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ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

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第29話 今日も何処かで、戦争は続く。

 ――大勢の仲間と、こんなに呑み明かしたのは前世以来だろうか。いつの間にか夜が明け、暗がりの港は真っ青な空に照らされていた。波止場の水面は、黒から深い紺色へとその姿を変えていく。




 俺は元々酒には強い方だし、ポーキーも初めて出会った時のように羽目を外さなければ、なかなかの酒豪だ。


 ジンにいたっては俺以上で、以前、鏡開きでもするかのような大樽のぶどう酒を飲み干したという武勇伝を聞かされた。




 この一行の男連中は、揃いも揃って酒に強かった。




 では、肝心の女性陣はというと。




「「くっっっそ、頭痛ぁぁぁぁぁぁ……!」」




 ニーナとラミィは、ラム酒たったの一杯で揃って撃沈していた。




「オイ、ジン。ラミィってそんなに酒が弱いのか?」


「……一滴も飲めない。同胞の前では気丈に振る舞っているが、翌日には必ず海辺で口を押さえて……」


「これ以上言うな。大体分かった」




 ラミィはともかく、ニーナまで下戸なのは意外だった。そういえば酒場で飲んでいるところを見たことがなかったな。仕方ない、俺が労ってやろう。




「しっかりしろ、ニーナ。弱いなら、酒場の席で断っておけば良かったのに」


「御主人様の前で断るなんて……。それにラム酒って、結構強いお酒なんですよぉ……」




 あ、そっか。ラム酒はアルコール度数が40%近くある。酒に慣れない彼女たちが一撃で堕ちるのも無理はない。




「みっともねぇぞ、女の子がぐてーっとして。さっき淹れといたコーヒーがある。これ飲んだらシャキッとするべ」




 ポーキーは案外気が利く男だ。デカいリュックサックからサイフォンとアルコールランプを取り出し、いつの間にか二人のためにコーヒーを淹れてくれていた。


 砂糖もミルクもないブラックが、酔い覚ましには一番だというが……。




「っはぁ〜、生き返る……!」


「……ふぅ!」




 カフェインにそこまでの即効性があるかは疑問だが、ニーナとラミィもようやく落ち着いたようだ。




 ……さて、騒ぎも収まった。飯も食ったし、少しは眠れた。あとは……。




「ジン、ラミィ。お前らは、これからどうする?」




 俺は、白薔薇と黒薔薇の盗賊に問いかけた。


 仲間になることは昨夜の盃で確認し合ったが、彼らが俺たち召喚士や兵士、騎士と常に足並みを揃えて行動するには、何かが決定的に不足している気がしたのだ。




 気障な男に、跳ねっ返りの女。一緒にいて退屈はしない。だが、彼らには彼らにしかできない役目があるはずだ。




「わたしたちは、仮にも『盗賊』の肩書きを持つ身。ですが、善人は決して狙いません。プレジデント王国の愚行を利用し、利益を貪る者たちを挫くために、この刃を振るうべきだと考えました」




「……愚行を利用する、っていうのは?」


「居るんだよ! この大陸のどこかに、王の金儲けから出たあぶく銭で肥え太ってる汚い奴らがさ!」




 ジンとラミィが語る実態は、こうだった。




 平民から強奪した重税を役所で転がし、利子で私腹を肥やす「守銭奴」の役人。戦争で使われる武器を横流しして儲ける闇商人。


 この世界には、一匹見かけたら十匹はいると思えというゴキブリのような連中や、王国の汁を吸って蔵を建てる黄金虫のような輩が跋扈している。世が乱れるほど悪党が肥え太るという、異世界でも変わらぬ歪な理がそこにはあった。




「……つまり、王を成敗しようにも、周囲に群がる羽虫から駆除しないことには、俺たちに勝ち目はないってことか」


「そうだよ! だから兄者が必死こいてあんたらに助けを求めたんじゃねぇか!」


「そう喚くな、ラミィ。こうして利害が一致したのだから、それでいいだろう」


「だってよぉ……」




 確かに利害は一致したし、仲間として迎えたのも事実だが……ラミィはどうにも不服そうだ。




「何が気に入らないんだ。ジン、そこの妹さんは?」


「わたしとラミィは、貴殿らとは別行動をとることに決めたんです。独裁国家を挫くには、一塊になるよりも、分かれて動く方が得策でしょう」




 まさに盗賊らしい合理的な考えだ。ジンは自ら諜報活動を買って出て、後方から支援しつつ俺たちをサポートするつもりらしい。だが、ラミィの不満は別のところにあった。




「だってぇ……あたいは、ニーナと離れるのは嫌なんだよぉ!」


「ラミィさん……?」




 凍てついた心を溶かしてくれたニーナに対し、ラミィは顔を真っ赤にして我儘をぶちまけた。




「あたいはニーナに救われたんだ! お前みたいなカードで騎士を呼び出すだけの奴に、ニーナが守れるのかよぉ!!」




 そんな妹を、兄のジンが窘める。


「馬鹿者! だからこそ、我々が外側から彼らを護るんだ。ニーナも、ジョーも。それがせめてもの恩返しだろう!?」




 ……コイツら、本当に盗賊なのが勿体ないくらい心が素直すぎる。




 するとニーナが、髪留めに使っていたスペードマークのヘアピンを外し、ラミィの手にそっと握らせた。




「これを、私だと思って大事にしてください。離れていても、私と貴女は一緒です。共に頑張りましょう!」




 またしても、ニーナの穢れなき笑顔にラミィの心は撃ち抜かれた。ラミィは赤面しながら目に涙を浮かべ、その愛情を示すように、ニーナを力いっぱい抱きしめた。




 かくして、俺たちの一行に二人の盗賊が加わった。


 廃れた港町を後にして、次に向かうのは西か、はたまた東か。




 ここからの旅路は、蹄の跡と、火薬の匂いが色濃く残る先へ――!




「………あの、ハグ長くないですか?」


「やだ! もっとギューする! ニーナはあたいのもんだ!!」




 今のラミィの精神年齢、どう見ても7歳くらいにしか見えない。


 結局、俺とジンで彼女を引き剥がすまで、たっぷり5分はかかった。

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