表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺から始める、《与える》だけの無双伝 ~えぇ、与えていただけですよ?でも実は……知らないうちに守られていました!!♪!!?~  作者: わっぱるぅ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/140

第六十四話 ヴァルゴの怒りと、帝国の新しい手

一 帝国の反応

 三日後、カインに父からの通信が届いた。

「父から——帝国内部で、騒ぎが起きているようです」カインは言った。「二つ目の封印石の紛失が発覚した。ヴァルゴが激怒しているという話が漏れてきている」


「ライナは、大丈夫でしょうか?」ネッサが言った。


「今のところ、ライナへの疑いは表面化していないようです」カインは言った。「でも——捜索が始まった。帝国の工作員が各地に散った」

「俺たちを、探しているのか」

「石を探している、というのが表向きだ」カインは言った。「でも——実質的には、俺たちを追っている」


「ヴァルゴが直接動くか?」ヴィナが言った。


「わかりません。でも——父の情報では、帝国が新しい作戦を立てているという話が出ている」

「新しい作戦?」

「詳細は不明だ」カインは言った。「でも——従来の封印石に頼らない方法を、検討しているかもしれないと」

「封印石に頼らない方法?」リィナが言った。「儀式には封印石が必要なのでは?」

「そこが気になる」カインは言った。


「ランスさん、何か知っているか」アルクは言った。


「……一つ、可能性がある」ランスは言った。「封印石は、守り手の力を弱めるための道具だ。でも——守り手の力が弱まるのは、他の方法でもできる。たとえば——賦活師本人が、極限まで消耗した状態になれば、守り手の力も低下する」

「つまり——封印石なしに、俺を極限まで追い詰めれば、儀式ができる?」

「理論上は」ランスは言った。「ただし、封印石より確実性が低い。封印石があれば、じわじわと守り手を弱めることができるが——消耗による弱体化は、回復すれば戻る」


「でも——封印石が足りない今、帝国がその方向を検討するなら」


「大規模な攻撃を、短期間に続ける可能性がある」リィナは言った。「回復する間もなく、連続で叩く」

「それに対抗するには——屋敷がある」ヴィナが言った。「屋敷の中では、完全に回復できる。ルミが守る場所だから、外から誰も入れない」

「そうだ」アルクは言った。「屋敷があれば、消耗しても回復できる。連続攻撃への対抗策になる」


「ルミ」アルクは言った。


「わかってる」ルミは言った。「屋敷を、もっと強くする。あたしが守る力を、今以上に高める」

「無理はするな」

「無理じゃない」ルミは言った。「やりたい。あたしが守れる場所を——もっと、みんなに安心してもらえる場所にしたい」


二 屋敷、さらなる進化

 その夜、屋敷に戻ると、また変わっていた。

 今回は、廊下が広くなっていた。天井が高くなって、照明が増えていた。

 そして——食堂の奥に、新しい部屋が増えていた。

「新しい部屋!?」ネッサが言った。


 覗くと、広い訓練場だった。石造りの床と壁。的が設置されている。魔力を帯びた照明が、明るく照らしている。

「屋敷の中に、訓練場ができた!?」ガドルが言った。

「ルミが作ったのか」バルガが言った。

「うん」ルミは言った。「屋敷の外で訓練すると、帝国に見られるリスクがある。だから——中でできるようにした」

「ルミ、天才だ」リィナが言った。

「えへへ」ルミは言った。


「照れてない」


「何も言ってない」アルクは言った。


「でも、言いそうだったから!!」


「毎回同じことを言っているな」


「毎回言いたくなるんだもん!!」


 ガドルが早速、訓練場に入って斧を振った。「……広い。思い切り振れる」

「天井も高いですね!!」ネッサが言った。「コレンも練習できる!!」

 コレンが、嬉しそうに訓練場に飛び込んだ。小さな炎を出して、ぐるぐると走り回った。


「コレン、嬉しそう!!」ネッサが笑った。


「ここなら、夜中でも訓練できる」ヴィナが言った。「帝国の工作員が来ていても、気にせず動ける」

「ルミ、本当にありがとう」アルクは言った。

「えへへ」ルミは言った。「アルクに感謝されると——嬉しい」

「いつも助けられている」

「あたしは——アルクのそばにいるだけで、嬉しい」ルミは言った。「それが、あたしの役目だから」

「役目だけじゃないだろ」

「……役目以上の、何かも」ルミは言った。翼を少し広げた。「——それは、言わなくてもわかってるでしょ」

「わかっている」アルクは言った。「ルミが、いてくれてよかった」

 ルミが、ぱたぱたと翼を揺らした。


「……照れてない」


「何も言ってない」


「言った!! 今言った!!」


三 訓練場での夜

 その夜、全員が訓練場に集まった。

 アルクとヴィナが、付与をかけながらの剣の練習をした。

 アルファがヴィナに付与をかける。ヴィナの《閃光斬》が一段鋭くなる。

「もっとかけてくれ」ヴィナは言った。

「お前の体が壊れる」アルクは言った。

「壊れない」

「自分でそう言う人間が、一番危ない」

「……お前は、過保護だ」ヴィナは言った。

「前の世界からの習性だ」

「前の世界では、体を治す専門家だったんだろ」ヴィナは言った。「ならば——わたしの限界を、一番よく知っているはずだ。俺が壊れない範囲で、最大をかけてくれ」

「……わかった。ただし、少しでも危ないと感じたらすぐ止める」

「それでいい」

 アルクが、ヴィナの体を慎重に見ながら付与をかけた。「精密に」——アルファが、丁寧に調整した。

 ヴィナが、剣を振った。


 《閃光斬》が、訓練場の的を両断した。

「……これくらいが、今の限界だ」ヴィナは言った。

「そうだな」アルクは言った。「でも、以前より確実に伸びている」


「お前と訓練を続けているからだ」ヴィナは言った。「——一つ、聞いていいか」

「なんだ」

「ライナとの話で、お前は『困っている人がいれば手を伸ばす』と言った」ヴィナは言った。「それは——誰に対しても言えることか」

「そうだ」

「敵にも?」

「困っているなら、敵も関係ない」


 ヴィナは、剣を鞘に収めた。しばらく黙っていた。

「——お前に、最初に会ったとき」ヴィナは言った。「霧牙の森で、あたしは死にかけていた。お前が来た。ランク外の荷運びが、武器も満足に持たずに、来た」

「そうだったな」

「あのとき——なぜ来たと思った」ヴィナは言った。「誰かが困っているから、来た。それだけだったんだろ」

「そうだ」

「あたしは最初——その理由が信じられなかった」ヴィナは言った。「でも今は、信じている。——それだけじゃないかもしれないとも、思っているが」


「それだけじゃない部分は?」

 ヴィナが、アルクを見た。少し間があった。


「……今は言わない」ヴィナは言った。「言えるようになったら、言う」

「待つ」

「……馬鹿だな、お前は」ヴィナは言った。「待つ、と即座に言う男がいるか」

「待てるから言った」

「……そういうところが」ヴィナは言った。声が、少し小さくなった。


「——嫌いじゃない」


四 ネッサの決意

 訓練場の隅で、ネッサがコレンと話していた。

 喚魂環で、直接つながりながら。

「コレン」ネッサは言った。「あたし、今日ヴィナさんとアルクさんの話、聞こえちゃってた」


 コレンが、ネッサを見た。


「聞こえちゃいけなかったとは思うけど——なんか、ヴィナさんの気持ち、わかる……」ネッサは言った。「あたしも、同じ気持ちがあるから」


 コレンが、ネッサの手をぺろりと舐めた。


「……コレンも、あたしの気持ち、知ってるよね」ネッサは言った。

 コレンが、ぴょん、と跳ねた。知っている、というように。

「どうしたらいいと思う?」

 コレンが、アルクの方向を見た。それから、ネッサを見た。

「……真っ直ぐに、か」ネッサは言った。「コレンは、シンプルだね」


 コレンが、また跳ねた。


「うん」ネッサは言った。「あたしもそうする。全部終わったら——ちゃんと、伝える。今は、全力で隣にいる。それだけでいいの」


 コレンが、ネッサの頬に顔を寄せた。

「ありがとう、コレン」ネッサは言った。「——よし!! 明日も、頑張ります!!」


 元気よく立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ