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底辺から始める、与えるだけの無双伝 ~知らないうちに守られていました!!♪!!?~  作者: わっぱるぅ


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⭐️第四十四話⭐️ バジリスクキング戦!!!、亜空間からの贈り物と四番目の目覚め

一 急いでルーエへ

 翌朝、全員でルーエへ向かって出発した。

 普通に歩けば四日の道のりだが、急いだ。アルクが付与で全員の体力と持久力を上げながら、速いペースで進んだ。

 二日半で、ルーエの国境に近づいた。

 でも——国境手前で、ルーエからの使者に出会った。馬で駆けてきた若い兵士だった。


「良かった、冒険者の方々!」兵士は息を切らして言った。「大変です。帝国の先遣隊が——ルーエ東部の街道に現れました。魔物を連れています。数は五十体以上。東の村が、今、包囲されています」

「セラン王は?」アルクは言った。

「王都でご無事です。でも——東の村の民が、逃げられずに」

「行く」アルクは言った。即座に。


二 東の村の包囲

 東の村に着くと、状況は深刻だった。

 帝国の兵士が二十人。操られた魔物がBランク以上で三十体以上。村を取り囲んでいて、中の村人が出られない状態だ。


 そして——その中心に、一体の巨大な魔物がいた。


「あれは……」リィナが息を呑んだ。「《バジリスクキング》。バジリスクの王種。Sランク上位の個体です。石化の視線を、範囲で放てる。触れたもの全てを石にできる」

「範囲の石化……!!」ネッサが言った。「前のバジリスクより、ずっと強い?」

「比べ物にならない」リィナは言った。「ルミさんの石化防御光を、全員に纏わせても——範囲の石化は、瞬時に上書きされる可能性があります」


「どう戦う」バルガが言った。


「正面から行くのは無理だ」ヴィナが言った。「でも——ここで動かなければ、村が」


「作戦を立てる」アルクは言った。全員が集まった。


 アルクは考えた。バジリスク戦の経験がある。目を潰せば視線は使えなくなる。でも今回は、範囲の石化だ。目を潰す前に、こちらが石化する可能性がある。

「ルミ」アルクは言った。「石化防御光を全員に纏わせることはできるか」

「できる」ルミは言った。「でも——範囲の石化は強い。完全には防げないかもしれない。一瞬なら防げるが、複数回は無理だ」

「一回で決める必要があるか」アルクは言った。

「できれば」

「わかった」アルクは言った。「バルガ、《鉄壁の号令》で兵士と魔物を引きつけてくれ。ガドル、引きつけた群れを《豪風斬》で。ヴィナとリィナはバジリスクキングを狙う。ネッサはコレンで村人の避難路を——」


 そのとき。

 アルクの体の奥で、何かが動いた。

 ルミでもない。アルファでもない。防御の守り手でもない。

 もっと深いところ。まだ眠っていた、四番目の気配が——今、はっきりと、動こうとしていた。


「……今」アルクは言った。


「どうした?」ヴィナが言った。


「四番目が——動こうとしてる」


 ルミが、アルクの肩で翼を広げた。「……本当だ。あの子、今、何かしようとしてる」ルミは言った。「——アルク、亜空間を開いて」


「今?」


「開いて」ルミははっきりと言った。「あの子が、出したいものがある。今がそのときだと思ってる」


三 亜空間からの贈り物

 アルクが、亜空間の扉を開いた。ルミの力で。

 全員が見守る中、扉の奥から——ゆっくりと、何かが浮かんできた。

 光の粒が集まって、形を作っていく。


 まず浮かんできたのは、腕輪だった。

 金色と銀色が混じった、細い腕輪。表面に、精緻な文様が刻まれている。見ただけで、とてつもない魔力が込められているとわかった。

「これは……」リィナが息を呑んだ。「魔力が、桁違いです。何これ——」


 次に、小さな盾の形をしたメダルが出てきた。掌サイズだが、全身を守れそうな魔力の密度がある。


 そして最後に——ブレスレットが出てきた。革製の、シンプルなブレスレット。でも、その中心に赤い石がはまっていて、石の中に炎のようなものが揺れている。


 三つのアイテムが、宙に浮かんだ。


 そのとき——アルクの体の奥で、四番目の気配が、また動いた。

 今度は、光を放った。

 ぼんやりとした、薄い光だった。形があるような、ないような。でも——その光が、三つのアイテムに触れた。


 アイテムが、輝いた。


「……四番目の子が、起動させた」ルミは言った。驚いたような声だった。「眠ったまま、力を使った。アイテムを、今使えるように——」

「何のアイテムだ」アルクは言った。


「腕輪は……」ルミは少し考えた。「魔力増幅と、攻撃強化。すごく強い。前の賦活師——ロスが、守り手と一緒に作ったものかもしれない」


「盾のメダルは?」

「身代わりだ」ルミは言った。「致命的な攻撃を、一度だけ肩代わりする。——でも、一度限りだ。大切にして」


「ブレスレットは?」

「状態異常……石化も、完全に無効化する」ルミははっきりと言った。「これを着けていれば、バジリスクの視線が当たっても、石化しない。——今すぐ、使って」


「誰が着ける……」


「一つしかない」ルミは言った。「だから——一番石化を防ぐ必要がある人が」

「ヴィナだ」アルクは言った。「バジリスクキングの目を潰しに行くのは、ヴィナしかいない」

「わかった」ヴィナは前に出てブレスレットを受け取った。手首に着けると、赤い石が光った。


「腕輪は?」アルクは言った。

「リィナさんに」ルミは言った。「攻撃魔法の威力が、さらに上がる。バジリスクキングを仕留めるのに必要だ」

「わかった」リィナが腕輪を受け取った。着けた瞬間、リィナの杖が青白く輝いた。「……魔力が、溢れてくる。すごい。これ、すごいです」


「身代わりのメダルは」アルクは言った。

「アルク、あなたが持って」ルミは言った。「あなたは前に出ることが増えてきた。もしものときのために」

 アルクは、メダルを受け取って懐にしまった。


 そのとき——四番目の気配が、また動いた。

 今度は、少し形が見えた気がした。

 ほんの一瞬。宙に浮かぶ、小さな光の塊。でも——その光の中に、小さな手のようなものが見えた気がした。


 ちいさな、でも確かな、手。


「……見えた」ネッサが言った。「何か、小さい手が——」

「四番目の子だ」ルミは言った。「ほんの少しだけ、姿が見えた。——でも、まだ眠ってる。今のは、精一杯だったと思う」

「ありがとう」アルクは、体の奥に向かって言った。「助かった」

 四番目の気配が、かすかに揺れた。まるで、照れているように。


四 バジリスクキング戦・前半

「行くぞ」アルクは言った。

 作戦通りに、動き出した。

 バルガが前に出た。大盾を地に突き立て、腹の底から《鉄壁の号令》を放った。


 ゴォォォン——!


 音と、魂を直接揺さぶる圧力が、戦場いっぱいに広がった。帝国の兵士たちと、操られた魔物が、一斉にバルガへ向き直る。三十体を超える殺意が、たった一人に集中した。

「来い」バルガは低く言った。「全部、ここで受ける」

 ガドルが、バルガの背後で回転を始めた。アルクが付与を乗せる。「速く、力強く」——斧が唸りを上げて加速する。


「《豪風斬》ォ!!」


 轟音。引きつけられた群れの前列が、まとめて吹き飛んだ。

 だが——倒せたのは、半分だった。

「……まだ来やがる!!」ガドルが吐き捨てた。倒れた仲間を踏み越え、後列の魔物が殺到する。「数が、減らねえ……!! くそっ、目が回る……!!」

 その隙に、避難路へ回り込もうとする魔物が現れた。コレンが炎で道を作り、ネッサが村人を誘導していた、その細い生命線へ。


「コレン、右に三体!!」ネッサが叫んだ。


 コレンが——白い回復の光をまとった、白銀の炎の獣が、横っ飛びに回り込んだ。《白銀の守炎》。攻撃しながら自らを癒す、倒れぬ獣。突進が、迂回した魔物三体を炎で薙ぎ払う。

 だが、一体倒すたびに、二体が湧く。


「足りない……!!」ネッサの声が震えた。「コレン一体じゃ、避難路を守りきれない……っ!!」


 戦場の均衡が、軋んでいた。

 バルガは三十体を抱えて限界。ガドルは目を回しながら削り続けるので精一杯。避難路はコレンが守って崩壊寸前。そして——その全ての奥に、未だ無傷の王が、鎮座している。

 バジリスクキングの六つの目が、ゆっくりと、ヴィナとリィナを捉えた。


「来る——!!」リィナが叫んだ。「範囲石化ァ!!」


 六つの瞳が、紫に燃えた。扇状の、巨大な石化の光が放たれる。

 ヴィナのブレスレットが、真紅に燃え上がった。光がヴィナに触れた瞬間、かき消える。

「効いてる……!!」ヴィナが叫んだ。「あたしには、石化は効かない!!」

 だが、その扇は、ヴィナ一人を狙ったものではなかった。

 光が、避難路にまで届いた。

 逃げ遅れた村の老人と、誘導していたネッサへ。


「ネッサ——!!」アルクが絶叫した。


 間に合わない。アルクは、バルガとガドルの背後で全員に付与を巡らせ続けている。その場を離れれば、前衛の二人が一気に崩れる。


「コレン——!!」


 コレンが、避難路から飛び戻った。ネッサと老人の前に割り込み、白銀の体で二人を覆う。炎が、紫の光を受け止めた。じゅう、と音を立てて、石化の光が炎に呑まれ——消える。

 ネッサと老人は、石にならずに済んだ。

 だが——コレンが避難路を離れた、その一瞬。

 守りを失った生命線へ、回り込んでいた魔物の群れが、雪崩れ込もうとした。


「させるか!!」


 ヴィナが、地を蹴った。王へ向かうはずだった足を、避難路へと反転させる。《閃光斬》が、先頭の魔物を両断した。


「ヴィナ、王は——!?」アルクが叫んだ。


「村人が先だ!!」ヴィナは叫び返した。「あいつは、その後で必ず斬る!!」


 ——作戦が、崩れた。

 ヴィナが王から離れ、リィナだけが、バジリスクキングの正面に取り残された。


五 決着と、四番目の気配

 バジリスクキングの六つの目が、今度はリィナだけを捉えた。

 二度目の範囲石化が、至近距離で放たれる。


「リィナ!!」アルクが叫んだ。


 リィナには、石化無効のブレスレットはない。

 咄嗟に、ルミがリィナへ飛んだ。白い防御光が、リィナを包む。紫と白が、激突する。

 防御光が、石化を押し返す——が。


「……っ、ルミさん、これっ……!!」


「一回が限界ッ!!」ルミが悲鳴のような声を上げた。「王の石化が強すぎる……次が来たら、防げない……!!」


 リィナの右足の爪先が、こつ、と音を立てて石化した。防御光が、一度は防いだ。だが二度目の視線が来れば——リィナは、足元から石像になる。

 バジリスクキングが、無慈悲に三度目の視線をためた。六つの目が、再び紫に灯り始める。


 その時——アルクの手のひらの奥で、四番目の気配が、激しく脈打った。

 眠ったまま。それでも、必死に何かを伝えようとしている。


「アルク……!!」ルミが叫んだ。「四番目の子が——あたしの光を、“複製”したがってる……!! あたし一人じゃ足りない防御光を、もう一枚、増やそうとしてる……!!」


「やってくれ!!」アルクは叫んだ。手のひらの四番目へ、ありったけの付与を流し込む。「お前の力を、信じる!!」


 手のひらから、薄い光が飛んだ。


 その光が、リィナを包むルミの防御光に触れ——そして、もう一枚、瓜二つの白い光を、複製した。

 二重の防御光が、リィナを包んだ。

 三度目の範囲石化が、襲いかかる。


 一枚目の防御光が、砕けた。だが、その奥で、複製された二枚目が——王の石化を、受け止めた。

 リィナの爪先で進みかけた石化が、そこで止まった。

「……止まった」リィナが、呆然と呟いた。「四番目の子が……わたしを……!!」

「まだ眠ったままなのに——精一杯、お前を守った」ルミが言った。


 四番目の薄い光の中に、ほんの一瞬、小さな手のような輪郭が見えた。何かを、ぎゅっと握りしめるような。

「ありがとう……っ」リィナは唇を噛んだ。「この借りは——この一撃で、返す!!」


 二重の守りが、王の石化を防いでいる、今この一瞬。

「ヴィナ!! 避難路は!?」アルクが叫んだ。


「片づけた!!」ヴィナの声が返る。最後の魔物を斬り伏せ、村人の最後の一人が避難路の奥へ消えた。「全員、逃げた——王に戻る!!」


 ヴィナが、地を蹴って駆け戻る。王へ。


 戦況が、傾いた。だが——まだ、終わっていない。


 バルガが抱えていた群れも、ガドルの斧で残り数体。コレンがネッサと共に避難路から戦線へ復帰する。

「全員、王に集中するぞ!!」アルクが叫んだ。「一度で、決める!!」

 アルクは、自らに付与を重ねがけした。「速く、強く」——体が橙の光をまとう。腕輪を得たリィナへ、最大の付与を注ぐ。リィナの杖が、見たこともない青白さで燃え上がった。


「ヴィナ、目を潰せ!! お前の石化無効を信じろ!!」


「言われなくても——!!」


 ヴィナが、王の眼前へ跳んだ。バジリスクキングが四度目の視線を、至近のヴィナへ放つ。ブレスレットが真紅に燃え、石化が、ヴィナの全身を覆い——消えた。一切、効かない。


「あんたの石化は、あたしには届かない!!」ヴィナが踏み込んだ。「《閃光斬》——!!」


 一閃。光の軌跡が、王の右の三つの目を、まとめて斬り裂いた。


 ぐちゅ、という音。バジリスクキングが、絶叫を上げた。視界の半分を失い、頭を振り乱す。


「今だ、リィナ!!」アルクが叫んだ。


「《雷霆網》——限界、超過ァ!!」


 腕輪とアルクの付与で増幅された、桁外れの雷網が、空から降り注いだ。無数の稲妻が、王の巨体を上から串刺しにする。鱗が焼け、肉が裂け、王が雷の檻の中でのたうった。

「効いてる——!! でも、まだ立ってる……!!」リィナが歯を食いしばった。「Sランク上位の生命力……化け物ッ……!!」


 雷が、止んだ。リィナの魔力が、底をつきかけていた。


 そして——煙の中から、バジリスクキングが、立ち上がった。


 半分潰れた目に、最後の、最も濃い紫の光を灯して。


 その狙いは——雷を撃ち終え、棒立ちになったリィナ。


「リィナ、退け——!!」


 間に合わない。リィナの足は、まだ石化の名残で動きが鈍い。


 その瞬間、割り込んだのは——バルガだった。


「《鉄壁》——!!」


 群れを片づけたバルガが、リィナの前に滑り込み、大盾を翳した。王の渾身の石化が、盾に直撃する。

 盾の表面が、めき、と音を立てて、石へと変わり始めた。

「ぐ、ぅ……っ!!」バルガが呻いた。「盾ごと、石に……されるッ……!! だが——リィナ一人くらい、俺が守れずに……何が、壁か……!!」

 バルガの盾が、半ば石化しながらも、王の視線を堰き止めた。


「バルガさん……!!」ネッサが叫んだ。「コレン——バルガさんを守って!!」


 コレンが、白銀の炎をバルガの盾に纏わせた。《白銀の守炎》の癒しの炎が、石化の侵食をじりじりと押し戻す。石と炎が、盾の上でせめぎ合う。


「今のうちに……決めろ……!!」バルガが、石化しかけた盾を支えながら吼えた。


 だが、リィナの魔力は尽きかけ、ヴィナは一撃を放った直後で体勢が崩れ、ガドルは目を回し、バルガは盾ごと石化と戦っている。


 決め手が、ない。


 ——その時、アルクは、自分の中の確信に気づいた。


 今、この瞬間。全員が王に肉薄し、王の意識がバルガの盾に縛りつけられている。これ以上の好機は、二度と来ない。


「リィナ!!」アルクは叫んだ。「最後の一発、残ってるか!!」


「……っ、一発だけ……でも、それじゃ、あの生命力は——」

「お前一人の雷じゃない」アルクは、リィナの隣に並んだ。「俺の付与を、極限まで重ねる。お前の《雷霆網》に——俺の全部を、乗せる」

「《雷霆網》に……アルクさんの付与を、丸ごと!?」リィナの目が見開かれた。「そんな撃ち方、したことが——」

「今、初めてやる」アルクは言った。「二人で、一つの技にする。——できるか、リィナ」


 リィナが、唇を結んだ。そして——笑った。研究者の、不敵な笑みで。

「……データが、ありませんね」リィナは杖を構え直した。「なら——今、取ります!!」

 アルクが、両手をリィナの杖に添えた。アルファの力、腕輪の力、自らの命を削るほどの付与——その全てを、たった一点に注ぎ込む。


 リィナが、残った魔力の最後の一滴までを、雷の超圧縮へと叩き込んだ。

 雷が、一点に凝縮していく。空気が軋み、光が収束し、世界が白く塗り潰される。


「コレン、バルガ——盾を、離して!!」アルクが叫んだ。「リィナの雷の、道を空けろ!!」


 バルガが、石化しかけた盾ごと、横へ跳んだ。コレンが、その身を炎で支えて引き剥がす。


 王と、リィナの間を遮るものが、消えた。


「——っ、《雷霆網・極》ァァ……ッ!!」


 リィナの絶叫と共に、アルクの付与を丸ごと呑み込んだ、極限の一条が放たれた。


 それは、もはや雷ではなかった。圧縮された光の槍。世界の理を貫く、白銀の一閃。


 バジリスクキングの、残った左の三つの目を、その奥の頭蓋を、脳天から胴の芯まで——一直線に、貫いた。


 王の体内で、凝縮された雷が、解放された。


 内側から、王が、爆ぜた。


 光が、収まった後。


 バジリスクキングの巨体が、ゆっくりと、地響きを立てて、崩れ落ちた。


 今度こそ——二度と、動かなかった。


 戦場に、静寂が降りた。


 帝国の兵士たちは、王が倒れたのを見て、蜘蛛の子を散らすように撤退していった。


「……やった」ネッサが、コレンを抱きしめたまま、へたり込んだ。「やった……っ、全員、無事だ……!!」


 リィナが、杖にすがるようにして、荒い息をついた。「……二人で、一つの技……記録に、残さないと……」呟いて、力尽きたようにその場に座り込む。でも、その顔は、晴れやかだった。


 アルクは、自分の両手を見下ろした。付与を絞り尽くした、震える手を。けれど——腕輪のおかげか、立っていられないほどではなかった。


 バルガが、半ば石化した盾を見つめていた。盾の表面が、コレンの炎に癒され、少しずつ元の鉄の色を取り戻していく。

「……間に合った」バルガは、静かに言った。「壁としての、務めは果たせたか」

「果たしたよ」アルクは言った。「お前がいなかったら、リィナを失ってた」

「……そうか」バルガは、わずかに口の端を上げた。「なら、いい」


六 戦いの後

 全員、無事だった。

 村人も、全員脱出できていた。

「……やった」ネッサが、へたり込んだ。「全員無事だ!!」

「ルミ、怪我人の手当てを頼む」アルクは言った。

「うん」ルミが、村人たちに回復の光を届けていく。


 アルクは、自分の両手を見た。《賦与放》を全力で放った後の疲労感。でも——いつもより少ない消耗だった。

「この腕輪、すごかったです」リィナが言った。隣に来て、腕輪を見ていた。「攻撃力と魔力増幅だけじゃない。どうやら、効率も上げているみたいです」

「ロスが作った、か」アルクは言った。

「二百年前の賦活師が、今の俺たちのために」

「……繋がってるんですね」リィナは言った。「二百年の時間が」


 ヴィナが、ブレスレットを外して見た。赤い石の光が、少し薄くなっていた。

「消耗するのか?」アルクは言った。

「使うたびに、少しずつ弱くなるかもしれない」ルミは言った。「でも——ロスが込めた力は、すごく大きい。まだたくさん残ってる」

「大切にする」ヴィナは言った。


 そのとき、アルクの体の奥で、四番目の気配がまた揺れた。

 今回は——少し長く。

 そして、かすかな何かが、伝わってきた気がした。言葉ではない。でも——「よくやった」という感覚に近いものが。

「四番目が、何か言おうとしてるか」アルクはルミに言った。

「うん」ルミは言った。「まだ言葉にはなってないけど——伝わってる、という感じはしてる。あの子、今日のことで、少し動けた。嬉しかったみたい」

「そうか」アルクは言った。体の奥に向かって「ありがとう」と思った。

 気配が、温かく揺れた。

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