第18話 コントラクトブリッジを阻む者
――異世界の夜が明け、再び朝日が昇る。
俺の懐に宿るトランプカードも、54枚全てがケースの中に収まっていた。昨日消費したダイヤやクローバー、ハートのカードも、朝日と共に全て元通りだ。
ニーナもポーキーもゆっくり休めたお陰で、いつでも旅に出る準備は万端。食料も村の人々が分けてくれたお陰で、野宿になっても食いっぱぐれる心配はない。
――じゃあ、俺の方はと言うと……?
「……御主人様。どうしたんですか、その目の下のクマ」
「……クマ? 日本だけじゃなく異世界でも出没するのか?」
「そうじゃなくて、寝不足かって聞いてるんです! 昨日はあんなに大変な思いをして、疲れているはずなのに」
「いや、まぁ……眠れたには眠れたんだけどな……」
俺は眠気眼を理由に話をはぐらかすが、原因は自分でも良く分かっていた。昨夜、俺とポーキーは寝床で本音を言い合い、安心したところで眠りについた……はずだった。
だが、ポーキーの寝相の悪さで、夜中に何度身体を押し潰されたことか……!
「…………ボンレスハムに押し潰される悪夢を見てたんだ」
「はぁ?」
「何だべ、良い夢でないか! この地域じゃハムなんざ高級品なんだど、羨ましいなぁ!」
……前回あんなに良い雰囲気で終わったんだ。「そのボンレスハムはお前だよ」なんて言えるはずもない。俺は「あぁ、そうだな」とポーキーに同調しながら、話を切り上げた。
♧
旅の準備を終えた俺たちは、村を後にして次の拠点を目指すことにした。
とはいえ、俺はこの世界の地理など皆無に等しい。当てのない旅だ。どうしたものかと、ポーキーに相談してみた。
「ほんなら、『ホイスト港』の町が良いだべ」
「港?」
「あの町は他の大陸を行き来する船の波止場だべ。外来の文化やら情報が集まる拠点にもなっとるし、名産品も集まるから、美味いもんもたくさん揃っとるべよ〜!」
最後の一言で、ポーキーの目論見はすぐに分かった。……どうやら、彼はポーカーには向いてないらしい。
「でも、他の地域のことやこの大陸の情勢を知る良い機会ですよ。行ってみましょう!」
ニーナも提案を後押しする。そこまで言われたら、俺に拒否する理由はない。
「よっしゃ、それじゃその『ホイスト港』ってのに行ってみるか!」
俺の決断に二人が賛成した、その時。村の村長が慌てた様子で俺たちの歩みを止めた。
「お待ちくだされ! 旅の方、本当に『ホイスト港』に向かうのですか?」
「そうだけど、港町の方に何かあるのか?」
「いえ、港町というより、その手前にある橋に問題がございまして……」
やっぱり何かあるか。予想はしていたが、今度は橋か。
村長の話によると、『ホイスト港』は海に繋がる川で周囲を囲まれており、入るには『コントラクトブリッジ』という橋を渡らなければならないという。
だがその橋には今、ある曰く付きの人物が居座っているらしい。
「何でも、『99の武器を持つ番人』だそうで……」
「…………誰だ、そりゃ?」
そいつは、港へ向かう兵士や武器商人を相手に勝負を仕掛け、負けた者から武器を強奪するという。
いわば、西洋ファンタジー版の武蔵坊弁慶といったところか。そいつが橋を封鎖しているせいで、村の人々や商人は港へ行けずに困り果てているのだという。
「港を通せんぼするだけじゃなく、人の武器まで奪うなんて。一体何を企んでいるんでしょう?」
ニーナが番人の動機を不思議がる。元の世界の弁慶は願掛けで千本の刀を集めていたが、この世界の「番人」は少し事情が異なるようだ。
「何でも、この大陸に潜伏している『盗賊団』と通じているとの噂もございまして……!」
次々と現れる謎と、新たな冒険への引き金。
番人に盗賊団――新しい戦い、そして未だ見ぬスート騎士団のメンバーに出会えるかもしれない。常にスリルを求めるギャンブラーの血が、静かに騒ぎ出した。
「……それじゃ、確かめに行くか。その『99の武器を持つ番人』と『盗賊団』の正体を!」
俺の言葉に、ニーナとポーキーの表情も自然と引き締まる。
プレジデント王国に潜む影。番人と盗賊の因果が結ぶものは、敵か味方か? それとも、俺達とは異なる第三の勢力なのか……!?
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