第20話 スペード5の装甲騎士
――またもや、ピンチと咄嗟の判断から、新たなスート騎士を召喚した俺。
エメラルドグリーンの装甲に巨大な戦斧。俺やニーナはおろか、ポーキーまでもが身を隠せるほどの巨躯。まさに『歩く砦』だ。
細目と兜から覗く坊主頭が特徴的な漢――【スート騎士団・スペード5の装甲騎士、ゴードン】の登場である。
「ぬうぅ……! 光ったと思ったら、某と同じ用心棒が現れただと……!? 猪口才な!!」
対して、コントラクトブリッジを阻む用心棒・アンドロス。俺の不意打ち召喚に驚愕しつつ、大剣を構えて警戒する。
「アンタが、スペード5のゴードンか。急に喚び出して悪いな。今は急を要する時だ、宜しく頼むぜ」
「……サンダーやシルヴィーから主の話は聞いている。我はスート騎士団が誇る強靭な砦。主を護ることに尽力する所存」
「お、おう……!」
少々たどたどしい口調だが、その言葉には揺るぎない信念が宿っている。
血の気が多いサンダーや小生意気なシルヴィとは違い、召喚直後から俺への忠誠を隠そうともしない。これには俺も少したじろいだが、ようやくマトモな騎士に出会えたことに内心感動していた。
「ゴードンさんは、私やサンダー、シルヴィにとってのお兄さんみたいな人なんです。何事にも動じないというか、『苦しい時のゴードンさん頼み』と仲間内で言われるくらい頼りになるんですよ!」
「ニーナ、他人を褒める暇はない。代わりに主をしっかり護るのだ」
「は、は~い……」
成る程、兄貴分と言われる訳だ。その上ニーナからも高く評価されるとは、なんと珍しい。
「ほほぅ。同胞にも頼られるとは、御主、中々の強者と見た。ならば貴様から相手になってやろう、掛かってこい!」
アンドロスは、ゴードンの威圧に刺激されたか、大剣を構えて彼を煽る。
「ドデカのあんちゃん、気を付けや! こいつは刃物や飛び道具と、色んな武器を持ってるべ!」
「ゴードン、カードで援護した方がいいか?」
ポーキーの忠告を受け、俺は魔法・技カードでのサポートを提案する。
「……否。我は千の武器に朽ちる砦ではない。手出し無用!」
強靭な肉体はゴードンの矜持か。金太郎顔負けの巨大戦斧を担いで、のっしのっしと歩み始める。
「――先手必勝、いざ、参る!!」
ズンッ……、ズンッ……。
アンドロスとゴードンの間合いはおよそ20メートル。ニーナなら1秒もかからずに肉薄できる距離だ。
ズンッ……、ズンッ……。
しかし、鎧が重すぎるのか。一歩一歩に凄まじい重圧をかけて進むゴードンが、10秒で進んだ距離はわずか1メートル。
ズンッ……、ズンッ……。
……『牛歩の歩み』とはよく言ったものだが、これはもはや『牛歩戦術』、あるいは国会の議事妨害か何かか。まだ二メートルしか進んでいない。
ズンッ…………
「遅ええええええええええええッッッ!!!」
一分が経過して、動いた距離はたったの3メートル。
まだアンドロスの間合いまで17メートルもある。流石の俺も、この遅延行為に等しいパフォーマンスにはキレざるを得なかった。
「そういえば、ゴードンさん、力は強いんですけど、脚が絶望的に遅いんでした……」
ニーナ、何でそんな大事な事を言わんのだ。
「…………我、脚、限界。これ以上は、一歩も動けぬ」
「はぁ!!?」
まだ三メートルだぞ! 既に坊主頭からは滝のような汗が噴き出している。どんだけ脚に負担をかけてるんだ!
「……何をしている。鈍足にかまける暇があるなら、某と戦え!!」
痺れを切らせたのはアンドロス。当たり前だが。アンドロスは、ゴードンよりはマシだが、武器を吊るした重い脚を引きずって接近する。
アンドロスは大剣を上段に構え、ゴードンの頭目掛けて振り下ろそうとした、その時!
―――ガキンッッ!!
エメラルドグリーンの鎧の硬さが、グレートソードの柄から先の刃をへし折った!
「金剛不壊! 我が鎧、いかなる得物も受け付けぬ!」
「何をぉぉっ!?」
アンドロスは続けて大型の金槌、鉄球と重量級の武器を次々と叩き込むが、ゴードンは微動だにしない。
「ならば……これならどうだ!!」
ゴードンとの距離はゼロ。アンドロスのマントから例の散弾銃を取り出し、ゴードンの胸甲目掛けて零距離射撃!
ダァァァァンッッ!!
「…………!?」
しかし、ゴードンの鎧は、散弾をも止めた!!
「どうした、もうおしまいか?」
気の優しい奴ほど、怒らせると怖い。
ゴードンの細目からギロリと、物凄い眼光をアンドロスに向けると同時に、撃った散弾銃をむんずと握りしめ、粉々にしていった。
「ひ、ひいいいいいい!!?」
コントラクトブリッジの用心棒、ゴードンを前に成す術なし!
今にもゴードンの巨大戦斧が、返り討ちにとアンドロスに向けられようとした瞬間―――。
―――ビキッ。
「…………え?」
俺やニーナ、ポーキーは、その不吉な音を聞き逃さなかった。
この跳ね橋――『コントラクトブリッジ』は、現在アーチ状の構造で固定されている。つまり、構造的に中央部分へ負荷が集中する状態だ。
その中央で重量級の二人が暴れ回れば、一体どうなるか……?
「……ヤバい。このままじゃ橋が―――崩れる!!」
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