第10話 魔物の巣窟を討て
――オークの襲撃から村を守った俺たちは、村の人々から謝礼として収穫された野菜をいただくことになった。
一旦は俺たちも受け取るのを断った。ただでさえ重税や不作で苦しい思いをしているのに、こんな見ず知らずの俺たちになけなしの作物を与えてくれたのだ。この村の長である老人が、切実な面持ちで説明した。
「御主らの力を見込んで頼みがある。この村の平穏を脅かす魔物どもの『巣窟』を潰してくれんか?」
「巣窟!?」
「あれを何とかしない限り、今の魔物を倒しても、後からもっと強い魔物を連れて襲ってきよる。根元から絶たぬ限り、儂らに平穏は無いのじゃ!」
この世界には、魔物が活動するための拠点として『巣窟』というものが存在していた。魔物はこの巣窟を中心に狩りをし、好き勝手に暴れ回る。
しかし、プレジデント王国が起こした戦争によって場を追いやられた魔物たちは、新たな拠点を探すうちにこの村に目をつけ、近くに巣窟を築いたのだという。
「そうなると、巣窟にはさっきのオークよりも強い魔物がいてもおかしくありませんね」
ニーナは先程のオークに苦戦したこともあってか、さらに強い魔物の存在に不安を抱いているようだ。
「なんだ? ビビっちゃってんのか、ニーナ。誰が相手だろうと、この俺様とボルトちゃんがチャチャっと片付けてやるよ。レディは黙って見てな」
「さっきまで我を忘れて槍を振り回していた貴方が言いますか、サンダー!?」
無鉄砲なサンダーと慎重なニーナ。同じ騎士団の同胞でも、相性は最悪のようだ。
「まぁまぁ、二人とも戦って腹が減っているんだべさ。野菜を食って元気を出せ。先の方がいい具合に辛いんだ」
「お前もさりげなく村の大根を食ってんじゃねーよ」
俺とポーキー、ニーナとサンダーで、しょうもないやり取りをしている間にも、幾度もの襲撃と農作業で疲弊した村人たちの視線が痛いほど刺さる。
「……まぁ、黙って見過ごすつもりは毛頭ない。引き受けるよ、巣窟殲滅!」
「おぉ……! なんと慈悲深いお言葉、ありがたや……!!」
村長は泣きながら俺たちに頭を下げた。あの王国に制裁を加えるからには、どちらにせよ脅威は潰しておくのが得策だろう。
「それで、その巣窟はどこにあるんだ?」
「この村から北東へ3キロ離れた先に高原地帯があります。そこの最も標高が高い地点に、魔物の巣窟が……」
「どれどれ……?」
俺は村から北東の方角を見上げ、村の平地より600メートルほど高い位置にある高原地帯を遠目に確認する。
すると、一際高い場所に、明らかに場違いな建造物が見えた。
「ありゃ……ドクロか?」
「そうです。あのドクロの形に彫られた岩が、ゴブリンやオーク、それ以上の魔物の拠点となっています」
どうやら魔物たちが知恵を絞り、高原の岩石をドクロの形に掘り抜いて寝床にしているようだ。さらに目を凝らせば、周辺の見張り台で監視を行う魔物の姿もあった。
「なぁ、御主人様。一応言っておくが、俺様とボルトちゃんじゃ、あの巣窟で戦うには少々不利だと思うぜ」
ここで、先程の失態を反省して身をわきまえたのか、サンダーが忠告してきた。
「どうしてそう思った?」
「さっきの平地ならどうってことないんだが、あんな急勾配の上で拠点を構えられちゃ、俺様のスピードが出せねぇ。ボルトちゃんの脚にも負担がかかるからな」
「なーるほどねぇ……」
サンダーは自分の得意不得意を理解しているようだった。
高原地帯とはいえ、50度近い急坂を駆け上がって迎え撃つのは、愛馬『ボルト』への負荷が大きい上に、敵からは格好の的になりやすい。
……だったら、敵よりもさらに高い位置から攻められたら? 眼下から見下ろして攻撃を仕掛けられれば、圧倒的に有利に立てる。となると……
「なぁ、ニーナ。空を飛ぶ生き物に乗って戦う騎士はいないのか? ほら、ドラゴンとかペガサスに乗ったりして……」
「いますよ。【スペード4】の天馬騎士、シルヴィーですね。でも……」
「でも?」
「彼女、騎士団の中でもかなり性格がアレなんです。なんというか、高飛車というか……」
また癖の強い奴がいるのか。だが今は急を要する時だ。性格云々で出し惜しみはできない。それに……
「サンダーの時点で、次もヤバいのが来るんだろうなとは思ってたよ」
「オイ」
とはいえ、天馬を操る騎士が控えているのは好都合だ。早速【スペードの4】のカードを束から取り出し、召喚へ――。
「………っ?」
一瞬、体が重くなったような感覚があった。しかしそれはすぐに消え、俺は気を取り直して召喚の儀に入る。
『おーっほっほっほ! とうとう来ましたわ、私の時代が!!』
スペード4のカードから、どこぞの小説で読んだ悪役令嬢のような高圧的な口調が響くと同時に、青色の光柱が村を貫いた。
青い柱はたちまち間欠泉のような水柱に変わり、その頂点から白銀の翼が羽ばたく。
天馬の背に跨るのは、青いミディアムヘアにヘアバンドを付けた女性。
天駆けるお嬢様騎士が、眼下を見下ろして高らかに名乗りを上げた。
「我が名は『スペード4の天馬騎士・シルヴィー』ですわ! 下々の方々、私の華麗な姿にひれ伏しなさいな!!」
……なんか、VTuberでこんなキャラいなかったか?
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも『★★★★★』の評価、「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を付けて、応援してください!




