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ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

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第38話 レベルアップを目指して

 ――ロクサーヌの必殺技によって100の死霊兵は天に還り、ドクター・クラウンは姿を消した。




 戦火に焼かれたクリベッジの町。たった一軒だけ残っていた酒場も、ロクサーヌが放った白魔法の余波で崩壊し、辺りは廃墟だけが広がる不毛の地へと変貌していた。


 聖女の怒りがこれほど凄まじいものだとは思いもしなかった。一歩間違えればあらゆる物を滅ぼしかねないその力に、俺は内心ゾッとしていた。




 ふと見ると、ロクサーヌを包んでいたタイトなバトルモードの衣装が光に溶け、元のドレッシーな姿に戻っていた。膨大な魔力を放出したことで、怒りのエネルギーも出し尽くしたのだろう。




「あらあらまぁまぁ、ごめんあそばせ? また私、暴れてしまいましたのね。お怪我はございませんか、主様?」


「え? あ、あぁ……俺はなんとか無事だ。助かったよ、ロクサーヌ」


「良かったですわ〜♪」




 良かったのはこっちの台詞だ。殺気も物騒な二丁拳銃も消え、穏和な口調と長杖が戻っている。バトルモード時の記憶がないことだけが懸念点だが……これからは、彼女の前で『胸』の話をするのだけは絶対にやめよう。




 何はともあれ、危地は脱した。


 ……だが、戦いのあとの『蟠り』だけは、重く俺たちの心に居座っていた。




「ドクター・クラウンは……死んだのか?」


 ジンが恐る恐る問いかけてくる。




 奴が消滅してさえいれば、事は容易く片付いたはずだった。




「…………いや、違うな」


 俺は無情な現実を突きつけるように、理想の結果を否定した。




「奥の方に、奴の黒いマントが無傷で落ちている。あの大規模な技を受けてあれが残っているってことは、直前で逃げ延びた証拠だ」




「それじゃ、あの仮面野郎はまだ生きてるってこと……!?」


 ラミィが身震いし、力なく膝をつく。




 死霊を弄び、疫病を振りまいた王国兵の仇も討てぬまま、奴は逃走した。その事実に、俺たちは一気に脱力し、同時に煮えくり返るような怒りが込み上げてきた。




「ちくしょう……ジョセフの野郎……! 人の命をなんだと思ってやがる……!!」


 ポーキーが、かつての戦友――ドクター・クラウンに引導を渡せなかった悔しさをぶつけるように、瓦礫を殴りつけた。




 プレジデント王国への復讐という大義があるにせよ、奴の歪んだ性根が罪のない人々を巻き込んでいる。その暴挙を止められなかった自分自身に、ポーキーは激しく憤っていた。




 ――己の無力さゆえの、悔恨か。


 それは、俺も同じだ。




 俺がもっとしっかりしていれば、死霊兵を呼ばれる前にクラウンを仕留められたかもしれない。ジンやラミィを危険に晒すこともなかったはずだ。




 力なき者の抗いは、悪にすら劣る……。今の俺たちは、まさにその言葉通りじゃないか。




「…………御主人様」


「ニーナ……?」


 項垂れる俺に、ニーナがそっと寄り添い、問いかけてきた。




「私は、何があっても御主人様と共にあります。ですが、これからの『決断』を下すのは御主人様です。これ以上の悲劇を繰り返さないために……今すぐプレジデント王国へ攻め込みますか?」




「………………!」




 ――『スペードの2』。ゲーム以外では、こんな意味を持つカードだ。【二者択一】、そして【慎重な判断】。




 スペードは『剣』であり、困難やトラブルを象徴する。


 数字の『2』は、『対立』と『選択』、あるいは『パートナーシップ』。




 つまり、道に迷った時や重大な局面に立たされた時、避けては通れない『決断の時』を表すカード。


 前世では占いなんて信じちゃいなかったが、興味本位で調べたトランプ占いの知識が、なぜか今、鮮明に蘇っていた。




 そして今、スペードの2の騎士であるニーナが、俺に決断を促している。


 カードの意味がどうとか、効率的な戦略がどうとか、そんな理屈はどうでもよかった。俺はただ、心の底にある本音を彼女にぶつけた。




「―――強く、なりてぇ……!!」




 それはギャンブラーとしての欲ではない。【革命】を成し遂げるための義務でもない。


【召喚士】として、己の矜持を貫くために。






「このまま、弱者が踏みにじられる世界を指をくわえて見ていてたまるか! 俺たちが強くなければ、守りたいもの一つ守れやしないんだ!! 俺は魔力が欲しい。ニーナ、お前たち13人のスート騎士を完全に使いこなす力が欲しい!! 理不尽を正す力を手にしなきゃ……皆が求めている【革命】なんて、到底起こせやしないんだ!!!」




 魂の叫びを全身で受け止めたニーナが、静かに俺の前で跪いた。




「御主人様の、仰せのままに。貴方はこの混沌とした世界に大義を示す御方。我ら騎士団にとって、貴方に使いこなされることこそが最大の誉れです。――私も、貴方と同じ気持ちです。一緒に、強くなりましょう!」




 暗雲を切り裂くようなニーナの満面の笑顔が、俺たちを希望へと導いていく。


 彼女が示した『決断』の道に、ポーキーも、ジンも、ラミィも、自然と顔を上げた。




 俺たちは【革命】を志すチームだ。強くなるなら、全員一緒だ。王国から滲み出す闇を払う光となるために、一丸となって信念を貫く。




「―――絶対に、強くなってやるッッ!!!!」




 さあ、まずは何から手をつけるべきか……。逆襲の幕開けだ。

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