「一人ずつだ!」アルクは言った。「全員、救う!」

 次々と、嵌合兵を、解放していった。傷つけずに、足止めし、魔核を無効化し、人を、取り戻していく。


 セラフが、城門の上で、目を見開いた。


「……馬鹿な」セラフは言った。「嵌合兵を——殺さずに、解放しただと? そんなことが——」

「お前の作った兵は、もう、お前のものじゃない」アルクは言った。解放された人々を、見ながら。「この人たちは、もう、自由だ」

「面白い……!」セラフは、しかし、笑った。「実に、面白い。賦活師の力は、私の予想を、超えている。——これは、研究のしがいがある」


 セラフが、後退した。


「今日は、引こう」セラフは言った。「だが——次は、もっと、興味深いものを、用意するよ。お前の『救い』が、どこまで通用するか——試させてもらう」

 セラフが、城門の向こうへ、消えた。


六 戦いの後、近づく影

 解放された人々は、王都の治癒師たちに、保護された。

 アルクは、最後の一人の解放を終えて、膝をついた。消耗していた。

「大丈夫か、アルク」ヴィナが、駆け寄った。

「ああ」アルクは言った。「でも——セラフは、人を、魔物と融合させた。あんなことを、平気でする。——帝国は、どんどん、人の道を、外れていく」

「だからこそ、止めないといけない」ヴィナは言った。

「ああ」


 その時。


 王宮の空に——影が、差した。

 全員が、見上げた。

 遥か上空。一騎の人影が、黒い光に包まれて、こちらを見下ろしていた。


 青いマント。灰色の髪。


 ライナだった。


 だが——その気配は、以前と、まるで違った。黒い光が、ライナの全身を、覆っている。楔の力が、ライナを、一段、強化していた。

「ライナさん……!」ネッサが、叫んだ。

 ライナは、答えなかった。ただ、冷たい目で、アルクたちを、見下ろしていた。

「俺は、確かめると言った」ライナの声が、上空から、響いた。感情の読めない声。「賦活師の完成が、世界を救うのか。世界を縛るのか。——その答えを、帝国の側で、見極める」


「ライナ——」アルクが、言いかけた。


「次に会うときは、敵だと言った」ライナは、遮った。「俺は、本気だ。お前たちを——本気で、止める。それが、答えを見極める、唯一の方法だ」

 ライナの体から、黒い光が、放たれた。

 その一撃が、王宮の尖塔を、一つ、消し飛ばした。

 圧倒的な、力だった。以前のライナとは、比べ物にならない。


「……強い」ヴィナが、呻いた。「楔の力で、別物になってる」


「今日は、警告だけだ」ライナは言った。「次に会うときは——容赦しない。覚悟しておけ」

 ライナが、黒い光に包まれて、帝国の方角へ、飛び去っていった。

 後には、消し飛んだ尖塔と——重い沈黙が、残った。

「……ライナさん」ネッサが、呟いた。涙が、滲んでいた。「本当に、敵に……」

 アルクは、ライナが消えた空を、見つめていた。


「ライナは、迷っている」アルクは言った。「あの目——冷たかった。でも、奥に、迷いがあった。確かめたい、と言った。——あいつは、答えを探している。本気で」

「でも、あの力で攻めてこられたら——」リィナが言った。「私たちも、無事では済みません」

「ああ」アルクは言った。「だから——強くなる。ライナと、本気でぶつかれるくらいに。そして——いつか、あいつに、答えを見せる。賦活師の力は、世界を縛るためじゃない。世界を、解き放つためにあると」


 ルミが、アルクの肩で、静かに言った。


「アルク」ルミは言った。「ライナとの縁は——まだ、消えてない。五番目の子が、感じてる。あの黒い光の下にも、ちゃんと——ライナの、心が、ある」

「ああ」アルクは言った。「信じてる」


 そして、もう一つ。


 アルクは、自分の奥で——防御の守り手の気配が、戦いの最中、ほんの一瞬、いつもと違う動きをしたのを、感じていた。

 いつもは、ただ静かに守るだけの守り手。

 でも、さっき、嵌合兵から人々を救ったとき——その守り手が、ほんの一瞬、嬉しそうに、弾んだ気がした。


 まるで——無邪気な、子供のように。


「……ルミ」アルクは言った。「防御の守り手が、さっき、少し、動いた気がした」

「うん」ルミは言った。少し、驚いた顔で。「あたしも、感じた。——あの子、ずっと、静かだったのに。さっき、一瞬だけ——なんか、明るい気配が、漏れた」


「明るい?」


「うん」ルミは言った。「うまく言えないけど——すごく、可愛い感じの。まるで、ずっと我慢してた子が、嬉しくて、ちょっとだけ、顔を出したみたいな」


 アルクは、自分の奥を、意識した。


 ずっと、一人で、健気に守り続けてきた、防御の守り手。

 その奥に——もしかしたら、とても、愛らしい何かが、眠っているのかもしれない。

 いつか、その子が、目を覚ます日が来る。

 その日を、アルクは、楽しみに思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ