第四十三話 帝国の計画と、封印の真実
一 カインの父からの連絡
王都での二日目の夜。
カインが、青い顔で部屋に飛び込んできた。
「父から——緊急の連絡が来ました」
全員が集まった。カインの話しを聞く。
「帝国の本隊が動き始めています。目標は——ルーエです」カインは言った。「でも——それだけじゃない。父が、帝国の本当の計画を掴みました」
「続けてくれ」アルクは言った。
「『帝国が賦活師を消すには、通常の攻撃では不可能だ。防御の守り手が、常に賦活師を守っているからだ。どんな攻撃も、守り手が弾く。これは二百年前も同じだった。ロスを消せたのは——唯一の方法、《封印の儀式》を使ったからだ』」
「封印の儀式?」ヴィナが言った。
「続きを読みます」カインは言った。「『封印の儀式には、三つの条件が必要だ。一つ目——《封印石》と呼ばれる特殊な石を、三か所に設置すること。この石は守り手の力を一時的に無効化する。二つ目——賦活師が仲間から孤立した状態であること。守り手は賦活師一人を守れるが、仲間も同時に守ることはできない。孤立すれば、守り手の力がアルクだけに集中する。三つ目——三つの封印石が揃った場所で、儀式を行うこと。この三条件が揃ったとき初めて、賦活師を消せる』」
全員が静まった。
「つまり」アルクは言った。「今まで俺を消せなかったのは——」
「防御の守り手が、常に守っていたからです」カインは言った。「通常の攻撃は全部弾かれる。だから帝国は、儀式の準備を進めてきた」
「ヴォルタを出た頃からの動きは——全部、そのための布石だったのか」ヴィナが言った。
「そうだと思います」カインは言った。「続きがあります。『帝国はすでに、封印石を二つ設置している。一つはヴォルタの霧牙の森の深部——霧鬼の長がいた場所に。もう一つは、霧の回廊の施設の地下だ。調査した結果、装置の核心部分に封印石が埋め込まれていた』」
「装置の中に……!」リィナが言った。「私たちが壊したのは——」
「装置本体だけです。封印石は、装置より深い場所にあったはずで——おそらく、まだ残っています」
「三つ目の封印石は?」アルクが聞いた。
「父はまだ掴めていません。でも——ルーエに設置しようとしているのかもしれない」カインは言った。「帝国の本隊がルーエに向かっているのは、三つ目の封印石を設置するためではないか、と父は考えています」
二 防御の守り手が守ってきた理由
ルミが、アルクの肩で翼をたたんでいた。
「ルミ」アルクは言った。「防御の守り手が、俺を守り続けてきた理由——それが、今わかった気がする」
「うん」ルミは言った。「あの子は、ずっとわかっていたと思う。帝国が儀式を準備していることを。だから、一瞬も休まずに、守り続けてきた」
「儀式の条件の一つが、守り手の力が弱まった瞬間——か」
「あの子が眠れない理由が、それだ」ルミは言った。「休んだ瞬間に、隙ができる。だから、休まない」
「……ずっと、一人で」
「うん」ルミは言った。「だから——あの子が目覚めるのは、本当に最後だ。全部が終わったとき、初めて休める」
アルクは、体の奥の防御の守り手の気配を感じた。静かに、でも確かに、脈打っている。ずっと、ずっと、休まずに。
「……絶対に、守ってみせる」アルクは言った。「あの子が、最後に休めるように」
『——アルク、それはうちらのセリフや』アルファが言った。珍しく、静かな声で。
「二人とも、そうだな」アルクは言った。
三 イリアの決断
その夜遅く、イリアが部屋を訪ねてきた。
「父が、王都の騎士団の出撃を許可しました」イリアは言った。「ルーエを守るために。でも——騎士団が集結して動くには、二日かかります」
「俺たちが先行する」アルクは言った。
「お願いします」イリアは頭を下げた。それから、アルクを真っ直ぐに見た。「アルク——一つ、聞いていいですか。個人的に」
「なんでしょう」
「あなたは、怖くないんですか。帝国が、あなたを消そうとしている。二百年前、ロスは消された。同じことが、あなたにも起きるかもしれない」
アルクは少し考えた。
「怖いかどうかは、正直わからない」アルクは言った。「でも——ロスは一人で戦っていた部分があった。俺には、みんながいる。ルミも、アルファも、まだ眠っている守り手も。ヴィナも、ネッサも、全員が」
「……仲間がいるから、怖くない、ということですか」
「与えれば与えるほど、強くなる——リィナがそう言っていた」アルクは言った。「俺の力は、仲間がいるほど大きくなる。ロスには、それが足りなかったのかもしれない。俺は——まだ大丈夫だ」
イリアは、しばらくアルクを見ていた。それから、静かに微笑んだ。
「……ヴィナさんが、あなたを選んだ理由が、わかる気がします」
「選んだ?」
「なんでもありません」イリアは言った。「——では、ルーエをよろしくお願いいたします。父も……セラン王も、あなたたちを信じています」




