表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺から始める、《与える》だけの無双伝 ~えぇ、与えていただけですよ?でも実は……知らないうちに守られていました!!♪!!?~  作者: わっぱるぅ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/96

第二十九話 再会と、Sランクの脅威

一 広場の男

 ルーエの広場で、見知らぬ男が叫んでいた。

 四十前後の、傷だらけの鎧を着た男だ。背中に大剣を背負っている。冒険者たちに囲まれているが、誰も首を縦に振らない。


「誰かいないか!」男は声を張り上げた。「ルーエの北に、Sランクの魔物が出た! 一人じゃ無理だ! 組んでくれる奴を探してる!」

 周囲の冒険者たちは、顔を見合わせて後ずさるばかりだった。Sランク。その言葉だけで、誰もが尻込みしていた。

「Sランクって、本当ですか……」ネッサが小声で言った。

「あの男、嘘をついている顔ではない」ヴィナが言った。「本物だ」

 そのとき、広場に走り込んできた者がいた。


「アルク!!」


 声に振り返ると——ガドルだった。その後ろにリィナもいる。北の調査に向かったはずの二人だ。

「ガドル!」アルクは言った。「なぜここに」

「北の調査で、嫌な情報を掴んだ」ガドルは息を切らしていた。「魔物の異常出没の中心が、ルーエの北に移動している。Sランクの個体が確認された。お前たちが西に向かっていたので、追ってきた」


「ちょうどいいタイミングだ」アルクは広場の男を見た。「あの男も、同じ魔物の話をしている」

「知っている」ガドルは言った。「あいつはバルガ。Aランクの冒険者だ。腕は確かだが——一人では、Sランクは無理だ」

 リィナが前に出た。「アルクさん、状況を整理します」リィナは冷静に言った。「Sランクの魔物が一体。ルーエの北の渓谷に出現。このまま放置すれば、ルーエの都に向かう可能性が高い。——戦力が必要です」


「全員でやるしかない」ヴィナが言った。


 アルクは頷いた。広場の男——バルガに近づいた。

「俺たちが組む」アルクは言った。

 バルガが振り返った。アルクを上から下まで見た。「……お前たちが? 失礼だが、お前は冒険者には見えないが」

「ランク外の、賦活師だ」

「賦活師?」バルガは眉をひそめた。「聞いたことがない職業だな」


「説明は後だ」ヴィナが言った。「Sランクの場所へ案内しろ。あたしたちが戦力になる」

 バルガはしばらく迷った。それからガドルを見た。「ガドル、こいつらは信頼できるのか」

「できる」ガドルは即答した。「俺が保証する」

「……わかった」バルガは頷いた。「来てくれ。だが、覚悟はしておけ。あの魔物は——尋常じゃない」


二 渓谷の魔物

 ルーエの北の渓谷は、切り立った岩壁に囲まれた狭い地形だった。

 その奥に、それはいた。

 全長十メートルを超える、巨大な蛇——いや、蛇ではない。胴体は蛇のようだが、頭部に二本の角があり、背中から黒い翼が生えていた。鱗は黒曜石のように光り、目が金色に燃えている。


「《ヴリトラ》……」リィナが息を呑んだ。「災害級の飛竜種。文献でしか見たことがない」


「Sランクの中でも、上位の個体だ」バルガが言った。「俺の仲間が、先週これに——」

 バルガは言葉を止めた。その手が、剣の柄を握りしめていた。

「仲間を、失ったのか」アルクは言った。

「ああ」バルガは静かに言った。「だから、俺はこいつを倒す。そのために組む相手を探していた」


 ヴリトラが、こちらに気づいた。金色の目が、アルクたちを捉えた。長い首をもたげて——口を開いた。

 口の奥に、青白い光が集まり始めた。

「ブレスが来る!」リィナが叫んだ。「散開!!」

 全員が左右に散った。

 次の瞬間、ヴリトラの口から、青白い閃光が放たれた。地面を抉り、岩を溶かしながら、まっすぐに突き抜けた。光が通った後には、溶けた岩の溝が残った。


「あれを食らったら、即死だ」ガドルが言った。

「作戦を立てる」ヴィナが言った。冷静だった。「正面からは無理だ。アルク、全員に付与をかけられるか」

「やる」アルクは言った。「でも、Sランク相手だと、付与だけでは足りないかもしれない」

「足りない分は、頭を使う」ヴィナは全員を見渡した。「リィナ、あなたの魔法の射程と威力は」

「雷が得意です」リィナは言った。「中距離なら、雷撃を当てられる。でも——あの鱗は、魔法を弾く可能性がある」


「弱点を探す必要がある」カインが言った。高台に上がりながら。「文献では、飛竜種の弱点は——翼の付け根と、口の中。鱗のない部分だ」

「口の中はブレスを撃つ瞬間しか開かない」ヴィナが言った。「翼の付け根を狙うには、空中の相手に届かせる必要がある」

「コレンなら飛べます!」ネッサが言った。「強化すれば、翼の付け根まで届くかも!」

「いい」ヴィナは頷いた。「作戦を決める」


三 総力戦・前半

 ヴィナが、全員に役割を割り振った。

「ガドルとバルガは前衛。ヴリトラの注意を地上に引きつける。あたしも前衛に加わる。リィナは中距離から雷撃で牽制。ネッサはコレンを強化して、翼の付け根を狙うタイミングを待つ。カインは全体を見て指示。アルクは——全員に付与を回す」


「了解だ」ガドルが斧を構えた。

「わかりました」リィナが杖を構えた。

「はい!」ネッサが札を握った。

「アルク」ヴィナが言った。「お前の付与が、この戦いの鍵だ。全員に、必要なときに必要な分を回してくれ」


「アルファ」アルクは言った。「手伝ってくれ」

『——任しとき!! 全員に届けたるわ!!』アルファの声が、いつもより力強かった。


「ルミ」アルクは言った。「回復を頼む。誰かが傷ついたら」

「わかった」ルミは小鳥の姿から光の粒になった。「いつでもいける」


 ヴリトラが、再び口に光を集め始めた。

「ブレスだ!」カインが高台から叫んだ。「右に避けて!」

 全員が右に動いた。閃光が、左を抜けた。

「今だ、行け!」ヴィナが叫んだ。

 ガドルとバルガが、地上から突進した。ヴリトラの胴体に攻撃を加える。鱗が硬く、刃が浅くしか入らない。でも、注意を引くには十分だった。

 アルクが、二人に付与をかけた。「力強く」——アルファの流れが乗る。攻撃力が跳ね上がった。


 ガドルの斧が、ヴリトラの鱗を一枚、砕いた。

「効いてる!!」ガドルが叫んだ。「アルク、この調子で頼む!!」

 リィナが、中距離から雷撃を放った。細く、鋭い雷が、ヴリトラの頭部を狙った。

 しかし——鱗に弾かれた。

「やはり魔法が通らない……!」リィナが舌打ちした。

「リィナ!」アルクが叫んだ。「お前にも付与をかける! 魔力を増幅できるか試したい!」

「魔力の増幅!?」リィナが目を見開いた。「そんなことが——」

「やってみる!」

 アルクは、リィナに意識を向けた。今まで、付与は「体の強化」が中心だった。でも——リィナの魔力の流れを見たとき、そこにも「強化できる線」があることに気づいた。


 「増えろ。強くなれ」——アルファの流れを、リィナの魔力に重ねた。

 リィナの杖が、青く輝いた。

「——これは」リィナが息を呑んだ。「魔力が……溢れてくる……!」

「もう一度撃ってくれ!」

 リィナが、杖を構え直した。雷撃を放つ。


 今度の雷は、太く、激しかった。先ほどの数倍の威力。それが、ヴリトラの鱗を——貫いた。

 ヴリトラが、初めて悲鳴を上げた。

「効いた……!」リィナが目を見開いた。「アルクさんの付与で、魔法の威力が——!」

「魔力にも付与がかかるんだ!」アルクが言った。

「これは——革命的です!」リィナが叫んだ。「攻撃魔法に付与を重ねれば、Sランクの鱗すら貫ける!」

『うちの付与が、魔法にも乗るんや!!』アルファが興奮していた。『おもろい!! もっといけるで!!』


四 総力戦・後半

 ヴリトラが、怒りで暴れ始めた。

 翼を広げて、空中に舞い上がった。地上の攻撃が届かなくなる。

「飛んだ!」ガドルが言った。「届かない!」

「ネッサ!」ヴィナが叫んだ。「コレンの番だ!」

「はい!!」ネッサが札を握りしめた。「コレン、お願い!!」

 コレンが炎の姿で現れた。ネッサが「アルクさん!」と叫んだ。

「強化する!」アルクが言った。「アルファ、コレンに全力で!」

『——いくで!!』

 アルクとアルファが、コレンに付与をかけた。


 コレンの体が、燃え上がった。猫サイズから、一気に大きくなる。翼を持つ炎の獣——以前見た姿に変わった。さらに、今回はその上があった。炎の色が金から白へ、そして青白い炎へと変化した。

「コレンが……!」ネッサが息を呑んだ。「もっと大きくなってる……!」

 コレンが、空へ舞い上がった。ヴリトラに匹敵する速さで。


 ヴリトラが、コレンに気づいた。空中で向き合う、二体の竜と炎の獣。


「ネッサ、コレンに指示を!」ヴィナが叫んだ。「翼の付け根を狙え!」

「コレン!」ネッサが叫んだ。「翼の付け根! あそこ!」

 コレンが、ヴリトラの背後に回り込んだ。青白い炎を纏って、翼の付け根——鱗のない部分に、突進した。


 炎が、ヴリトラの翼の付け根を焼いた。


 ヴリトラが、バランスを崩した。空中で体勢を立て直せず、地上へ落下し始めた。

「落ちてくる!」カインが叫んだ。「今がチャンスです! ヴィナさん、口の中を!」

「アルク!」ヴィナが叫んだ。「最大の付与を! 今だけでいい!」

「アルファ!」

『——全部出すで!! アルクも一緒に!!』

 アルクとアルファが、全力でヴィナに付与をかけた。


 ヴィナの体が、橙色と白の光に包まれた。今まで以上に強い光だった。


 落下してきたヴリトラが、地面に激突する寸前——苦痛で口を開いた。

 その口の中へ。

 ヴィナが、跳んだ。

 光の軌跡を引きながら、ヴリトラの開いた口へ向かって、剣を構えて飛び込んだ。剣が、口の中——鱗のない柔らかい部分に、深々と突き刺さった。

 ヴリトラが、痙攣した。

「バルガさん、ガドルさん、今です!」カインが叫んだ。

 ガドルとバルガが、同時に動いた。アルクが二人に付与をかける。ガドルの斧が、ヴリトラの首を打った。バルガの大剣が、続けて打ち込まれた。


 ヴリトラの巨体が、ゆっくりと崩れ落ちた。


 渓谷に、地響きが響いた。

 そして——静寂が訪れた。


五 戦いの後

 ヴィナが、ヴリトラの口から飛び降りた。着地と同時に、膝をついた。付与の反動だ。

「ヴィナ!」アルクが駆け寄った。

「大丈夫だ」ヴィナは荒い息で言った。「無茶をした。でも——倒せた」

「無茶しすぎだ」

「お前の付与がなかったら、口の中まで届かなかった」ヴィナはアルクを見た。「全員の力が、合わさったから倒せた」


 バルガが、ヴリトラの亡骸を見つめていた。しばらく、動かなかった。

「……倒した」バルガはぽつりと言った。「本当に、倒した」

「仲間の、仇か」アルクは言った。

「ああ」バルガは亡骸に向かって、静かに頭を下げた。「やっと、報告できる」


 しばらく沈黙が流れた。


 バルガが顔を上げて、アルクたちを見た。「礼を言う。お前たちがいなければ、俺は——また、無駄に命を落とすところだった」

「全員の力だ」アルクは言った。

「いや」バルガは首を振った。「お前の力が、中心にあった。お前の付与がなければ、誰の攻撃も届かなかった。リィナの魔法も、ヴィナの剣も、コレンの炎も——全部、お前が底上げした」


 アルクは少し考えた。

「俺は、与えるだけだ」アルクは言った。「攻撃はできない。でも、みんなが力を出せるように、底上げはできる」

「それが、賦活師か」バルガは言った。

「そうかもしれない」

 リィナが、興奮した様子で手帳に書き込んでいた。「アルクさん、今日のデータは膨大です。魔力への付与、召喚獣の二段階強化、複数同時付与——全部、記録的な成果です」

「データ収集、お疲れさまです」ネッサが言った。

「これは学術的にも価値があります」リィナは真顔で言った。「賦活師の付与は、戦闘のあらゆる側面を強化できる。剣も、魔法も、召喚獣も。——つまり、賦活師は単体では弱いが、仲間がいればいるほど強くなる」

「与えれば与えるほど、強くなる」アルクは言った。前にリィナが言った言葉だ。

「そういうことです」リィナは頷いた。


 コレンが、元の手のひらサイズに戻って、ネッサの肩に乗った。ネッサが「コレン、すごかったよ!!」と撫でた。コレンが嬉しそうに尻尾を揺らした。

 ルミが、アルクの肩に降りた。小鳥の姿で。

「みんな、無事でよかった」ルミは言った。


 アルファが、くるくると回った。


『——うち、めっちゃ働いたで!! 褒めて!!』

「働いた」アルクは言った。「ありがとう、アルファ」

『えへへ!! ルミ先輩は!?』

「……よくやった」ルミが言った。

『先輩に褒めてもろた!! 今日は記念日や!!』

「大げさだ」

『大げさちゃう!!』

 ガドルが豪快に笑った。「賑やかな守り手たちだな」

「慣れます」ネッサが言った。「すごく賑やかですけど、慣れるとかわいいです!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ