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⭐️底辺から始める、与えるだけの無双伝⭐️ ~知らないうちに守られていました~  作者: わっぱるぅ


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第二十一話 ルミ、完全覚醒

一 変わった朝

 朝の光が窓から差し込んだとき、アルクは枕元に何かの重みを感じた。

 目を開けると、白い小鳥が枕の端に座っていた。


 手のひらに乗るくらいの大きさ。丸い頭、小さなくちばし、ふわふわとした羽毛。翼をたたんで、ちょこんと座っている。目が大きくて、黒曜石のように澄んでいた。

 その小鳥が、アルクと目が合った瞬間。


「おはよう」


 はっきりと、言った。

 アルクはしばらく動けなかった。

「……ルミ」

「うん」小鳥——ルミは、ちょこんと首を傾けた。「はっきり見える?」

「見える。すごく」

「よかった」ルミは小さな翼を広げて、一度ぱたぱたさせた。「飛べるようになった。昨日の夜から」


「昨日の戦いで、何かが変わったのか」


「変わった」ルミは言った。「アルクが全力を出したから。あたしも全力を出せた。そしたら——こうなった」

 アルクは手を差し出した。ルミがぴょこ、と手のひらに移った。軽い。羽毛の感触がある。温かい。


「……本当にいるんだな」


「ずっといた」ルミは少し不服そうに言った。「ずっとそばにいた」

「わかってる。でも、こうして触れると、より実感がある」

「触れてよかった」ルミはまた首を傾けた。「ねえ、アルク。あたしのこと、みんなに紹介して」


「もちろん」


「あと——今日から、もっといろんなことができるようになると思う」

「どんなことが」

「やってみないとわからない」ルミは言った。「でも、感じてる。扉が開いた、みたいな感じ」


二 全員への紹介

 食堂に全員が集まったとき、アルクが手のひらを差し出した。

 ルミが、ちょこん、と座っていた。


 ネッサが最初に声を上げた。

「え゛——っ!!!」

「どうした」

「か、かわいい!!! なにこれなにこれ!!! ルミですか!? ルミがこんな姿に!!!」

「そうだ」

「ちっちゃ——!! 丸い!!! 目がまんまるですよ!!!」

 ルミがネッサを見た。「ネッサ」

「そうです!! ルミ、喋った!!! かわいい声!!!」

「喜んでくれてありがとう」ルミは言った。それからコレンを見た。コレンがネッサの肩から身を乗り出している。「コレンのこと、知ってる。仲良くしてたから」


 コレンがぴょん、と跳ねた。ルミもぱたぱたと翼を揺らした。


「うわ〜仲良し〜!!」ネッサが言った。

「落ち着け」ヴィナが言った。でも、その目がルミを見ていた。真剣に見ていた。

「ヴィナ」ルミはヴィナを見た。「昨日は、首飾りを使わないでくれてよかった」

 ヴィナが少し動きを止めた。「……覚えていたのか」

「ずっと見てたから」ルミは言った。「あたしたちは、アルクのそばで全部見てる」

「そうか」ヴィナは静かに言った。「……よかった、と言ってくれるか」

「よかった」ルミははっきりと言った。「ヴィナがいなくなったら、アルクが悲しむ。それだけじゃなくて——あたしも嫌だ」


 ヴィナは少し目を細めた。何かを言おうとして、黙った。

 ガドルが「小さいのに、言うことが重いな」と言った。

「ルミは賢いんですよたぶん!」ネッサが言った。

「賢くはない」ルミは言った。「でも、よく見てる」

「十分賢いですよ!!」


 リィナが手帳を取り出した。「ルミ、いくつか聞いていいですか。学術的な興味として」

「どうぞ」

「あなたの属性は何ですか」

「回復と、空間」

「複数属性ですね。では、今日からどんなことができますか」

「やってみないとわからない」ルミは繰り返した。「でも——今まで断片的にしかできなかったことが、ちゃんとできる気がしてる」


「具体的には」

「回復を、もっと遠くまで届けられる。複数人に同時に届けられる。あと——空間の扉を、大きくできるかもしれない」

「空間の扉?」リィナがペンを止めた。「それは、亜空間の出入口を拡大できる、ということですか」

「うん」ルミは言った。「試したことはない。でも、できる気がしてる」

「できる気がしている、というのが判断基準なんですね」

「そうだよ」ルミは真顔で言った。「それ以外の判断基準がない」

 リィナが苦笑した。「正直でいいですね」


三 最初の実戦

 その日の昼過ぎ、ギルドに依頼が入った。

 街道の外れで、魔物に荷馬車が囲まれている。御者は木の上に逃げているが、降りられない状態だ。Cランクの魔物が三体、馬車の周りをうろついている。


「行こう」ヴィナが言った。

 現場に着くと、状況は報告通りだった。Cランクの魔物三体。馬車の荷物が散乱している。木の上から御者が「助けてくれ!」と叫んでいる。


 ヴィナが剣を抜こうとした。

 そのとき、ルミがアルクの肩から飛んだ。

 宙に浮かんで、三体の魔物を見た。それから、アルクを振り返った。


「アルク、後ろに下がって」

「どうするつもりだ」

「回復の光を、散らしてみる。直接攻撃はできないけど——光が当たると、操られてる魔物は魔力の糸が乱れる。試してみたい」


 アルクは頷いた。後ろに下がった。

 ルミが、翼を広げた。

 白い光が、ルミの体から放たれた。柔らかい光だ。攻撃的な鋭さはない。でも、その光が三体の魔物に当たった瞬間。


 魔物たちが、動きを止めた。

 数秒間、ぼうっとしたように立ち尽くした。そして——方向転換して、森の中へ戻っていった。

「……追い払った?」ガドルが言った。

「操られていた糸を、乱した」ルミは戻ってきた。「全てを完全に解くのは難しい。」


「十分だ」ヴィナが剣を鞘に収めた。「戦わずに済んだ」

「体力の消耗がゼロですね!!」ネッサが言った。「ルミすごい!!」

「すごくない」ルミは言った。「強い魔物には効かない。あと、複数体に同時にやると消耗する」

「それでも十分すごいです!!」

 ルミが翼をぱたぱたさせた。照れているように見えた。


「……照れてる?」ネッサが言った。


「照れてない」


「照れてますよ!!!」


「照れてない!!」


 アルクは苦笑した。ルミが「照れてない」と言い張るのは、ぴょんぴょんしていた頃と変わらない気がした。


四 夕暮れの会話

 帰り道、ヴィナがアルクの隣を歩いた。

「ルミが戦力になってきた」ヴィナは言った。

「そうだな。でも無理させたくない」

「本人がやりたがってるだろ」

「やりたがってはいる。でも、限界は俺が見ておきたい」


 ヴィナは少し間を置いた。「……お前は、周りの限界をよく見てるな」

「前世の習慣みたいなものだ」

「あたしの限界も見てるのか」

「見てる」

「昨日は見えなかったんじゃないか。あたしが首飾りを出す前に気づかなかった」

「気づいてた」アルクは言った。「でも、止めるタイミングを間違えた。反省している」

 ヴィナは少し驚いた顔をした。「……反省してるのか」

「ヴィナが首飾りを出す前に、もっと早く声をかけるべきだった」

「あたしが限界を隠してたから——」

「それも含めて、読めなかった。次はちゃんとする」


 ヴィナは黙った。しばらく歩いてから言った。「……お前は、変なところで真剣だな」

「変なところか?」

「普通、仲間の限界を自分の反省にはしない。それは本人の問題だと考える」

「でも、俺が付与で負担を分散できれば、限界を先に延ばせる。だから俺の問題でもある」

 ヴィナはまた黙った。

「……難しい男だ」

「よく言われる」

「褒めてる」ヴィナは前を向いたまま言った。それから、小さく付け加えた。「……少しだけ」


 ルミが、アルクの肩でぱたぱたと翼を揺らした。楽しそうだった。

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