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ギャンブラーと13人のスート騎士団〜転生召喚士はトランプカードで異世界に【革命】を起こします〜  作者: Kazu―慶―
第1章:大富豪編

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第28話 幸せとは、飯と気の合う仲間。

 ――夕陽が海の水面に溶け込み、金色に染まる頃。


 俺とニーナ、そして迷いを涙と共に拭き取ったジンとラミィも、港湾倉庫からようやく顔を出した。




 そんな俺たちを迎えてくれたのは、空の市場から頂戴した大釜を持って待っていたポーキー。そしてジンたちの同胞盗賊と、用心棒・アンドロスだった。




「やっと来たか! 待ちくたびれたべ、お二人さん!」

 ポーキーの奴、俺とニーナが良いコンビに見えるからって茶化してやがる。




「どうしたんですか? その大きな釜」


「確か、つまみ作って待ってろって言ってたよな?」


 と、俺とニーナが尋ねると、ポーキーは大釜を地面に置いて、その中身を皆に見せた。




「これは……シチューか!」

 ホイスト港の市場から頂戴した海の幸と野菜がたっぷり入ったシチューから、芳醇な磯の香りと熱々の湯気が立ちこめる。




「……驚いたな、これ全部あいつが作ったのか?」

「てか何でお前ら、揃ってコイツに跪いてんだよ!?」

 今度はジンとラミィが、ポーキーを中心にアンドロスを含めた手下全員が従っているという、奇妙な光景にツッコミを入れた。




「つまみ作ってたら、案の定盗賊のあんちゃん達が寄ってたかってオイラを狙ってきてよ。でもコイツらにつまみ食わせたら、すっかり懐いちまっただ」




「「「美味い飯、ありがとうございますぅ、ポーキーの旦那ぁ!!」」」




 もしかして、餌付けか!? しかもあれだけ威圧を放っていたアンドロスまで、ポーキーの飯に惹かれていったのだ。


 俺とニーナに続き、ポーキーも誰も傷付けずに事を収めていた。彼の場合は『《《飯》》は剣よりも強し』と、新しい諺に入れてもいいぐらいだ。




「さぁさ、そこの兄妹も食べな。沢山泣いてお腹も空いたべ?」




 ポーキーは手慣れた素振りで皿にたっぷりとシチューを配膳し、ジンとラミィに手渡す。


 皿にはじゃがいもや人参、そしてエビ・イカ・アサリといった海の幸がふんだんに煮込まれている。




 二人がスプーンで口いっぱいに頬張ると……。




「…………美味い……っ!!」

「やっべぇ、身体も心も温まるな……!」


 いわゆる『クラムチャウダー』に近いだろうか。牛乳と生クリームの濃厚なコクに、魚介の旨味とプリプリとした食感が絶妙に溶け込んでいる。




 二人はあっという間にポーキーのシチューの虜になった。ジンは丁寧に口に運び、ラミィは余程お腹が空いていたのか、ガツガツとかき込む。




「なぁ、俺たちの分もあるよな?」

「勿論だべ。だけんども、先に注文の品を片付けてもらわねぇと」

「さっき頼んでいたおつまみですね」

 シチューを強請る俺たちに、ポーキーは『お通し』として頼んでおいたつまみを差し出した。




 1枚のクラッカーの上に、同じ大きさのブルーチーズを乗せ、更に上には浸るほどのハチミツが掛かっている。




 片手におつまみ、もう片手にラム酒の注がれたジョッキを持つ。まずはつまみを口へ。ブルーチーズの癖のある塩気とハチミツの濃厚な甘みが、口の中で完璧なハーモニーを奏でる。

 これだけでも十分すぎるほど美味いが、その余韻が消えぬうちに一気にラム酒を流し込めば……。




「……かぁああぁあああぁ〜〜っっっ」




 思わず唸る。五臓六腑に染み渡る、生の悦び。ラム酒の甘みがハチミツと響き合い、チーズの塩気が全体を引き締める。心理戦で疲れ切った脳に直撃する旨さだった。




 ニーナも同じように食べて飲んで、俺と同じように唸る。


 そこへ例のシチューも投入されて、立派な夜のご馳走が出来上がるわけだ。




 ――ホイスト港にたどり着いた時は、盗賊によって独占されて廃れた雰囲気も相まって、ラム酒の匂いが嫌な緊張感を刺激していた。


 しかし、ジンとラミィが和解し、更には用心棒のアンドロスや同胞の盗賊までもが、俺たちと一緒にラム酒を嗜む『仲間』になっていった。




 しかも、この場で刃や武器を振るい、傷付いた者は一人も居ない。


 これは俺が、ジンとラミィに出会った時に、ニーナとポーキーに耳打ちで決めていた事を守ったからであった。それは……。




『あの二人、血も涙もない盗賊とはどこか違う。だから俺たちは……何があっても、剣を振るったり騎士を召喚したりせず、この場を収めよう。――暴力だけが、困難を乗り越える手段じゃないってことを、俺たちで証明してやろうぜ……!!』




 その結果が、ジンとラミィの凍えた心を溶かし、酒を呑み合い、共に笑い合う仲間へと変わっていった。


 人は何かをきっかけに変われるチャンスがあり、分かりあえる生き物だと俺は思う。




 だから俺はジンとラミィを信じてみたくなった。理不尽な王族を打ち砕く『切り札』は、多い方が一番良いからな。




「……なぁ、ジョー」


「何だ? ジン」




「お前みたいな男がいる世界なら、もう少し生きてみたいと思うのも……悪くないね」




「…………そりゃ、最高だ!!」






 ―――今ここにある幸せを、月夜の下で酒を酌み交わす仲間たちと共に。







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