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ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

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第37話 ロクサーヌの切り札

 ♡




 ――そういえば、俺たちがクリベッジの町でドクター・クラウンに会う前。ニーナは俺に耳打ちしながら、こんな事を言っていた。




『御主人様。もしドクター・クラウンと戦闘になっても、ロクサーヌ姉さんの【胸】に関することだけは、絶対に口にしないでくださいね』


『胸? ああ、あの……はち切れんばかりの……』


『しーっ!! それを言葉にするのがダメなんです!』


『どういうことだ? 何かコンプレックスでもあるのか?』


『コンプレックスというより、その部分を揶揄されること自体が彼女の禁忌なんです。姉さん曰く、修道女時代を思い出して「血が騒ぐ」らしくて……』


『……彼女、過去に何があったんだ?』




 俺はその時、誰にでも触れられたくない聖域はあるものだと自分に言い聞かせた。……正直、男としてあのボリュームは嫌いじゃないが。




『だから、顔に出てるって言ってるじゃないですか!!』




 ♧




 ――だが現在。そのたわわな果実をドクター・クラウンが愚弄したことにより、ロクサーヌの中で何かが決壊した。




「これが【スペード6の修道騎士・ロクサーヌ】の真の姿じゃ!! この色狂いの変態どもが、地獄の底の『内核』まで叩き落としてくれるわ!!!」




 おいたわしや、あの慈愛に満ちた聖女スタイルは何処へやら。口調は粗暴になり、瞳にはどす黒い殺気が宿っている。ドレッシーな衣装は、いつの間にか戦闘用のスタイリッシュな装いへと変貌していた。




 頭のヴェールは消えて鋭角的なヘッドドレスへ。胸のボリュームはそのままに、修道服はボディラインを強調するタイトなものになり、裾はミニスカートへと軽量化されている。


 肩当て(ポールトロン)や籠手ガントレットを装備した彼女の手から、ヒーラーの象徴であった魔玉の長杖は消え去っていた。その代わりに――。




 ―――ジャキッ!




 両手に握られていたのは、鈍く光る白銀の【二丁拳銃】。




「オラァ! この死に損ないども、退けえええええええ!!!」




 銃口から放たれた閃光マズルフラッシュとともに、空間を震わせる爆音が炸裂する。


 その轟音は一瞬にして酒場の空気をゴシックファンタジーの戦場へと塗り替え、死霊兵の眉間に次々と風穴を開けていく。


 ニーナもジンも、そして敵であるクラウンまでもが、あまりの変貌ぶりに口をポカーンと開けて呆然としていた。




 ……聖女がキレすぎて、重火器を持ち出しちゃったよ。




「……ニーナ。ロクサーヌがなぜ修道騎士なのに拳銃なのか、簡潔に説明求む」


 俺が引きつった顔で問いかけると、ニーナは遠い目をして答えた。




「姉さん、修道女時代に助平な魔物の群れに襲われて、胸を執拗に狙われたトラウマがあるんです……」




 想像以上にヘビーな過去が出てきたな。




 さらに補足すると、彼女が騎士団に入団する際、修道女の『刃物で血を流すべからず』という掟が壁となった。ところが、




『では、弾丸で頭ブチ抜くくらいならセーフですよね?』




 という無茶苦茶な屁理屈で二丁拳銃を習得。普段はその戦闘スタイルを封印し、長杖による回復魔法に専念していたらしい。まさしくロクサーヌは、『回復と破壊の二重構造』を実現させた騎士なのである。……なんて、悠長に感心している場合じゃない!




「ジョー、あのおっぱい女何とかしろよ! 危なっかしくてしゃーねぇ!」


「ば、バカ! 今そのワードは――」




「またおっぱいの事ほざいてる奴は、どこのどいつだああああああああッッッ!!」


「危ねえええええええ!!!」




 ラミィの失言にロクサーヌの怒りが再点火し、二丁拳銃の連射はもはや弾切れ知らずのマシンガンと化した。




「いや待て、ラミィ! このまま彼女に任せた方が良さそうだぞ」


「どういう理由だい、兄者?」


「我々のナイフが通じなかった死霊兵が、あの弾丸一発で粉砕されている。弱点を突いているんだ」




 ジンの指摘通り、斬撃では即座に再生していた死霊兵たちが、銃撃を受けた箇所から音を立てて溶解していく。このギミックの正体をニーナが明かした。




「あれは姉さん特製の『聖水弾』です。弾丸の中に高濃度の聖水を封じ込め、着弾と同時に浄化の力を炸裂させる。姉さんにしか扱えない特殊弾です!」




「そいつは……最高の大逆転じゃないか!!」


 俺は思わず指を鳴らす。


 100体近くいた死霊兵の軍勢が、ロクサーヌ一人によって文字通り「掃討」されていく。




 あとは、あのドクター・クラウンを仕留めれば万々歳だが――。


「馬鹿め! あのデカパイ女の無双をぼーっと見てる俺じゃねぇでよ! あばよ、サヨナラバイバイだ!」




 あの野郎、どさくさに紛れて酒場から逃げようとしてやがる! 屍を盾にして自分だけ逃げるような卑怯者を、見逃すわけにはいかない。




「ロクサーヌ! あの仮面野郎がお前のおっぱいを一番バカにした張本人だ! 逃がすな!」


 俺が叫ぶと、ロクサーヌは一瞬で冷徹なスナイパーの表情に戻り、短く告げた。




「主様、【スペード6】と【ダイヤ6】を。魔力供給をお願いします」


「了解だ。トドメの【ペアコンボ】、叩き込んでやれ!」




「―――御意!!」




 ――カチャッ。




 ロクサーヌは二丁拳銃の撃鉄を交差させ、十字架の形に構える。俺は手札から2枚のカードを叩きつけた。




「――スペード6、ダイヤ6! 【ペアコンボ】発動!!」




 十字に重ねられた銃身に膨大な光が収束していく。ロクサーヌは魔力を極限まで集中させ、高らかに詠唱した。




「――怒れる神の裁きを下さん! 闇を退け、光を呼べ、我が十字の元に集えよ!!」




 白魔法の極致――黒魔法の天敵たる純粋なプラスエネルギーが、彼女の超技によって解き放たれる!




「―――『シャイニング・クロスキャノン』、発射ッッ!!!!」




 ギュイイイイイイイイイッッッッ!!




 酒場の空間そのものを飲み込むような、巨大な光の奔流が放たれた。


 その光柱は建物を突き抜け、町の夜空を白昼のように照らし出しながら地平線の彼方まで伸びていく。




 光を浴びた死霊兵たちは悲鳴を上げる間もなく消し炭となり、その魂は浄化されて天へと昇る。逃走を図っていたドクター・クラウンも、情けない絶叫とともに光の中に飲み込まれていった。




「―――アーメン」


 ロクサーヌは静かに十字を切り、祈りを捧げる。




 光の波動が収まった後には、十字に抉れた地面と、遥か彼方まで続く破壊の跡だけが残っていた。


 俺たちはその光景を呆然と見つめながら、ポツリと呟いた。




「…………なぁ、ニーナ」


「何ですか? 御主人様」




「巨乳って、本当は恐ろしい兵器なのかもしれないな……!!」


「気づくのが遅すぎますよ……」

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