↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/55

第49話 砂漠より来たれし影

 ――異世界の砂漠の夜。静寂が、かえって俺たちの神経を尖らせる。


 湿り気を失った空気に乾いた風が吹き抜け、砂を巻き上げては俺やニーナ、そしてメルド兄妹の身体にまとわりつく。




 吹きすさぶ風と、肌を叩く砂の音。それだけが支配する世界。




 …………いや、もう一つ聞こえる。




 俺たちが立つ砂丘の下から、無数の足音が群れをなして迫る音が……!




「ジョー、ニーナ。臨戦態勢だ。武器とカードを構えろ!」


 ジンの鋭い声に、俺はまだ見ぬ敵の正体を問おうとした。だが、遮るようにラミィが吐き捨てる。




「魔物の方がまだ可愛げがあるよ。闘争本能だけのバケモノならな。だけど今来る連中は訳が違う。純粋な悪意で、あたい達を殺しにくる。命がいくつあっても足りないよ……!」




 ニーナが唾を飲み込む。額から滲んだ冷や汗の一滴が、レイピアの柄に零れ落ちた。


 ジンとラミィはナイフを逆手に構える。俺は懐からカードケースを取り出し、脳内でイメージを高速回転させた。




 相手は魔物じゃない。メルド兄妹の仇敵『クロンダイク』率いる盗賊ギルドの刺客だ。


 多勢に無勢。他のスート騎士を召喚する余裕も、別行動中のシチリア先生やハチマル殿を頼る暇もない。




 今ここにいるニーナ、ジン、ラミィ。この四人で切り抜けるしかない。ならば、選ぶべきカードは――。




「ジョー、危ないっ!!」




 デッキから数枚を引き出した、その刹那。


 ジンの絶叫と同時に、背後の砂煙を割って黒い影が飛び出した。




 ヒュッ――ブンッ!




「うおっ!?」




 眼前で黒ずくめの男が躍動する。覆面の隙間から鋭い眼光を覗かせ、両手の黒鉄の鉤爪で俺の喉笛を狙う。




「御主人様!」


 ニーナがその間に割り込んだ。鍛え上げられたレイピア捌きで鉤爪を弾き返し、そのまま胸元へ鋭い刺突を繰り出す。だが――。




 ――キンッ!!


(か、硬い……!)




 手応えは岩を突いたかのようだった。鉄の弾ける音と共にニーナが仰け反る。その隙を逃さず、彼女の背後からもう一つの影が襲いかかった。




「はぅっ……!?」


「ニーナ!」




 背後から首を羽交い締めにされ、ニーナが苦悶の声を漏らす。即座に動いたのはラミィだった。




「テメェッ、あたいのニーナに何しやがる!!」


 鈍い音を立て、ラミィのナイフが男の喉元を深々と貫いた。




「ハァ、ハァ……助かったわ、ラミィ。ありがとう」


 拘束が解け、ニーナが激しく咳き込みながら酸素を求める。まさに九死に一生だった。




「ジン、何なんだ今の連中は……!?」


「あれがクロンダイクの戦闘盗賊軍『シャッテン』だ」




 略奪と殺戮を専門とする、エリート盗賊集団。情け容赦のない、悪の軍隊の尖兵。




「悠長に話してる暇はないぞ。団体様のお出ましだ」




 仲間の死を察したのか、砂の下から次々とシャッテンが這い出してきた。音もなく俺たちを包囲していく。


 掛け声一つない不気味な集団。その殺意の矛先は――。




「…………ッ!!」


 全員が、この俺を狙っている!




「まずい、丸腰のジョーから消すつもりだ!」


「とにかく逃げろ! まともにやり合っても返り討ちにされる。こいつらは暗殺のプロだ!」




 ジンとラミィの援護があっても、多勢の波を避けるのが精一杯だった。指先に力を込め、手持ちのカードを握りしめる。賭けに出るしかない。




(あの鎧がミスリル製なら……魔法でいけるか!?)


 俺は敵の攻撃を紙一重で掻い潜り、温存していた一枚を発動させた。




『【ダイヤ3―スパーキング・シュート―】!!』




 ニーナのレイピアに電気エネルギーが収束する。彼女がバットスイングの要領で振り抜くと、扇状に広がる電撃がシャッテンの集団を飲み込んだ。


 敵全体が感電し、動きが止まるはずだった。だが――。




「――魔法が、効かない……!?」




 ザシュッ!!




「痛あぁぁっ……!!」


 衝撃に目を見開いた隙を突かれ、右肩を黒鉄の鉤爪が引き裂いた。




(絶体絶命か……!?)


 死の予感が脳裏をよぎる。だが、諦めるわけにはいかない。砂丘の向こうから、俺たちを探す声が聞こえてきた。




「ジョー! どこにいるだー!」


「召喚士ちゃーん!」


「ニーナ殿ー!」




 ポーキー、シチリア先生、ハチマル殿だ。窮地を知らせる方法は、これしかない!




「皆、目を閉じろ――っ!!」




 俺は痛みに耐えながら、もう一枚のカードを叩きつけた。




『【ダイヤ10―シャイニング・フラッシュ―】!!』




 刹那、ニーナの身体が爆発的な光を放ち、シャッテンたちの視界を奪う。


 その隙にジンとラミィが俺とニーナを抱え、砂丘を駆け下りた。




 まさに紙一重の撤退。光に気づいたポーキーたちと合流し、どうにか包囲網を脱した。




「ジョー、どうしただか!? 怪我してるでねぇか!」


「……クロンダイクだ。盗賊ギルドに、俺たちの居場所が割れた……!」




「それじゃ、オイラ達も既に標的ってことか……!?」




 俺は負傷した肩を押さえ、闇に沈む砂漠を睨みつけた。




「今度ばかりは後戻りできない。本気で戦わないと、俺たちに明日はない――!!」




 どこで俺たちを嗅ぎつけ、どこから見下ろしていやがる。盗賊ギルド頭領・クロンダイク。


 俺たちをカモにするつもりなら、やってみるがいい。




 食うか食われるか。メルド兄妹の仇を討つため、俺たちは戦う。




 スート騎士団と盗賊ギルドの決戦。


 この世界に【革命】を起こす俺たちの前に、最初の巨大な壁が立ちはだかろうとしていた。

小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも『★★★★★』の評価、「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を付けて、応援してください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。