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異世界の鬼神は本日も盃を手放さない  作者: 二筆
第1章 居場所は作られていく
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第2話 レグナ王国 王都リュシア 街の入り口

 王都リュシアの城門は、ただの通行口ではなかった。

 白灰色の石を積み上げた門壁は、人の背丈の何倍もあり、表面には無数の修復後が残っている。

 

 古い爪痕、焦げ跡、欠けた角。


 この街が守られてきた歴史そのものだ。

 門の外側と内側では空気が違う。外は流れ、内は静止。

 選別される場所の匂いがした。


 門の前には二列の鉄柵。

 通行人は一人ずつ進み、門番の視線と問いを受ける。

 

 数人いる門番の鎧は統一されているが、装備はまちまちだ。

 見たことのない武器のようなものを手に持っている。

 棒の先に、金属の筒がついたもの。

 刃はない。だが扱い方が、”槍”に似ている。


 あれは、何だ?


 「魔力を撃ち出すための武器よ」

 「!?」

 「ここでは、異種族を監視してるの」


 つまらなさそうにタマが呟くように教えてくれる。

 先程までと違い、外套を深く被って顔を晒さないようにしている。

 俺も、タマに言われて懐に入れていた手拭いを頭に巻いている。

 毎日綺麗な手拭いを渡してくれていた茨木(イバラキ)に感謝する。


 確かに人ではない者も並んでいる。


 妖のようなものなのだろうか。


 「妖じゃないよ。獣人とかドワーフ」

 「!?」


 察が良すぎる。 

 いや、俺が分かり易すぎるのか?


 引き攣りそうになる顔を、険しく保つことによって誤魔化す。


 どうやら種族によって払っている通貨の金額が違うようだ。

 おそらく門番に渡している金属が通貨なのだろう。


 門番の中央に立つ男は視線が鋭いわりに、無駄な威圧をかけてこない。

 疑うが、煽らない。

 優秀だ。

 

 「名前と用件を」

 「タマ、仕事帰り。はい、二人分」


 首から掲げている鉄の板のようなものを門番に見せるタマ、通貨を渡そうとする。

 やりとりが短い。

 慣れているのだろう。

 

 奥から門番の一人がタマに気づき、ニヤニヤと近づいてくる。

 隣にいる俺の薬指にある”指輪”を見て、顔を顰める。

 明らかに機嫌が悪くなる。


 「おいタマ、結局は顔か? 散々、俺らのこと馬鹿にして結局は面食いなだけじゃねぇか」


 嫉妬のこもった目つきで、タマを恨めしそうに見る。


 「……」

 「おい! 無視すんなって」


 さっきの中央にいた男の視線がこちらに向く、というよりも射抜いてくる。


 「……そっちは初めて見るな」


 さっきよりも少し低い声。


 「迷子だよ」

 

 タマが素っ気なく答える。


 「本人に言わせろ」

 「ゲドーマル」

 

 自分で答える。

 タマに言われて「外道丸」ではなく「ゲドーマル」という。

 この方がここでは自然らしい。


 声をかけてきた門番以外がクスクス笑っている。

 

 思いっきり笑われているな。

 失礼な連中だ。茨木がいれば即斬られているぞ。


 「手拭いを取れ」

 「ちょっと、人族が通るだけでそこまでする必要あるの?」


 タマが抵抗する。

 俺は手拭いを頭から取る。


 「黒髪……それに、その格好。王国のものでも、冒険者のものでもない」


 髪?


 周りを伺うと確かにいない。皆それぞれ綺麗な色の髪をしている。見たことのない種族などに目を奪われ、人の髪色など気にもしなかった。


 茨木がいないと、何も出来ないな、俺は。


 「魔族……? そうでないのなら、どこの人間だ」


 ここでは、嘘は通じないだろうな。


 「どこでもない」


 門番の目が細くなる。

 空気が、一段重くなった。


 こうなったら知らぬ存ぜぬを通す。

 いざとなったら全力で森に逃げる。


 タマが俺と門番の間に入る。


 「黒髪=魔族、って決めつきは雑すぎ。そもそも魔族にも黒髪なんて存在確認されてない」


 「じゃあその服はなんだ?」

 「動きやすい」

 

 茨木が手直しした、といいそうになったが抑える。なんでも、正直に答えるだけだと思われたくはない。嘘ではなく、誤魔化す。


 昔とは違う。


 「馬鹿にしてるのか?」

 「あなたはちょっと黙ってて」


 タマの少し吊り上がった金色の目が、じっとこちらを見ている。

 狐の目だ。

 怒っているのではない。呆れているのだ。


 ……間違えたみたいだ。


 どこにいようとも周りの感情を逆撫でしてしまう。


 「タマ、これ以上はお前も投獄の対象になるぞ。冒険者ギルドにも報告する」

 「……っ!」

 

 顔を歪ませるタマ。


 「構わな__」

 「あっちの方がおかしいだろう」


 タマの言葉を遮り、俺は後ろの男を指差す。


 場の音が、


 一斉に止まった。




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