第15話 勝利へのシークエンス
――スペード2とダイヤ2。二つのカードが重なり、ワンペア・コンボが炸裂する。
ニーナの剣に猛烈な豪火が宿り、サイクロプスの胸元を深く抉り取った!
「う、嘘……? 私が、あんな大技を……!!」
放った本人すら信じられないといった様子だ。
抉られた傷口は火種を残して燻り、巨躯は悶え苦しんでいる。だが、これほどの痛撃でも消滅には至らない。それだけ体力が化け物じみているのだ。
――そして、俺はある異変に気づく。
(【スペード2】だけが消えていない……? 【ダイヤ2】は光の粒子になったのに)
本来、魔法や技の代償として消えるはずのカードが、一枚だけ手元に残っている。ニーナを召喚したカードだ。
(もしかして……!)
突き動かされるようにデッキを確認し、確信した。
サンダーとシルヴィーを召喚した【スペード3】【スペード4】も、消滅せずにそこにある。
(俺の予想が正しければ、このスペードは彼女たちの『魂』そのもの……。彼女たちが存在する限り、カードは残り続ける。だとしたら、消滅する時は……ッ、馬鹿野郎! 不吉なことを考えるな!)
最悪の想像を無理やり掻き消す。
もう彼女たちを道具として扱うのは止めたんだ。なら、このカードは意地でも守り抜いてやる。
だが、戦場は思考の猶予を与えてくれない。
「何しとるだ、ジョー! サイクロプスが来るど!!」
「やべっ、ニーナ! 一旦引け!!」
ダメージを強引に振り払ったサイクロプスが、憎悪を剥き出しにしてニーナを標的に据える。
「だ、駄目……! 身体が、動かな、い……!!」
大技の反動か、ニーナの足が縺れる。
「いや、や……止めて……ッッ!!」
死の恐怖に身を竦ませ、絶望に瞳を揺らしたその時――。
―――ドスッッ!
「グギャアアアアアアッッ!!!」
サイクロプスの一ツ目に、流水の矢が突き刺さった。
放ったのは、墜落から這い上がったシルヴィーだ。
「ニーナ! あんた、さっきはよくも言いたいこと言ってくれたわね!!」
「シルヴィー……!」
「あんたってば弱い癖に、いっつも後先考えずに突っ走って……! ――私まで、つい助けたくなっちゃうじゃないっ!!」
(コイツ、意外と熱いところがあるんだな)
目を潰された巨人が、苦悶にのたうち回る。そこへ、稲妻を帯びた槍が追撃を見舞った。
―――ザシュッッ!
戦線復帰したサンダーの、渾身の一閃が土手っ腹を引き裂く。
「今更気付いたのか、シルヴィー! ニーナのド根性は騎士団随一だ! 弱えーくせに心は誰よりも強い! そういう所が俺様は……大好きだぜッッ!!」
バラバラだった三つの点が、線を描いて一つになる。
ニーナの魂が、二人の心を動かしたのだ。
「……ぐすっ、何よ。皆して弱い弱いって……! もうちょっとマシな褒め方は無いの!? うぇえええ〜〜んっっ!!」
泣きじゃくりながらも、ニーナの瞳には力が宿っていた。
仲間に認められた喜びが、彼女を再び立ち上がらせる。その絆を目の当たりにし、俺とポーキーは顔を見合わせた。
「なぁ、ジョーよ。皆、とっても良い奴だべなぁ」
「……あぁ。俺達には出来すぎた『仲間』だ。そんな彼女たちの頑張りに、応えない訳にはいかないよな……!」
俺の指は、迷わず次のカードを指し示していた。
半永久的に残る【スペード2】【スペード3】【スペード4】。これらを同時に発動させれば、一体何が起きるのか。
道具としてじゃなく、信頼する仲間の強さに、俺の博打魂をすべて賭ける……!!
「ニーナ、サンダー、シルヴィー! 今こそ三人の力を合わせる時だ!!」
俺の叫びに、三人が真剣な眼差しで頷く。
「サイクロプスを――ぶっ倒すぞッ!!」
「「「――御意!!!」」」
三人が巨人を囲むように三角形の陣を敷く。
ニーナはレイピアを両手で構え、天を仰いだ。
「―――行くぞッッ、スリーカード・ストレート!!!」
俺はデッキから三枚を引き抜き、天に掲げる。
『スペード2、3、4! ―――【SEQUENCE】発動!!』
連番に連なった三人の騎士の力が、一つの奔流となって渦巻く。
「炎!」
「雷!」
「水!」
三色の波動が最大出力に達し、サイクロプス目掛けて解き放たれた。
「「「三位一体奥義!! トライアングル・スマッシャーッッッ!!!!」」」
光の渦が巨人を飲み込む。
断末魔の叫びと共に、一ツ目の怪物は金貨と素材を残して霧散した。
静寂が戻った平野。澄み切った青空の下、三人の騎士は力尽きたように倒れ込んだ。
「…………やったな。確かに【切り札】は、諦めない奴にだけ届くんだな。ニーナ、俺はお前が誇らしいよ……!!」
俺もまた、精魂尽き果てて大の字に寝転びながら、太陽に透かした【スペード2】にそう呟いた。
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