解説席「何者なんだ?神沼翔」
実況「解説はKBM WORLD MAX 2003・2008世界王者の魔沙流さんとお送りしています。さあ、魔沙流さん、両者の立ち上がりはいかがですか?」
魔沙流「びっくりしましたね。神沼翔君……彼は何者ですか?」
実況「そうですね。私のような素人からすると、最初からチャンプアが全力で行ったように見えました。これはチャンプアは神沼を手加減する気がないということですよね?」
魔沙流「ええ、僕も今回はさすがにチャンプアが上手く神沼君をケガさせないようにコントロールして戦うと思っていました。最初から倒しに行きましたね」
実況「ですよね? あれは倒しに行っていましたよね?」
魔沙流「チャンプアはむしろ、一撃で仕留めて終わらせるのがダメージが少ないと思ったのかもしれないね」
実況「ああ、なるほど。でも、なんと神沼はチャンプアの連続攻撃すべてを凌ぎました。魔沙流さん、これはどう見ますか?」
魔沙流「いや、凌いだんじゃないですよ。神沼君はチャンプアの攻撃すべてにカウンターを合わせていた。あんなの見たことないよ」
実況「え? そうなんですか? ということは……」
魔沙流「最初のチャンプアの攻撃に、少なくとも神沼君はまったく動じていないどころか、下手したらチャンプアがカウンターをもらいそうなタイミングもあったからね」
実況「さて、魔沙流さんが言われたように、この神沼翔という高校生は一体何者なのでしょうか」
魔沙流「ああ、チャンプア距離を取りましたね。ローで足削る作戦ですよ。いきなりこんな作戦をチャンプアに取らせるなんて、神沼君凄いね」
実況「神沼はこのチャンプアの攻撃には手こずるのか? ……おおっと、神沼が一気に距離を詰めて脚を掬った!」
魔沙流「ええ? チャンプアが尻餅をつきましたよ? こんなことあるの? チャンプアが尻餅をつくなんて初めて見たよ」
実況「これは偶然のスリップではないですよね?」
魔沙流「いや、神沼君は狙っていましたよ。顔面ガードして一気に接近して、ドンピシャのタイミングで足払いしていましたから」
実況「あれは空手の技ですかね?」
魔沙流「おそらくそうですね。松井館長とか、極真の城南支部や城西支部でも上手い選手を見たことがありますよ」
実況「なるほど。でも、こかしの技術ではムエタイが勝っていますから、チャンプアとしては屈辱じゃないですか?」
魔沙流「いや、あれはチャンプア怒ったはずですよ。ほら、顔が本気になっている」
実況「開始数十秒経って、今のところ神沼が上手くチャンプアの攻撃を捌いているように見えますが、チャンプアはこれで終わる選手ではありません。今までは少し神沼選手を過小評価して油断があったのでしょうか。チャンプアらしからぬ動きをしています。おおっと、今度はチャンプア強引に間合いを詰めた! しかも、今度は神沼のカウンターを避けない。ああっと、神沼の攻撃は当たっているがチャンプアには効いていない! やはり高校生のフィジカルでは、ムエタイチャンプを効かせる攻撃はできないのか!?」
魔沙流「いや、チャンプアちゃんと避けていますよ。急所をわずかにずらしています。いや、チャンプア凄いな。数センチ単位で急所を外している。逆を言えば、神沼君の攻撃が全部ピンポイントで急所を狙っているんだよね。これも恐ろしいな。でも、これやられると神沼君、苦しくなるね」
実況「ああ! チャンプアの攻撃が神沼にヒットした! 一発、二発、三発!」
魔沙流「いや、神沼君もあえて受けているよ。避けていない。しかも、彼も効いていないんじゃないの? 顔の表情が全く変わらない。あっ、チャンプア、テンカオ狙ってる……いや、止めた。チャンプア止めたね。神沼君に読まれていたんだよ」
実況「魔沙流さん、今、何が起こったんですか?」
魔沙流「神沼君もチャンプアに対抗して、わざとチャンプアの攻撃を三発受けたんだけど、顔を見たら全く普通の顔をしているの。チャンプアは三発当たったから上段膝蹴り、テンカオを打つ体勢に入ったけど、止めたんだよ。チャンプアも気づいたんだよ。神沼に全部読まれていることに」
実況「そ、そんなこと高校生にできるんですか?」
魔沙流「いや、信じがたいけど、目の前でやっているからね。いや、これ、もしかすると、もしかするかもしれないよ。ええ? どうなっているの? 彼は何者なの? 情報はどこまであるの?」
実況「いや、高野CEOからは、伝説の空手家のお孫さんで、ウィリス未惟奈がかなわない相手としか聞いていませんでしたが、なにせ大会の実績がないから、誰も高野CEOの話から実力を想像できなくて……」
魔沙流「だよね。俺もその情報しかないから……。でも、この会場だけでなく、動画配信の視聴者含めて、これを予想できた人は一人もいないと思うよ。でも、その伝説の空手家を知っている人は、神沼君に期待していたりするのかな」




