第15話 大切な人
王都近郊の森に生み出された霧は、膝の下を白で埋め尽くしていた。
さっきまで乾いていた地面が、雨上がりのぬかるんだ土のようになり、草履の裏に冷たい泥が薄く張りつく。
山の夜明けに、濃い朝霧の中を歩いた時のように、水気が多く、呼吸がしづらい。
朝霧なら、陽の光が射せば、ゆっくりと薄れていくが、この白い霧は流れているようで流れず、足元に絡みついてくる。
それに、自然の霧なら、濃い場所、薄い場所が生まれるが、この白い霧はどこも同じ厚みで揃っている。
そして、その白く湿った空気の向こうで、角を二本生やした女が巨大な扇を肩に担ぎ、弧を描くように口元を緩めていた。
彼女が動くたびに、霧の輪郭が揺らぎ、残像を生む。
霧に混じる魔力の癖が、女の扇から漏れるものと同じだ。
この霧はこの女から来ているな。
以前、王都の外でオーガを引き連れ、カルミラを追っていた。
ドゥールが《羅刹》と呼んでいたはずだ。
その後ろに、魔力を持った見慣れぬ鬼が五体。
この世界の言葉でいうなら、一応はオーガの変異種ということになるのだろうが、俺の知るオーガとは別の生き物に視える。
先頭の女も五体のオーガも、俺の知るオーガのような大きさではない。
人族より頭一つ大きい程度のものもいれば、肩だけが不自然に厚いものもいる。
だが、それぞれ大きさも腕の長さも違うのに、後ろの五体の動きや呼吸が揃いすぎている。
帝国で視た騎士たちとも違う。
あれは、初めから誰がどう動くかを決め、その約束に沿って呼吸を合わせていた。
連携や修練を繰り返したとて、ここまで揃うものではない。
それに、ヤグの作る魔道具が生み出すうねりと同じ魔力のうねりが、あの五体から視える。
「……また、洗脳か」
落ち着かせたはずの氣が、また少しだけ揺れた。
リラが剣の切っ先をカルミラに向けたまま、視線だけを女に向ける。
「羅刹に、オーガの変異種が五体……」
声は震えてこそいないが、柄を握る手に力が入っている。
ハルは小太刀を構えたまま、視線を忙しく走らせている。
足元の霧、扇を担ぐ女、その背後の五体、少し離れて佇むカルミラ。
「カルミラの仲間……ではなさそうだな」
いつもの軽口を挟むこともなく、喉元から出てきたのは、ただの事実確認の声だけ。
目も、もう笑っていない。
そのカルミラは余裕を崩さないまま、指の先で唇をなぞりながら、退屈そうに首を傾げる。
「スイウンと言ったかしら。しつこいと、女でも嫌われるわよ」
スイウンと呼ばれた女が、扇の先をゆるりとカルミラへ向けた。
「カルミラ。ヤグが、其方を所望しておる」
その穏やかな声とは裏腹にスイウンの身体から魔力が溢れてくる。
「妾の手を煩わせる前に、大人しく縄につけ」
カルミラは肩をすくめ、困った子をあやすように軽く首を振る。
「お誘いは嬉しいけど……人を寄越す男はタイプじゃないわ。本気なら、自分で来なきゃ」
スイウンから魔力が放たれ、霧がまた少し重くなる。
視界がさらに白く霞み、空気に含まれる水気が濃くなり、髪も、衣も、肌も、じわりと重さを増していく。
濡れた前髪が額に貼りつき、リラが思わず半歩、後ずさった。
「な、なにこれ……霧、濃すぎない!?」
ハルが歯を食いしばり、足の指先で地面を押し込むように踏みしめる。
「……足が、重い」
俺は木刀の先で、地面を軽く叩く。
返ってくる音が、妙に遅い。
叩いた場所から戻るのではなく、霧の奥を一度回ってから届くような、一呼吸分の遅れがある。
「山で、霧に巻かれたことはあるか」
唐突な問いに、リラが剣を構えたまま瞬きをした。
「え?」
「湿りきった朝だ。足音が遅れて返る。距離が狂い、近くの枝が遠くに見え、遠くの川の音が耳元で鳴る」
リラが剣を構えたまま、眉を顰め、首をかしげる。
「……ごめん。よく、わからない」
「今度、朝の山に行くか」
今まで、前を向き、スイウンやカルミラの動きを警戒していたリラが、突如、無防備にこちらに顔を向ける。
「……うん、行く」
リラは小さく頷き、すぐに前を向き直すが、耳がわずかに赤くなっている。
「……お前ら、余裕だな」
言いながら、ハルは無意識に背後を振り返る。
だが、そこにあるのも、どこも同じ白い空間ばかり。
霧の中で、スイウンの身体の輪郭が揺らぎ、一人だったはずの影が、二つ、三つとずれて見える。
扇を担いだ形が白い霧の中で分かれ、また重なり、本物の位置が読めない。
「分身……!?」
リラが視線を左右に走らせ、声はわずかに裏返る。
俺は木刀の先で、揺らぐ白い影を軽く払った。
「違う。水を張った桶の底に、銭を沈めてみろ。あるはずの場所に、銭はない。濡れた空気の向こうも、それと同じで、本来の形がずれて見えるだけだ」
「……それも、今度見せて」
今度は前を向きながら、答えるリラ。
「あぁ」
俺は頷くと、リラの口元がわずかに上がる。
「……ほんと、この状況でイチャつくなんて、信じられないね、お前ら」
「イチャついてなんか……いない!」
耳をわずかに赤くしたリラが、無意識に剣を握る手に力を込める。
「はぁ」とこちらに聞こえるように大げさにため息を吐くハル。
「相手に集中しないと、怪我をするぞ」
俺が淡々と告げると、リラとハルが俺を睨む。
イバラキが俺の斜め後ろから短く補った。
「不用意に動かないように。あの扇で、水を含んだ重い風が来ます」
直後、イバラキの言葉の通り、霧を湿った風が撫でていく。
服が、髪が、肌が、さらに重く湿る。
リラが顔をしかめ、剣に魔力を流して、刃に細い雷を纏わせる。
「……イバラキ」
イバラキが俺の言葉に一度だけ頷くと、音もなく間合いを詰め、その刃へ手を添える。
その手には、俺の氣に触れてできた傷がまだ残っているのが視える。
突然伸びてきた傷のある白い手に、リラの目が見開かれる。
「イバラキさん、危ないわ。火傷じゃ済まない」
「この霧の中で、雷は危険です」
「どういう……こと?」
「霧の濃さを変えられれば、雷の通り道も変わります。放った雷が向きを変え、あなたの元へ戻り、牙を剥く」
息を呑む音が聞こえ、リラの手から、刃を這っていた雷がすっと引く。
スイウンの扇がわずかに傾き、それを合図に五つの影が動き始める。
相変わらず、動きや呼吸が気味の悪いほど揃っている。
右へ流れるものが二つ、左へ回るものが一つ、正面から押し込むものが二つ。
別々に動いているようで、まるで同じ糸の束で操られている。
スイウンの目はカルミラへ、五体の足はこちらへ向いていた。
リラが剣を構え直し、ハルも腰を落とす。
だが、二人の目はまだカルミラを追っていた。
白い霧の中に立つヴァンパイアの笑みと、そこへ迫るスイウンの異様な圧。
その二つに意識を割かれて、足元の霧がほんの少し濃さを変えたことに、反応が遅れる。
「左だ」
俺の一言に素早く反応し、小太刀を構えたハルが動く。
さすがに反応は速い。小太刀が霧を裂き、横から迫った影の爪を受ける。
だが、金属と爪が噛み合った音が、一呼吸遅れて別の場所から返ってくる。
目で見た位置と、耳が拾った位置が噛み合っていない。
ハルの眉が動く。
「……ちっ、やりづらい」
そこへ、正面の一体が大きく踏み込む。大きな影と太い腕が霧を押し分け、リラの頭上へ落ちてくる。
リラは剣を上げる。受ける形は悪くない。
だが、湿った地面に靴底が滑り、踏ん張るべき足が押し込まれ、身体がよろける。
「リラ!」
ハルの声が飛ぶ。
リラは歯を食いしばり、剣に魔力を込めると、刃の縁に細い雷が走る。
正面のオーガの口元が緩み、スイウンの視線が一瞬だけリラへ向く。
その瞬間、音もなく、リラの隣にイバラキがいた。
太い腕が剣を押し込む前に、濃褐色に包まれた足がオーガの顎を蹴り上げる。
身体が霧を割って後ろへ流れ、ぬかるんだ地に膝から落ちた。
「いけません」
白い手が、剣の腹を押さえる。
「……すみません、つい」
刃の雷が細く震え、湿った空気の中で行き場を失ったように消えた。
「魔力を雷に変換するのではなく、純粋な力として刃に沿うように流してください」
「やってみます」
リラは頷き、魔力そのものを剣に纏わせる。
スイウンは大きな扇を向けたまま、顔には笑みを保ったまま、優雅にカルミラを見ている。
けれど、その足は、ヤグの魔道具に逆らえないように一歩ずつカルミラへ流れている。
「大人しくなさいな、カルミラ。妾も、これ以上は面倒なの」
カルミラは、その言葉を聞いて、ひどく退屈そうに目を細めた。
「嫌ね。身体だけが前に出て、心がついてきていない女は……そういうの、あまり美味しくなさそう」
スイウンの眉が、ほんのわずかに動き、次の瞬間、こちらに向いていた四つの影の動きが変わる。
三体がカルミラを囲うように散り、同時に一体だけがこちらへ向かう。
霧の中で余計なことをさせないため、こちらの足を止めに来たのだろう。
……面倒だな。
俺は木刀を握り直す。
本当なら、黙々と薬草を摘んで帰るだけでよかった。
籠の中身もまだ足りないし、まだ、心の”もや”も晴れていない。
だが、足元の霧が草の根を覆い、乾いていた土をぬかるませている。
このままでは、薬草の根まで傷む。
……今日という日は、本当に……。
「下がっていろ」
リラとハルにそう言って、一歩だけ前に出た。
霧とは、つまり軽い水のことだ。浮いている間は厄介でも、落ちれば、ただの水。
俺は木刀を握り直し、一歩、前へ出る。
リラとハルの視線が俺に向けられる。
細く一定に、霧の粒を揺らすためだけの氣を木刀へ通していく。
今は叩き割る力はいらない。
山で木の枝の露を落とす時のように、力を散らさず、ただ細く、細く……すると、木刀の先に、青白い灯が一つ、二つと滲む。
そのまま、木刀を振る。
刃の無い木が霧を撫でた瞬間、その場所だけ、白い霧が粒を持つ。
細かく揃っていた霧が内側から寄り集まり、重い水滴となって、静かに落ちる。
迫っていたオーガの足が見える。
扇を持つスイウンの手が、わずかに止まる。
「……ウソ……晴れたの?」
リラが剣を持っていることを忘れたように、呆けた声で呟いた。
「局所だけ、な」
俺はもう一歩、前に出る。
「言ったろう。霧など落ちれば、ただの水だ」
スイウンは言葉を失ったように、俺を見ていた。
「……霧を、落とした? 馬鹿な……そんなこと、できるはず……」
俺はそのまま木刀の先を、迫ってきたオーガの膝の少し下へ置くように動かした。
触れるように、ただ氣を流す。
膝下に流された氣で、オーガの膝から下だけがわずかに外へ逃げる。
その瞬間、体重の落ちる方向と、足場が受け止める方向が噛み合わなくなる。
オーガの身体が傾いたところへ、ハルが入る。
今度は惑わされない。霧はすでに落ち、足元が見えている。
小太刀の柄がオーガの顎を打ち、リラが肩口から腰まで斜めに斬る。
大きな身体がその場に倒れる。
ハルが顎を腕で拭うように息を吐いた。
リラは魔力を纏っただけの自分の刃をまじまじと見つめたまま、しばらく動かなかった。
足元の泥を視ると、薬草の根元まで、水が回り始めている。
……早く終わらせたい。
その時、カルミラが霧の奥で動き、赤いものが散った。
囲んでいたオーガの一体、その喉元に、白い牙が沈むと同時に五体の中でも小柄なオーガが痙攣した。
赤い血が喉から溢れ、ぼたぼたと地面へ落ちていく。
スイウンの扇が止まり、残った二体のオーガも動かない。
リラが咄嗟に口を手で覆い、悲鳴になりかけた息を喉の奥で抑え込む。
ハルの額に汗が伝い、彼はそれを拭わないまま、ただ目の前で起きたことを飲み込もうとしている。
カルミラが喉元から顔を離すと、オーガは力無く湿った地面に膝から落ちた。
カルミラは赤く濡れた唇を指で拭い、倒れたオーガではなく俺を見る。
「ねえ、ゲドーマル」
霧の向こうで、紫の瞳が紅く染まる。
「オーガはダメね。やっぱり、あなたがいいわ」
スイウンの肩が、初めて強張り、頬がわずかに引きつる。
カルミラはスイウンにその紅く染まった瞳を向ける。
「次は、どの子?」
「……何を、しておる」
カルミラは振り返り、無邪気なほど軽く首を傾げた。
「あら、貴方から始めたことよ」
霧の中で、スイウンたちが一斉に身構える。
リラとハルは、剣を構えたまま動けずにいた。
理解が追いつかないのだろう。
ヴァンパイアを捕らえに来たはずの者たちが、獲物として値踏みされている。
俺は静かに息を吐いた。
「……まるで、獣だな」
カルミラが一体を喰らったことで、場は完全に壊れた。
霧の向こうで、スイウンたちが陣を組み直す気配がある。
だが、もう先ほどまでの一方的な搾取ではなく、互いを獲物として狩り合う場所に変わっていた。
その中心で、イバラキが一歩、音もなく前に出る。
「お館様、いかがなさいますか」
俺の答えを待つだけの、静かな確認。
「イバラキは、リラとハルを守れ」
二人に、この状態で何かができるとは思えない、相手が悪すぎる。
以前、噴水のところにいた《血の血統》という魔王クロウゼル。
あの男相手にタマは、王都にいながら本気を出そうとしていた。
その魔王が、百年かけて捕まえられないだけのことはある。
「俺は__」
そこまで言った瞬間、空気が裂けた。
音も、足音も、気配の膨らみもないまま、カルミラの腕が俺の首に絡んでいる。
……早い。
イバラキの手が、腰に佩いている刀の柄に触れる。
霧の冷たさの中で、カルミラのその肌だけが妙に生々しく、耳元を吐息が撫でる。
「ねえ、ゲドーマル」
囁きが、近すぎる。耳がくすぐったい。
「あなたも、ヴァンパイアにならない?」
ゆっくりと、牙が伸びる。
「一緒に、永遠を生きましょう」
「ゲドー!!」
リラの叫び声が、霧を裂くように響き渡る。
牙が、首筋に触れた。その瞬間、皮膚の上に薄く張っていた氣が立つ。
カルミラの牙は皮膚を破らず、硬い岩を噛んだように小さく弾かれ、白い牙の先が皮膚の上で止まる。
「……あら?」
カルミラが目を細める。
俺は、その場を動かずにカルミラに向かって呟く。
「どうやら鬼は、ヴァンパイアにはなれそうにないな」
その時、少しだけ離れた地面に、突如生まれた魔法陣が淡い光を灯す。
白い霧を内側から押し広げ、境が裂けるように空間が開かれる。
白銀の毛並みの九尾が、霧を払って現れる。
タマ。
今朝、俺を棲家に置いて行った時の冒険者としての軽装ではない。
白と薄灰を基調にした静かな装いが、身体に沿って形を取っている。
森の冷気と霧の白さをそのまま織り込んだような、静かで、古いもの。
その姿を見て、なぜか、俺は初めて出会った時のことを、ふと思い出す。
逃げてきた妖狐。
怯え、警戒し、誰にも心を許していなかった。
だが、最近の彼女の目はあの頃とは違う。
その目が点になっていた。転移の陣で、現れたと同時にタマが、止まった。
俺を見て、俺の首に腕を回したカルミラを見て、その近さを見て。
九本の尾が、背後でばらばらに散る。
何を見たのか分からぬまま、尾だけが先に乱れる。
横で、イバラキが額に手を当てる気配がした。
「……最悪の間です」
俺は一瞬だけタマを視て、迷わずカルミラの襟を掴んだ。
「邪魔だ」
そのまま、投げる。
カルミラの身体が霧を裂いて、木々を折りながら向こうへ飛び、湿った土を削って転がった。
霧が大きく揺れ、白い幕に一本、道が開く。
誰も動けなかった。
タマはまだ固まっている。
九つの尾は広がったまま、根元だけが小さく震えている。
俺はゆっくりと、タマの前に向かって足を踏み出す。
「”玉藻”」
タマの前に立ち、名を呼ぶと、タマの肩が、びくりと跳ねた。
俺はタマのその目を視る。
言葉を探すのに、少し時間がかかる。
「……俺のこと、嫌いか?」
声が、出しづらい。
背後で、イバラキが頭を抱える気配がある。
「……直球過ぎます」
俺は大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。
手が震え出し、膝もこの場から逃げようとする。
手を握り締め、踵を地面が沈むほど踏み込む。
タマは何も答えられない。
「……その__」
歯切れが悪い。
「……俺には……あまり難しいことはわからない」
いい訳のような言葉が勝手に出てくる。
「ただ……」
俺は一度だけ視線を落とし、胸の奥にある言葉を絞り出す。
「俺は、お前がいい」
タマの耳が、ピクリとわずかに動く。
音が、遠ざかる。
リラも、ハルも、スイウンも、カルミラも、世界の果てに沈んでいくようだった。
「これから先、どこへ行くことになっても……」
湿った空気が、肺にゆっくりと入る。
「……ずっと、玉藻と一緒にいたい……と思ってる。俺の隣に、玉藻がいてほしい」
タマの瞳が、ゆっくりと潤んでいく。
九本の尾が一度だけ大きく震え、それから一本ずつ、後ろへ流れていった。
「……うん」
声が、震えていた。
次の瞬間、タマが胸へ飛び込んでくる。
九本の尾がばさりと広がり、白銀の毛並みが霧を払い、そして、その細い腕と一緒に、俺を包んでくる。
湿った空気の中に、彼女の温度だけが俺の身体に溶け込んでくる。
「いいよ」
しがみつく腕に、力がこもる。
「一緒に、いよう、外道丸。ずっと、いつまでも」
遠ざかっていた世界が、ゆっくりと戻ってくる。
少し離れたところで、リラとハルが顔を寄せていた。
「……戦場、だよな?」
「しーっ」
リラは唇に指を当てたまま、視線だけは俺たちから外さない。
霧の向こうでは、スイウンが扇を構えたまま、置き去りにされたように立ち尽くしている。
少し離れた場所で、地に片膝をついたカルミラが、肩を揺らして笑った。
「ああ」
小さく、けれど確かに愉悦を含んだ声だった。
「やっぱり、いいわね。あなた」




