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ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

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第39話 カードの中の世界

 ――俺たちは強くなる。


 そう誓い合い、廃墟の町を後にして旅を続けていた。




 しかし、以前とは異なり、明確な目的があるわけではない。


 プレジデント王国の革命から一旦離れ、行く先々で人々を襲う魔物の討伐に明け暮れる日々が続いていた。




 ドクター・クラウンのような強敵が、いつ再び目の前に現れるか分からない。


 チームはそれぞれの役割を果たしつつ、着実に経験を積んでいく。




 ニーナは剣技を磨き、ジンとラミィの兄妹は連携して魔物の発生源を偵察する。そしてポーキーは、美味い飯を炊き上げる。




「何でオイラだけ炊事なんだべ?」


「分かってねぇな、飯は戦いの『要』だ。腹が減っては戦はできねぇ。ポーキーだからこそ任せられる重要任務だぜ」


「まぁ、ジョーが言うなら何でもええだ。戦うより飯作る方が性に合ってるべ」




 親友を無理に戦わせるわけにもいかない。クラウンの件もある。




 一方、俺の課題はトランプカードを使いこなすことに尽きる。現在判明しているコンボは以下の通りだ。




 ・同じ数字ランクを2枚組み合わせる【ペアコンボ】。


 ・同じ数字を3枚揃える【スリーカード】。


 ・同じスート(絵柄)で3枚の連番を揃える【シークエンス】。




 他にも強力なコンボが隠されているはずだ。


 特殊なコンボによる魔法や技は絶大な威力を誇るが、その分魔力の消費も激しい。




 これらのコンボを連発し、スート騎士を自在に召喚できるほどの魔力を蓄えなければ、この先の戦いにはついていけないだろう。




 もっと、もっと魔力が欲しい……ッ!




 ♤




 修行と戦いの日々が続き、平穏な日々に慣れ始めたある日のこと。




 今日は趣向を変え、ニーナ以外の騎士も積極的に活用しようと考えた。スート騎士を数人召喚し、パーティ編成を試してみることにしたのだ。




 選んだのは、ニーナに加えて【スペード3の騎馬騎士・サンダー】と、【スペード4の天馬騎士・シルヴィー】。一方は粗野なヤンキー、もう一方は高飛車な女。若手騎士たちの再登場だ。




 サイクロプス戦以来となる顔合わせ。連携して戦う姿は頼もしいが、戦い終われば口喧嘩ばかりなのが玉に瑕だ。


 そんな中、何かに痺れを切らせたサンダーがニーナに問いかけた。




「てかさぁ、ニーナ。お前、いつになったら『カードの中』に戻るんだよ?」


「……なによサンダー、藪から棒に」




「言われてみればそうですわ! あなた、御主人様に最初に召喚されてから、ずーーーっと『こっちの世界』に居座り続けているじゃないの!」


「シルヴィーまで!」




 二人の追及に、俺もふと疑問を抱いた。


 俺が転生してから約二週間。ニーナはその時からずっと召喚されたままで、今日まで同じ時間を過ごしてきた。




『…………御主人様と一緒に。いつも、いつでも、側にいたいから…………!!』




 ニーナの告白を受けて以来、彼女をカードに戻すことなど考えもしなかった。


 彼女自身も、戻る気など毛頭ないだろう。




 だが、一度気になると納得するまで収まらないのが俺の性分だ。俺はニーナに尋ねた。




「……なあ、前から気になってたんだけど、『カードの中』ってどんな世界なんだ?」




「どんな世界って……初めて召喚された時、お師匠様が思念を送って自己紹介したでしょう? あの場所が、私たちの居る世界なんです」




「あの宮殿が、お前たちの拠点なのか!」




 転生直後、スート騎士団の長【スペードエース】の思念によって見せられた、白亜の宮殿。


 あそこは13人の騎士が住まう異世界の城なのだろう。カードは分かれていても、根底では一つの世界を共有しているのだ。


 ――あの場所に、まだ見ぬ8人の騎士が控えていると思うと、男心が疼く。




「……そういえば、お前のことを【キング】様が呼んでいたぞ」


「…………へっ!?」


 サンダーの言葉に、ニーナの肩がビクッと跳ねた。




「わたくしも聞きましたわ。スート騎士団の中で、一年に一度の【健康診断】を受けていないのは貴女だけだって!」




「けんこうしん……ふええええええええ!!?」




 健康診断だと? どこのホワイト企業だ。


 ニーナは急に青ざめ、頭を抱えて叫んだ。




「ちょっと待って!? 締め切りはいつまでなの!?」


「明日までですわ」


「どうしよう〜! K様は掟に厳しいから、期限を破ったらどんな罰が……! 懲罰房なんて嫌ぁぁぁ〜〜〜!!」




 これほど狼狽えるニーナを見るのは初めてかもしれない。だが、放っておくわけにもいかない。




「ニーナ、すぐにカードに戻って健診を受けてこい」


「でも、御主人様が……」


「俺のことは気にするな。終わったらすぐに召喚してやるから」


「………………」




 俺への忠誠心が強いニーナは、激しいジレンマに揺れていた。だが、やがて義務感が勝ったようだ。




「……分かりました。終わったらすぐに呼んでくださいね。約束ですよ!」


「もちろんだ。俺に二言はない」




 俺はデッキから【スペード2】のカードを取り出し、送還の術式を起動する。




「………………【ダウンカード】! 『スペード2』!!」




『絶対、呼んでくださいねーーーー!!』




 一瞬の躊躇いの後、詠唱を完了させる。ニーナの姿が光に溶け、初めてカードの中へと戻っていった。




「…………………………」




 たかが騎士を戻しただけだというのに、これほどの喪失感に襲われるとは。




 そんな俺の感傷を余所に、サンダーとシルヴィーは、何やら良からぬことを企むような笑みを浮かべていた。



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